2010年12月23日木曜日

御来場御礼

本日は、Marguerite Press Presents Biweekly Poet Vol.17 に多数ご来場いただき、ありがとうございました。タンバリンギャラリーの白い壁を飾るたくさんのタンバリン作品たちもにぎやかに、楽しく朗読させていただきました。

少々客席が窮屈だったとは思いますが、長時間お付き合いいただき感謝。自分でも気づいていなかったことがいろいろわかりました。宿題にします。

本日のセットリストです。10年ぶりに朗読する詩もありました。

1. (タイトル)
2. 無題 (都市の末梢神経が)
3. Universal Boardwalk 2009-2010
4. 初雪
5. 朝
6. コインランドリー
7. Winter Wonderland
8. Angelic Conversations
9. クリスマス後の世界
10. Planetica (惑星儀)
11. 虹
12. 声
13. ガーデニアCo.
14. Doors close soon after the melody ends
15. from across the kitchen table
16. 答え
17. 無題 (late summer / early autumn)

アンケートの回答も面白いのが多くて、いま一人で読んで笑っています。「ありがとうございます」が早過ぎ、っていうのがベストアンサー。確かに。余韻は大事ですねー。

ひとりってこわいけれどおもしろい。機会を作ってくださった永井宏さんマーガレットプレスタンバリンギャラリーのみなさん、ありがとうございました。

これで今年の詩の仕事はすべて終了。来年の予定もぼちぼち入っていますので、また機会をあらためてご案内させていただきたいと思います。

このブログを訪れてくださる皆さん、2010年は大変お世話になりました。どうぞよいお年をお迎えください。

Merry Christmas & Have a nice holiday!!

2010年12月9日木曜日

triola 弦楽コンサート"Resonant"

triolaはヴァイオリンの波多野敦子さんとヴィオラの手島絵里子さんのふたりによる最小単位弦楽アンサンブル。そこで奏でられるグルーヴィで美しい音楽、偶発性と緻密な計算によって紡ぎ出される繊細で豊かな和声は、キース・リチャーズとロン・ウッドのギター二本の絡みを想起させます。

下北沢leteで開催される"Resonant"と銘打たれたコンサートには、「似顔絵音楽」という観客の一人をイメージして、その場で波多野さんが作曲しtriolaが演奏するコーナーがあります。

芸術家は日々自身と向き合い、独自の作品を創造するために苦闘し続けています。一方、観客・聴衆は都合の良いときに、気分に合うような作品の完成型だけをピックアップして楽しみます。適切な対価を払うことでそれを可能にするわけです。

ところがこの「似顔絵音楽」では、モチーフであるひとりの観客に作曲家が向き合い、脳に浮かぶ旋律、和声、リズムをその場で具体的な作品として譜面に起こし、演奏するというプロセスをエンターテインメント化して見せるという離れ業をやってのけてしまうのです。

今日のモチーフである観客ツキモトさんの印象を音楽化することを、波多野さんはだいぶ苦労していましたが、出来上がったのは雅楽のような不思議な和音を持つ見事な天上の音楽でした。

このように、圧倒的な才能とイマジネーションで疾走する波多野さんの音楽は、時にノイズミュージックすれすれのところまで踏み込んでいきますが、これを地上につなぎとめ、ポップミュージックとして成立させる手島さんの安定した演奏。このバランスの妙がtriolaの魅力だと思います。

折りしも今日が30回目の命日だったジョン・レノンの"Happy Xmas (War is over)"のカバー、新曲「駆け落ちクジラ」の奇数拍子のリフ主体のプログレ的盛り上がりも楽しく、満員の会場を共鳴させ、幸福感で充たしました。

次回"Resonant"は2011年2月5日(土)とのこと。そのころには現在制作中の新譜がリリースされているかもしれません。楽しみです。

 

2010年12月4日土曜日

新クラシックへの扉

先々月お知らせしたとおり行ってきました師走の錦糸町。最近お気に入りの店バスモティでバングラデシュ・カリーを食べ(日替ランチは豆腐キーマ)、すみだトリフォニー大ホールへ。新日本フィルハーモニー交響楽団『新・クラシックへの扉 第10回 土曜午後2時の名曲コンサート』を鑑賞しました。

今日の演目は、ボロディン『だったん人の踊り』、シベリウスのヴァイオリン協奏曲二短調op.47、チャイコフスキー『くるみ割り人形組曲』の3曲。第9は無くても、くるみ割りを聞かないと年が越せない天邪鬼には見逃せない組合せ。

指揮者は楽団音楽監督のクリスティアン・アルミンク(39歳)、ソリストは21歳の南紫音さんでした。

アルミンク氏の指揮ははじめて聴きましたが、金髪で2メートル近い長身の貴公子風が全身を使って躍動感溢れる音楽を紡いでいく姿には確かに華があります。花のワルツのエンディング、シベリウスの2楽章冒頭の木管が一本ずつ重なり増える部分の処理など、すっきりきっちりオケをコントロールしていて、気持ち良く聴かせる。 聞けば大層な御曹司だそう。育ちの良さがプラス方向に音楽に作用していると思います。

北九州生れの南紫音さんは、若くて美人なうえに技術が正確で、最高音域が数度ヒステリックに響いてしまったところ以外、ほぼノーミスでこの難曲を乗り切り、大喝采を受けていました。

今日の演奏で一番印象に残ったのはボロディンでした。 特に管楽器がよかったです。1月のハイドン、ブラームスはどうしようかと、思案中。 2000円だからまた行っちゃおうかな。

そうそう、12月23日(祝)タンバリンギャラリーで開催されるソロライブの告知が、主催マーガレットプレスさんのサイトに出ました。ありがとうございます。どうぞ皆様お誘いあわせの上、ご来場ください!
http://marguerite-press.net/margueritepress/2010/12/post-191.html
 

2010年11月28日日曜日

妄想中華雑貨店

東京の紅葉はきっと今週あたりがピークですね。ヒューマントラストシネマ渋谷で、豊島圭介監督、設楽統バナナマン)主演の映画『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』を観ました。

まず開演前の場内アナウンスで「~どうすか」というタイトルを映画館スタッフが真面目な声で言うのが笑いのツボに入って危険でした。

北尾トロさんの原作ノンフィクションに登場するエピソードをきちんと踏まえた、派手さは無いけれど、品の良いオフビート・コメディ。正味95分というコンパクトな上映時間もウディ・アレンの70~80年代作品を想わせます。

トロさんはいつも、ドラマチックなこと、格好良いものを求めている普通の人たち(トロさん本人含む)の、不器用な情けなさ、格好悪さがどうしようもなく露呈してしまう瞬間を丁寧に切り取って、その駄目さ加減に礼節と愛情を持って接しているように思えます。

それはこの映画全体のトーンにも反映していて、ブルージィだけど上品なトロさんご本人の話を、深夜の古本カフェで聞いているような心地よさがありました。設楽統も、主人公の妄想シーンの裁判長役でワンカットだけ登場するトロさんもいいお芝居をしています。

そして妄想つながりで。渋谷から池袋に移動して、中国茶カフェ梅舎茶館で開催中の『妄想中華雑貨店2010WINTER』の最終日におじゃましました。

YASUMI-YA名義で中華風味の帽子、バッグ、服飾小物をデザイン・制作・販売している原田紀さんは、実は同じ大学の現代詩研究会の同級生。今日みたいにひさしぶりに会っても、特に折り入った話をするでもなく、作品を購入することもほとんどなく、ただ顔を見に行くだけなのですが、同級生が紆余曲折(というほど大袈裟なものではありませんが)を経て、こうしてちゃんとやっている姿を、半年に一回でも見ることができるのはいいな、と思います。

あ、取ってつけたようですみませんが、作品もすごく良いんですよ、チャーミングでウィットがあって。加えて彼女の丁寧な手仕事を、もの作りをする者としていつも尊敬しています。

そして最後にジュンク堂書店池袋本店で、北尾トロさん編集の季刊『レポ』創刊号を購入し、東京メトロ有楽町線で帰宅。休日らしい休日でした。

 

2010年11月27日土曜日

Biweekly Poet vol.17

カワグチタケシ出演イベントのお知らせです。クリスマスイヴイヴに単独公演が決まりました。

会場は、美術作家で詩人の永井宏さんが今年の初夏に外苑前にオープンしたギャラリー。初秋の葉山森戸海岸で永井さんに偶然再会し、そこから幾人かのご協力を得て、今回出演のはこびとなりました。イシカワアユミさん村椿菜文さん、どうもありがとうございます!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

Marguerite Press Presents Biweekly Poet Vol.17

2010年12月23日(木・祝)19:30開演
出演:カワグチタケシ
料金:1,000円
会場:TAMBOURIN GALLERY(東京渋谷区神宮前2-3-24)
   tel.03-5779-2331 
   http://tambourin-gallery.com/     
   http://marguerite-press.net/

東京メトロ銀座線外苑前駅3番出口を出てすぐの信号を渡ります。そのまま直進してベルコモンズの角を右折。あとは道なりに上って下る。6~7分歩くと左にジャガー(自動車)のショールーム、その少し先の右側にある白い木の壁の家がタンバリン・ギャラリーです。

会場の地図はこちら↓
http://tambourin-gallery.com/tg/access/1.html

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

一時間強ひとりで詩の朗読するという、隔週木曜に開催されているこのシリーズ。先ごろリリースした詩集『ユニバーサル・ボードウォーク』収録の新作に、旧作も加え、またクリスマスらしい演目も用意してお待ちしています。ひさしぶりソロライブで、みなさんとお会いするのがいまから楽しみです。

冬の散歩道。どうぞ皆様お誘いあわせの上、是非ご来場ください!
 

2010年11月23日火曜日

まーまーま2

明け方降っていた雨も午後には上がった勤労感謝の日、都営地下鉄大江戸線に乗って。東新宿 music bar LOVE TKO で、「まーまーま2~ストロング&ビューティフル」を鑑賞。鑑賞?

三人のお母さん詩人が主催する朗読会ということで、ハートウォーミングで牧歌的なものを期待して来た人がいたとしたら、あまりのギャップに戸惑ってしまうに違いない、エッジの利いたパフォーマンス。 海を隔てた隣の国では大変なことが起こってしまった、そのタイミングで。

さいとういんこ石渡紀美モリマサ公。そして、ジュテーム北村大袈裟太郎。それぞれの位置と視点から、2010年11月23日のリアルなコンディションを表現していました。

そんな大人たちのなかで、23歳のラッパー、不可思議/wonderboyの発するあまりにも無防備な言葉たちの美しさが光っていました。終演後demo盤を購入してディスクにサインしてもらっちゃった。

石渡紀美詩集上下巻もたくさんの方に手にとっていただき、売上も上々。みなさんありがとうございました!
 

2010年11月14日日曜日

石渡紀美詩集 1999-2009

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
明日。信用のならない、すてきなやつ。だけど、いつまでたっても今日しかなくって、明日なんて来たためしがなかった。石渡紀美「マザーレス マザーフリー」より
 
TKレビューに2度ゲスト出演してもらっている石渡紀美さんは10年来の友人で、初期の頃には、二人で武蔵野美術大の学園祭に呼ばれて朗読したときのお客さんが猫一匹なんてこともありました。
 
今年7月の東京ポエケットでお会いした際に「そろそろ作品まとめておいたら?」なんて話をしたのですが、それが今回プリシラ・レーベルから2冊の詩集となって発刊されるはこびとなりました。
 
メジャーデビューアルバムがいきなり二枚組ベスト盤みたいな感じになっていますが、過去十年間に書かれた膨大な作品群から厳選した、質・量ともに自信を持ってお勧めできる内容になっています。
 
猛暑の8月、下北沢のベトナム料理店で原稿をお預かりしてから、2か月程掛けて丁寧に装幀しました。画像だと伝わりづらいですが、表紙と本文の紙質にもとことんこだわっていることは、一度お手に取ってもらえればわかっていただけると思います。
 
発売は2010年11月23日(祝)東新宿 music bar LOVE TKO で開催され、石渡さんが主催者の一人で出演もする朗読イベント『まーまーま2』にて。その後、店頭販売予定。どうぞよろしくお願いします!
 
・石渡紀美詩集 1999-2009 上 つぎの十年
・石渡紀美詩集 1999-2009 下 あたらしいおんがく
 
2010年11月23日発売 各500円
著者 石渡紀美
装幀 カワグチタケシ
発行 プリシラ・レーベル
 

2010年11月6日土曜日

NHK音楽祭2010

11月ですね。11月は一年で一番好きな月。ツイードと図書館と落葉の11月。そして、11月に一番似合う音楽はブラームスだと思います。

というわけで、秋晴れの渋谷公園通りを上り、NHKホールまで。音楽祭2010、指揮アンドレ・プレヴィン、演奏NHK交響楽団、演目はブラームスの 交響曲 第3番 ヘ長調 作品90、交響曲 第4番 ホ短調 作品98の2曲です。

結構長生きした割に、もともと4曲しかないブラームスの交響曲ですが、いずれも異なるコンセプトを持つ名曲揃い。特に3番は大好きで、さっき数えたらこの曲だけでCDを9枚持っていました。

プレヴィン氏については、1970年代にロンドン響と録ったチャイコフスキーのバレエ音楽を愛聴しており、華麗で正確、輪郭クッキリという印象を持っていたのですが、40年の歳月が音楽に重厚さを加えていました。

1929年生まれのプレヴィン氏は81歳。足元が若干覚束なく、椅子に座っての指揮でした。テンポも幾分スローなものでしたが、オーケストラをよく歌わせて、巨匠オーラ全開。N響もこれによく応え、特に流麗で重層的な弦楽器の演奏はとてもブラームスらしくてよかったと思います。

席が前から2列めで、ちょうどヴィオラとコントラバスの前(というより真下)だったので、低音絃の響きを間近に体感することができたのも楽しかったです。

終演後、ロビーに緒川たまきさんが。とてもきれいでした。
 
 

2010年10月16日土曜日

クラシックへの扉

高い秋空に鱗雲が綺麗に拡がる土曜日の午後、隅田左岸のワイルドサイド、不思議タウン錦糸町へ。すみだトリフォニーホール新日本フィルハーモニー交響楽団の『新・クラシックへの扉 第9回 土曜午後2時の名曲コンサート』を鑑賞しました。

演目は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61と交響曲第6番ヘ長調「田園」op.68。あまたあるベートーヴェン作品のなかで特に軽快な曲調の2曲、指揮者は下野竜也、ソリストは徳永二男です。

このシリーズはチケットが1,500円からと、とてもお得なのですが、値段以上に楽しめました。ラ・フォル・ジュルネの影響なのでしょうか、安価なコンサートが増えることは喜ばしいことです。

演奏そのものもよかったのですが、無料のプログラムが女子のハンドバッグにも収まるA5サイズだったり、出演者一覧というステージ配置に演奏者名全員が記載されている紙が折り込まれていたりと、細かいところに気配りがあって、すばらしいなと思いました。

総じて木管の演奏が安定していて安心して聞けましたが、田園2楽章の重松希巳江さんのクラリネット演奏が美しかった、なんて言うことができちゃうわけですよ、出演者一覧があるおかげで。

毎月開催されるこのシリーズ、次は12月のボロディン、シベリウス、チャイコフスキーの回に行く予定。いまから楽しみです。
 

2010年10月10日日曜日

ききみみ

以前句会@フィクショネスでよくごいっしょさせていただき、いまは北九州で古本や檸檬を営んでいらっしゃる村田もも子さんから、東京でグループ展を開くご案内をいただきました。会場のギャラリー彦は西荻窪のぷあんのご近所。 東京リーディングプレスの編集スタッフをしていたころにさんざん通った街です。

会場に着くとアンティークの着物を着た町娘のような村田さん(左利き)が、2年前と変わらない、可憐な笑顔で迎えてくれました。

刈屋サチヨさんの鮮やかな色彩としっかりした描線のアクリル画、 志村雪菜さんのやさしい色調の絵具を直接段ボールに乗せた平面作品、そして村田もも子さんの俳句によって今回の『ききみみ』展は構成されています。

色彩豊かなふたりの絵画に並んで村田さんの作品は、一句ずつリングメモにプリントされて、ピンで壁に留められています。視覚的には紙の白とインクの黒しかないのですが、俳句ひとつひとつの言葉に、それぞれの季節の温度や湿度、光と影、音や匂いが感じられて、小さなギャラリーの空間に、一見控えめではありますが、確かな陰影を添えています。句会@フィクショネスで選んだ句もいくつかあり、懐かしい気持ちになりました。

 夕闇の白木蓮宇宙此処にあり
 彼の宙へ交信してをり時計草
 ほの温きアスファルト背に流星夜
 黒猫がビロード纏う星月夜

村田さんの地動説的なコンセプトの句が好きです。タイトルの『ききみみ』は昔話の「聞き耳頭巾」から採ったそう。その頭巾をかぶると動物や鳥の言葉が理解できるというお話です。同時リリースされた文庫サイズの句集『ききみみ手帖』もチャーミング。イラストを刈屋さん、編集と装丁を志村さんが手がけています。 東京では、千駄木の古書ほうろう、下北沢フィクショネスで発売中とのこと。

同級生三人のグループ展は明日まで開催。三連休の最終日、訪ねてみてはいかがでしょう。素敵に甘酸っぱい気持ちになりたい方には特におすすめです。

 

2010年10月9日土曜日

十三人の刺客

ユナイテッドシネマ豊洲で、三池崇史監督作品『十三人の刺客』を鑑賞。 雨だし、公園でお弁当ってわけにもいかないので、映画でも。という軽い気持ちで観に行ったのですが、圧倒されました!

1963年の工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演映画を役所広司主演でリメイク。 人物造型、心理描写、衣装とメイクアップのリアリズム、スピーディで簡潔な演出と息をもつかせぬアクション、照明、カメラ、音声、いずれも高水準で、しかも調和のとれた150分間の極上痛快時代劇エンターテインメント。 残虐なカットも多数ありますが、しっかりとしたストーリーのなかに必然性を持って組み込まれているので、目を背けることができませんでした。

武士の生き方、死に方なんていうのには、まったく共感できるものはありませんが、そのあたりを伊勢谷友介演じる木賀小弥太にさりげなく代弁させる念の入りよう。恐れ入りました。オリジナル版では山城新吾が演じていたというこの小弥太というキャラ。山でうさぎや昆虫を食べて暮らしている野生児なのですが、斬られても斬られても蘇る、妖精のような存在で、物語に不思議な深みを添えています。

ラスト30分以上に及ぶ殺陣。このシーンにBGMを重ねて盛り上げず、人の声と刀の音だけで構成した音声で、戦闘のリアルさ、刀傷の痛みがよく伝わってきます。市村正親松本幸四郎平幹二郎のベテラン勢、悪役の稲垣吾朗、みんなよかったですが、特に松方弘樹の俊敏で華やかな殺陣はさすがの貫録でした。

それから、古田新太。戦隊モノでいえば食いしん坊イエロー役。時代劇だとやっぱり槍の使い手ですよね。

オリジナル版もぜひ観てみたいです。
 

2010年10月3日日曜日

共鳴/残響

雨の予報が外れて秋晴れの日曜日の夜、下北沢のleteさんへ。楽しみにしていたtriolaのワンマンライブ"Resonant"を鑑賞しました。

伝統的なロマの音楽を思わせる哀愁を帯びた旋律とゴリゴリとしたリフに近未来的なアナログ機器が発するオーガニックなノイズがせめぎ合う美しい音楽。古い木造家屋のような会場全体が共鳴して、あたかもジョセフ・コーネルの箱作品の内部に迷いこんだかのようでした。

十代の頃はパンクバンドでドラムを叩いていたという波多野敦子さんのヴァイオリンは完全なタテノリ。そこにクラシックの正確なタイム感を持つ手島絵里子さんのヴィオラが絡み、その僅かなズレが強力なグルーヴを生み出します。

その姿はまるで、繊細で自由奔放な妹(波多野さん)を見守る優雅で落ち着いた姉(手島さん)という、理想の姉妹像を見るよう。見て聞いて、幸せな気持ちになりました。

次のワンマンライブは12月8日水曜日に同じく下北沢leteで。その後、関西ツアーも計画中とのこと。もっと大勢の人に体験してもらいたい音楽だと思います。
 

2010年9月26日日曜日

アーリー・オータム

秋晴れの日曜日、JR横須賀線で東京駅から1時間、逗子駅で京急バスに乗り換えて15分。森戸神社の参道にあるcafe griotさんで開催されたフリースタイルのオープンマイクBOOKWORMに参加しました。

少し早く会場に着いたので、浜辺を散歩。以前このあたりに室矢憲治さんが住んでいたころ何度かお宅にお邪魔したり、海の家OASISでポエトリー・リーディングをさせてもらったりと懐かしいところ。1997~1998年ごろのお話です。

以前のBOOKWORMに関するエントリーでも、この会は不思議な符合が生れることがある、と書きましたが、今日は「リチャード・ブローティガン」「ジェームズ・ブラウン」。cafeの2階のくつろげるスペースの開け放った窓からは子どもたちの歓声と時折トンビの鳴き声が。

どのお話も面白く、興味深く聞けましたが、遠藤コージさんの久々の今月のボブ・ディラン「スペイン革のブーツ」、青柳拓次さんのお嬢さんが舞台に上がってきてしまう話などが特に印象に残りました。そして言葉だけでなく、音楽が聴けるのもこの会のステキなところ。今回はひさしぶりに聴いたポスポス大谷さんの喉歌、よかったです。

僕は、生前森戸に住んでいた詩人堀口大學(1892-1981)が訳したフランスの詩人ジュール・シュペルヴィエル(1884-1960)の「無神」という作品を紹介しました。犬を二匹連れて宇宙をさまよう人の詩です。

 

2010年9月20日月曜日

不機嫌顔 日本代表

夜に鳴く虫の声が聞こえてきます。まだ蒸し暑さが残る祝日の午後、海沿いの映画館で、呉美保監督の角川映画『オカンの嫁入り』を鑑賞。

映画全体としては少々残念な感じでした。京阪沿線の古い木造戸建賃貸に住む母娘の話で、宮崎あおい大竹しのぶの娘を演じています。

映画の四分の三は(時間的にもスクリーンに占める面積的にも)不機嫌な宮崎あおいのアップで、美少女のふくれっ面が大好き、っていう人は必見です。またこの役の衣装のテーマカラーが鮮やかなブルーみたいで、パーカー、マフラー、ジャージ、ジーンズ、バッグと、どのアイテムもとても似合っていてかわいい。流行るんじゃないでしょうか。主人公の衣装提供はたぶんGlobal Workだと思います。

主人公の月子は、冷蔵庫の紙パック牛乳をそのまんま飲んじゃうようなざっくりした女子、怒りながら大家さん宅の炬燵で食事するシーンの筑前煮や國村隼と中華料理屋で食べる炒飯の豪快ながっつきぶりにはかなりぐっとくるものが。映画に登場する食べ物全般美味しそうでした。

 

2010年9月11日土曜日

「オトエホン-東京編」ご来場御礼

昨日は、「オトエホン-東京編」@千駄木古書ほうろうへ御来場ありがとうございました。なんとも形容しがたい良い経験でした。僕の役割は印刷された文字を声に出して読むというだけのことなのですが、すばらしい共演者、客席の受容の空気、会場スタッフの気遣い、すべてが調和して3Dで立ち上がったような時間と空間だったと思います。

triolaさんの音楽が意図的な破調も含んで美しいこと。近い日程で二度目の共演ということもあって足田メロウさんの映像をしっかりと視界に入れることができ、キュートな中にも破壊と再生のプロセスを感じながら自分のパフォーマンスに反映させることができたこと。いろいろな要素がないまぜになって、夢のような75分間でした。

僕の新詩集『ユニバーサル・ボードウォーク』もたくさんの方々にお手に取っていただき、初回納品分は完売しました。ありがとうございます。『ユニバーサル・ボードウォーク』は古書ほうろうさんに追加納品する他、来週からは下北沢の書店フィクショネスでもご購入いただけるようになります。どうぞよろしくお願いします!

足田メロウさんの個展は外苑前のギャラリーneutron tokyoで明日9月12日まで開催されています。土日は作家本人在廊とのこと、どうぞメロウワールドをご堪能ください。

triolaさんは9月後半ライブが目白押しですが、東京だと10月3日(日)に下北沢leteでワンマンがあります。こちらもおすすめ。僕もお邪魔しようと思っています。
 

2010年9月4日土曜日

ハンマーフリューゲル

九月になっても暑い日が続いています。今日は『奏楽堂バロックシリーズvol.56』を聴きに行ってきました。

会場は上野公園の中にある旧東京音楽学校奏楽堂。1890年に建てられた日本最古の西洋音楽用コンサートホールは、2006年の朝ドラ『純情きらり』で桜子や達彦さんが通っていた校舎で、趣きのある木造建築です。

「今日も一曲めの前半、シの音が出なかったんですけれど、ヨーロッパでもオルガンという楽器はたいていどこか故障していて、その日の楽器のコンディションに演奏家が合わせて演奏を工夫するものなんです」という大塚さんの説明に客席は爆笑。でも、そういうものだと思ってしまえばかえって人間味があって面白いですよね。

初めて生演奏を聴いたフォルテピアノ(モーツァルトの時代に発明された初期のピアノ、別名ハンマーフリューゲル)の音色は、チェンバロともモダンピアノとも違い、典雅としか言いようのない繊細で美しいものでした。

演目では、J.S.バッハの息子たちの作品がよかったです。次男C.P.E.(カール・フィリップ・エマヌエル)バッハと末っ子J.C.(ヨハン・クリスチャン)バッハ。いずれもバロックの対位法を基礎に置きながら、後のロマン派にも通じる流麗な旋律を持つ音楽です。

約300席の木造のホールは満員。庶民的な観客席にリラックスさせられた一方、ホールは思ったより響き過ぎず、むしろタイトでコンテンポラリーな残響。また行ってみたくなりました。

大塚直哉(解説・オルガン・フォルテピアノ)、野口千代光(ヴァイオリン)

J.S.バッハ:ヴァイオリンとオルガンのためのソナタ ハ長調より 
J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 
C.P.E.バッハ:オルガンのためのソナタ 
C.P.E.バッハ:ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ ハ短調 
J.ショーベルト:ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ ニ短調 
J.C.バッハ:クラヴサンまたはピアノフォルテのためのソナタ イ長調
W.A.モーツァルト:ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ KV454 変ロ長調
 

2010年8月29日日曜日

トイレット

残暑の日曜日、用事は午前中の涼しいうちに済ませましょう。銀座テアトルシネマで荻上直子監督の映画『トイレット』の初回を鑑賞。

パニック障害でヒッキーの兄モーリー、アニヲタの弟レイ、大学で詩のクラスに通うパンクな妹リサ、そしてもたいまさこ演じるばーちゃん。ちょっとした謎解きとどんでん返し。観終わったあとに誰もが餃子を食べたくなることでしょう。

もたいさんてまだ57歳なんですね。映画のなかではどう見ても70代。おみごとです。セリフはふたつしかありませんが、表情と動きで演技しています。割り箸を袋から出し、割り、寿司を口に運ぶ。その一連の動作はまるで、一流の剣士のよう。スローでまったく無駄がなく、優雅ですらあります。

レイの同僚のインド人。ヲタの動きは万国共通ですか。名作『電車男』の山田孝之を彷彿とさせます。要所要所で登場するセンセーという名の猫が、美しく、気高く、愛らしいです。

 

2010年8月22日日曜日

オトエホン-東京編

昨日は neutron tokyo の足田メロウ展オープンニングパーティに大勢お運びくださいましてありがとうございました。充実したパフォーマンスを提供することができたと思います。

木村英一さんがびっくりするほど男前で、triolaのお二人も美しく、リハーサルからテンションが上がりました!

会場でもお知らせしましたが続編の開催が決定しました。残念ながら昨日ご都合の悪かった皆さんも是非どうぞ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
オトエホン-東京編
2010年9月10日(金)20:00開演
出演:足田メロウ(ライブペインティング)、triola(弦楽二重奏)、カワグチタケシ(朗読)
料金:1,000円
会場:古書ほうろう(東京都文京区千駄木3-25-5)   tel.03-3824-3388

会場の地図はこちら↓
http://www.yanesen.net/horo/about/
東京メトロ千代田線千駄木駅2番出口を地上に出てそのまま左に7~8分。
JR山手線日暮里駅からの道のりも楽しいです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

オトエホンはメロウ氏が主催して、京都で不定期開催しているイベント。昨日のパフォーマンスに作品数、上演時間を増やし、更にグレードアップした演目になると思います。

平日ですが、ゆっくりめの開演時刻ですので、お仕事帰りにも、海水浴帰りにも好適。お誘いあわせの上、ご来場ください!

足田メロウ展-mellow tone-は9月12日(日)まで neutron tokyo で開催されています。こちらも是非ご鑑賞ください!

 

2010年8月16日月曜日

サブタレニアン・ホームシック・ブルーズ

夜になっても暑さの勢いが衰えません。この感じ、前に経験したことがあると思ったら、一昨年のうだるような猛暑の京都の夜でした。

せめて涼しいところにということで、ユナイテッドシネマ豊洲のレイトショーで『借りぐらしのアリエッティ』を鑑賞しました。 美しい庭を持つ古い邸宅の床下に暮す小人と元気のない美少年のお話。正味90分弱で楚々とした味わいのある小品といっていいのではないかと思います。

アリエッティが髪を束ねているクリップは、人間サイズだと相当小ぶりのものですね。

僕が通っていた小学校は戦前に建てた古い木造校舎で、教室の木製椅子が大量に収納された地下室があり(実際には崖っぷちに建っていたので半地下)、小人が住んでいて、夜中に教室にいたずらをするという言い伝えがありました。アリエッティたちの3倍ぐらい、七人の小人サイズを当時は想像していました。
 

2010年8月7日土曜日

トップ・ボーイズ

カミングアウトしているゲイの劇団フライングステージの第35回公演「トップ・ボーイズ」を下北沢 OFF・OFFシアターにて鑑賞。敬愛するますだいっこうさんが、2007年の「サロン」以来3年ぶりに出演ということで、わくわくしながら18時半の開場時間直後に会場入りしました。

10年程前にフライングステージを観始めた頃、客席は9割がた男子。近年は女性のお客様も増えて半々ぐらいな感じでしたが、今日のソワレはひさしぶりに男子比率、同性カップル比率高く。それはそれでテンション上昇(笑)。

あらすじは劇団のサイトをご覧いただくとして、アラン・チューリング/大木健司役のますだいっこうさんの抑えた渋い芝居にヤラレました。そしてフレディ・マーキュリー役の加藤裕さんの立ち姿がツボ過ぎていちいち爆笑、ボヘミアン・ラプソディのリップシンクで最高潮に。本物のフレディも大好きです。オスカー・ワイルド役の松之木天辺さんルーファス・ウェインライトばりの美声で歌う「虹の彼方に」に感涙。

パーティに招かれた9人のゲイの偉人たちのうち4人がイギリス人でした(あとはアメリカ人、フランス人、イタリア人が各1人ずつ、日本人が2人)が、イギリスでは1967年まで同性愛は犯罪だったということもこのお芝居で知りました。

同性愛者であることの幸福と不自由、カミングアウトによって獲得する自由と差別、などなど。いろいろな相反する立場を複数の登場人物の台詞にちりばめた関根信一さんの脚本にはいつも、大笑いさせられながら、セクシャリティに関わらず人間が生きるということの本質的な意味を考えさせられます。

セクシャル・マイノリティなんていう言葉を僕も普段簡単に使ってしまうのですが、「マイノリティ=少数派」じゃなくて「多様性」って考えたほうがいいんじゃないかな、とか。

客席最後列に篠井英介さんがいらっしゃいましたが、オーラ消しまくりでした。ステキ。

2010年7月24日土曜日

足田メロウ展「mellow tone」

今日は新宿シアターサンモールで東京セレソンデラックス10周年記念公演「くちづけ」を観劇。障害者の自立というテーマに挑戦した力作で、 加藤貴子が難しい役柄を熱演しています。

出演イベントのお知らせです。京都在住の画家足田メロウ氏の個展が昨年に引き続き外苑前のギャラリー neutron tokyo で開催され、今年はオープニングパーティで詩の朗読をさせてもらうことになりました。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

足田メロウ展 / mellow tone
オープニング・スペシャル・パフォーマンス

2010年8月21日(土)19:00開演予定
出演:足田メロウ(ライブペインティング)、木村英一(ダンス)、triola(弦楽二重奏)、カワグチタケシ(朗読)
料金:無料
会場:ニュートロン東京(東京港区南青山2-17-14)
   tel.03-3402-3021 http://www.neutron-tokyo.com/     

東京メトロ銀座線外苑前駅下車徒歩8分。1b出口を出て青山通りを青山一丁目方面に直進、赤坂消防署入口信号を右折、赤坂消防署手前を再度右折した左側、三階建ての白いビル。

会場の地図はこちら ⇒ http://www.neutron-tokyo.com/access/

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

メロウさんは一昨年から僕の詩「Planetica(惑星儀)」をモチーフにした絵画作品パフォーマンスを制作されているのでずっとごいっしょさせていただいているような気分ですが、ライブで共演するのは5年前に京都三条御幸町のカフェ・アンデパンダンで開催された「オトエホン7」以来。木村英一さん、triolaさんとは今回はじめてで、とても楽しみです。

展覧会自体は9月12日(日)まで開催されています。メロウさんの作品を印刷物やウェブサイトでご覧いただいたことのある方も多いと思いますが、現物の色彩やタッチを是非生で鑑賞してもらいたいです。このエントリーの添付画像、DMハガキにもなっている「花を摘んだ」というアクリル画ですが、クリックすると大きく表示されるので、人物の足元を見てみてください。ね、チャーミングでしょ?

入場無料、予約不要ですので、夕涼みがてらふらりとお立ち寄りいただけたらと思います!

 

2010年7月11日日曜日

TOKYOポエケット終了

大勢の方にプリシラ・レーベルのブースを訪れていただきました。立ち読みしてくれた皆さん、朗読CDを試聴してくださった皆さん、会場で声を掛けていただいた皆さん、ありがとうございます。

井上久美さんの新作はもちろん、昨日急遽出品をお願いした小夜ちゃんの詩集「ひかりについて」も、たくさんの皆さんに手にとってもらえて、旧作含め思った以上に売上も伸びて、達成感のある一日でした。

いっしょにブースに入ってくれた井上さんの接客が素晴らしかった。ほぼ全員初対面だったと思うのですが、物怖じせずに笑顔で話しかける姿に感心しました。育ちの良さってこういうところに出るんだな、みんなに愛されて大きくなったんだな、と。

ゲストのおふたり、浦歌無子さん(美人)とジュテーム北村さん(革短パン)の朗読も超ハイクオリティでした。ひさしぶりに出展してよかったです。

この会を十年以上にわたって主催している川江一二三さん、ヤリタミサコさんに感謝とリスペクト。来年は自分の新作を持って行きます!
 

2010年7月10日土曜日

雨の匂い 虹の匂い vol.2

梅雨の合間の晴天の真夏日。中央線に乗って荻窪の名曲喫茶ミニヨンへ。短歌と詩の朗読会『雨の匂い 虹の匂い vol.2』を鑑賞しました。

歌人の伊津野重美さんプロデュースのこの会は、4年前に大塚の廃ビルの一室で第1回が開催されました。その伝説的な朗読イベントのまさかの続編ということで、いやがうえにも期待は高まります。

今回の出演者は、伊津野重美さんのほか、以前何度かご一緒させていただいたことのある飯田有子さんキキさん小夜ちゃん、福岡からいらした浦歌無子さんの5人。いずれも魅力ある表現者たちです。

会の全体を通して「戦闘美少女たちのその後」という印象を受けました。ストラグルで受けた傷や心の痛みを抱えたまま、平穏な日常に溶け込もうとする者、未だ迷い続ける者、バトルフィールドでの出来事を訥々と語り始めた者、静謐な祈りを捧げる者。ときどきフラッシュバックのように感情の高ぶりが表現されますが、すぐに静寂へと振り戻される。緊張感の途切れることのない約90分のプログラムでした。

すべての演目が終り、ステージに並んだ5人の表情がほどける瞬間にあらゆる感情が収斂されていたのだ、と帰りの地下鉄で一人になってから気づかされました。

会場の名曲喫茶ミニヨンは、渋谷のライオン、中野クラシック、阿佐ヶ谷ヴィオロンみたいな黴臭くて重厚な店を想像していたのですが、白を基調としたすっきりスタイリッシュな内装とサービスで、良い意味で裏切られました。

 

2010年7月4日日曜日

あお

蒸しますね。梅雨らしい梅雨。その合間を縫って、外苑前のタンバリン・ギャラリーへ。イシカワアユミ個展『あお』の最終日にお邪魔しました。

イシカワアユミさんの作品を初めて見たのは10年ぐらい前、ウェブに掲載されていた写真に一目惚れしました。多才な方で、写真だけでなくドローイング、木版画、インスタレーションといった美術作品のほか、文章も書いてリーディングも。どれもイシカワさんご本人の浮遊感漂うチャーミングなキャラクターを反映したものです。

今回の個展は村椿菜文さんの絵本の原画展ということで、淡い色彩のパステル画を中心とした平面作品。絵本に出てくる「あお」という名の猫が登場する作品群がギャラリーの真っ白な壁を飾っています。猫が一番可愛らしく見えるのは後姿だと常々思っているのですが、たぶんイシカワさんもそう考えているのでは。後姿の構図が多く、うれしかったです。

ギャラリーの奥の席で、永井宏さんたちがマンドリンやらバンジョーやらで盛り上がっていて、その賑わいも今回のカラフルな作風に合っていたと思います。

ギャラリーが建っているキラー通りは東京でも一二を争うハイブラウなストリートっていうことになっていますが、一本裏通りに入ると古い木造家屋が残っていたり、なかなか趣深いところ。ちょっと印象が変わりました。
 

2010年6月26日土曜日

裏蓋

「やってますよー」と一月半前にキキさんから聞いて、川村記念美術館にジョセフ・コーネル展を観に行ってきました。美術館のある千葉県佐倉市は二十歳まで暮したマイホームタウン、東京から快速電車で一時間、シャトルバスで田園地帯を20分揺られて行きます。

チャールズ・シミックの『コーネルの箱』によると、コーネルは絵も描けず、彫刻も作れず、美術教育も受けていません。でもそのコラージュ作品はどれもノスタルジックでロマンチック、多くのアーティストに愛されています。http://www.josephcornellbox.com/

今回の展示は、川村記念美術館の収蔵作品16点に高橋睦郎さんが詩を書いて、プラネタリウムを模した暗めの空間に、コーネル作品とともに浮かび上がらせるというもの。十数年前に同じ美術館で開催された回顧展で観た作品に再会したわけですが、あらためてその美しさが染みました。

ガラスを多く使用した展示スペースだったので、ずっと気になっていた箱作品の後側(裏蓋)を見ることのできる作品もいくつかあって、だいぶすっきり。

高橋睦郎さんは、作品毎に4~6行で、シンプルに正確に言葉を紡いでいます。ときどき付き過ぎるきらいがありますが、そんなところも含めて受注制作に力を発揮する、さすが21世紀の宮廷詩人(誉め言葉です!)。自己表現や内面から離れて丁寧に作品を作り上げる力は、当代の詩人では随一ではないかと常々思っています。

マーク・ロスコ、バーネット・ニューマンという常設展の二本柱も素晴らしく、アレクサンダー・カルダーの部屋、庭園の満開の睡蓮、白鳥が泳ぐ池、と見所たっぷりな川村記念美術館、オススメです!
 

2010年6月25日金曜日

第14回 TOKYO ポエケット IN 江戸博

雨季ですね。南半球は冬。ブブゼラの音も聴きなれてきました。

再来週末7月11日(日)に、両国の江戸東京博物館で開催される「第14回 TOKYO ポエケット」 にプリシラ・レーベルが3年ぶりに出展します。 僕は売り子として終日会場のブースにいますので、是非会いに来てください!

1999年に始まったTOKYOポエケットは、商業詩誌やインディーズ系同人誌を網羅した展示即売・交流会です。詩のコミケみたいなものを想像していただければと思います。プリシラ・レーベルは初回から2007年の第11回まで毎回参加していました。2年ほど間が空いてしまいましたが、今回新作を携えて復帰します。

最近はカワグチタケシのほぼソロ・プロジェクト化していたプリシラですが、今回の新作ではひさしぶりに新しい作家を紹介します。井上久美(いのうえひさみ)さんの『NEW YORK SKY』、ART STUDENT LEAGUE OF NEW YORKに留学した日々を、繊細な描線と色彩、瑞々しい文章で綴った滞在記。なるべく多くのみなさんに手にとってご覧いただきたいと思っています。

早い時間帯には作者本人もブースに登場します。その他、プリシラ・レーベルの旧譜、バックナンバーも充実のラインナップ。『TOY BOX 2010』もお求めいただけます。どうぞお楽しみに!

ポエケットでは毎回豪華なリーディング・ゲストをお招きしますが、今回はジュテーム北村さんと浦歌無子さん。こちらも楽しみです。それと、江戸博のミュージアムショップはアメイジングですよー。是非皆様のお越しをお待ちしています!

7月11日(日)13:30~売り切れまで。入場無料です。
 

2010年6月6日日曜日

TOYBOX2010御来場御礼

今日は「おも茶箱 Bilingual Poetry Collection『TOYBOX2010』完成記念朗読会」にご来場ありがとうございました。梅雨入り前のお天気で、明るい午後のひとときをみなさんと過ごすことができました。

企画から担当したかとうゆかさん、芦田みのりさんの当日の進行がとてもテキパキしていて気持ちよかったです。イダヅカマコトさんの新作、藤井わらびさんの作品を朗読した鈴川ゆかりさん、すてきでした。

マシュー・ジェームズ・フロメツキ氏に僕の詩の英訳を朗読してもらったのですが、書いた本人も空では読めない詩を暗唱してくれたのには感激しました。印欧語系ならではの抑揚で、原文よりずっとロマン主義的に聞こえたのが面白かったです。僕もできるだけ丁寧に彼の作品の邦訳を朗読したつもりですが、いかがでしたか?

客席の穏やかな受容の空気と、共演者のみなさんの真摯な姿勢に刺激を受けて、僕も自分の詩作や朗読を見つめ直す良い機会になりました。ありがとうございます!

会場で紹介できなかったアイルランド在住のアリソン・ニ・ヨーキーさんのゲール語の朗読動画はこちらで観ることができます。http://www.youtube.com/watch?v=ZzdLweyU6-M

気になる「軽食」は、生ハム、マグロと豆腐のカルパッチョ、フライドチキン、スパゲティ・ジェノベーゼ、と豪華メニュー。ごちそうさまでした!
 

2010年6月3日木曜日

春との旅

平日の昼間とはいえ、丸の内TOEIの客席平均年齢は推定65歳超。小林政広監督、仲代達矢主演のロードムービー『春との旅』を観てきました。

名作です。北海道の過疎地でふたりで暮らす足を悪くした元漁師の祖父とO脚の孫娘が、孫娘の失業をきっかけに、疎遠になっている祖父の兄姉弟を訪ねる旅に出る。現代のお話なのに、携帯電話は一度も出てきません。

人気のない田舎の駅のホームに夕方降り立ったときの、横から差す西日の光線の角度、忘れていましたが確かに経験したことがあります。

訪ねていく先々がちょい役含めてすべて名優です。シンプルに抑制された演出の中で、 大滝秀治、菅井きん、淡島千景、田中裕子、柄本明、美保純、香川照之、、と次々に繰り出されるいぶし銀の職人芸。豪華です。孫娘の春役の徳永えりはピチレモン出身。『フラガール』でも好演していました。

それから、東京メトロ丸の内線で池袋へ。梅舎茶館さんで開催中の『帰ってきた!妄想中華雑貨店~YASUMI屋さんの夏物の帽子とバックの展示会~』。YASUMI屋さんは、かつて大学時代に現代詩研究会で同期だった帽子作家、原田紀先生のソロ・プロジェクト。あいかわらずチャーミングでした。

2010年5月30日日曜日

主演女優

もうすぐ六月だというのに肌寒いですね。ヒューマントラストシネマ有楽町(シネカノンから改名したんですね)で、『パーマネント野ばら』を鑑賞。

昨年同じ劇場で、同じく西原理恵子原作の『女の子ものがたり』を観て、超ブルージィな気分になったのがよぎりました。。今回も貧困と友情がテーマなのは同じで、主演の菅野美穂と幼馴染役の小池栄子が左利き。でも前回ほどブルージィにならなかったのは、夏木マリをはじめ脇役を名優が固めていたのと、サイドストーリーがありえない展開で笑えたから。

総じて、主演女優である菅野美穂を鑑賞するための映画だと思います。監督が菅野さんを大好きなのがひしひしと伝わってきます。こういう主演女優のための映画って、悪くないと思うんですよね。吉永小百合さんとか、昔はもっと多かったんじゃないでしょうか。

あと、菅野さんの衣装がかわいかった。音楽もよかったです。

2010年5月22日土曜日

おも茶箱

あっという間に5月も後半。

←再来週末にこのイベントで朗読します。
ご来場お待ちしています!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おも茶箱 Bilingual Poetry Collection『TOYBOX2010』完成記念朗読会

2010年6月6日(日)14:00開演
出演:かとうゆか、芦田みのり、マシュー・ジェームズ・フロメツキ、イダヅカマコト、カワグチタケシ、他
料金:1,500円(軽食付)
会場:カフェクラブ石橋亭(杉並区天沼12-5-102)tel.03-3391-6580
http://www.ogikubo.org/S35689.html

JR中央線荻窪駅下車徒歩8分、北口を出て青梅街道を向い側に渡り、左(北西)方向へ直進、四面道交差点そば。
フライヤーはこちら ⇒ http://oeo.la/Vw4s8
予約はこちら ⇒ yukato+omocha@auone.jp
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『TOY BOX 2010』に掲載している詩を、詩人による朗読でお届けします。

芦田みのりさんが編集した『TOY BOX 2010』は、日英バイリンガルコンピレーション詩集。

以下9名の詩人の執筆・翻訳によります。
Mathew James Chromecki / マシュー・ジェームズ・フロメツキ、ASHIDA Minori / 芦田みのり、KAWAGUCHI Takeshi / カワグチタケシ、FUJII Warabi / 藤井わらび、 Amy Hildreth / エイミー・ヒルドレス、Courtney Sato / コートニー・サトー、Idadsukamakoto /イダヅカマコト、Alison Nì Dhorchaidhe / アリソン・ニ・ヨーキー、KATO Yuka / かとうゆか

日英の朗読と合わせて、国外在住の詩人が動画で登場予定。めずらしいゲール語の朗読が聴けるかも。

石橋亭さんは、定期的にライブを開催しているピアノのある洋食屋さん。「軽食付」の中身も楽しみです。

2010年5月3日月曜日

見切れています。

憲法記念の日、『広重「名所江戸百景」の世界』展を見に、ラフォーレ原宿の真裏にある太田記念美術館へ。玄関で靴を脱いで上がる、浮世絵専門の美術館です。

昨年、詩の教室でポーランドのノーベル賞詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカを紹介したのですが、彼女の詩「橋の上の人たち」が、歌川広重の「名所江戸百景」のなかの一枚「大はしあたけの夕立」を題材にしていたところから興味を持ちました。ワルシャワ経由で江戸を知る、みたいな。で、今回展覧会が開かれているというので、その作品が展示される後期の入れ替えに合わせて出かけました。

すごいものを見ました。いまで言えばA4サイズ程の作品が五十数枚。季節ごとに並べて展示されています。何がすごいって、構図がすごいです。上の画像は、三月に「同行二人」を開催させてもらったそら庵さんに行く途中に渡った「深川万年橋」(今は鉄骨の橋)なのですが、橋の上に置かれた手桶の持ち手に愛玩用商品の亀がぶら下げられていて、その向うに万年橋の欄干、さらに先には富士山が見えます。手桶も見切れていれば、亀も、欄干も見切れているという。

見切れているからこそ逆に、風景はA4サイズを大きくはみ出し、無限の広がりを感じさせます。1850年代の江戸ですから、カメラを見たことなどないはず、なのにこの写真的発想はどこから来たのでしょう。

この構図を考えたのは歌川広重ですが、それを支え作品化した版元、彫師、摺師という職人たちの名前は残っていません。残ってはいませんが、その確かな技術が作品を後世に残してくれたおかげで、僕たちは素晴らしい芸術を享受することができるのです。

そして、夕方から丸の内に移動して、、『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010』2日め。今日は公演No.215、Aホールで、モーツァルトのレクイエムを聴きました。指揮者は大ベテランのミシェル・コルボ

39歳で亡くなったショパンの遺言により葬儀で演奏されたというモーツァルトのレクイエムは、昨日とは対照的に濃密で彫りの深い演奏でした。ショパンもポーランド人。なんか今日はそういう日みたいです。
 

2010年5月2日日曜日

1955年生まれ

ようやく季節が暦に追いついてきました。初夏の午前中、松屋銀座で開催中の『ゴーゴーミッフィー展』へ。

百貨店の催事場なので小ぢんまりしてはいますが、充実した展示に満足しました。ミッフィーの原画の、線や色彩をどんどん削ぎ落としていく製作過程。眼の位置を0コンマ数ミリずらすだけで、視線の向きを変える技術。本物はやはりすごいです。

作者のディック・ブルーナ氏は絵本作家になる前に、父親の出版社で出していたブラックベア・シリーズというペーパーバックの装丁を2000冊以上手がけたそう。「メグレ警部」シリーズのオランダ語訳など、この現物も美しく、とても刺戟を受けました。いまちょうどプリシラ・レーベルの次回作として、井上久美さん作のドローイングと写真入り旅行記の装丁作業中なもので(こちらもお楽しみに!)。

若くみえますが、うさこちゃんは1955年生まれの55歳。そのお誕生日をみんなでお祝いしましょうということで、たくさんの日本人アーティスト/クリエイターのオマージュ作品が展示されていました。和田誠さんの作品が原画のフォルムを活かしながら、和田さんの色彩になっていて、印象に残りました。

午後は東京国際フォーラムに移動して、『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010』。 公演No.143、Cホールで、フンメルのトランペット協奏曲とモーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」を聴きました。今年のテーマは「ショパンの宇宙」なのですが、天邪鬼ですみません。。

ウィルソン・ヘルマント指揮、パリ室内管弦楽団、ソリストはフランス人のロマン・ルルーという巨漢。若いアジア系アメリカ人の指揮するモーツァルトは、テキパキとしていながら細部にまで神経の行き届いた、小気味良い演奏でした。
 

2010年4月17日土曜日

わたしたちはこう言って、

雪が止んですっかり晴れ上がった午後、都営地下鉄三田線に乗って白山まで。JAZZ喫茶「映画館」で、とものさんキキさん小夜ちゃんという長女三人が出演する朗読会「3sisters(さんしまい)」を鑑賞。

小夜ちゃんが手を滑らせて、小さなガラスの食器を落しそうになり、「きゃあ!」と素に戻った瞬間、張り詰めた空気がほぐれて、そこからは柔かな時間が会場全体を覆っていきました。

松浦寿輝を朗読したとものさん、アフリカから帰国してから書いた小夜ちゃんの新作、それぞれ力演でしたが特に、キキさんの美しさが際立っていました。作品も声もその佇まいも。W.D.スノッドグラスの作品に出てくる「ペチュニア」や「ヘイディン・アディン・アディン」みたいな音がキキさんの声で再生される瞬間に立ち会うことができました。

自作詩は、深い青空をバックにしたキリンがプリントされたクリアファイルを持って朗読していて、客席からはキリンが横になって見えたのですが、キキさんの美しさはキリンの美しさだなあ、と思いました。以前Poetry Japanさんで紹介させてもらった大好きな無題の詩が聴けたのもうれしかったです。

会場になったJAZZ喫茶映画館さんは、6月7日(月)にNHK教育テレビの「極める!」で紹介されるそうです。忘れないようにメモ。
 

2010年4月4日日曜日

いま来た角に

花曇りの日曜日、代々木上原まで。Coruri / Cafe 家で開催されたBOOKWORMに参加しました。 BOOKWORMは1998年3月に始まったフリースタイルのオープンマイクです。

多くの人がマイクの前で話をするこの集まりにはなぜか、いつも偶然の符合が生まれ、異なる声を縫いとめていくような瞬間があって、それがとても好きです。今回でいえば「ガットギター」「ボブ・ディラン」「谷川俊太郎」「スイーツ」といったキーワードが複数の出演者の間をつないで流れました。

会場のコルリさんは、ダブル・フェイマスのサックス奏者でBOOKWORMのスタッフでもある藤田文吾さんご夫妻が昨年秋にオープンしたカレー喫茶。屋上のある素敵なお店です。

いろいろな声を聴くことができて幸福な三時間半でした。僕は、宮澤賢治の『春と修羅 第二集』から「いま来た角に」の先駆形A(水源手記)、先駆形B、最終稿の3バージョンを紹介しました。

BOOKWORM12周年おめでとうございます。この風通しの良い集まりが、無理せず、自由に、長く続くことを願います!
 

2010年3月22日月曜日

失った夢探しに行こう

穏やかな晴天の振替休日、北浦和まで。フリースクール彩星学舎の創設10周年&卒業公演『 の、はじまり』を鑑賞しました。駅を降りるとそこは赤いフラッグがはためく浦和レッズの街。アウェーの国道をのどかに東武バスに揺られ会場へ。

この公演は、宮澤賢治の童話「鹿踊りのはじまり」を、賢治の他作品や賢治以外のテクストとともに再構成した朗読劇です。出だしから「風の又三郎」の冒頭のリフレインが連呼され、ゲストミュージシャンの演奏をはさみながら、あれよあれよというまに2時間のプログラムが終わりました。

微細な感情表現はあえて視野に入れず、テクニックやスキルではなく、若さ溢れるひたすらハイテンションなユニゾンで、ぐいぐい押しまくるパンキッシュなパフォーマンスは、まさに初期衝動。そして純粋な初期衝動がエンターティンメントに転換する瞬間。理屈抜きで楽しめました。

卒業公演なので、最後に本物の卒業証書授与の場面がありました。大学を卒業して20年以上経ち、子供もいませんので、卒業式に出席する機会がこんなかたちで巡ってくるとは思いませんでした。

でも日本人特有なのでしょうか、惜別の気持ちを味わうのって悪くないな、と。こういう開かれた卒業式が増えて、ショービズになりうるっていうのもアリかもしれない。それが生き辛さを抱えたキッズたちのモチベーションになるとしたら、むしろ良い方向なのではないか、と考えさせられました。

出演者でもあり、この公演を紹介してくださった小林安寿美さん、どうもありがとうございます!
 

2010年3月21日日曜日

アニバーサリー

下北沢の書店"ficciones"で毎月第三日曜日に開催している「詩の教室」が今日で10周年を迎えました。なかなかの長寿ワークショップだと思います。10年間ずっと、晴れの日も雨の日も講師を務めてきましたが、開催できなかったのは確か、最小催行人員割れによる流会を除けば、大型台風に見舞われた一回だけ。参加者の皆さんと藤谷さんのおかげでここまで続けてこられました。どうもありがとうございます。そして今後ともよろしくお願いします。

10年経てばいろいろなことが変わるもので、詩を取り巻く状況も変われば、下北沢の街並みも変わりました。当たり前ですが、20代だった方は30代になり、30代だった僕も40代になり。フィクショネスの店主藤谷治さんは三島由紀夫賞、本屋大賞候補の小説家になりました。

さて、「同行二人」でも紹介させていただきましたが、4月17日(土)に「3sisters(さんしまい)」という朗読会が開催されます。出演者三人が全員長女というこのイベントをとても楽しみにしています! 会場は白山にある「映画館」という名のジャズ喫茶。いつもお世話になっている、大好きなお店です。

2010年3月14日日曜日

御来場御礼

「同行二人 Dogyo-Ninin A POETRY READING SHOWCASE」終了しました。どうもありがとうございます。大盛況で、急遽パイプ椅子を追加しましたが、お客様には窮屈な思いをさせてしまったかもしれません。

共演した3人のパフォーマンスがとてもすばらしかったです。特にギターの松浦年洋さん。打ち上げで酔っ払った姿と、ステージ上のクールな佇まいとのギャップがとてつもなくチャーミングでした。

お天気も良く、隅田川もなみなみと流れ、春の午後に出発した僕らの旅はこれからどこに向かうのでしょう。お楽しみに!

2010年2月11日木曜日

街の猫 いつもの道

小雨降る建国記念の日のお昼前、銀座7丁目のギャラリー、ボザール・ミューで開催中のイラストレーター佐久間真人さんの個展『街の猫 いつもの道』を観に行きました。

ちょうど会場に作者ご本人がいらして、ひとつひとつの作品についてお話をしてくださいました。

佐久間さんの作品は、例えば、同じ風景の昼と夜を描いた連作があるのですが、昼間戸口の前で昼寝していた猫が、夜景では柱の影に潜んでネズミを狙っている、といったように、細部に本当に丁寧な気づかいがあって、いくら見ていても見飽きるということがありません。 作者の中で個々の作品の持つストーリーが時間の流れとして存在しているからだと思います。

佐久間さんは書籍の装丁画も多く手がけていらっしゃいます。それぞれの本の内容に沿った細かいこだわりがあって、たぶんほとんどの読者は見過ごしてしまうところだと思いますが、それらの原画を前に作者本人に解説をしてもらえるのは、なんと贅沢なことでしょう。

最近作は、伊坂幸太郎さん他5人の作家のオムニバスミステリ『蝦蟇倉市事件1』だそうです。

会期は2月14日(日)まで。猫好き、メカ好き、鉄道好き、ミステリ好き、昭和な街並みが好き、いずれかに当てはまる方は必見です!

2010年2月7日日曜日

同行二人 A POETRY READING SHOWCASE

ありそうでなかった組み合わせ。同世代の同業者(詩人)としていつも気になり、刺戟を受けている存在である村田活彦さんと、はじめての朗読二人会を開催します。

村田さんが永代、僕は豊洲と、ふたりとも江東区在住なので、じゃあ会場も江東区でってことで、昨年三月にもイェイツのイベントでお世話になった清澄白河のそら庵さんです。

そら庵さんは、古い印刷工場を改装したカフェで、壁に染み付いたインクの匂いが妙に落ち着くステキなお店。例の回転する芭蕉像のとこです。道がちょっとわかりづらいので、ウェブで地図を調べてきてくださいね。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同行二人 Dogyo-Ninin
A POETRY READING SHOWCASE

2010年3月13日(土)14:30開場 15:00開演
出演:カワグチタケシ、村田活彦、松浦年洋(g)、中村“ルイーザ”真美(per)
料金:700円(ワンドリンク別)
会場:そら庵(東京都江東区常盤1-1-1)tel. 050-3414-7591     
   http://www.sora-an.info/ sora_an_111@yahoo.co.jp
   
会場の地図はこちら↓
http://www.sora-an.info/access.html
東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A1出口徒歩7分
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

今回フライヤーのデザインも僕が担当させてもらいました。蕪村画の「奥の細道」をサンプリング。芭蕉と曾良にならって、早春の午後に。みなさまも、隅田川沿いのボードウォークをお散歩がてら、是非ご来場ください!

2010年2月6日土曜日

おとうと

毎日寒いですね。ユナイテッドシネマ豊洲で『おとうと』を観ました。大田区にある希望ヶ丘商店街の小さな薬局を舞台にしたお話です。 吉永小百合の娘役の蒼井優目線で物語が進みます。

山田洋次監督作品をいつもテレビで観ていて、くぐもった色調の画面に古臭さを感じていたのですが、劇場で観ると実にしっくり来るものなんですね。

映画自体はヨウジ的というよりも、台詞やフレームワークは小津映画のようでした。松竹の伝統芸なのかな。キムラ緑子のストッキングのかかとがほつれているところ、吉永小百合が大阪に向かうとき新幹線の通路側の席に座っているところ、などなどたくさん細かい演出があって、丁寧に作られています。

脇役だと、ホスピスのスタッフを演じた石田ゆり子がよかったです。年を重ねるごとにいい役者さんになっていくと思います。

テレビドラマの『ありふれた奇蹟』でも思いましたが、加瀬亮は作業着が似合います。あと、アイリッシュトラッドとの親和性が高いみたい。

2010年1月17日日曜日

スリーピング・ビューティ

お天気ですが、気温が上がらない土曜日。Bunkamuraオーチャードホールでレニングラード国立バレエの「眠りの森の美女」を観ました。ゴージャスな舞台装置で生オケをバックに訓練されたダンサーたちが繰り広げる豪華絵巻。

これでもかというぐらい次々に繰り出されるチャイコフスキーの甘美な旋律で、上演時間の三時間半はあっという間に過ぎていきます。

優雅に見えて、実は強靭なフィジカルに裏打ちされた完璧なボディバランスが求められるバレエ・ダンサーたちは、アーティストというより完全にアスリート。ただそのトレーニングは勝敗や記録ではなく、ひたすら美のためだけに奉仕されるという。堪能しました。

ところで、レニングラードっていう地名、いま使ってませんよね。サンクトペテルブルクじゃないかと。。

そんなわけで、2010年もよろしくお願いします!