2018年7月22日日曜日

BOOKWORM 7/22 at TOKYO CANAL LINKS

連日の猛暑日。東京メトロ有楽町線と東京臨海高速鉄道りんかい線を乗り継いで。天王洲キャナルイーストTMMT(天王洲マルシェマーケット東京)にて開催されたBOOKWORMに出演しました。

20年続くこの言葉のイベントに原宿で隔月開催されていた初期の頃からずっと参加しています。「人は自分の好きなものについて語るとき、とても上手く語ることができる」というミヒャエル・エンデの言葉をコンセプトとし、朗読を聴かせることよりも、日々感じることやストリートワイズの提供、共有を重んじる空気があります。

今日はオープンマイク参加3人を含む、計18名がマイクの前に立ち、あるいは座り、各々の声と語り口で好きなこと、気になること、伝えたいことを会場に集まった人たち、通りすがりの人たちに手渡しました。

僕が一番印象に残ったのは泡之音fat freeミツハシコウイチさん。横須賀の街の歴史と今の眺望について、ユーモアを交えながら真摯に語って聴かせてくれました。まちの保育園の根岸拓哉さんが紹介した子供の作ったシュールなかるた(ダラス、君はなぜダラスetc.)も最高。ダンサー藤平真梨さんの即興ダンスアンサンブルもキュートで素敵でした。

顔馴染みのメンバーたち、遠藤コージさんのブルージィな夜のうた、坂井あおさんの形而上学的集合的無意識の自作詩「不自由」、板井龍くんレイモンド・カーヴァーぼくの船」、アライジュンくんの沢山の同じフレーズを二度反復する詩、主催・MC山﨑円城さん(画像)によるD.H.ロレンスのコラージュカバー。もうひとりのMCtotoさんが「思い出してごらん」というワンフレーズから紡ぎ出したフリースタイルは声もフローも描写される情景も意味も心地良い。

TOKYO CANAL LINKSは、運河によって東京の歴史や文化がつながり、"東京"が国際的な"TOKYO"へとつながる架け橋となることを目指すアートプロジェクト。それにちなんで僕は矢島翠著『ヴェネツィア暮らし』(平凡社ライブラリー)、タニア・クラスニアンスキ著『主治医だけが知る権力者』(原書房)の2冊の紹介と運河を描いた自作詩「Universal Boardwalk」を朗読しました。

聴いてくれたみなさん、会いにきてくれた友人たち、今回お声掛けくださった円城さん、ありがとうございました。また遊びに行きます。

 

2018年7月14日土曜日

フィクショネス詩の教室 @tag cafe 2018

猛暑日。若く行き先の見えない情熱に溢れた下北沢の路地も日が陰るとすこしだけ涼しくなります。今年もフィクショネス詩の教室 @tag cafe が開催されました。

2014年7月に閉店した下北沢の伝説的新刊書店フィクショネス。詩の教室が始まった2000年には普通に店主だった藤谷治氏はいまや文芸誌の表紙に名前を見ない月は無いほどの人気小説家です。

14年半続いた詩の教室の特に後半の数年熱心に通ってくれた杵渕里果さんが毎年7月にこの会を企画してくださいます。いつもありがとうございます。

究極Q太郎「朝の夢」「石神井池のほとり」
小1男子(堺市)「はっとり」
建畠哲中腰の女
蜂飼耳「沼」
藤本徹「無題(口の中で~)」
最果タヒ移住者
芦田みのり「扉」
清水あすか「夏を口に入れる。」
A.A.ミルン「頭のわるいクマのうたえる」(石井桃子訳)
    〃  「頭のわるい混乱(ぼく)のうたえる ―くるくるまわれる―」(内野里美訳)

以上11篇の詩作品を参加者のみなさんが紹介し、お互いに共有しました。知らなかった作者や作品との出会い、思いもよらない新鮮な解釈。おかげさまで刺激的で楽しい時間を過ごすことができました。詩作も読書も基本的な孤独な行為だと思います。でも詩の読み方に唯一の正解は無い。いくつもの正解があって、それぞれが異なる光を放っているのです。そんな楽しみ方があってもいいですよね。

しばらく関西で仕事をしていて10年ぶりに参加してくれた方がいたのもうれしかった。それでも一瞬で時間が巻き戻される。あの14年半は僕の年齢でいうと34~49歳。遅い青春だったのかもしれません。

 

2018年7月7日土曜日

女と男の観覧車

七夕。ユナイテッドシネマ豊洲で、ウディ・アレン監督作品『女と男の観覧車』を観ました。

予告編が終わると、レコード盤に針を落とす音。The Mills Brothers の "Coney Island Washboard" のノスタルジックなハーモニーに共に映画が始まります。 

米国ニューヨーク市ブルックリン区コニ―アイランドのペニーアーケード。物語の舞台である1950年代でも既に寂れかけている。日本に置き換えれば、ロケーションとしてはお台場、雰囲気は熱海といったところでしょうか。

主人公ジニー(ケイト・ウィンスレット)は遊園地内のレストランのウェイトレス。劇中で40歳の誕生日を迎える偏頭痛持ち。回転木馬担当の夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)と放火癖のある小学生の連れ子リッチー(ジャック・ゴア)と見世物小屋をリフォームした園内施設で暮らす。ギャングスタと駈け落ちしたハンプティの実娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が元夫の仲間の刺客に追われ5年ぶりに帰宅した。

狂言回し役のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)がカメラ目線で客席に語りかけるのはウディ・アレン映画では常套手段だがやはり笑ってしまう。グリニッジ・ヴィレッジに下宿する劇作家志望の大学生。「生まれながらの詩人(poet by nature)」で「ロマンチック過ぎることが欠点(I fall in love too easily)」と自称する。他人事とは思えません。ナンパの小道具がアーネスト・ジョーンズの『ハムレットとオイディプス』、誕生日プレゼントが『ユージン・オニール戯曲集』とか。

ミッキーが狂言回しでありながら問題の中心にいることが映画に歪みを与えてしまっています。また、かなり舞台演劇寄りの脚本演出のため、感情表現や発声にやや過剰なところがありますが、俳優たちの熱演と懐古的な画面色調で愛すべき作品に仕上げたアレン監督の剛腕は流石。

原題は "Wonder Wheel" コニ―アイランドのDeno's Parkにいまも実在するちょっと変わった観覧車。変則的なゴンドラの動きが登場人物たちの人生を象徴しています。

  

2018年7月1日日曜日

柳沢ノラバー1周年

梅雨明けして最初の日曜日。西武柳沢まで。ノラバーの1周年をお祝いしに行ってきました。

リスペクトする同学年のミュージシャン、ノラオンナさんが長年暮した阿佐ヶ谷から生活拠点ごと西東京市保谷(最寄駅は西武柳沢)に移し、ご自身のお店をオープンしたのが昨年7月。銀座阿佐ヶ谷から続く「日曜生うたコンサート」に木曜のライブとトークショー『わたしの好きをおはなしします』が加わって、午後の喫茶営業(不定期)や平日モーニングも始まりました。

この1年で出演2回、観客として3回、サブメッコ展で喫茶ノラバーにもお邪魔しているので、箱単位で行ったら一番お世話になっているかもしれません。

普段のライブは11名限定ですが、この日はお祝いということで無制限。ノラさんの美味しい手料理もビュッフェ形式の食べ放題。もちろんハイボールも飲み放題。細長いお店のカウンターの内も外も20人以上のお客様がぎゅう詰めです。

ライブは港ハイライトノラオンナさん(作詞作曲/ Vo/Ukulele)、柿澤龍介さん(Dr/Per)、藤原マヒトさん(Ba/Key)の3人組音楽ユニット。元々男女デュオの5人編成でスタートしているのと、過去に観たライブではゲストミュージシャンが入ることがほとんどだったので、オリジナルメンバー3人だけの演奏を聴くのは実は初めてでした。

オープニングは "Tristeza"。4月のノラオンナ52ミーティングのアンコール曲で、ノラさんの音楽的キャリアの流れを大きくつなぎ、『なんとかロマンチック』『抱かれたい女』2枚のアルバム収録曲を中心にラストの「こくはく」「流れ星」のメドレーまで全14曲をたっぷり聴かせます。

スターパインズカフェではシアトリカルでゴージャスなショータイムを、MANDA-LA2だとハードエッジなロックンロール、ムリウイはフォーマルなパーティバンド。確固とした音楽の軸を持っていながら、否持っているからこそ、港ハイライトのライブの印象は会場によって大きく異なります。ノラバーの港ハイライトはチャーミングな大人の遊び心を感じました。

演奏家もお客様もこれから出演する何人かのミュージシャンも、集まったみんながこの夜とノラバーに感謝と祝福をしています。自らの音楽活動と並行してお店を続けることに苦労や葛藤もあると思いますが、是非末永く、と願います。