2015年11月29日日曜日

ギャラクシー街道

ユナイテッドシネマ豊洲三谷幸喜監督作品『ギャラクシー街道』を観ました。なんとも評し難い映画です。ちょいちょい笑えるシーンがあって退屈しないし、三谷映画にしてはエンディングもくどくない。だからなのかなんなのか、いつもの「はー、映画観た!」っていう感じがしないのだ。

舞台は宇宙。ルート24666、通称ギャラクシー街道。完成から150年が経ってだいぶ寂れている。街道沿いのハンバーガーチェーン「サンサン」コスモ店の店長ノア(香取慎吾)と妻で店員のノエ(綾瀬はるか)。地球行のシャトルが出発するまでの1時間の物語。

「宇宙で駄目だったやつがどこ行ったって上手くいくわけないじゃん」「私たちの常識的なことが通用しないのが宇宙で暮らすときの条件でしょ?」。ハンバーガーショップを通過する異星人たちの群像劇であり、複数の小さなエピソードが連続的、重層的に進行するのですが、エンディングに向かって収斂するタイプのドラマをあえて避けているかのように思えます。

店のインテリアはミッドセンチュリー。スーツ姿で東芝ルポみたいな旧式のワープロに報告書を入力している国交省官僚で、最も常識的人物に見えるハシモト(段田安則)が2Dの幻覚を呼ぶ力を持っている。ホログラムの堂本博士(西田敏行)は親身な相談相手かと思いきや、プリセットされた好みの回答をボタンで選んで言わせているだけ、だったり。店を一歩出ればそこは真空/無重力の宇宙空間。その閉塞感。

「長い年月を経てギャラクシー街道が一つの生命体として意志を持ってきた」。

スペース警備隊マンモ隊員を演じた秋元才加が、華やかさと演劇的身体能力の高さで鮮やかな印象を残します。あと、優香さんは素晴らしく良い具合に年令を重ねていると感じました。かわいいおばあちゃんへの道は約束されたも同然です。

2015年11月23日月曜日

Bela Muziko! vol.5 mayuluca×池永萌 「朝の月」

高円寺Amleteronで開催されたライブ Bela Muziko! vol.5 mayuluca×池永萌「朝の月」に行きました。

ループマシンや小さな鳴り物を使ったフォークトロニカ的アプローチを経て、最近はシンプルなギター弾き語りが好きだというmayulucaさんは、この日もアサノラと同じく小ぶりなボディのTAKAMINE BRUNO F-150を使用。1曲目「出発」から出発しました。

曲間の無音を壁時計のチクタク鳴る音と上階のカフェの足音、前を通りを走る自転車のベルや原付のブレーキ音が繫いでいきます。mayulucaさんの平熱の音楽には生活音が良く馴染む。針の穴に糸を通すように正確で張りつめた音楽なのに、不思議と風通しが良いからだと思います。

池永萌さんの朗読は、本棚に陳列された古書に挟まれたテキストを取り出して読むという趣向。テキストのありかはランダムなので、その古書を探す時間が作品と作品のあいだにたっぷりとした間を添える。その間が朗読を聴く我々の意識をリセットし、次の詩作品の世界へ上手に誘導します。

その間を埋めたり埋めなかったりするmayulucaさんのギターの分散和音。そして萌さんの小さな声で紡がれる決意と確信に満ちた言葉。「猫のようになった私の耳に/静かな場所なんてなくて//私は朝の月にそっと小さく手を振って/またね、と言って歩き出した」と歌うふたりの共作「朝の月」の演奏も素晴らしかったです。

朗読ってこういうことだよな、と思いました。聴く環境を丁寧に整え、真摯に声を発すれば、力で圧倒するようなことをしなくても、言葉はしっかり届くもの。静けさに耳を澄ます、という愉悦。贅沢で豊かな時間がそこには流れていました。

Amleteron(アムレテロン)とはエスペラント語で「恋文」の意。高円寺北口の裏通りにある古本と雑貨の小さなお店です。ただ可愛らしいだけではなく、『吉岡実詩集』(1967年思潮社版ハードカバー)、田村隆一詩と批評』、富岡多恵子厭芸術浮世草子』が隣り合って並ぶ棚作りが実に硬派で好感度大。中古LP盤も大変充実しています。

 

2015年11月21日土曜日

青い瞳

リスペクトするミュージシャン/エンターテイナーであり、最近ではPoemusica Vol.37で共演したエミ・エレオノーラさんにお声掛けいただき、渋谷東急Bunkamuraシアターコクーン岩松了脚本演出の舞台『青い瞳』を観賞しました。

戦争が終わって1年半。焼野原を見下ろす高台の街に戻った復員兵ツトム(中村獅童)は「ふと気づくと誰かのあとを歩いている」ような無為な日々を送っている。

「先に感情があるんじゃなくて、何かがあるから感情が動くんでしょ。その何かは大事なものだと思うの」。過干渉な母親(伊藤蘭)は、小学生時代のツトムを薫陶したタカシマ(勝村政信)を探し出して、かつての姿を取り戻させようとする。

「いま必要なのは言葉なの。ミチル、それはただの名前」「私たちが楽しかった時間のことを話して。それが始まりのはずでしょう?」。妹ミチル(前田敦子)と地下酒場ブランコにたむろする半グレの青年サム(上田竜也)は恋人同士だがギクシャクしている。そして起こるべくして起こった抗争に巻き込まれていく。

舞台は携帯電話も液晶テレビもある現代もしくは近未来。つまり我々に今後起こりうる事態を描いている。「喜ぶでもない悲しむでもない青い瞳」というのはツトムが幼少期のミチルを形容した言葉ですが、感情を失ったような登場人物たち全体を象徴しています。その中で感情を顕わにするサムは戦場を経験していない。「悲しい、悲しい、悲しい、みんなそこに行きたがっている。みんなそこが好きだから」と言う。しかし戦場を経験していないからといって戦争を経験していないわけではない。

もうひとりの感情的なキャラクターである伊藤蘭が演じる母親は精神に変調をきたしているように見える。喜怒哀楽を表さないツトムは実は既に戦死しており、母親の妄想のなかでだけに生きているのではないでしょうか。周囲もそれに合わせているだけで。

声を荒げても軽快にステップを踏んでもどこかアンドロイドめいた前田敦子。若く溌剌と生きて動いているのに死んでる感がすごい。AKB48在籍時から一貫するその稀有な存在に多くの演出家や映画監督が惹きつけられる理由が、生の舞台を観るとよくわかります。

対照的に生命を感じさせるのが抜群の間で客席を沸かせる勝村政信。「強くなってほしい、それはこの世界を戦場と考えているからです」。舞台に登場して何か一言発するだけで胡散臭くて可笑しい。が、そこに演出家が真実のメッセージを潜ませていることが伝わってきます。

エミさんは地下酒場のピアノ弾きというハマり役。出演時間こそ短いですが、濃厚な場末感を醸し、またカタストロフィの端緒を開く大事な役回りで印象に残る。シャンソン風のピアノに乗せて「気をつけなさい。本当は愛ほど目立つものはない」と歌います。

なぜ戦争は起こってしまうのか。戦争が終わってもまた争いは起こるのだろうか。大きなものでも、小さなものでも、既得権を手放す決意をした先に見えてくるものがあるのかもしれないな、と思いました。

 

2015年11月19日木曜日

Poemusica Vol.44

ボジョレーヌーヴォー解禁の11月第三木曜日は、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて Poemusica Vol.44でした。

たけだあすかさん(4月のVol.39のときはaccaさんでした)。大阪から新しいCDを持って歌いに来てくれました。小柄で人懐こいえくぼと柔らかく心にすっと沁み込むような声が心地良く響きますが、ピアノやギターの細かいフレーズに小粋なところがあってあなどれません。新曲の「ばか」はスローテンポのキュートなカントリーブルーズです。僕のオープニング「ANOTHER GREEN WORLD」が戦争や殺戮を主題にした重たい詩だったので、それでもささやかな日常は続くという意味で、1曲目に「ありふれた日々」をリクエストしました。

テロと空爆のニュースを受けて「十一月」「都市計画/楽園」。なぜ殺してはいけないか、という僕の問いに対して、松浦湊さん(左利き)の1曲目は「おやすみ」。どうしておやすみと言ってくれなかったの、と夜の空気でやさしく包む。チャーミングな酔っ払いを演じていても、舌足らずでアンニュイなMCやシュールレアリスティックでコミカルな歌詞に、隠しきれな知性が滲みます。音楽のなかに対話が内包されており、ソングライティングにもギターの響かせ方にも独自の宇宙を感じる。「おばかさん」って面と向かって言われてみたい美女です(笑)。

松本佳奈さん(画像)は昨年9月Poemusica Vol.32に出演が決まっていたのですが、急病で叶いませんでした。そのとき入院中の佳奈さんと、カーペンターズの"(They Long To Be) Close To You" についてメールでやりとりしたことを憶えていて1曲目にカバーしてくれました。佐々木真里さんのピアノに乗せて歌うその声は深い滋味と包容力に溢れています。「ばかみたい」「パラダイムシフト」「Strings」。名曲の数々には真里さんのアコーディオンやグロッケンがちりばめられ、より一層輝きを増しているように思えます。

僕の「クロース・トゥ・ユー」の訳詞朗読にも真里さんがピアノで彩りを添えてくださいました。この日初対面のミュージシャン3組が互いにリスペクトを示しながらも自分の役割を果たし、且つ全体の流れがしっかりつながっているという、一流の職人の仕事を見ているような感動がありました。ホストだからがんばってつながないと、と肩に力に入れる必要もなく、僕は自然な流れに乗っているだけでした。それは共演者のみなさんはもちろん、会場スタッフや何より真摯に聴いてくださったお客様のおかげだと思います。心より感謝いたします。

来月のPoemusicaは下記のメンバーでお届けします。2015年最終回、忘年会でもクリスマス会でも(笑)。乾杯しましょう!

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Poemusica Vol.45 ポエムジカ*詩と音楽の夜

日時:2015年12月17日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約・当日2,400円(ドリンク代別)
出演:unclose
     澤寛子
     Luxmi
     カワグチタケシ (PoetryReading)

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2015年11月15日日曜日

fall into winter

プリシラ・レーベルというインディーズ出版社をやっています。3人で始めたのですが、その頃に3人とも好きだったオーストラリアのドラァグクイーン映画『プリシラ』から名前をもらいました。それから17年が経ち、いまはひとりで運営しています。

カワグチタケシ新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)を発売する2015年12月5日に、同じくプリシラ・レーベルから今年3月に詩集『十三か月』を出版した石渡紀美さんとレコ発ツーマンライブを開催します。

会場は幡ヶ谷jiccaさん。京王新線幡ヶ谷駅が最寄のオーガニックカフェで(オーガニックは似合いませんか?)、ランチプレート付20名様限定ライブです。フライヤーのイラスト(画像)は夏目麻衣さんに描いていただきました。

コラボリーディングやアフタートークも予定しているスペシャルなライブです。秋から冬へ。移り変わる季節の中のほんの数時間ではありますが、皆様と共に過ごすことができたら幸いです。ご予約は、prcilla.label@gmail.com まで、お名前、人数、お電話番号を(ベジ希望の方はその旨も)お知らせください。お待ちしています!

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fall into winter
Poetry Reading Live by Pricilla Label

2015/12/05 Sat. open/start 12:00~
charge ¥2,000 (ランチプレートつき 〜ベジ対応可/20名限定 要予約)

〇presents:
石渡紀美
カワグチタケシ

◎幡ヶ谷jicca
tel.03(5738)2235
東京都渋谷区西原2-27-4 升本ビル2F
→京王新線 幡ヶ谷駅南口より徒歩4分
(改札出て右マクドナルド側出口より地上へ、商店街を直進)

※ご予約、お問い合わせ prcilla.label@gmail.com

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2015年11月14日土曜日

TEENS KNOT REVUE

パリで起こったテロのニュースが世界を巡った雨の土曜日。都営地下鉄三田線に乗って白山へ。JAZZ喫茶映画館Double Takeshi Production Presents 詩の朗読会 TKレビューvol.08 "TEENS KNOT REVUE" が開催されました。

このライブシリーズのタイトルはTとKで始まる単語をゲストからひとつずつもらってつけているのですが、小夜ちゃんに提案してもらったのは"KNOT"。結び目という意味です。今日のためにイベントタイトルと同じ"TEENS KNOT REVUE"という詩を書いてきたり、もうひとつの "TEENS" にちなんで、多感な十代の心情を描いた(そして実際に二十歳前後に書いた)「放課後のあとの即興詩」を入れたり。まさに結び目の役割を自ら担ってくれました。僕の「十一月」を朗読してもらったのもうれしいサプライズでした(そしてその描写は今朝の報道とも呼応していました)。

さいとういんこさん(画像)。1997~2000年頃のトーキョー・ポエトリー・シーンのミューズのひとりでありアイコン的存在。ミュージシャン、職業作詞家としての経験も生かして、シーンを活性化させたレジェンドです。強烈な反骨心を愛らしい声とビジュアル、一見甘い言葉にくるんで、シンプルに投げる。スタイルはそのままに更に振り切れたパフォーマンスは観客に強い印象を残しました。約100日間、毎日1篇ずつ書いた短詩Bill Evansの"Alone"に乗せて連続してリーディングする姿にスタンドアローンな気概を感じ、痛快な気分になります。

ダブルタケシの大きいほう、小森岳史。小森さんの詩には「あれがこうだから、こうなって、こうなのである」という理屈っぽさと、センティメントが理屈を踏み越えるときの捨て鉢な跳躍力が同居しています。そのバランスの危うさが初期作品の魅力であり、最近作では単なる感傷に留まらない抽象的なスプリングボードを(その正体が僕にはまだよく見えないのですが)備えてきているように思えました。朗読の質も最近数回では一番でした。「雷の朝」はニューヨークをパリに読み替え、TKレビューの(実は)ポリティカルな側面を象徴していました。

僕もニュースを受けてセットリストをすこし変更して、「Doors close soon after the melody ends」「新しい感情」「すべて」「線描画のような街」「fall into winter」「都市計画/楽園」の6篇を朗読しました。なぜ殺してはいけないか。死はファンタジーではない。今日という日にお伝えしたかったことがすこしでも伝わっていたらいいな、と思います。

ご来場のお客様、応援してくれた方々、映画館のマスターと絹子さん、共演者のみなさん、そしてフライヤーに素晴らしい写真を提供してくださったベルリン在住ますだいっこうさん。どうもありがとうございました。来年の秋にまた、違う名前でお会いすることができたら幸いでございます。

 

2015年11月1日日曜日

アサガヤノラの物語

大気が乾燥してきました。暮れかけた陽を追いかけてJR中央線阿佐ヶ谷駅から西へ進むと、閑静な住宅街に暖かなオレンジ色の灯りを洩らすBarトリアエズが見えてきます。そのお店で日曜日だけ開かれる「アサガヤノラの物語」。リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさん(画像)が日曜店長をつとめています。

その出演機会をお借りして、カワグチタケシ新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)の先行レコ発ワンマンライブを開催しました。

ご来場の皆様、それぞれの場所で気にかけてくださった方々、いつも心の込ったおもてなしと美味しいお料理を用意してくださるノラさん、どうもありがとうございました。セットリストは下記の通りです。

 1. METAPH0RIC CONVERSATIONS
 2. コインランドリー
 3. 山と渓谷
 4.
 5. 無題 (出会ったのは夏のこと)
 6. 水の上の透明な駅
 7. 星月夜
 8. 森を出る
 9. 観覧車
10. すべて
11. 月の子供
12. 線描画のような街
13. 水玉
14. 花柄
15. fall into winter

前半はこれまでに作った7冊の詩集から1篇ずつ、いまの季節に合うような作品を、制作当時のエピソードも交えて。後半8篇は新詩集から収録順にほぼMCなしで朗読しました。いいコントラストが出せたのではないでしょうか。

麻表紙に猫のアイコンをあしらったアサノラ限定『ultramarine』特装版がご来場のみなさんの元へ旅立って行きました。言葉はコミュニティの共有資産。一旦作者の手を離れてしまえば作品は読者のものです。好きなように解釈したり好悪をつけてもらえたら本望です。聴いて、読んでくださった人にどんなかたちであれ、たとえ小さなものでも、何か手渡すことができたらいいな、と思います。

今回は先行リリースということで、『ultramarine』通常版は12月5日発売。その日、石渡紀美さんとツーマンライブを開催します。2015年にプリシラレーベルが出版した2冊の詩集の作者です。詳細はまたあらためてお知らせします。

年末にかけてライブが目白押しです。次はこれ。トーキョーポエトリーオールドスクールのレアキャラ(レジェンドともいう)に会えるこの機会をお見逃しなく!

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Double Takeshi Production Presents
詩の朗読会 TKレビューvol.08
TEENS KNOT REVUE

日時 2015年11月14日(土) 15:00開場 15:30開演
会場 JAZZ喫茶映画館
    東京都文京区白山5-33-19
    03-3811-8932
料金 1000円+1オーダー
出演 さいとういんこ
    小夜 
    小森岳史 
    カワグチタケシ 

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