2014年3月30日日曜日

BOOKWORM 3/30 “17th Anniversary” at Bar Chit-Chat

春の嵐。小田急線を降りた頃には傘がさせないほどの強い風。新百合ヶ丘のBar Chit-Chatで開催されたBOOKWORMに参加しました。

オープンマイクというシステムはおそらくNYアポロシアターのアマチュアナイトあたりが起源ではないかと思います。誰でも一定時間マイクの前で好きなことを話したり、歌ったり、踊ったり、演じたりできる。

ヒップホップカルチャーの隆盛とともにポエトリー・リーディングにもそのシステムが取り入れられ、1997年から東京の複数個所で同時多発的に始まりました。そのなかで、場所を変えながら最も長く続いているのがこのBOOKWORMです。

この日は20人がマイクのまえに座って、それぞれの声で語りかけ、みんなが耳を傾けました。

「人は自分の好きなものについて語る時、とても上手く語る事が出来る」。BOOWORMは、このミヒャエル・エンデの言葉を理念に掲げています。自作は半分、残り半分は自分の好きな本の紹介や気になる出来事についての話です。ひとりひとりが異なる視点と語り口を持ち、10分という枠のなかで伝える。自己主張よりも共有(相違点も含めた)に軸足を置いていることが、このオープンマイクの居心地の良さであり、また長く愛されてきた理由ではないかと思います。

どの方の声も話もその人だけが持つという意味では等しく興味深いものですが、特に印象に残ったものをいくつか。

コイワズライのGt/Vo三宅善久さんが実家で発掘した5歳のときの自分と弟さんの日記。遠藤コージさん爆音エロブルーズ)のBOOKWORMの定義。何かの幼虫。メインMC山﨑円城さんのハンドクラップ・ポエトリー。しえろ文威さんリュウくんのそれぞれの歌。小夜ちゃんが読んだイシダユーリさんの「パレード」。藤田文吾さんDouble Famous)の正しい野糞の仕方。初登壇したLittle Woody(画像)の十代のエピソード。etc..。そして今日披露された十数名のパフォーマンスを即興的にカットアップした坂井あおさんの見事なワード・コラージュ作品。

僕は先頃亡くなった安西水丸さんの著書『スノードーム』(1996)から故淀川長治さんのエッセイ「雪の降るガラス玉」と自作の詩「スノードーム」を朗読しました。

気づけば5時間が過ぎ、雨がすっかり上がっていました。BOOKWORM17周年おめでとうございます!


2014年3月23日日曜日

空飛ぶ同行二人・新生篇

スプリング・ハズ・カム。春の風物詩(ってアンケートに書いてもらった)村田活彦とカワグチタケシの朗読二人会『空飛ぶ同行二人・新生篇』にご来場のお客様、Flying Books 店主ヤマジさん、スタッフのみなさん、残念ながら会場には来られなかったけれどいろいろなかたちで応援してくださったみなさん、どうもありがとうございました。

会場の最後列で村田さんのリーディングを聴いていました。ここ数年は歌に傾斜していた村田さんでしたが、今回は直球の朗読で勝負していました。なんだかとても新鮮。前半は無音で、後半はブレイクビーツや、アコーディオンのシンプルなトラックに乗せて。含羞と解放の振れ幅が大きく、迷いや優柔不断も魅力に変える強い声の力があります。

彼の詩の題材には、幼少期や少年時代のバカ男子エピソードがあるのですが、僕にはずいぶん昔に失われてしまったもの。まぶしく眺めていました。

この日は20分を2セットずつ交互にマイクの前に立ちました。僕のセットリストは以下の通り、カヴァー多めの構成です。

Like Someone In LoveChet Baker
・六月・エピソード(村田活彦)
Melody FairBee-Gees
・希望について
・観覧車
 --
謎の旅人曽良(松村友次)より
くだらない休日の過ごし方
Doors close soon after the melody ends
We Could Send LettersRoddy Frame

最近手がけている歌詞の翻訳を3曲分。最後に読んだAztec Cameraの"We Could Send Letters" は、村田さんの「六月・エピソード」に出てくる、友達に手紙を書く歌です。新作の「希望について」は観覧車の運転手が主人公のショートストーリー。ビージーズの「メロディ・フェア」にはメリーゴーランドが登場します。

昨年末に故障した喉が完全に復調し、最近はいいパフォーマンスがお届けできていると思います。自分のコンディショニングの仕方もいくらか判ってきました。歳を重ねても成長するものですね。そしてフィジカルに余裕があると客席がよく見える。とてもあたたかく、集中して聴いてくださっているのが、こちらにもよく伝わってきました。

さて、6年目の同行二人はどこへ向かうのか。更に西へ? 今いる場所からそう遠くないところへ? それとも? 来春公開。どうぞお楽しみに!

 

2014年3月20日木曜日

Poemusica Vol.26

三寒四温。雨の木曜日。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで、Poemusica Vol.26が開催されました。

桂有紀乃さんが歌うのをはじめて見たのは昨年末のEnishipです。そのパフォーマンスに打たれ、今回出演オファーをしました。小柄な身体に純白の春服をまとい、裸足で歌います。その声には、疑問、痛み、希求、愛情、祈り、さまざまな感情が生のまま溢れている。生命力に満ちた歌声に耳を奪われがちですが、実はバロック的な形式美を兼ね備えた旋律構成を持っています。

ちみんさん。素晴らしい美声の持ち主。特にファルセットの美しさは筆舌しがたいです。ジャジーでソウルフルでクリア。どの声域も適切に処理されていて静かに降る雨のように心地良い。過酷なバトルフィールドを通過して自分の居場所を見つけた人だけが持つ静謐さと包容力があります。フィンガーピッキングで丁寧に奏でられるギターの音色も優しく、会場全体が彼女の音楽にうっとりと身を委ねました。

まえかわとも子さん(画像)はパーカッションのRieさんEarth Conscious、たきびバンド)と。まえかわさんのライブはいろいろな演奏形態のものを聴いたことがありますが、このデュオは、旧知の仲ということもあり、いちばんリラックスしているように思えます。アルペジオを弾きながらのポエトリーリーディング、ツイン・パーカッションと息の合ったハーモニーなど聴かせどころたっぷりの楽しいステージです。

今回僕は、3人の歌い手の呼び出しに、それぞれの作風を意識した詩を選んで朗読しました。桂有紀乃さんに「無題(世界は二頭の象が~)」と先日三回忌を迎えた吉本隆明さんの「恋唄」。ちみんさんには「無題(薄くれない色の闇のなか~)」。そして、Rieさんの躍動感溢れるジャンベに乗せて「ANGELIC CONVERSATIONS」。パーカッションとの共演はひさしぶりで、しかもぶっつけ本番。テンションが上がりました。

次回のPoemusica Vol.27は4月17日(木)。ピアニストの朝香智子さん、ウクレレ弾き語りのノラオンナさん表現(Hyogen)Doppelzimmerでも活躍中のGt/Vo古川麦さん、おなじみアカリノートさんの出演が決まりました。春の真中。どうぞお楽しみに!

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Poemusica Vol.27
日時:2014年4月17日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
     yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,000円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:ノラオンナ *Music
    朝香智子 *Music
    古川麦 *Music
    アカリノート *Music
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2014年3月15日土曜日

魔女の宅急便

強い風と雨が過ぎた週末、東京湾岸は明るい春の日差しです。ユナイテッドシネマ豊洲清水崇監督作品『魔女の宅急便』を観ました。

修行中の魔女が迷いによって魔法の力が弱まり、切羽詰まった状況に直面してそれを取り戻す、という基本的な物語はジブリ版と同じですが、アニメ版公開後に出た原作第2巻の、ライオンに尻尾を噛み切られた子カバを嵐のなか獣医師のイシ先生(浅野忠信)のところに運ぶ話、町の人たちに受け入れられデリバリー事業も軌道に乗り始めたところで配送品とともに魔女の呪いを届けているという根拠の無い風評により返品の山に、というふたつのエピソードが加えられています。

実写ならではリアリティを追求した、と監督がインタビューで答えていましたが、コリコの町の描写で公園の階段の手すりが真新しいステンレスだったり、小学校がアルミサッシだったりします。そういうディテール細かな違和感が積み重なって気になり、物語の世界に没入することができませんでした。

ジジがCGなのも残念。台詞がなくてもいいから本物の黒猫を使ってほしかったな。

キキが両親と暮らした魔女の国、コリコの商店街や町の人たちの原色の衣装なんかはとてもよかったので、ファンタジーに徹するべきだったのかもしれません。

キキ役の小芝風花は(赤いリボンはつけてないけど)なかなか愛らしいです。美少女のパンチラが大好物って方は必見。父親オキノ役の筒井道隆はオロオロしている男を演じたら当代一。母親コキリ役の宮沢りえ、オソノさんの尾野真千子もはまり役です。

 

2014年3月1日土曜日

ローマでアモーレ

今日は映画の日。ユナイテッドシネマ豊洲ウディ・アレン監督作品『ローマでアモーレ』のアンコール上映を観ました。スラップスティック・コメディの大傑作。はじめからおわりまで笑いっぱなしでした。

ミッドナイト・イン・パリ』『恋のロンドン狂騒曲』とEU3部作ってことになるのでしょうか。ローマの美しい町並みを背景に繰り広げられるドタバタ恋愛騒動。4つのストーリーが並行して進み、基本的に交差することはありません。

交通整理をする警察官がスクリーンのこちら側にいる観客に突然話しかける冒頭のシーンからウディ・アレンの文脈に引き込まれる。イタリア人弁護士ミケランジェロ(フラヴィオ・パレンティ)と恋に落ちるアメリカ娘(アリソン・ピル)。その父親(ウディ・アレン)は引退した前衛オペラの演出家。神経質で小心者で口が悪い。

ミケランジェロの父親(ファビオ・アルミリアート)がシャワーを浴びながら歌うテノールにほれ込みオーディションを受けさせるがあがってしまい失敗。シャワーを浴びながらでないと上手に歌えないとわかり、オペラ(レオンカヴァッロの『道化師』)の舞台装置に実際にお湯の出るシャワーを設置し、その中で歌わせたところ大喝采を浴びる。

別のエピソードに出てくる売れない女優モニカ(エレン・ペイジ)のサブカル女子っぷり。モダンアート、建築、文学、映画、音楽のメインストリームからは若干ずれるがマニアック過ぎない美味しいところだけ会話の端々に挟んでサブカル男子を虜にする。こういう女子もそれに夢中になる男子も世界共通なんだなあ、と微笑ましい気持ちになりました。で、そのサブカル男子が『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカバーグ役を演じたジェシー・アイゼンバーグというのも洒落が利いている。

そして、ロベルト・ベニーニは本当に芸達者。自らの底意地の悪さを最上級のエンターテインメントに昇華した78歳のウディ・アレンに心から拍手を贈りたい。どうか長生きしてこういうしょうもなくも楽しい映画を撮り続けてもらいたいです。