2012年2月18日土曜日

51 世界で一番小さく生まれたパンダ

東京は数日ぶりの晴天。風はまだすこし冷たいですが、真昼の日差しがずいぶん明るくなってきたように感じられます。そんな午後の風を切ってユナイテッドシネマ豊洲まで。 51 世界で一番小さく生まれたパンダ』を観に行きました。 一昨日 Poemusica Vol.2 で共演した平井真美子さんが音楽を担当した映画です。

パンダ好きの聖地、中国四川省の成都パンダ基地(成都大熊猫繁育研究基地)。パンダが双子を出産する確率は50%。野生の母パンダは、そのうち丈夫な一匹だけを選び、弱い一匹は捨てる。パンダ基地では、絶滅危惧種保護のため、双子の両方を人間がサポートすることにより育てています。

通常体重150g前後で生まれるパンダの赤ちゃんですが、未熟児で51gしかなかったため51(ウーイー)と名付けられた男子パンダの6年間の成長の記録。生まれたてのパンダは全身ピンク色で、生後2週間あたりから白黒の模様が現れます。

パンダって、やる気のない生活態度が魅力の動物ですよね。終始緩慢で怠惰。でも、そこがかわいい。哺乳瓶を両手で抱え、集団で仰向けになってミルクを飲む幼児パンダ。高齢初産で子育てが苦手な母パンダは我が子にうまく授乳することができない。その母娘両方にキレる飼育員「あんたももっと大きな声でアピールしなさいよ!」。見どころたくさんです。ちなみに父親パンダは一度も画面に登場しません。

過剰に泣かせる演出がないのには好感を持ちました。パンダたちの生活に迫る淡々としたドキュメンタリーと言っていいと思います。平井真美子さんが抒情的ですが甘過ぎない音楽で場面をつないでいきます。ピアノだけでなく、ハープや弦楽合奏、オルゴールのような音色も交えて、品よく丁寧に。

思春期を迎え気分の荒れた51が、いらだちまぎれに従兄弟パンダにつかみかかったり、投げやりに水たまりに飛び込み暴れるさまも、笑って見ている入園者。本人はいたって真剣なのに、ユルいヴィジュアルのために周囲に理解されない、という悩みにはとても共感を覚えました。


 

2012年2月17日金曜日

御来場御礼

昨日は小雪のちらつくなか、下北沢 Workshop Lounge SEED SHIP Poemusica Vol.2 に、多数ご来場いただきありがとうございます。 Vol.00Vol.1 に劣らないハイクオリティなライブ。出演者の、また観客のひとりとして、楽しい時間を過ごしました。

グランドピアノのあるライブスペース SEED SHIP。今回共演したミュージシャン3組ともそのピアノを弾いたのですが、同じ楽器でも演奏家によって音色が全然違うんですね。それぞれ素敵でした。

遠雷のような不思議な音色の打楽器(※画像参照)に導かれて最初に登場したのがエリーニョさん。まだ若いシンガーソングライターで、その音楽は初期の Vanessa Carlton を想わせるような、はつらつとした躍動感溢れるもの。と思いきや、Bill Evans 的な雰囲気のジャジーで落ち着いたラウンジっぽいピアノも聴かせる。音楽的な引き出しの幅広さを持ち、特徴ある良い声も耳に残ります。終演後にお話ししたときに、Macy Gray が大好き、とおっしゃっていました。

二人めは作曲家でピアニストの平井真美子さん。映画やCMなど、映像の音楽を多く手掛けている方で、曲調はミニマルでリリカルなのですが、華奢な身体、細い指からは想像がつかないダイナミックな演奏をする美人です。雄弁なピアノと対照的に、たどたどしいMCがチャーミングで、言葉に詰まった瞬間、指が鍵盤に触れ、図らずも鳴った一音に「ピアノがしゃべっちゃった」と。客席をほぐす天然の空気をまとっています。

そして、Little Woody Animation こと 植木克巳さんの映像作品も楽しいものでした。クレイアニメのイントロダクションに続いて線描アニメがふたつ。猫が主人公の作品ではネコ語、タコ兄弟はタコ語、いずれも作者本人の声の早回しに日本語の字幕が付く。その架空の造語が東欧のどこかの国の言語のようで、ところどころ現れる固有名詞だけがぼんやりと浮かび上がる。脱力した画風、スクリプトと相まって、客席の笑いを誘います。

最後に中ムラサトコさん! ループ・ステーションで自らの声をサンプリングして、ピアノと生声を4度、6度で重ねていく。そこにスイング・ジャズ、歌謡曲、ブギ、都々逸、音頭といった土俗的な音楽や、ジャンべも加わって怒涛のように盛り上げます。妖怪人間ベムハイスクールララバイまで飛び出し、会場全体がトランスしながら大爆笑という、いまだかつてない音楽体験をしました。まさに「生まれる前から歌唄い」。自由で生命力溢れ、楽しくて、雑多。聖俗併せ持つシャーマニックな音楽です。終演後「雨降ってますよ」とお伝えしたら、外は冬の雨~♪ と、氷雨を全力で熱唱。ほんとに唄うのが好きなんですね。

そんな圧倒的な共演者たちの狭間で僕は、Planetica(惑星儀)Winter Wonderland の3篇を朗読。忘れがたい夜になりました。

さて、次回 Poemusica Vol3は、2012年3月22日(木)に開催します。ノラオンナさんの出演が既に決定。楽しみです! 他の出演者も決まり次第こちらでもお知らせしていきます。

そして SEED SHIP から、もうひとつうれしいお知らせが。前世紀の終わりに勃興したトーキョー・ポエトリー・シーン。その中核となった高田馬場 Ben's Cafeの"into the deep"、原宿Johnbull の"BOOKWORM" と並ぶ伝説のオープンマイク、西麻布Ojas Loungeの"everyness" が、2012年4月8日(日)にSEED SHIPで、なんと12年ぶりに復活します。春を迎える楽しみがもうひとつ増えました!


 

2012年2月12日日曜日

おも茶箱 ~2012 冬の中庭~

江古田といえば、大学時代にしばしば飲みに行った懐かしい街。僕が講師を務めるフィクショネス詩の教室に十代の頃から通ってくれている千葉まほさんが初めて朗読会に出演するというので、西武線に乗って出かけていきました。

愛らしい容姿とは裏腹に、重厚なドライブ感と、樹木や土壌の湿った匂いを感じさせる千葉さんの詩作品。作者自身のガーリィでふわっとした声で再生されるときに、更に多彩で重層的なイメージを帯びます。そのパフォーマンスは瑞々しくも堂々としたものでした。

『おも茶箱』は、かとうゆかさん芦田みのりさんが長く続けている朗読会。僕も一度出演させていただいたことがあります。主催のおふたりの朗読と息の合った進行も安心して楽しめました。

会場の中庭ノ空は、詩人の五十嵐倫子さんが昨年2月に始めたPoem & Gallery Cafe。きれいなフローリングの床と、白と空色で統一された内装が印象的なお店です。次の御座敷(フィクショネス文学の教室)があったので、今日は終演後早々に辞去しなくてはなりませんでしたが、またおじゃましたくなる気持ちの良い空間でした。

そういえば、純粋な観客として朗読会に行ったのはひさしぶり。ちょっと反省しました。音楽のライブとは異なり、朗読会は隙間が多い。連と連のあいだのふとした無声の瞬間に聞こえてくる街路の音や冷蔵庫の唸り、やかんの沸く音なんかが、実に心地良いんですよね。もちろん、丁寧に発語される声たちも。以前のように、もっと朗読を聴きに行こうと思わせてくれる良いイベントでした。

 

2012年2月11日土曜日

猫の乗り物

街を歩いていると日の丸の旗が目に入りました。今日は建国記念の日。土曜日と祝日が重なると、ちょっと損した気分になります。日曜日なら振替休日があるのになあ。

そんな春初日の太陽がやけに明るい午後、東京メトロ有楽町線で銀座一丁目まで。そこから歩行者天国を端から端まで歩いてお邪魔したのが、銀座七丁目にあるボザール・ミュー。1984年にオープンした日本で最初の猫専門ギャラリーです。

このギャラリーで毎年冬の終わりに開催されるイラストレーター佐久間真人さんの個展『猫の乗り物』を鑑賞しました。

書籍の装画や雑誌の挿絵を多く手掛ける佐久間さん。今回は昨年末に出版した森博嗣氏との共著絵本『失われた猫』に掲載された作品を中心に、新作や書籍、雑誌も加えて、小さなギャラリーの壁全面に42作品の展示。

佐久間さんの展示を拝見するといつも「変わらないこと」「好きなことを続けること」の強さを感じます。そういえば毎年この時期、このブログで佐久間さんの名前が載っている日付のページビューが上がるんですよね。人気があるのにご自身のウェブサイトを持たないからだと思います。

一枚一枚の絵にタイトルとキャプションがつけられているのですが、「猫が7匹、ネズミが1匹」というものがいくつかあったので、その数字に何か理由あるのかと思い、会場にいらした佐久間さんに尋ねてみました。「いつのまにかその数に固定されていったんですよね。数が決まっているほうが、(個展の)DMが届いたときにお客さんが探しやすいでしょ?」とのこと。作者の優しさと真面目さを表わすエピソードです。目が良くて、お時間に余裕のある方は、上の画像をクリックして数えてみてくださいね。

 

2012年2月5日日曜日

Poemusica vol.2

立春を過ぎて、急に空気が柔らかくなったように感じます。こんなのんびりした薄曇りの午後にはエルヴィス・コステロの "Punch The Clock" が聴きたくなります。

でも、明後日あたりからまた寒くなるみたい。どうぞみなさん、あたたかくしてお過ごしください。

下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて、Poemusicaの続編が開催。昨年末のパイロット版vol.00から数えて3度目の出演となります。

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Poemusica vol.2
日時:2012年2月16日(木) Open 19:00 Start 19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:2300円(ドリンク代別)
出演:平井真美子 (ピアニスト/舞台や映画の音楽監督)    
   中ムラサトコ (生まれる前から歌唄い/オルガン)    
   エリーニョ (ピアノ弾き語り) 
   植木克巳 (映像作家)
   カワグチタケシ (ポエトリー) 

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詩と音楽の総合エンターテインメントPoemusica。Vol.00Vol.1ともにハイクオリティなライブになりました。今回のブッキングも間違いないです。

今回の共演者は鍵盤弾き3組と映像作家さんです。いずれも初共演ですが、いまから楽しみです。

下北沢SEED SHIPさんは、元西麻布Ojas Lounge、渋谷Spumaのオーナーが 昨年2月に下北沢にオープンしたスペースです。オープンマイクEveryness でかつてお世話になった方も是非。

平日ですが、ゆっくりめの開演時刻の設定ですので、お勤めの方もたまにはちょっと早めにお仕事を切り上げて。是非いらしてください。お勤め以外の方も、もちろんお待ちしています!