2012年11月25日日曜日

Liquid 1st Album RELEASE PARTY!!

三連休最終日は良く晴れた日曜日。下北沢CLUB251Liquidの1st Album"We are Liquid"リリース・パーティが開催されました。Workshop Lounge SEED SHIPのPoemusicaで毎月共演しているLittle Woodyのバンドの晴れ舞台とあっては見逃せない。小田急線に乗って出かけました。

Liquidは、ギターのイガヒロシ、ドラムス脇山広介、ウッドベースLittle Woodyの3ピース・インスト・ロック・バンド。結成9年目にしてはじめての公式盤がリリースされるということで、満員の会場は祝福ムードでいっぱい。

CDは鋭利な刃物のようにシャープな演奏で、この2ヶ月ほど愛聴していますが、ライブでは角材やセメントブロックでそこらじゅうをガツガツと叩き割るような無骨でワイルドなパフォーマンスを聴かせます(比喩です。実際に機材を壊したりはしません、笑)。

ジョー・ペリーばりにファンキーかつ歪みまくったギター。豪快なのにタイトなドラムス。Little Woodyは身体よりでかいウッドベースを回転させたり、よじ登ったりとロカビリー・マナーに則ったアクションのスラップベース。それでいて繰り出されるのは、ブルースをベースとしがら、懐古や感傷をかけらも感じさせない「今」の音楽。インテリジェンスとウィルダネスという相反する要素を生来のユーモアが継いでいる。

曲間のLittle WoodyのMCは、イガさんのツッコミと相まって、あいかわらずのユルさでしたが、そこからイントロへとなだれ込むときの胸のすくようなギャップといったら! オールスタンディングでオーディエンスがモッシュするようなライブは本当にひさしぶりでしたが、心底楽しめました。

ふたつの対バンもいい演奏をしました。BIGNOUNは、70年代っぽいアーシーなリフ主体のロックンロール。ボーカル、アコギ、ブルースハープのキムウリョン(ex.cutman-booche)のソングライティングセンスが光る。演奏にきらびやかなパーティ感があって、今日のオープニングにぴったり。ドラムスは松潤似のイケメン脇山広介がLiquidと兼任です。

PHONO TONESは、moqmoqさんのバンドあしのなかゆびにも参加している宮下広輔のペダルスチールをリード楽器に置いた循環コード主体のスペーシーなフリーミュージック。メンバー全員がヘッドバンギングするラウドな音楽なのに、なぜか中心には静寂が存在していて、その静謐な美しさはThe Album Leafにも通じるほど。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのドラマー伊地知潔の別プロジェクトです。

そんなLittle Woodyが新作アニメーションを披露する次回のPoemusicaは12月21日(金)。クリスマスパーティです。楽しみましょう!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Poemusica Vol.12
日時:2012年12月21日(金) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2,300円、当日2,500円(ドリンク代別)
出演:Soulcolor*音楽 
   はらかなこ*音楽 
   平井真美子*音楽 
   Little Woody *映像  
   カワグチタケシ *ポエトリー 
いつもより開演時刻が30分早いので、ご注意ください!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


2012年11月23日金曜日

北のカナリアたち

晩秋の三連休初日。勤労感謝の日の東京は冷たい雨が降ったり止んだり。丸の内TOEI①で、坂本順治監督作品『北のカナリアたち』を観ました。

湊かなえの連作小説『往復書簡』を再構成したサスペンス・ドラマ。定年退職を迎えた図書館司書はる(吉永小百合)は、かつて教壇に立っていた利尻島の分校の生徒(森山未來)が殺人事件の重要参考人として手配されていることを知り、当時の教え子たちを訪ねて20年ぶりに北海道へ帰る。

東映創立60周年記念作品ということで超豪華キャストです。大人になった6人の生徒たちは、森山未來のほかに、満島ひかり勝地涼宮崎あおい小池栄子松田龍平。夫(柴田恭兵)の水難事故死の直後に島を去った先生に対して、それぞれがわだかまりを持って20年間生きてきた。

元々無理のある設定を、強引なストーリーテリングで読者を惹きつけ、意外性のある鮮やかな種明かしでカタルシスを提供する、というのがミステリーの基本的構造で、この映画にも当てはまるのですが、細部のつじつまが合わないところが多く思えて、物語に上手く乗れませんでした。

俳優陣の抑えた熱演と北の離島の厳しい自然を美しく捉えた木村大作のカメラが素晴らしいだけに、残念です。主演の吉永小百合は67歳とは思えない若々しさですが、髪型の変化だけで40歳に見せるのはさすがに厳しいのではないでしょうか。

子役たちの合唱はとても上手で心が洗われます。それと、20年前の悲劇の発端となったいさかいからずっと口をきいていなかった勝地涼と宮崎あおい(『少年メリケンサック』でもカップルを演じていた)が実はお互い想い合っていたことがわかったときに、宮崎あおいが「好き」と言うシーンにはきゅんとしました。



2012年11月16日金曜日

Poemusica Vol.11 ~オリジン~

東京の木々の葉も色づきはじめ、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica Vol.11 ~オリジン~"が開催されました。当初予定していた尾上文さんが、残念ながら事情があって出演できなくなりましたが、にもかかわらずクオリティの高いライブになったのではないかと思います。

先月に続いてLittle Woodyはバンドで登場です。キーボードのVi-Taさんとデュオで全編即興のインスト。ワンコードのリフレインが即興でさまざまに変奏され、空間を広げていきます。ウッディいわく「アンビエント」。でも、ちゃんとヒューマンな感触のビートもあって、躍動感溢れ色彩豊かなクラブ・ミュージックです。ふたりの掛け合いだけでなく、Rio Nakanoさんとの音楽と絵画のインタープレイも鮮やかでした。

松本暁さん。尾上文さんからのご指名で急遽代役となりましたが、そんなことは微塵も感じさせない堂々としたパフォーマンスでした。彼とオープンマイクで出会ったのは、もう10年ぐらい前のこと。ひさしぶりに朗読を聴きましたが、端正で男前な作風はそのままに、抑揚や表現力が増していました。印象に残る強いリフレインと、言葉選びに独特のユーモアがあり、それは僕が持っていないものなので憧れます。SEED SHIPをモチーフにした即興詩も見事でした。

蜂谷真紀さんの演奏は衝撃的でした。冒頭アカペラで架空の言語を用いた歌とも一人芝居ともとれるボイス・パフォーマンス。複数の異なる言語を持つ、いろいろな世代、性別、階級の人たちが乗り合わせた客船上でのやりとり。のように僕には聴こえました。声だけなのにものすごいグルーヴ感があります。そしてピアノ弾き語り。弾き語り、なんて簡単にカテゴライズすることが無意味な音楽。まさに「音楽」としかいいようがない、すごいもの。蜂谷さんの演奏が進むにつれRioくんの絵の陰影が濃くなっていくのも面白かった。

Poemusicaでは初めてのライブ・ペインティング。Rio Nakanoさん。オリジナルのイベントロゴからはじまって、赤のアクリル絵具で塗りつくされた抽象表現。そこから女性の顔が立ち現れたときは鳥肌が立ちました。今度は白いアクリルで塗りつぶされ、途中途中で仕込んだマスキングテープをはがすと、過去の地層のように重層的な色彩が現われ、最後はまた別のロゴへ。時間が単線的に完成に向かわない絵画が、音楽と言葉とたがいに影響し合いながら紡がれていきます。約2時間半のあいだにすくなくとも4つのコンセプトが表出しました。

僕は今日は、「チョコレートにとって基本的なこと」「無重力ラボラトリー」「星月夜」「ボイジャー計画」「バースデー・ソング」の5篇を朗読しました。来年出版予定の新詩集に収める作品群で『計画』というグループ名をつけています。それぞれの詩に蜂谷真紀さんがピアノやゼンマイ仕掛けのおもちゃを使って音をつけてくださいました。「星月夜」には元少女兵士の声で架空言語による同時通訳まで。これにはまいりました!

そんな11月のPoemusica。ご来場くださったお客様、それぞれの場所で気にかけてくれたみなさん、いつも新鮮で素敵なブッキングをしてくれるSEED SHIPの土屋さん、どうもありがとうございました!

12月のPoemusicaも金曜日。クリスマス・バージョンでお届けします。デートや光熱費の支払いやでいそがしい時期だとは思いますが、ぜひ皆様お誘いあわせのうえ、SEED SHIPにいらしてください!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Poemusica Vol.12
日時:2012年12月21日(金) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
   世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
   03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
料金:予約2,300円、当日2,500円(ドリンク代別)
出演:Soulcolor*音楽 
   はらかなこ*音楽 
   平井真美子*音楽 
   Little Woody *映像  
   カワグチタケシ *ポエトリー 

ピアニストの平井真美子さんとはPoemusica Vol.2以来の共演です。
いつもより開演時刻が30分早いので、ご注意ください!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



2012年11月10日土曜日

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ

先週土曜日と今日の2週にまたがって、ユナイテッドシネマ豊洲で、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』[前編]はじまりの物語、[後編]永遠の物語を観ました。

昨年TBS系列の深夜枠で放送され、幾多の賞に輝いた全12話を約5時間半に編集して映画化。公開から1ヶ月以上経つシネコンが満席で、エンドロールが流れても誰も席を立たないのが印象的でした。

キュゥべえ(インキュベーター=孵卵器)と呼ばれる人の言葉を話す小動物からスカウトされた女子は、どんな願い事でもひとつ叶えてもらえるかわりに、魔法少女になって魔女と戦わなくてはならない。ひとりひとりの魔法少女が持つ祈りが魔女を倒す特別な力となるが、戦いのうちにやがて妬み、憎しみ、呪いが増大し、エントロピーが臨界点を超えてしまうと、魔法少女自身が魔女になり、魔法少女に倒される側に転換してしまう。しかしそれは宇宙規模で仕組まれた熱エネルギー回収のためのシステムだった。

中二病(もしくは厨二病)。なにしろ主人公たちは中学2年生なので(マミ先輩は3年生)。郊外の城下町でぽけらんと過ごしていた僕ですら、中二の頃は、自分の内に譲れない、守るべきものがあり、手持ちの何かと引き換えに特別な力を得て(それはストラトキャスターのトレモロアームだったり、華麗なレトリックや重層的なメタファーだったりするわけですが、笑)、大きな敵と戦わなくてはならないと思っていました。

やがて反抗心は薄れ、守るべきものが自分の外にあると知り、違う世代、違う価値観を持った人たちと共生、融和する方向に関心が移って、いまの自分があるのですが、その姿を中二の僕が見たら「体制に取り込まれた」なんて青臭いことを言うかもしれません。つまりこの映画でいえば魔女の側へ。

最終的に宇宙の起源と愛や平和の概念にまで遡及する物語。そのストーリー構築の見事さ。アレゴリーと示唆に富んだ台詞。まるでモーツァルトの『魔笛』の登場人物たちのように敵対と友愛のあいだで揺れまくる魔法少女たちのなかで、唯一ぶれずに終始迷い続ける主人公まどか(上の画像の右から二人め)。劇団イヌカレーが手がけた切り紙細工や木版画のような二次元イメージで構成された魔女結界の造形美。見どころたくさんで、大人の鑑賞に耐えうる上質のアニメーション映画です。

2013年には新作映画『[新編] 叛逆の物語』が公開とのこと。こちらは黒髪の美少女ほむらが主人公になるのかな。楽しみです。



2012年11月4日日曜日

triola "Resonant ♯10"

1年でいちばん好きな月。図書館と落ち葉とツイードの11月。11月最初の日曜の夜。下北沢leteへ。triola弦楽コンサート"Resonant ♯10"。

2010年秋から2年。この会場で何度もtriolaを聴きましたが、これほどまでに痛みと悲しみに満ち、そしてたとえようもなく美しいtriolaの演奏ははじめて見ました。

東欧やイスラム圏の音楽にも通じる甘美な旋律をハードエッジなリフに乗せて力技で演奏するときに生じる軋み。それがtriolaの個性であり、最大の魅力です。

9月に開催された「トリオラのリリパ」でもオシレーターやサイレンのアナログ・ノイズは封印され、優雅で感傷的な音楽を奏でたふたりでしたが、その祝祭ムードからも離れて。

大きな水玉のチュニックを着て、髪をひとつに束ねヴァイオリンを演奏する波多野敦子さんは、繊細で壊れやすいい少女が、なにか別の知らない地平に立って途方に暮れているように見えました。ばらばらにちぎれそうな心を手島絵里子さんのヴィオラの安定感がかろうじて支えている。

「この曲を演奏するのはたぶんこれが最後」というMCとともに、カバーされたBurt Bacharachの"(They long to be) Close To You"は僕にとっても思い入れのある一曲。2010年末、波多野さんから「カバーを演りたいんだけど、いい曲ありませんか?」と訊かれて挙げたのがこの曲とSkeeter Davisの"The End Of The World"と荒井由実の「海を見ていた午後」の3曲。その後、1st Album "Unstring, string"に収録されました。

 クロース・トゥ・ユー

 なぜ君が近づいてくるといつも
 鳥たちが突然現れるんだろう?
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだね

 なぜ君のとなりを歩くといつも
 星たちが空から降ってくるんだろう?
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだね

 君がうまれるその日に
 天使たちが相談して
 夢を現実にしようって決めた
 それできらめく月の雫を
 君の髪に
 星明かりを君の瞳に

 街中の女の子が
 君を追いかけるのは
 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいから

 僕とおなじで みんな
 君のそばにいたいんだ

 詞: Hal David/訳: カワグチタケシ