2019年6月16日日曜日

ノラバー日曜生うたコンサート

梅雨の晴れ間、月齢14日、大潮の前日。西武柳沢ノラバーで日曜生うたコンサート、カワグチタケシ2019年雨季のバースデー朗読ワンマンライブが開催されました。

ご来場の皆様、店主ノラオンナさん、ありがとうございました。

前回こちらのお店で朗読したのは昨年11月25日。いつも18時開演なのですが、道路に面した大きな窓のすりガラスの明るさに季節のうつろいを感じます。

 1. 言葉と行為のあいだには(長田弘
 2. 雨期と雨のある風景
 3.
 4. ガーデニアCo.
 5. 離島/地下鉄を歩く
 6. 都市計画/楽園
 7. チョコレートにとって基本的なこと
 8. 無重力ラボラトリー
 9. 星月夜
10. ボイジャー計画
11. バースデー・ソング
12. スターズ&ストライプス
13. 永遠の翌日
14. 11月の話をしよう(新作)
15. 新しい感情
16. We Could Send LettersAztec Camera

以上16篇を朗読しました。54歳の誕生日当日ということで、僕が生まれた1965年の詩作品から故長田弘氏の「言葉と行為のあいだには」。音韻が信じられないほど美しい。また梅雨入りした昨今を意識したセットリストを組みました。

ご来場様限定特典として制作した『カワグチタケシ句集2005~2011』には主にフィクショネス句会のために作った俳句を144句を収録しました。同時期に書いていた詩には直接間接に自作の俳句の影響が強い。

たとえば「ガーデニアCo.」は「ぬくい雨とつめたい雨が交互に降り」「六月とJUNEの間の青い淵」「夏花の残像白く夜の庭」という3句、「」は「人の手の届かぬ先に飛ぶ灯火」「蛍火を待ち分け入りぬ森の声」の2句、「チョコレートにとって基本的なこと」は「冬の声が海底をくぐって届く」、「星月夜」は「草を分け少女兵士泣く星月夜」という句をそれぞれ下敷きにしています。

客席の年代も幅広くてノラバー豪華。なかには小学校3年生からの同級生も! 夏らしくさっぱり味付けられたノラバー弁当も美味しく。サプライズのケーキまでいただいて、夜更けまでにぎやかに。

半年前、バースデーライブに決めたのは自分なのに、もう祝ってもらうような歳じゃないし、あざとさ満載だなあ、と後悔しかけた瞬間もありましたが、みなさまのおかげで大変楽しく過ごすことができ、やってよかったと思います。どうもありがとうございます。



2019年6月8日土曜日

BOOKWORM at Viscum Flower Studio

梅雨入り2日目。都営地下鉄大江戸線で蔵前まで。隅田川を厩橋で渡った対岸は墨田区本所。Viscum Flower Studio は春日通り沿いに建つ古い家屋をリノベーションしたビルの2階にあります。

フローリングの床に低いベンチとパイプ椅子がいくつか並べられ、21年目に入ったBOOKWORMが始まりました。

高田馬場Ben's Cafeをはじめ、1997~98年当時の東京で同時多発的にたくさんのオープンマイクが生まれました。その多くは自作の詩の朗読でしたが、現在も唯一継続しているBOOKWORMは「好きなことについて語る」というコンセプトで自作詩の発表は少数派。最近読んだ本、今朝のニュース、友達や家族との会話、体験したり見聞きした出来事。それらがひとりひとり異なる声と語り口に乗せて手渡され、皆が聞き耳を立てる。

この日は15人の話を聞きました。なかでも印象に残ったのは、芥川賞作家滝口悠生さんの日記ワークショップのお話。日記とは出来事の記録。でもそれだけではなく、その場にはないが思ったことも書き綴ろう、というもの。1日の時間のほとんどはその日その場所以外のことを思っている。それも今日の出来事には違いない。

写真家飯坂大さんは毎年1か月以上ネパールで過ごし、数年かけてグレート・ヒマラヤ・トレイルを踏破しながら、村人たちの暮らしを記録しています。

と革高見澤篤さんはジビエクラフトのアーティスト。ある日、北海道の猟師さんから送られてきた荷物に入っていた熊の手を見て、害獣と人間に呼ばれる動物たちの皮革で製品を作ってみようと思い立つ。野生の鹿や熊、猪の革は傷や穴があるので日本人には好まれないが海外に販路を広げている。

それぞれが異なる立場でそれぞれ違う話をするのに、なぜかキーワードめいたものが生まれるのもBOOKWORMの特徴です。この日は「余白」とみんな感じていたと思います。

僕は西崎憲さんの『全ロック史』(人文書院)を紹介し、この本には書かれなかった(正史からはみ出た)けれど、僕の偏愛するいくつかのバンドやミュージシャンの話を聞いてもらいました。

会場のViscumは宿り木の意。全員で河内音頭の動画音声に合わせて盆踊りのレクチャーを受けたり、にぎやかで時々厳かで楽しい数時間を過ごしました。主催の山﨑円城さん(画像左)、Viscumのオーナー岡本俊英さん(画像中央)、いつも握手であたたかく迎えてくれる遠藤コージさん板井龍くん(左利き)他、会場で出会ったみなさん、どうもありがとうございました。


2019年6月1日土曜日

ベン・イズ・バック

ザ・ファースト・デイ・オブ・ジューン。日比谷TOHOシネマズシャンテピーター・ヘッジズ監督作品『ベン・イズ・バック』を観ました。

舞台はiPhoneと電子タバコが存在する現代の米国中西部郊外の住宅地。うっすらと雪の積もっている。ページェントのリハーサルを終えた子供たちを車に乗せて帰宅したホリー・バーンズ(ジュリア・ロバーツ)を待っていたのは、ドラッグの過剰摂取で倒れ、薬物依存更生施設に入所していた長男ベン(ルーカス・ヘッジズ)だった。

幼い異父妹弟は喜びはしゃぐが、継父ニール(コートニー・B・ヴァンス)と聖歌隊のセンターを務める実妹アイヴィ(キャスリン・ニュートン)はベンの自宅滞在に反対する。母ホリーは1日だけと限定し、その場で尿検査を受けさせる。

MYライフタイムベストムービーの1本に挙げてもいい『ギルバート・グレイプ』の原作者で脚本家のピーター・ヘッジズが監督。クリスマスイブとクリスマスの24時間を描く。非常にタイトでサスペンスフルなツイストがあり、説明的なカットやナレーションを排し、音楽も最小限で効果的。ジュリア・ロバーツ(左利き)とルーカス・ヘッジズのお芝居も非の打ちどころがないです。

薬物依存者がドラッグディーラーにもなり、友人や恋人を依存症に引きずり込んでしまう。当人が更生を望んでも、彼のせいで亡くなったり、苦しんでいる人が存在する。この視点には本作で気づかされました。ベンの依存症の発端は興味本位ではなく、怪我の治療のために処方された鎮痛剤だったため、母親は外科医を憎んでいるが、老医は認知症でその事実を忘れてしまっている。

そして、母親と息子の距離感が心身ともに近いなあ、いまどきの男の子ってお母さん大好きだよなあ、と感じました。僕自身はおばあちゃん子だったこともあり、同世代の友人たちと比較しても母親との関係性が超ドライなためその点に関して共感の度合いは薄いのですが、良く締まった素晴らしい作品であることは間違いない。教会で "O Holy Night" を歌う妹アイヴィのアルトが大変美しいです。