2013年12月29日日曜日

Eniship ~愛するみんなと~ 

東京は年末年始らしい快晴です。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPの年末特別企画「Eniship ~愛するみんなと~」に参加しました。SEED SHIPに縁の深いアーティストを中心に、楽しく忘年会ライブをしましょう。ということでお声掛けをいただきました。ありがたいことです。

前半はガールズ。今泉芹菜さん(ソロ)。ふてこいがーるず(今泉芹菜&槙本涼子)、YuReeNaさん平林純さん。全員20代前半ですが、実力と人気を兼ね備えた方々(しかもみんなかわいい)。東京インディーポップシーン(?)の層の厚さを実感します。なかでもコレサワさん藤澤有沙さんとのトリオ、川崎レオンさんのサポートで聴かせたひぐちけいさんのギターが素晴らしかった。

弱冠21歳にして数多くのミュージシャンのレコーディングやライブをサポートしている実力派ギタリスト。主役の歌を最大限活かしつつ、ギタープレイで自分のエモーションを上乗せして伝えることができる力を持っています。

そしてドラムセットを背負ったLittle Woodyがゆるくつなぎ(笑)、カレーが供されます。普段はフードメニュがないSEED SHIPとしてはこれも特別なこと。そんな忘年会気分な会場の空気を一変させたのが直前まで楽屋で料理をしていた桂有紀乃さん(画像)。

なんと形容していいのか。本気を出していたのは他の出演者もみんなそうなんですけれど、本気の方向性がひとりだけ違って突出していた。そしてそれはまぎれもなく会場にいた人たちの胸に響くものでした。MCで「ミュージシャンが曲終わりに、ありがとう、っていうのは、聴いてくれてありがとう、ってこともあるけど、お客さんがいて、音楽にぶつかってくれて、それをまた歌っている私が受け取って、それがなくては自分が何をしているのかわからないから。ぶつかってくれてありがとう、って言ってる」と。極めて私的な表現が私性の高さ故に広く深く人々に届く。その秘密の一端を見た気がして深く首肯したわけです。

最後の出演者はアカリノートさん。共演者たちと客席と会場スタッフの気持ちを汲み取って増幅して返すような、丁寧で、力強い歌声と演奏。ベース中田智史さん、ピアノ鴇田望さんとのトリオ演奏の爽快感溢れるダイナミズム。SEED SHIPオーナー土屋氏のブッキング・マジック。

僕は、「クリスマス後の世界」「無題(静かな夜~)」、そしてしめくくりにSEED SHIPへの感謝を込め、15年前に僕と土屋氏が知り合うきっかけを作ってくれた詩人、故カオリンタウミ(別名:MUDDY 'stone' AXEL)の「ウィンター・ソング」を朗読しました。先週痛めた咽喉のコンディションは完全ではありませんでしたが、一週間模索した結果最良のパフォーマンスをお届けできたと思います。

今年もたくさんの人たちにお世話になりました。どうもありがとうございます。来年もよろしくお願いします。というわけで次のライブは来年1月19日(日)。Poemusicaとしては、はじめてのお昼開催です!

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Poemusica Vol.24
日時:2014年1月19日(日) Open 12:30 Start 13:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,000円 当日2,300円(ドリンク代別)
出演: 鳥井さきこ *Music
     中村佳穂(from京都)*Music
     松本暁 *PoetryReading
     カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年12月23日月曜日

清須会議

冬晴れの師走の祝日、ユナイテッドシネマ豊洲で、三谷幸喜監督作品『清須会議』を観ました。

1582年6月21日、本能寺の変で織田信長(篠井英介)と長男信忠(中村勘九郎)が明智光秀(浅野和之)によって討たれる。10日後、山崎の戦いで羽柴秀吉(大泉洋)が光秀を討ち、その2週間後に清須城で織田家の跡継ぎを決める評定(会議)が開かれたという史実に基づくコメディです。

信長の二男信雄(妻夫木聡)を推す秀吉。三男信孝(坂東巳之助)を推す柴田勝家(役所浩司)と丹羽長秀(小日向文世)。遅刻する者、急遽呼ばれる者。それぞれの思惑、本音と建て前が交錯し、根回しや駆け引きを名の知れた戦国武将たちがセコくセコく繰り広げます。態度に筋が通っていて格好良かったのは前田利家(浅野忠信)ぐらい。

髷のヅラはリアリズムなのかな。普通の時代劇ではあまり見たことのない形状です。むしろ一般の時代劇がいかに虚構と様式美の上に成立しているということがよくわかります。

マザコンで知られた三谷監督のこと、数こそ少ないですが女性の登場人物たちはみな美しく、強く、したたかに描かれています。農民の出である寧々(中谷美紀)以外、お市の方(鈴木京香)も松姫(剛力彩芽)も殿上眉(所謂麻呂眉)で怖い。眉毛ってすごい大事だなあ、と思いました。


2013年12月21日土曜日

transmission knocking’bird revue

夕やけだんだんが夕陽に染まるころ、谷中ぎんざ商店街を通って、古書信天翁に着きました。Double Takeshi Production presents TKレビューvol.7 "transmission knocking’bird revue" にご来場のお客様、お手伝いや応援してくれた方々、共演者のみなさん、どうもありがとうございました。

小森岳史とはTKレビューの前身"3K"を始めた2000年から、毎年コンスタントに共催・共演しています。生硬で知的な暴力性を湛えた初期作品から徐々に「軽み」を加えてきたように思います。開演前に僕が、先頃亡くなったロックスター、ルー・リードの"Xmas in February"をかけていたのですが、それにかぶせてか、彼の"Why Do You Talk?"の訳詞をリーディングしたのがよかったです。

石田瑞穂さんの朗読ははじめて聴きました。まさしく「朗読」と呼ぶのが相応しい正統派の静謐な朗読で、吃音を模した不自然なリズムのこなれていないところなんかも「そうそう現代詩ってこんな感じだった」と思いました。作品テキストが端正で美しいので、よけいにそう感じたのかもしれません。小森さんの「変化のときが訪れた」(サム・クックの訳詞)と僕の「Universal Boardwalk 2009-2010」から「十月」をカバーしてくれました。

児玉あゆみさん(画像)のパフォーマンスには会場にいた誰もが強く感情を揺り動かされたのではないかと思います。作品に込められた祈り、伝えるための言葉選び、息づかい、声。途中、僕の「虹のプラットフォーム」のカバーが挿入されましたが、全体の流れに完璧に溶け込ませる力量は本物です。とがりまっくたエキセントリシティゆえにスタンダード化してしまう。音楽ならビョーク、美術なら草間彌生。児玉さんは詩(もしくは朗読)の世界でそういう存在になる可能性を持っているといっても過言ではないでしょう。

そんな感じでカバー祭なTKR07でしたが、天邪鬼な僕は自作詩のみで。「(タイトル)」、「ANOTHER GREEN WORLD」、「月の子供」(書きかけの詩)、「観覧車」(新作)、「水玉」、「花柄」、「Doors close soon after the melody ends」の7篇を朗読しました。フィジカルをトップコンディションにもっていくことができず、悔いの残る内容になってしまいました。修正すべきところはよく判っているので、いい準備をして次のライブに臨みたいと思います。

2013年のライブは残すところあと1本。出入り自由のにぎやかなフェスです。是非!

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年末特別企画! Eniship ~愛するみんなと~
日時:2013年12月29日(日) Open 15:00 Start 15:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,500円 当日2,800円(ドリンク代別)
出演:レオンwith2福神 *Music
    ふてこいがーるず *Music
    ヒグチケイとゆかいな仲間達 *Music
    アカリノート *Music
    YuReeNa(ex.武井ゆりな)*Music
    桂有紀乃 *Music
    平林純 *Music
    Little Woody *Music/Animation
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年12月14日土曜日

船に乗れ!

この方とも長い付き合い、知り合ってから15年です。詩の教室を始めて13年半。ほぼ毎週のように顔を合わせますが、その間ふたりで食事したのは一度だけ(笑)。作家で書店フィクショネス店主、藤谷治氏の自伝的長編小説『船に乗れ!』がミュージカルになりました。

チェリストを目指す津島サトルは東京芸大付属高校の受験に失敗し、オルガン奏者である祖父(小野武彦)が理事長を務める三流私立音大付属高校に入学する。卒業までの3年間、青臭い自意識、芸術的挫折と苦過ぎる失恋を45歳になったサトル(福井晶一)が回想する。

バッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、メンデルスゾーン。誰もが耳にしたことのあるクラシック音楽の名曲にメロディを乗せて登場人物たちが心情を歌います。主役サトル役の若きミュージカルスター山崎育三郎、ヒロイン南枝里子を演じた二十歳の小川真奈(左利き)。このふたりの歌唱力が光ります。

もともと器楽曲ですから人間の咽喉で歌いやすいようには書かれていませんが、それをきちんと歌いこなす技術は本物です。その点、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」はやはり自然で、感情移入できました。

一番面白かった場面は1年生の夏合宿。はじめてオーケストラで合奏をすることになった生徒たちが全く演奏できずパニックになるところ。チャイコフスキーの「白鳥の湖」に乗せて、高校生役の10数名が喚き、歌詞は重なって聞き取れず、それがよけいに混沌を伝える。このシーンの増田有華(元AKB48)のコミカルな動きは笑えます。

この原作小説の最大の美点は、音楽を精神性や作家論で語らずに、あくまでもフィジカル/メカニカルに楽器演奏を捉えて文書表現しているところだと思うのですが、それが最も端的に現われているシーンではないでしょうか。

また、このお芝居の最大の特徴は40人編成のフルオーケストラが舞台上で生演奏をするところ。東邦音楽大学の学生オケが、舞台2日目にも関わらず安定した演奏を聴かせます。きっと夏休み返上で練習したんだろうなあ。舞台上の物語の夏合宿とシンクロして趣き深いです。

氏の初舞台化作品が、下北沢駅前劇場でもザ・スズナリでもなく、いきなりシアターオーブという超メジャー展開でビビりましたが、どっこいスケールの大きな意欲作になりました。いろんな意味で珍品?怪作?として後世に語り継がれていってほしいです。

 

2013年12月7日土曜日

transmission knocking’bird revue

小森岳史カワグチタケシDouble Takeshi Productionが毎年秋に開催している詩の朗読会TKレビュー。もう7年目です。今年はすこしゆっくりめの師走に、日暮里の古書信天翁さんで、ゲストに詩のボクシングチャンピオンの児玉あゆみさんと 2013年H氏賞受賞の石田瑞穂さんをお迎えして開催します。

なにやらきな臭い世相ではございますが、こんなときこそじっくりと詩人の声を聴くというのも悪くないと思います。クリスマス前の土曜の夜です。ご都合よろしければ是非!

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詩の朗読会 TKレビュー vol.07
transmission knocking’bird revue

日時:2013年12月21日(土) 18:30開場 19:00開演
会場:古書信天翁(こしょ あほうどり)
   東京都荒川区西日暮里 3−14−13 コニシビル202
   03-6479-6479(むしなくむしなく) albatross@yanesen.net
料金:1000円
出演:児玉あゆみ石田瑞穂小森岳史カワグチタケシ 

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詩の朗読会(ポエトリーリーディング)も、今では広く行われるようになり、小説家や翻訳家などのイベントでも自作を 朗読することが多くなっています。2007年からはじまるTKレビューでは、毎回詩作はもちろん、その朗読技術も高いゲストを迎えて、毎回好評を博してい ます。

著名作家の朗読会ではありませんが、詩という力のある表現に出会える場所です。今まで知らなかった新しい詩人の朗読を聴く、それは楽しいことだと再確認できる場所です。

今回のゲストのお一人は前回に引き続き、児玉あゆみさん。主に朗読を武器にして、自分の世界を伝えることのできる、 若い詩人ではピカイチの存在です。そして、もうお一人は石田瑞穂さん。1999年に現代詩手帖賞を受賞し、2013年度のH 氏賞を受賞されました。その朗読に期待がかかります。

会場の古書信天翁さんは、JR山手線日暮里駅北口を出て左(西)にまっすぐ10分。ゆるい坂を上ってすこしだけ下ります。谷中ぎんざ商店街の入り口、夕やけだんだんの手前左側のビルの2階。美術書や写真集の品揃えが充実した夕陽のきれいな明るい古書店です。

ご予約は不要です。ノスタルジックな谷中の街並みやにぎわう師走の商店街をひやかしがてら、遊びに来てください!

 

2013年11月30日土曜日

Viola&Piano Duoconcert vol.4 "Casual Classic"

よく晴れた空に白い雲が浮かんでいます。11月最後の土曜日、山手線に乗って大塚へ。音楽堂 ano ano手島絵里子さんtriola蓮沼執太フィル etc.)、明利美登里さんの室内楽リサイタル Viola & Piano Duoconcert vol.4 "Casual Classic" を鑑賞しました。

このシリーズは2010年9月のvol.1から毎回聴いています。初回は生まれたて仔鹿のように震えていた手島さんが回を重ねるごとに堂々として演奏にも落着きを与えています。

クラシックから出発した演奏家が、オルタナティブを経由して、もう一度クラシックに戻ってきたときのアティテュード、グルーヴ、タイム感にはやはり現代的なアクチュアリティが存在する。そこが面白い。

"Casual Classic"とサブタイトルにあるとおり、今回はクラシックの有名曲や童謡、クリスマスソングなど、小品を中心とした構成でした。

・ドヴォルザーク 「家路より」
・中田喜直 「ちいさい秋みつけた」
・本居長世 「七つの子」
・山田耕筰 「赤とんぼ」
・マクダウェル 『忘れられたおとぎ話』 op.4
・モーツァルト 「トルコ行進曲」
・ピアソラ 「リベルタンゴ」
・シューマン 『こどもの情景』op.15より「トロイメライ」
・フランス民謡 「きらきら星」
・フォーレ 「エレジー」op.24
・シューベルト 『冬の旅』 op.89 D911より「菩提樹」
・シベリウス 『樹木の組曲』 op.75より「第5番 樅の木」
・ブラームス 『3つの間奏曲』 op.117 「第2番 変ロ短調」
・グノー 「アヴェ・マリア」
・スタイン 「レット・イット・スノー」
・トーメ 「ザ・クリスマスソング」
・チャイコフスキー 『四季』op.37より「12月 クリスマス」
・ウィリアムズ 『ヴィオラのための組曲』Group1
・アンコール 「聖しこの夜」

演奏者が終始無言で厳粛で張りつめた空気のホールコンサートと違って、気楽な雰囲気で、曲にまつわるエピソードやクリスマスの思い出などのMCもまじえたサロンリサイタルです。でも演奏技術はしっかりしたもので、今回は明利さんのピアノがジャジーで新鮮でした。「ヴィオラは秋の音色」っていう話もうなづけた(あ、ブラームスのop.117は僕には春のイメージです)。

シューマンやブラームスなどの日頃親しんでいる曲を現代的な解釈で聴けるのも楽しいですが、数少ない(?)ヴィオラソロ作品を毎回手島さんが発掘してきてくれるので、知らなかった音楽に触れることができるのもこのシリーズならでは。ヴォーン・ウィリアムズははじめて聴きましたが隠れた名曲でした。




2013年11月24日日曜日

日曜音楽バー『アサガヤノラの物語』

阿佐ヶ谷は駅から数分歩くと落ち着いた住宅街になります。そんな細い路地が交差する三角地に建つモルタルアパートの1階にあるBarトリアエズ。すっかり日が落ちた路地にその店の窓は柔らかい灯りをともしています。夏の終わりに切った髪を束ねたプリーツスカート姿のノラオンナさんが大きなガラスのドアを開けて迎えてくれました。

日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」。銀座から阿佐ヶ谷に引っ越してからはじめての出演です。

 1. 無題(都市の末梢神経が~)
 2. Universal Boardwalk 2009-2010
 3. 腐敗性物質田村隆一
 4. 音無姫 (岸田衿子
 5. 水玉
 6. 花柄
 7. 新しい感情
 8. もしも僕が白鳥だったなら
 9. (タイトル)
10. ANGELIC CONVERSATIONS
11. METAPHORIC CONVERSATIONS
12. DOLPHINS
13. 秋のソナタ
14. スノードーム
15. We Could Send LettersRoddy Frame

今回ご来場者特典として、現在絶版になっているカワグチタケシ第一詩集『1996~1997』完全復刻版をご用意しました。上記セットリストの9~15はその詩集に入っている1996~1997年、つまりいまから16~17年前に書いた作品群です。10年以上朗読することのなかった詩もありますが、意外と普通に読めるものですね(笑)。

やはりソロライブというのは、ちょっとだけ気持ちが入るというか。今回選んだ作品のひとつひとつに、選んだ理由がいつもよりすこし濃いめにあり、MCでそれを言ったり言わなかったりするのも楽しいものです。岸田衿子さんの「音無姫」は聴きにきてくれた11歳の美少年のために朗読しました。これもまた予約制ならでは。新作の「水玉」「花柄」もお披露目することができました。

ノラさんのお料理もハイボールもしっかりとしていながらやさしい味で、ライブ後のおしゃべりが弾みます。

銀ノラ2回と今回のアサノラと。2013年は3度のソロライブがありました。その3回をほぼネタかぶりなしでやり遂げた自分に乾杯。いつも気にかけてくださるみなさんのおかげです。どうもありがとうございます!

 

2013年11月21日木曜日

Poemusica Vol.23 "Muse Incarnation"

僕の暮らす埋立地の銀杏もすっかり金色になりました。ボジョレーヌーヴォー解禁の夜、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで、Poemusicaが開催されました。

Poemusicaにはサブタイトルがつくときがあります。SEED SHIPのオーナー土屋氏がつけるのですが、この日は"Muse Incarnation"。「ミューズの化身」とでも訳したらいいのでしょうか。先月のPoemusicaの終演後、土屋氏から「次回は3人のミューズに、それぞれの音楽に合う詩を添えてもらいたい」というオーダーをもらいました。

YuReeNaさんは二十歳。先月まで武井ゆりなという名前で活動していたので、こちらをご存じの方が多いかも。1曲目はゲストボーカルにYOUYOU.さんを迎えて "TODAY" からスタート。2曲目からはひとりで。Celtic Womanのカバー"You Raise Me Up"。新曲のクリスマスソングも含め自作曲もクオリティが高く、ピアノの左手は複雑なシンコペーションを正確に弾きこなす技術を持っています。肌が真っ白で憂いのある表情の和風美人ですが、天性の明るさとテンションの高さでみんなを笑顔にします。

ざっくりと編んだ生成りのセーターで登場したさとう麻衣さん。眼鏡美人。すこし低めのソウルフルな声が耳に残ります。躍動感のある楽曲とか、演奏とか、歌唱とか、ステージングとかって言いますが、麻衣さんの場合は「声」そのものに弾力性があって躍動している。これはもう天賦の才です。もちろん努力を怠らずにいるのだと思いますが。開演前に楽屋でカップラーメンを食べている彼女とカーテンのすきま越しに目が合ったときのいたずらっぽい表情がチャーミングできゅんとしました。

3人目は小林未郁さん(画像)。ミューズという呼び名がこれぐらいしっくりくる人もなかなかいないと思います。眉の高さでまっすぐ切り揃えられた黒髪のボブ。小柄で(公式プロフィールによると150cm)華奢なスタイルをヴェルヴェットのワンピースに包んで、お人形のような姿ですが、曲調も歌詞もゴシックの極み。イタリア、ポーランド・ツアーから帰国したばかりということですが、ヨーロッパで人気が出るのがよくわかわります。表現力があるってこういうことなんだな、って思いました。自分の声を完璧にコントロールしています。

僕が3人のミューズに捧げた詩。長野出身のYuReeNaさんには「初雪」と「」。山荘を出て東京に帰ってくる男と山荘に残してきた人の詩。さとう麻衣さんには「舗道」「夕陽」「答え」。1曲目の歌詞に出てくる心臓の鼓動につないで。そして小林未郁さんに「Doors close soon after the melody ends」。

2011年12月29日に始まり、2年間毎月続けてきたPoemusicaですが、今年12月はじめてお休みします(そのかわりにSEED SHIPには12/29の年末フェスに出演します)。次回は1月19日。はじめての日曜日のお昼開催です。昼間のSEED SHIPは床から天井まである大きなガラス窓から太陽がさんさんと降り注いでとても気持ちの良い空間です。鳥井さきこさんと京都からの中村佳穂さんの出演が決定。詳細決定しましたらまたあらためて告知しますね。ふだん平日はなかなか足を運びづらい方たちにも是非いらしていただきたいと思っています!




2013年11月9日土曜日

シダの群れ3 港の女歌手編

気づけば長い付き合いになっていました。東京アンダーグラウンドシーン最高のエンターテイナーとしてリスペクトするエミ・エレオノーラさんに誘われて、彼女が音楽を担当している岩松了脚本演出の舞台『シダの群れ3 港の女歌手編』を、渋谷東急Bunkamuraシアターコクーンで観賞しました。

訳あって組織に属さないヤクザ森本(阿部サダヲ)は密航に失敗し、港町のナイトクラブ「スワン」に流れ着く。そこには世界で勝負することを夢見る中年の歌手ジーナ(小泉今日子)がいた。スワンを仕切るのは暴力団都築組。その若頭結城(小林薫)に密輸の手伝いを依頼される森本。都築組の上位組織大庭組の幹部清水(豊原巧輔)。ジーナのマネージャー山室(吹越満)。この5人を軸に物語が進みます。

敵対する組織間の抗争、組内の上下関係と跡目争い、裏切り、スパイ、寝返り、銃撃戦。自ら好んで組織の論理に縛られているように見える男たちに対して、女たちはそれぞれ自分の足でしっかり立ち、踊り、歌う。男たちのなかで唯一組織にコミットしない森本は何処にも馴染むことができない。

ジーナ「最高でしたって何よ! 私のステージはいつでも最高。最低のときも最高なの。それは私が私だからよ!」

森本「走り出したときのまま走り続けないと気が済まない性分でね」

結城「言葉ってものは吐くだけじゃない。吐かれた者の反応ってものがある」

登場人物の相関関係が複雑なうえ、敵味方が入れ替わり続けるストーリーなので、芝居の進行に沿って充分に理解することは困難です。僕は幕が開いてしまえばあとは流れに乗ってしまえというほうなのであまり気になりませんでしたが。また、シリーズ第3作ということもあり、舞台には登場しない人物の名前がいくつか科白のなかに現れます。ライバル組織の構成員だったり、長年のファンだったり。これが舞台の内と外を繫ぐ回路となり、物語に不思議な拡がりを付加しています。

エミ・エレオノーラさん(作曲・ピアノ)と2管のクインテットはスワンのハコバンという体裁で、小泉今日子さんが唄う3曲の挿入歌(1曲は豊原巧輔さんとのデュエット)と劇伴のほぼ全てを生演奏しています。レニー・トリスターノばりのクールでアブストラクトなジャズからGROUPみたいに即興性の強いジャムセッションまで。エレガントに洗練された演奏は、音大で現代音楽を学び、1980年代には銀座の最高級クラブでラウンジピアノを演奏していたエミさんのスキルが遺憾なく発揮され、ともすれば湿っぽくブルージィに流れがちな任侠劇をワンランク上のエンターテインメントに押し上げています。

シアターコクーンでの公演は11月30日まで。その後、大阪シアターBRAVA!(12/6~15)、北九州芸術劇場(12/21~23)へ。クリスマスまで続きます。

 

2013年11月3日日曜日

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語

曇り空の日曜日、ユナイテッドシネマ豊洲で、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』を観ました。

前作から1年(オリジナルのテレビシリーズからは2年半)。魔法少女たちのその後ということになりますが、実は主要な登場人物5人のうち3人は戦闘中に死亡、主人公まどか(画像中央奥)は「円環の理」となって概念化、残されたほむら(画像中央手前)が荒廃した世界でひとり闘い続ける、というのが前作のエンディング。

ところが新作では魔法少女が5人揃って学園生活を送っているシーンから始まります。そして夜な夜な力を合わせて華麗に敵(ナイトメア)を倒しています。そのなかで、ほむらひとりが「私達の闘いってこれでよかったんだっけ?」と疑問を抱いている。

それは仮想された街に魔法少女たちを閉じ込める罠だった。

「あなたはこの世界が尊いと思う? 欲望よりも秩序を大切にしている?」という問い。世界中の魔法少女たちの運命を救う「円環の理」よりも強い「愛」によって、ほむらは宇宙を崩壊させてしまう。「愛」は美しく優しいいだけではなく、嫉妬も独占欲も含んでいるから。

現代日本のアニメーション技術が世界最高レベルであることは間違いなく、その粋を極めたダイナミックかつ繊細な映像美で魅せますが、ストーリーは混沌を極め、カオスを収拾しないまま映画が終わります。挑戦的な問題作。もう一度仔細に検証してみたくなる。はたして次作が製作されることはあるのでしょうか。



2013年10月27日日曜日

川俣正・東京インプログレス-隅田川からの眺め

初対面の楽屋トークで「どこに住んでますか?」っていうのは定番ですが、先月のPoemusicaでもそんな話になり、僕が「豊洲ですよ」と答えると、古川麦くんが「来月豊洲で演奏します」と言うのです。彼の参加しているプロジェクトのひとつ、オルタナティブ・フォーク・ユニット「表現(Hyogen)」が、現代美術家川俣正氏のイベントに出演する。会場は僕の自宅から徒歩10分。聴きに行ってきました。

川俣氏の『東京インプログレス-隅田川からの眺め』という作品は、一種のパブリックアートで、2010年から2012年にかけて、南千住、佃島、豊洲の3箇所の公園に巨大な木造のオブジェを設置しています。そのオブジェを巡る3度のツアーの過程で公開制作された楽曲を、オブジェの設置期間が終了するこのタイミングで披露しようというもの。

表現(Hyogen)は、権頭真由 (アコーディオン)、佐藤公哉 (ヴァイオリン)、古川麦 (ギター)、園田空也 (コントラバス)の4人組。全員が歌います。今日は現代舞踊家の酒井幸菜さんが加わって、5人のパフォーマンスでした。

その音楽は風景に溶け込まず、むしろ対峙しているように思えました。それはナチュラルな素材であるがゆえにコンクリートだらけの景色に融合しない豊洲ドームの存在感にも呼応する。酒井さんのダンスが海鳥を思わせる優美な動きで、音楽と風景のあいだを取り持っているようでした。

音楽の途中で麦くんがギターをホルンに持ち替えてステージを離れ、ボードウォークの突端で吹き始めたとき。豊洲に越してきて最初の大晦日のことを思い出しました。1993年ですから、ちょうど20年前。この関東大震災の瓦礫による埋立地に住み始めた頃、ここは造船所の町で、建設資材工場や砂糖工場、冷凍倉庫などが建つ、様々な国籍の屈強な港湾労働者たちの町でした。年が明ける時に除夜の鐘のかわりに停泊している貨物船が一斉に汽笛を鳴らします。船によって微妙に音程が異なり、その不協和音を僕は美しく感じました。

5年ほど前から再開発が進み、今ではタワーマンションが立ち並ぶアーバンレジデンスにすっかり生まれ変わりました。おかしなことに、自分の知っているこの土地の風景が失われてしまってはじめて、自分が豊洲ネイティブだと感じられるようになりました。いままでの生涯で一番長く暮らしている場所ですが、そういうことではなくて。風景が記憶として固定されたときに、新しくそこに住まう人の知らない風景を持ったときに、はじめて人はその土地をホームタウンと感じるのではないでしょうか。

台風の翌日、東京湾岸は快晴。空気が乾燥してクリアです。まだ雨の名残りで湿った芝生にシートを敷いて寝転んで。風は少々ありますが、空にはゆりかもめが飛んで気持ちの良い日曜日の午後。そんなことをぼんやりと考えていました。

 

 

2013年10月26日土曜日

日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」

今年も早いもので残りふた月ちょっとですね。たくさんライブに出させていただきました。ありがたいことです。

というわけで、カワグチタケシ2013年最後のソロライブは、リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさんが日曜店長をつとめる「アサガヤノラの物語」にて。2月6月にも呼んでいただいた「銀座のノラの物語」が阿佐ヶ谷にお引っ越し。おかず2品と炊き込みご飯が増えて、しかも500円お得になりました。中央線特価!

JR中央線阿佐ヶ谷駅南口徒歩4分35秒「Barトリアエズ」にて。生声の朗読とノラオンナさんの絶品手料理をお楽しみください!

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日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」

出演:カワグチタケシ
日時:2013年11月24日(日)
   17時開場、18時開演、19時~バータイム
会場:Barトリアエズ 東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-43-1 NKハイツ1F
料金:4,500円
   ライブチャージ
   5種のおかずと炊き込みご飯のアサノラ弁当(味噌汁付)
   ハイボール飲み放題(ソフトドリンクはウーロン茶かオレンジジュース)
   スナック菓子3種
   以上全部込みの料金です。

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更に御来場の皆様にはもれなく1997年に私家版で製作し現在入手困難となっているカワグチタケシ第一詩集『1996~1997』完全復刻版をプレゼント!

『1996~1997』は、藁半紙、ボール紙、アクリルシート、ブリキのペーパーファスナーで構成されています。経年劣化しやすい素材をあえて用いることで、書籍、特に詩集の重厚さや永続を願う想いから遠ざかりたいというデザインコンセプトを持っていました。プリシラレーベル設立以前のことです。

1997年当時に500冊ほど販売しましたので、お手元にまだ残っているという方もいらっしゃると思いますが、16年経っていますから、通常の保管状態であれば、黄ばみ、錆などが生じているはずです。是非この機会にもう一冊。はじめて手にする方ももちろん。アサノラ限定です!

せっかくなので、最近あまり朗読していない、当時の作品も取り上げてみようかな、と思っています。冬の入り口をみなさんといっしょに過ごせたら幸いです。

*完全予約制、先着10名様限定の超プレミアム・ディナーショー!
 ご予約は nora_onna@hotmail.co.jp まで。お名前、人数、
 お電話番号をお知らせください。
 お席に限りがございます。どうぞお早目に!

  

2013年10月14日月曜日

Poemusica Vol.22

台風で下北沢駅の地下プラットフォームが冠水した前々日は体育の日の祝日。金木犀の香る緑道を通り Workshop Lounge SEED SHIPへ。詩と映像と音楽の夜 Poemusica が開催されました。Poemusicaにライブペインティングが入るのは3月21日神田サオリさん以来。とても楽しみにしていました。

今回のオープニングには10月の詩を2篇。「風の通り道」と「山と渓谷」を選びました。

そして今夜のライブペインター Rio Nakanoくんの紹介に続いて、登場したMinakoさん。弱冠21歳。若さと成熟の軋みがあって、それが音楽の陰影を形作っています。スチール弦のアコースティックギターの可能性を最大限に引き出そうとしている。歌も技術が高く、しかも切実な響きを持っている。内面に向かって発せられる攻撃的な曲調なのに深い包容力を感じさせる。ループマシン使いもエレガントな安定感がありました。

唄子さんは、4月18日8月22日に続き、3度目のPoemusicaです。繊細で壊れやすい音楽なのに、ゆるぎない世界を持っている稀有なミュージシャン。3度目にして気づきましたが、ガットギターの奏法にその秘密があるようです。ブレスと右手のフェルマータが完全に同期しており、緩急が自在で呼吸をするような演奏です。金木犀の香りに導かれた新曲「10月の初恋」のブルガリアンヴォイスを思わせる多重録音された和声も美しかった。

3組目は9×9。ギター辻岳人さん、ボーカルyuco*さんのユニットで「くく」と読みます。R&Bテイストもあるウェルメイドなポップミュージック。yuco*さんの低い地声から確かな音程の高音への伸びが心地良く、ギターとのスリリングな駆け引きもあり。辻さんもガットギターですが、唄子さんとは対照的に、ソリッドなカッティングとリリカルなオブリガートを手際よく繰り出して飽きさせません。yuco*さんの明るくキュートなキャラクターはブレークの予感がします。

中田真由美さん(画像)。天衣無縫で天真爛漫で天然で天才。歌詞、旋律、声、編曲、そのどれもが中田さんです。クラスでも無口であんまり笑わない女子っているじゃないですか。でも実はたくさん引出しを持っていて、ときどき口を開くとびっくりするような面白いことを言う子。スチール弦のミニマルなリフをちょっとだけねじれたメロディに効果的に絡めて、切れ味鋭い詞をあっけらかんと歌います。歌と語りのあわいも絶妙でした。あ、中田さん自身はよく笑うかわいらしい人です。

Rioくんには昨年11月16日にもPoemusicaで描いてもらいましたが、約1年経って更にスケールアップした感がありました。4組の奏でる音楽や歌詞に呼応して。中太マジックのノイジーなドローイングでスタート。腐刻画に描かれた古代都市、夥しい文字と記号。そして掌と指で原色の黄色い曲線が引かれ、ノイズのなかから赤と白の小さな花が何輪も開く。ライブの後半に差し掛かるとノイズは白色のペンキで塗り潰され、はじめは性別のわからない横顔の輪郭。次に剥がされたマスキングテープの下から近過去の痕跡と身体の線が現われ、長い髪とドレスが加わって女性と判別する。伸ばした右手からこぼれるキャンディ。トリックオアトリート!

約3時間休みなく描き続けてくれました。歌い手たちもペインティングの進行や絵具の匂いを間近に感じながら。新たな視点を提示されるごとに客席からは静かな感嘆のため息が聞こえる。

そんなパフォーマンスを観聴きしながら、僕がクロージングの朗読に選んだのは、戦闘美少女讃歌でもある「星月夜」と時間と空間の多重性を主題とした「」という2篇の詩。濃密なのになぜか風通しの良い、とても不思議な一夜でした。

さて来月のPoemusicaはこれまた大注目の女性アーティスト3組をお迎えしてお届けします。どんな夜になるのか、いまからとても楽しみです。

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Poemusica Vol.23
日時:2013年11月21日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,500円 当日2,800円(ドリンク代別)
出演: 小林未郁 *Music
    さとう麻衣 *Music
    YuReeNa(ex.武井ゆりな) *Music
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年10月12日土曜日

そして父になる

10月も半ば近くでようやく秋らしくなってきました。ユナイテッドシネマ豊洲で、是枝裕和監督、カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作品『そして父になる』を鑑賞しました。

前橋の総合病院で同じ日に生まれたふたりの男児。ひとりは福山雅治演じるゼネコンのエリート社員と専業主婦尾野真千子の一人息子として、もうひとりは前橋で電器店を営むリリー・フランキー真木よう子の三人兄妹の長男として育てられるが、6歳のときに血液型から取り違えられたことが発覚する。民事訴訟が進むなかで、それは病院側のミスではなく当時勤務していた看護師の故意によるものだったことが判る。

血のつながりを選ぶか、ともに過ごした時間を選ぶか、という選択に揺れるふたつの家族。という重たいテーマですが、是枝監督作品らしく、感傷に流れることなく、エピソードを淡々と積み重ねて、静かに描かれています。

僕自身は血統や親族というものに対して、非常に薄い感覚しか持ち合わせていないので、迷わず後者を選ぶと思います。ただ、相手がいることなので実際のところはわからないし、映画の中でも明確な答えは提示されません。東京と地方、年収格差、高層マンションと古い庭付き一戸建て、多様な価値観について考えさせられる映画です。

自然光を活かした陰翳のあるカメラワークが登場人物の心情を丁寧に画面に定着させています。そして、全編に流れるグレン・グールドのピアノ(J.S.バッハゴルトベルク変奏曲』)。東京と前橋のあいだに自動車で移動するシーンが必ず挿入されますが、エンジン音などは一切排して、ピアノだけが流れる。その静謐さが物理的なまた心情的な距離を強調しています。

ふたりの子役(二宮慶多黄升炫)の芝居がどこまでも自然で、前作『奇跡』でもそうでしたが、是枝監督は子供を撮るのが本当に上手い。ちょうど同じ日にNHKで放送していた姜尚中との対談番組を観て、子役の演出法についての話を聞き、なるほどなあ、と思いました。

 

2013年9月28日土曜日

Kitchen Table Music Hour vol.1

都営地下鉄三田線白山駅A3出口は坂の途中にあります。そこから石段を何段か下った右手がJAZZ喫茶映画館。初秋の午後、僕が主催するはじめての音楽オンリーのライブ"Kitchen Table Music Hour vol.1"がなごやかに開催されました。

僕が普段、自宅のキッチンテーブルで、本を読んだり、お菓子を食べたり、詩を書いたり、詩集の製本をしたりしているときに聴いている音楽を生演奏でお届けしましょう、というのがこのライブのコンセプト。初回はこの組み合わせしかない。まえかわとも子さんノラオンナさんに出演をお願いしました。実はこのふたり、今日がはじめましてだったのです。

まえかわとも子さん(左利き)。大磯から東海道線でやって来ました。なんとこの日のために、Kitchen Table Music Hour のテーマ曲を作ってきてくれて、これがリハーサル中のうれしいサプライズ。そして本番でもうひとつのサプライズ。オリジナル曲「冬の街」の間奏で僕が書いたソネット(14行詩)「」を朗読してくれました。自作曲もカバーも終始リラックスした演奏で、明るくチャーミングなキャラクターと相俟って、客席の空気を柔らかくほぐしました。

ノラオンナさん(画像)は冒頭4曲、「流れ星」「パンをひとつ」「今日は日曜」「タクト」の流れが特に素晴らしかったです。その間MCを挟まず、ウクレレの4本の弦の音と歌声だけでこれだけ濃密な音楽を奏でられる人がどれだけいるでしょう。拍手も忘れて聴き入る客席。曲と曲のあいだのわずかな静寂を壁に掛けられたたくさんの振り子時計のカチコチいう音がつなぎます。会場の響き、特性を短い時間で味方につけるそのスキルには驚ろかされます。

ふたりとも地声のキーは低いのですが、まえかわさんは輪郭のはっきりした陽性の声、ノラさんはすこしくぐもってざらついた感触の声。歌詞も、抽象的で自然描写を中心したまえかわさん、恋愛や人の心の襞を丁寧に掬い取るノラさん。と対照的なのですが、ふたりの音楽に共通するのは、言葉がくっきりと耳に届くことです。そして高く持続する集中力と音楽に対する信頼感。そんなところが好きなんだなあ、と歌を聴いていて気づきました。

客席の反応もとてもあたたかくて、アンケートを読むとみなさんに楽しんでいただけた様子。ほっとしました。ご来場のお客様はもちろん、気にかけてくださったみなさん、映画館のオーナー吉田ご夫妻、出演者のおふたり、どうもありがとうございました。会場にいた人たちのなかで、たぶん僕がいちばん幸福な時間を過ごしていました。

"Kitchen Table Music Hour"は、できればこのようなかたちで、半年に一回ぐらいのペースで続けていけたらなあ、と思っています。次回はまだ未定ですが、どこかでこのライブの告知を見つけたら、是非ともよろしくお願いします!

 

2013年9月21日土曜日

藤城清治 光のファンタジー

9月21日は賢治忌。宮沢賢治80年目の命日に故郷花巻を訪ねました。その折に東北新幹線新花巻駅から程近い宮沢賢治童話村に隣接した花巻市博物館で開催中の『藤城清治 光のファンタジー』を鑑賞しました。

藤城清治といえば、日本を代表する影絵作家です。小人やサーカスをモチーフにしたメルヒェンな作品は、CMや雑誌で誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

正直僕はメルヘンとか童話とか申し訳ないぐらい興味がなくて、宮沢賢治でも『銀河鉄道の夜』『グスコーブドリの伝記』以外はどうもピンとこない。もちろん『春と修羅』は大好きで(除く「無声慟哭」詩篇群)、それで忌日にゆかりの地を巡ったりしているわけですが。

そんな残念な賢治読者である僕でも、この作品群には圧倒されました。

展示はクロニクルになっており、1950~60年代のモノクロ作品群から。『西遊記』の『いかだに乗る悟空』。水面の波紋のグラデーションにまず驚く。微妙な濃淡と奥行を、何層にも貼り付けたトレーシングペーパーで表現している。その正確さ、美しさ。影絵の原画ですから、すべての作品が裏側から光を当てられ、内側から輝いているように見えます。

そしてトレーシングペーパーがセロファン紙に変り、以降はカラー作品になります。カミソリで数ミリ単位のすべてのパーツを切り、透明な台紙に貼り付けていく。それが描線を形成し、色彩と遠近法を生成する。と書いてしまうと簡単ですが、原画を仔細に注視すればそこには、偏執的なまでに構築された細部があります。自由なイマジネーションとそのヴィジョンを実現するために費やされる気の遠くなるような作業の手間と時間を思わざるを得ない。

初期の頃には真っ黒な横顔のシルエットに切り取られた白眼だけの表情でしたが、2010年以降に描かれた絵本『セロ弾きのゴーシュ』『風の又三郎』などの連作群では黄色人種の肌色と顔面の凹凸、皺や汚れまで陰翳だけで表現しています。80歳代後半になっても明らかに技巧が上がっているし、制作ペースがまったく落ちていない。

陸前高田、気仙沼、福島第一原発など、東日本大震災の被災地を描いた作品がプリントだったことが唯一残念でしたが、1960年代に劇団木馬座が上演した影絵劇『銀河鉄道の夜』の動く現物セットも楽しい、本当に充実した素晴らしいレトロスペクティブです。



2013年9月19日木曜日

Poemusica Vol.21

今年の中秋の名月は天文学的にも満月で、これが次に一致するのは8年後の2021年だそうです。多くの人たちが7年後のことを想像している傍で、8年後のことを考えるものいいかもしれませんね。そんな十五夜に下北沢 Workshop Lounge SEED SHIP にて "Poemusica Vol.21"が開催されました。

この2日後の9月21日は宮沢賢治が1933年に37歳で亡くなってから80年が経ちます。そこでオープニングに『銀河鉄道の夜第3稿から、主人公ジョバンニとブルカニロ博士のラストシーンの会話を朗読しました。

同じく宮沢賢治作詞作曲『星めぐりの歌』で、空気をそのまま引き継いで古川麦さん(画像)の演奏が始まりました。フルサイズのと子供用のショートスケールのと2本のガットギターを取り換えながら歌います。ギタリストとして、表現(Hyogen)Doppelzimmer など複数のプロジェクトでも活躍していますが、フォルクローレ、ルーツミュージックに対する深い愛情、確かな演奏力、けれん味の無い誠実なソングライティング、訥々とした歌声に、四半世紀前にはじめてLittle Creatures を聴いたときのようなわくわくを感じます。

つづいて音橙(おと)さん。ピアノ弾き語り。3ヶ月間のライブ休止明けということで、リハーサル中は「緊張する」を連発していました。ダークブラウンのニットワンピースからのぞく腕も脚も華奢で心配になっちゃうほどですが、本番はピアノも歌も実に堂々たるもの。ピアノの一音一音に込めたられた思い、途切れない集中力、澄んだ声、切ない歌詞、オーソドックスながら鮮度の高い旋律。その姿の美しさに、会場にいた多くの人たちが息を呑んで見とれていました。

僕の2番目の出番は満月にちなんで「月」の出てくる詩を3篇。「無題(静かな夜~)」、音橙さんの1曲目「あの夏の日」から花火の描写を受け取って「水の上の透明な駅」、「虹のプラットフォーム」。

そして、トリオアカシアーノさんの1曲目が「劇団プラットホーム」と、タイトル付けでつないでくださいました。歌劇団タンゴアカシアーノのアコースティック編成がトリオアカシアーノ。ボーカル立川亮さんが圧倒的な存在感で表現するのは、鉄道マニアの少年ゲイのコンビニ店員40代女子イメクラで甘えん坊に還る部長、などなど。ちょっとおかしな市井の人々。ピアノ田原亜紀さん、ウッドベース若山隆行さんの完璧な演奏に乗せて歌う姿は、フレディ・マーキュリーの歌唱力を持つブライアン・フェリーといった趣きでした。

さて、来月のPoemusicaは、体育の日。祝日ですので、いつも気になっていても平日はなかなか来られない、という方はチャンスです。この機会に是非。もうおなじみ唄子さん(超美人)はもちろん、1年ぶりに登場するRio Nakano くん(ガチでイケメン)のライブペインティングも楽しみです!

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Poemusica Vol.22
日時:2013年10月14日(月・祝) Open 18:00 Start 18:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演: 中田真由美 *Music
    唄子 *Music
    Minako *Music
    9×9 *Music
    Rio Nakano *Live Painting
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年9月14日土曜日

VAMOS ブラジる!?

2013 第2回 VAMOS ブラジる!? ♪音楽で結ぶ中央線ブラジル化計画♪』に、今年は The Xangos が参加するとあって、これは見逃せないと出かけました。

このイベントは、荻窪、西荻窪、吉祥寺の6店舗を会場とし、9月14日(土)13時から翌15日(日)22時まで、1時間刻みで出演者が入れ替わり、約100公演が繰り広げられます。すべてドリンク代のみの投げ銭制で、観客は気になる演奏者をチェックして各会場をはしごするという楽しいフェスです。

オルタナ・ボッサ・トリオ The Xangos は、ギターの中西文彦さん、7弦ギターとバンドリンの尾花毅さん、ボーカルのまえかわとも子さん(左利き)の3人組。湘南方面を中心に活躍していて、都内のライブは本数が少なく貴重です。この日は14時から西荻窪のブラジルカフェ"copo do dia"、16時から吉祥寺の"world kitchen BAOBAB"の2公演があり、両方に行ってきました。

"copo do dia"のThe Xangos はメロウでカジュアルな佇まい。明るい午後の住宅街を行きかう人たちを背景に、ここちよいリズムで聴かせます。ふたりのギタリストは、表現は控えめながら抑制の効いた演奏をしましたが、ボーカルのまえかわさんはどこまでも自由。旋律を自在に羽ばたかせ、その高低差に軽いめまいを覚える。

約40分の演奏が終わり、会場の外に出ると尾花さんがいたので「BAOBABも行きます」と伝えると、「次はドッカンといきますよ!」と笑います。西荻窪から吉祥寺まではJR中央線で一駅。西荻の可愛らしいお店をいくつか覗きながらゆっくり移動しました。

"world kitchen BAOBAB"では、尾花さんの言葉通り、グルーヴマシンと化したThe Xangos でした。三人それぞれの演奏が逸脱と収斂を繰返しながら、ぎりぎりのところでバランスを取るスリリングな音楽。満員の客席を完全に掌握していました。ライブは演奏者だけでなく、会場全体が作る空間そのものだというのがThe Xangosを観るとよくわかります。

サーティーワンのアイスクリームを食べながら、次に向かった吉祥寺のジャズバーSTRINGSで聴いた行川さをりさん(vo)と前原孝紀さん(g)のデュオも、細部まで行き届いたテクニックとエモーションの表現に優れた完成度の高い素晴らしい演奏でしたが、これに比べてThe Xangos のごつごつした音の塊、破天荒な疾走感は明らかに異形で、オルタナの名に恥じないものでした。

まえかわとも子さんはソロのギター弾き語りもいいんです。是非こちらも!

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カワグチタケシ presents "Kitchen Table Music Hour vol.1"

日時:2013年9月28日(土) Open 15:00 Start 15:30
出演:ノラオンナ(歌とウクレレ)
    まえかわとも子(歌とギター)
会場:JAZZ喫茶映画館
    〒116-0013 東京都文京区白山5-33-19
    03-3811-8932 http://www6.ocn.ne.jp/~eigakan/
料金:無料(1drink order)+投げ銭 
※会場の地図はこちら

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2013年8月31日土曜日

OUR TOWN わが町 新宿2丁目

すこしおさまっていた暑さがまた戻ってきました。下北沢OFFOFFシアター劇団フライングステージ第38回公演『OUR TOWN わが町 新宿2丁目』を鑑賞しました。カミングアウトしているゲイの劇団が、ソーントン・ワイルダー(1897-1975)のストレイト・プレイ・クラシック『わが町』(1938)の舞台を、彼らのホームともいえる新宿二丁目に置き換え舞台化。

元禄年間、内藤新宿の肺病病みの遊女と炭屋の悲恋。明治時代、夏目漱石の養父母の居所。1958年、赤線廃止前夜の売春カフェ(ここまではノンケの話)、1987年バブル期のナイトクラビング。2000年、プライドパレードの誕生。2013年、世界有数のゲイタウンとして発展した現代。主役は新宿の街そのもの。まるで『ツリー・オブ・ライフ』や『クラウドアトラス』のような壮大な叙事詩が僅か300m四方の街を舞台に繰り広げられます。

1999年の第14回公演『オープニング・ナイト』からずっとこの劇団の本公演は(途中いくつか抜けはありますが)観続けています。脚本・演出の関根信一さんは僕と同年令。当初はゲイとしてのアイデンティティや周囲との軋轢に懊悩する若者が主役で、その自己愛と自己嫌悪は息苦しいほどでした。いつしか大人になり、自我よりもセクシャルマイノリティのコミュニティに対するコミットメントに主題が変化しています。

そして今回の感動的なラストシーンでは、死者たちが雲の上からレインボーパレードをあたたかい目で見下ろしている。突然の雨、そして雨上がりの夜空に輝く星座。公演で何度も主演をつとめた羽矢瀬智之さんが今年4月に34歳の若さで亡くなりました。舞台上の死者役の俳優たちといっしょに、彼も僕たち客席を見守っている。そんなことを考えて、ちょっと胸が熱くなりました。

5年程前から大きな役を任せられるようになった岸本啓孝さん。お芝居がとても上手くなったなあ、と思います。女形は多数出ていますが、唯一の客演女優(生物学的にも女性)木村佐都美さん。江戸の遊女と現代の女子高生とバツイチ女、振れ幅の大きな演じ分けはコメンディエンヌとしての彼女の魅力を存分に発揮するものでした。そして伊藤馨さんの照明はいつも本当に素晴らしいです。

 

2013年8月22日木曜日

Poemusica Vol.20

残暑お見舞い申し上げます。8月も残10日。下北沢Workshop Lounge SEED SHIP にて"Poemusica Vol.20~生温い風はいらない~"が開催されました。

唄子さんは4月18日のPoemusica Vol.16につづき2回目の登場です。大きな瞳を伏せ、ガットギターの柔らかいアルペジオに乗せて歌う旋律は時折こぶしが入るアジアンテイスト。コーラが好きだった亡きおばあちゃんに捧げた新曲もロマンチックでした。

つづいて青木さおりさん(名前のかな表記はCDに倣っています)はピアノ弾き語り。ぽわんとしたひとなつこい雰囲気の方ですが、声は意外に硬質なアルトです。歌詞の抽象度も高い。でもメロディに無理がなくとても自然なので、硬質さが透明感に転換して、優しい音楽になっています。

トリは広島綾子さん。アコースティックギターのファルコンさんとのデュオで(画像参照)。洋楽テイストの強い解放感のある曲調を抜けの良い爽やかな声で歌います。ピアノも歌もアンサンブルも完璧にコントロールされたプロフェッショナルで小気味良いステージング。"Close to You"の邦訳カバーにはきゅんとしました。

今回出演した3組の女性アーティストに共通して感じたのは安定感。自分の伝えたいことがはっきりしていて、表現手法に確信を持っている。だから聴く人たちはみんな安心してその世界に身を置くことができます。

僕は3篇の詩を朗読しました。オープニングに田村隆一のカバーで「三つの声」。ちょうど15年前、1998年8月26日に75歳で亡くなった戦後を代表する現代詩人です。そして自作の夏の詩をふたつ「DOLPHINS」「都市計画/楽園」。タイトなリズムで正確に朗読することができたと思います。

そして次回からしばらくPoemusicaをお休みするLittle WoodyはいつものLittle Woodyでした(笑)。最後にMCで話したスーパーボールの比喩はしみじみ届いたよ。Poemusica Vol.2で出会って1年半。毎月楽しませてくれてありがとう。Little Woody Band と3度共演したことを、いとことかに自慢したい。これからもきっと接点があると思います。そのときはよろしくね!

2011年末から始まったこのライブイべントも早いもので20回めを迎えました。これまで関わってくださったすべてのみなさんに感謝します。またこれからもよろしくお願いいたします。次回は9月19日です。そのころにはすこしは涼しくなっているといいな。

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Poemusica Vol.21
日時:2013年9月19日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:トリオアカシアーノ(from 歌劇団タンゴアカシアーノ)*Music
    古川麦(from 表現)*Music
    音橙 *Music
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年8月2日金曜日

ら・ら・ら・森の音楽会

8月に入りましたが、東京は冷房要らずの涼しい日が続いています。そんな今夜は青山CAYへ。小池アミイゴ企画 青山純情商店街 第四夜『ら・ら・ら・森の音楽会』に行ってきました。

ら・ら・ら。ギター/ピアノのmueさん、ジンベ(ジャンベ)/ガットギターの奈良大介さん、カリンバのコイケ龍一さんのトリオ、3人全員がリードボーカルをとり、それぞれテイストの異なる歌声と、そのハーモニーが特徴です。

昨年の夏に長野県の森の中でフィールドレコーディングされた1stアルバムの再現ということで、この日はステージを使わず、客席の真ん中に置かれた一本の灌木を囲んでメンバー3人が向き合って演奏するというスタイルでした。曲順は違いましたが、アルバム全曲に加え、カバー曲をいくつか、という構成です。

mueさんの音楽が持つシャープでエッジィな部分、複雑なテンションや転調の多用はあえて封印されていますが、ジンべの重低音やエフェクトされたカリンバの浮遊感を活かして、空間的な処理が施された繊細で実験性の高い音像です。にもかかわらず、全体的な印象としてはピースフルでレイドバック。奈良さんの息子さんで小学生のじゅうき君のミニジンベや小池アミイゴさんのピアニカも加わって、にぎやかに、なごやかに時が過ぎていきます。

キャンプファイア・ミュージック。客席を3分割して3声ポリリズムの合唱、会場のテンションが一気に上がったジンべソロなど見どころ聴きどころの多い、夏休みにぴったりな楽しいショーでした。


2013年7月27日土曜日

風立ちぬ

東京に蒸し暑さが戻ってきた土曜日、ユナイテッドシネマ豊洲で、スタジオジブリ製作、宮崎駿原作・脚本・監督『風立ちぬ』を観ました。

「飛行機は美しい夢だ。戦争の道具でも、商売の道具でもない」。第二次世界大戦中、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)を設計した堀越二郎(声:庵野秀明)を主人公にしたこの映画は、公開直後から賛否両論を呼んでいます。

ジブリ映画の新作ですから注目を集めるのは当然ですが、否定的な意見は主にイデオロギー面から。主人公が軍需産業に従事する過程に葛藤が無い。宮崎駿ともあろう者が戦争賛美に転じたか、というもの。それか、庵野監督の台詞が棒読み過ぎる(笑)。

「国を滅ぼしてしまった」「一機も帰ってこなかった」という控えめな台詞では反戦のメッセージが伝わらない。確かにそうかもしれません。兵器を作る暇があったら、病気の新妻をもっと献身的に看病しろ、と。

ナウシカや『もののけ姫』のサンのように失われつつある自然を取り戻すために闘うヒロインはこの映画には登場しません。実在の人物を描いているのに、夢で始まり、夢で終わる。

僕もどちらかといえば左翼的な思想を持っていますが、ジブリ映画にはプロパガンダを求めていません。監督はきっと、飛行機を描きたかったのだと思います。そして、人間が空を飛ぶという行為の美しさと愚かさを。エンジンの動作や飛行シーンのクオリティは、奥行きの深い背景の自然描写に支えられて、『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』や『ハウルの動く城』を超えるダイナミズムと抒情性を持っています。そして最近では『コクリコ坂から』にも通じるノスタルジックな街並み。また関東大震災の縦揺れの表現は非常に斬新。これらは劇場での鑑賞に値すると思います。

それでも、この映画で最も心を動かされたのは、菜穂子(声:滝本美織)がサナトリウムに帰ったことを知ったときに、二郎の妹加代(声:志田未来)が路上で号泣するシーンです。それはきっと死を美化しない人間のあがきがきちんと描写されているからでしょう。

ちなみに、堀辰雄の『風立ちぬ』のヒロインの名前は節子。菜穂子は別の小説『菜穂子』からとっているのだと思います。

加えて、今秋公開の高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』の予告編の太い色鉛筆だけで描かれた疾走感溢れる画面表現が素晴らしかった。期待大!

2013年7月20日土曜日

Kitchen Table Music Hour vol.1

9月にライブを主催します。僕が普段自宅や移動中聴いている音楽を「いかがですか」と、親しい人たちに手渡すような小さな音楽会を。僕は出演せず、企画とプロモーションのみで。僕の好きな音楽にどれくらいみんな興味を持って会場に集まってくれるだろう。

きっかけはノラさんのtwitterでした。彼女が白山を歩いていたときたまたま見かけたJAZZ喫茶映画館の看板。それは同じ店で僕が朗読した三日後のことでした。

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カワグチタケシ presents "Kitchen Table Music Hour vol.1"

日時:2013年9月28日(土) Open 15:00 Start 15:30
出演:ノラオンナ(歌とウクレレ)
    まえかわとも子(歌とギター)
会場:JAZZ喫茶映画館
    〒116-0013 東京都文京区白山5-33-19
    03-3811-8932 http://www6.ocn.ne.jp/~eigakan/
料金:無料(1drink order)+投げ銭 
※会場の地図はこちら

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*ノラオンナ http://noraonna.jpn.org/
ウクレレ弾き語りのほか、ギタリスト見田諭とのデュオ、5人編成バンド “港ハイライト” 作詞作曲ボーカル。CD「いいわけイレブン」「かもめのデュオさん」etc.. 函館生まれ阿佐ヶ谷在住。 ⇒YouTube「パンをひとつ

*まえかわとも子  http://d.hatena.ne.jp/taimanbiyori/
オルタナボッサトリオ“The Xangos”のボーカル、たきびバンド、ギタリスト前原孝紀とのデュオ「まえまえから」等。CD “roda” The Xangos、「冬の街」まえかわとも子、他。横浜生まれ大磯在住。 ⇒YouTube「夜明けのサンバ

■JAZZ喫茶映画館 http://www6.ocn.ne.jp/~eigakan/
都営地下鉄三田線白山駅下車A3出口裏徒歩1分。1978年開店の老舗ジャズ喫茶。マスター手作りの真空管オーディオシステムとネルドリップコーヒー。壁にはヌーベルバーグのポスターと沢山の振り子時計がチクタク鳴っている。猫もいます。

キッチンテーブルは自宅における僕の定位置。詩を書くのも、詩集の製本も、すべてこのテーブルです。そこで鳴っている音楽をそのまま皆さんにお届けしたい。そんな想いでこの会を立ち上げました。クオリティは保証します。肩の荷を下ろして、秋の午後のひとときを、ともに楽しみましょう。



2013年7月12日金曜日

Liquid 2nd Album「Indigo Harbor」 Release Party!!

Poemusicaの翌日は、Little Woody が所属する3ピース・インスト・ロック・バンド Liquid のレコ発ライブへ。渋谷UNDER DEER Loungeの階段を下りると、見知った顔もちらほら。シーンにコミットしていくって、こういうことなんだな、と感じます。

Liquidは、ギターのイガヒロシ、ドラムス脇山広介、ウッドベースLittle Woodyの3人組。結成から1stアルバムのリリースまで9年もかかったというのに、それからわずか8ヶ月で2ndが完成。そんなバンドの勢いそのままのテンションの高いライブでした。

1970年代ハードロック調のオーバードライヴする哀愁のギターとロカビリーテイストのスラップベースにパンキッシュで破天荒なドラムス。この3人でなければ出せない強固なグルーヴ感は、緻密な曲構成と構築した端からなぎ倒していく豪快な即興性に支えられています。

特にこの日は脇山さんのドラムスがキレていた。非常にスキルフルなドラマーがリズムキープを後回しにして暴れ出す瞬間。僕は残念ながら生演奏は観たことがないのですが、The Who のライブ盤で聴くキース・ムーンを彷彿とさせます。笑っちゃうぐらい手数が多くて、叩いてる脇山さん本人もメンバーもお客さんもみんな楽しそうに笑っている。

MCもよかった。落としどころの見えないLittle Woody のユルいトークをイガさんが力技で締める。部室っぽいチャーミングさが全開で、ごつくてむさくるしい音楽なのに客席の女子率が高いのは、そのへんに秘密があるのかも(笑)。

共演したPHONO TONESF.I.B Journalもそれにつられてか、以前聴いたライブよりもごつごつした演奏をしているように感じられました。F.I.B Journalの山﨑円城さん(vo.g)はLittle Woodyより古い、15年来の知り合いなのですが、ライブで聴いたのは超ひさしぶり。ハモンドオルガンの低音部で鳴らされるベースラインが強烈でした。



2013年7月11日木曜日

Poemusica Vol.19

例年になく早い梅雨明け。猛暑、熱帯夜。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica Vol.19"が開催されました。

7月はカオリンタウミ(MUDDY "stone"AXEL)を思い出す月。この同い年の伝説的な朗読詩人が亡くなってから今年の7月26日で13年になります。今夜のオープニングには彼の"Rudies shall be released"を朗読しました。こんな詩です。「OK! 願いをかなえよう ことごとく予定どおりにことがはこばなくたって/いつかきっと脱け出すだろう 暑さと湿気に打ちのめされたって/いつかきっと脱け出すだろう ほら見ろよ「目を閉じて」心の中/すさんだゴーストタウンの 鉄じょうもうをつきやぶって 永遠のルードボーイたちが行くぜ」。

Little Woodyはひさしぶりにバンドで登場。今回はウッドベースLittle Woody、キーボードVi-Taの2人編成で、ループマシンは用いず、完全ヒューマンメイドな即興演奏を繰り広げました。ファットでルーズなベースに、きらびやかな生ピアノとグルーヴィなオルガン。ジャジーでアシッド。僕も本番中に急に呼ばれて(笑)、カオリンタウミの詩をもう一篇「星のルーディ」のリーディングで参加しました。

つづいて、矢野あいみさん。名前の通り愛らしい人。アイリッシュ・ハープを奏でる姿はどこか別の世界の住人のようです。彼女がハープを弾くYouTubeを観て、僕の詩「もしも僕が白鳥だったなら」に、お願いして音楽をつけてもらいました。オリジナル曲はピアノ弾き語りで。華奢で清楚な外見からは意外なほどのレンジの広い歌声が白い会場によく響きます。客席とのコミュニケーションもつき過ぎず離れ過ぎず。気持ちの良いステージングでした。

矢野さんの最終曲「ブルーバード」を聴いて、僕の最後の演目は「」に。これまた直前の打ち合わせでQooSueにバッキングしてもらうことに。

そしてその流れでQooSueの3人にステージを引き継ぎました。アコースティックギター&ボーカルの那須寛史さんとベースの那須健二さんは二卵性双生児。このふたりが曲の骨格を組み立て西村桂樹さんがキーボードとアルトサックス、ティンホイッスルで色彩を加える。アコースティック・プログレ・トリオ。時折織りこまれる中東やケルトの音階。構築的でありながら、風通しの良い演奏で、丸まっていた背筋がふっと軽く伸びるようでした。

今回はじめて全3組のミュージシャンそれぞれと共演させていただいて、こういう縦糸の張りかたもできるんだな、っていう発見もあり。三者三様の言葉と音の接し方の違いも味わえ、楽しんでもらえたのではないかと思います。来月のPoemusicaは真夏の女子会です。ひとり1台エアコンを使うより、みんなで集まったほうが節電になります。是非!

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Poemusica Vol.20
日時:2013年8月22日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:青木紗織 *Music
    唄子 *Music
    広島綾子 *Music
    Little Woody *Animation
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年6月30日日曜日

華麗なるギャツビー

6月最後の日曜日。ユナイテッドシネマ豊洲で、バズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ主演映画『華麗なるギャツビー』を観賞しました。このフランシス・スコット・フィッツジェラルド原作のアメリカの国民的恋愛小説は、1974年にもフランシス・フォード・コッポラ脚本、ロバート・レッドフォード主演で映画化されており、大学生のときにシネスイッチ銀座のリバイバル上映を観ました。デートなのに立ち見でまいった思い出があります。

ギャツビー(ディカプリオ)の隣人ニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)が話者なのですが、5年前に自分を裏切り他の男と結婚した恋人デイジーを一途に追い求めるギャツビーとは対照的に、誰とでも一定の距離を置き、その距離感ゆえにいつも周囲の人々に悩みを打ち明けられ、巻き込まれそうになってしまう。終始困った表情です(笑)。

大学生の僕はギャツビーよりもニックに強いシンパシーを感じていました。これはいまも基本的には変わりませんが、ギャツビーの想いやデイジーの気持ちの揺れを理解できるぐらいには大人になりました。

アルコール依存症で入院しているニックが、大恐慌後から1922年の夏を回想し、セラピーとして書き留めているという体裁をとっていますが、これは原作にはない設定。物語の枠組みとしては悪くないと思います。視覚的には、目まぐるしいカット割りとの相乗効果で、ゴージャスなハリボテ感がありますが(あ、2Dで観ました)、この時代のきらびやかさの裏の薄っぺらい悲しみを表現しているんじゃないでしょうか。

コミカルなシーンもいくつかあって、ギャツビーがニックの家でデイジーに再会するときにわざわざ大雨の中からずぶ濡れで登場するところ、ふたりの逢瀬に気遣ったニックが自分ちの庭先でレインコート姿でこれまたずぶ濡れになるところ、いい加減家に戻ったニックにはアウトオブサイトで見つめ合い囁き合うふたりに気づかれようとキッチンシンクにボウルやフライ返しをガチャガチャぶつけるところなんかは館内大爆笑でした。実はこのシーン、原作に忠実です。

デイジー役は、カズオイシグロの『わたしを離さないで』のキャリー・マリガン。前作のミア・ファローのようなエキセントリシティはありませんが、とにかくかわいいです。僕がほくろ美人に弱いってことを差し引いても。愛らしくて、可憐で、エレガント。正直ミア・ファローのときは、そこまで入れ込む女か? と思っていましたが、このデイジーなら納得(笑)。miu miuPRADAのドレスが素晴らしく似合っています。このイギリス人女優を鑑賞するためだけでも映画館に行く価値があります。

ラストシーンのすこし前、マンハッタンに舞い降りる雪片たちがタイプライターのアルファベットに変る映像も美しかった。

あと、音楽はどうなんでしょう。JAY-Zビヨンセの旦那ね)がんばってたし(Q-TIPも1曲参加)、階下のダンスフロアの重低音が図書室に響くところとかリアルでしたが、普通にビッグバンド・ジャズでよかったんじゃないかなあ、と思いました。


2013年6月23日日曜日

銀座のノラの物語

たった三度しか訪れたことのないお店でも、終わるときはさびしい気持ちになります。1年半のあいだ、毎週ここで奏でられた音楽が積み重なっているからでしょうか。そのあいだずっと、台風の日も、大雪の日も、この場所で、特別な夜を待つお客様とミュージシャンを迎えてきたノラオンナさんにしてみたら、尚更だと思います。

出演のお話を戴いたのちにそのことが決まりましたが、プログラム構成やプロモーション手法に影響はありませんでした。直接的には。前回2/24の銀ノラと演目が重ならないこと。ブッキングライブイベントではあまり取り上げない1篇10~20分の長い作品を朗読すること。などを決めて。

1.
2. 雨期と雨のある記憶
3.
4. 四通の手紙
5. 世界の渚
6.
7. 星月夜
8. バースデー・ソング
9. 都市計画/楽園
10. Melody Fair(訳詞)

地下二階。拍手もためらわれるような静寂の空間で、一音一音を丁寧にお客様に手渡すことができたように思います。30年間酷使に耐えたAIWAのカセットテープレコーダーがついに壊れて、最後に流したビージーズが感度の悪いAMラジオみたいにとぎれとぎれになってしまったのも、地下室っぽかった。

そんな偶然が重なって、終わってみれば、この「銀座のノラの物語」という特別な会のしめくくりにはうってつけな夜になりました。終演後にみんなで笑ったふなっしーの話も全部、きっといつまでも忘れないことでしょう。ノラさん、お疲れ様でした。みなさん、ありがとうございました。

このようにしめやかに幕を閉じた「銀座のノラの物語」ですが、2週間後には中央線に場所を移し、ノラさんの手料理の品数も増えて「アサガヤノラの物語」として再スタート。7/14(日)がノラオンナさんのウクレレ弾き語りソロ、7/21(日)がアカリノートさん。新たな一歩を踏み出します!





2013年6月20日木曜日

Poemusica ~詩的にメロディアス~

サマータイム。東京は雨が降ったり止んだり。夏至前夜、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica ~詩的にメロディアス~"が開催されました。雨のなかご来場のお客様、どこかで気にかけてくれていた人たち、共演者のみなさん、SEED SHIPの土屋さん、どうもありがとうございました。

黒髪のベリーショートに黒のワンピース、黒のヒールの右足だけ脱いで、黒いグランドピアノに向かう瀬里奈さん。ひとりの若い娼婦を主人公にした物語を、ときおりナレーションを挟みながら組曲風に表現して、まるで古いモノクロームのショートフィルムを観ているみたい。けっして明るい曲調ではないのですが、朗々としたベルカントで完璧な音程を紡ぐさまは爽快感すらおぼえます。ピアノがまた確かな腕前で、硬軟強弱を自在に操り、その欧州的な構築美は、どこまでもドラマチックでした。僕ら世代だと、ニナ・ハーゲンシンニード・オコナーなんかを連想してしまいます。

アナンくんは大学を卒業したばかり。見た目シャイな数学男子って感じですが、その音楽はファンキーでエモーショナル。アコースティックギターのカッティングに、ボディをタップしたキック音、オクターヴァー経由のベースライン、アナログオシレーターの発振音をループマシンを駆使して即興的に組み立てていく様子は科学実験に夢中になっているティーンエイジャーのよう。そこに被せるハスキーなウィスパーヴォイスはどこかノスタルジック。レトロ・フューチャー・ミュージック。スライとか好きなのかな。訊いてみればよかった。

そんなふたりとは対照的に、倉沢桃子さん(画像)にはお姉さんらしい落ち着きがあって、どこまでもナチュラルでした。伝えたいことがはっきりしていて、自分の表現に確信を持っている人の醸し出す安定感と、世間擦れしていない瑞々しさが奇跡的に同居している。丁寧なフィンガーピッキングで緩急をつけて正確に奏でられるギター、絶妙な距離感の歌詞、静かに心に沁みこんでいくような歌声は、ボーイッシュでクールな容貌と相俟って心地良く、いつまでも聴いていたくなる。初夏の涼風のような魅力を持つ人。

そして、Little Woody はいつものLittle Woody。なんだけど、ちょっと違った新しい試みも。それは会場に集ってきてくれた人たちだけの秘密(笑)。そうそう、Little Woodyは、金佑龍くんのバンドメンバーとして、FUJI ROCK FESTIVAL '13 に出演が決まりました。これマジで快挙。心からおめでとうと言いたい!

僕はオープニングに米国人作家レイ・ブラッドベリの一周忌に寄せて、彼の短編小説『霧笛』の一節、つづけて自作詩"International Klein Blue"。そして倉沢桃子さんのギターのアルペジオに乗せて、夏至の朝昼夜を描いたトリプルソネット「ガーデニア Co.」を朗読しました。

そんなストーリー性のある夏至前夜のPoemusicaでした。来月はちょっと早めの第二木曜日の開催です。雨季が明けているといいな。

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Poemusica Vol.19
日時:2013年7月11日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:矢野あいみ *Music
    QooSue *Music
    Little Woody Band *Music
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年6月16日日曜日

ハル

新宿ピカデリーで単館公開中の牧原亮太郎監督の中編アニメ『ハル』を観ました。

舞台は近未来の京都。恋人ハルを飛行機事故で亡くし、引きこもるくるみのもとにケアセンター孤狸庵から派遣されてきたのはハルの姿に改造された介護ロボット「Q01(キューイチ)」。ルービックキューブの色を合わせるとふたりの願い事が現われ、ロボハルはそれをひとつずつ叶えようとする。

なんといっても木皿泉脚本のオリジナルストーリー。『すいか』『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』、なかでも2010年の日テレ系秋ドラマ、佐藤健前田敦子主演の『Q10』は生涯に観たテレビドラマのなかでもかなり上位にランクインします。で今回「Q01」ってことですから期待が大きくて、やや大き過ぎたのかもしれません。

芸術家(と敢えて言いますが)には、各々の才能を表現するのに適した尺があるんじゃないでしょうか。草野マサムネなら3分半、アンドレイ・タルコフスキーなら3時間半(笑)。木皿さんの場合は3ヶ月クール、計8~10時間の枠で、丁寧過ぎるぐらい丁寧に時間をかけて感情のひだを綴っていくのが一番向いているのだと思います。70分じゃ全然足りない。

アニメーションの水の描写は素晴らしく、その技術と根気には心から敬意を表したいです。洋服のボタン型の破損したメモリーチップを再生したときのデジタル画像のノイズ描写も繊細だった。また大島ミチルの音楽も、その曲調が高まると声をミュートしてくちびるの動きと表情で台詞を伝える牧原監督の演出もよかったです。


2013年6月15日土曜日

Viola & Piano Duoconcert vol.3

雨季です。しばらく降り続いた雨がようやく上がった土曜日。山手線に乗り換えて大塚へ。音楽堂 ano ano で開催された手島絵里子さんtriola蓮沼執太フィル)、明利美登里さんの室内楽リサイタル "Viola & Piano Duoconcert vol.3" を鑑賞しました。

荻窪のvol.1vol.2も聞きに行きましたが、回を重ねるごとにふたりのアンサンブルの精度が高まっているように感じます。聞けば、ランチをしたり、明利さんのお子さんを手島さんが面倒見たり、もちろん練習も重ねたのだとは思いますが、音楽外の諸々も大事。

・フォーレ シシリアーノ op.78
・シューベルト 4つの即興曲集D899 op.90 第1番 ハ短調
・ベートーヴェン ノットゥルノ op.42
・ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
・ドビュッシー 2つのアラベスク
・プーランク 15の即興曲集より 第12番:変ホ長調 シューベルトを讃えて
                    第15番:ハ短調 エディット・ピアフを讃えて
・ミヨー 四つの顔 
-アンコール-
・サン=サーンス 動物の謝肉祭より 白鳥

ベートーベンとシューベルト、ドビュッシーとラヴェル、ミヨーとプーランク、そしてサン=サーンスとフォーレ。それぞれ同時代でどのような交流があったのか、演奏者自身からのお話も交えて。クラシックの演奏家では終始演奏家は無言ということが多いのですが、このMCは効果的だと思います。このサイズの会場だと、客席も意外と緊張するので。ほぐれます。

料理ユニット「3番テーブル」が提供するハンドメイドのドリンク&スナックも、会場のリラグゼーション効果に一役買っていたのではないでしょうか。

いままでプーランクの音楽の魅力がよくわからなかったのですが、そんな気遣いのせいなのか、今日の演奏は素敵でした。少人数のサロンで親しい人たちに向けて聴かせるために書かれた音楽なのかもしれませんね。

あと、インドネシアの金色のシルクでクリムトのような柄の手島さんのドレスがとてもきれいでした。


 

2013年5月31日金曜日

日曜音楽バー「銀座のノラの物語」

カワグチタケシのソロライブ。リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさんが日曜店長をつとめる「銀座のノラの物語」。ご好評を頂戴しました2013年2月24日に続き2度目の登場です。奇しくも前週6/16はカワグチタケシの誕生日。つまり年甲斐もなくバースデーワンマン(笑)。

銀座の裏通りにあるカウンターバー「ときね」にて。生声の朗読とノラオンナさんの絶品手料理をお楽しみください!

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日曜音楽バー「銀座のノラの物語

出演:カワグチタケシ
日時:2013年6月23日(日)
   17時開場、17時半開演、19時~バータイム
会場:ときね 東京都中央区銀座6-2-6 ウエストビルB2
料金:5,000円
   ライブチャージ、おつまみ3品、スナック3品、
   〆の一品(味噌汁、おかゆ、麺など)
   ハイボール飲み放題(ソフトドリンクもあります)
   以上全部込みの料金です。
   ※飲み物持ち込み自由です。

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更に御来場の皆様にはもれなく限定盤ライブCD-Rをプレゼント。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで毎月開催している「詩と映像と音楽の夜」"Poemusica"からベストパフォーマンスをチョイス!

*完全予約制、先着10名様限定の超プレミアム・ディナーショー!
 ご予約は nora_onna@hotmail.co.jp まで。お名前、人数、
 お電話番号をお知らせください。




2013年5月26日日曜日

中学生円山

NHK朝ドラ『あまちゃん』も好調な宮藤官九郎監督作品『中学生円山』をユナイテッドシネマ豊洲で観ました。

「考えない大人になるぐらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」「妄想が現実を超えるとき、それが真実になる」。

江戸川区にある巨大団地の9号棟806号室に親子4人で暮らす中学2年の円山克也(平岡拓真)にとって、団地と学校とコンビニが世界のすべて。妄想だけが世界を拡げる術。上階に引っ越してきた謎のシングルファザー(草彅剛)をスナイパー「子連れ狼」と妄想していたが、やがて近郊の複数の団地で起こる連続殺人事件に巻き込まれていく。

食後のフルーツに拘泥する父親(中村トオル)、韓流ドラマ妄想が現実に浸食してくる母親(坂井真紀)、妹あかね(鍋本凪々美)と親友の祖父(遠藤賢司)の純愛、あかねの同級生ひかりの二股、三つ編みのヒロイン清水ゆず香(刈谷友衣子)への克也の思慕、と多角的な視点で群像劇を描きたいというコンセプトは伝わってきます。クドカン脚本らしい小ネタの応酬は楽しいが、映画全体としてはややまとまりを欠いた出来ではないでしょうか。

そのなかで、認知症の徘徊老人を演じた66歳の遠藤賢司の存在感が圧倒的です。野外ライブでアマチュアバンドからグレッチを奪い取りニール・ヤングばりのノイジーなギターとシャウトを聴かせたかと思えば、妹あかねの初恋の人となり河原で小さなラブソングを弾き語り、ラストの団地屋上では琵琶法師さながらにアクションシーンを盛り上げる。

僕自身リアルタイムでエンケンさんを聴いた世代ではなく、むしろ80年代に迷走(?)していた時代の『東京ワッショイ』『宇宙防衛軍』あたりに思い入れが強いのですが、単なるプロテストフォークではない「死ぬほど糞真面目にふざける」スタンスは健在です。



2013年5月23日木曜日

Poemusica ~すこしだけブルースが沁みる夜~

あと4週間で夏至。だいぶ日が長くなりました。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて"Poemusica ~すこしだけブルースが沁みる夜~"が開催されました。

栗田裕希さんは大阪から。先週から今週にかけて、名古屋と東京のライブサーキット中。ナチュラルのテレキャスターのブライトな音色を活かして、スモーキーな声でソウルフルに唄います。この日のサブタイトル通り、いやサブタイトル以上にブルースが心に沁みました。ブルース黎明期のアメリカ南部やグレイハウンドバス、ジュークジョイントの話。ゆったりとした大阪弁のMCも心地良く、会場を温めてくれました。旅の途中の人の話はいつも面白いです。

つづいてLittle Woody Animation。『オバケトゥザフューチャー』という作品で、はじめての即興生アテレコに挑戦。日本語の字幕に重ねる声は無国籍言語というか架空の言葉。そこに時折「ピニャコラーダ」「~のやつ」といった単語が挿入され、視覚的な意味と聴覚上の意味/無意味のはざまで客席の笑いを誘う。去年7月のPoemusicaのとき出演者みんなで競作した「メロディ・フェア」をひさしぶりに観られたのもうれしかった。

アカリノートさんは名曲「モチーフ」からスタート。彼が澄んだハイトーンで唄い出すと、すこしざわついていた会場の空気がはっきりと変わる。こういう瞬間があるからライブはたまりません。そしてLittle Woodyに呼応するように、アカリノート版「メロディ・フェア(カワグチタケシ訳詞)」。先週5/16が誕生日だったLittle Woody のためにサプライズ的なバースデーソングも飛び出して、照れるLittle Woody(笑)。

そして最後、いわさききょうこさん。リハーサルのカジュアルなボーダー姿から一転。白の上下で凛とした佇まいです。曲調は正統派のフォークソングといっていいと思いますが、熟語の多い硬質な歌詞と自然できれいな歌唱とあいまって清潔感のある強いオーラを放つ人。客席でメモを取るお客様が何人もいらっしゃって、その熱心さが窺われます。音楽に対する彼女の真摯で生真面目な姿勢がきっと伝わっているのでしょう。

僕もブルースを若干意識して、まずオープニングにカバーを2篇。トム・ウェイツの「ダウンタウン・トレイン」カワグチタケシ訳、栗田裕希さんにブルースの循環コードのバッキングをお願いしてラングストン・ヒューズの「ものういブルース」。アカリノートさんとふたりで「風の生まれる場所」再演、最後にアカペラで「アナザー・グリーン・ワールド」を朗読しました。

今回のサブタイトルをもらってから一ヶ月。ブルースを考える良い機会になりました。阪堺電軌沿線の錆びた風景もひとつのヒントになった。そして自分がどれだけ恵まれて育って、苦労知らずにここまで来たかってことも再認識しました。それでも、小さな苛立ちや忘れられない失敗はあるし、どんなに絶望的な環境においても、かすかな灯りや笑いがある。それがブルースってことなのかな、と思います。

さて、来月。これまた簡単そうで一筋縄にはいかないサブタイトルがついています(笑)。乞うご期待!

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Poemusica Vol.18 ~詩的にメロディアス~
日時:2013年6月20日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円 当日2,500円(ドリンク代別)
出演:アナン *Music
    瀬里奈 *Music
    倉沢桃子 *Music
    Little Woody *Animation
    カワグチタケシ *PoetryReading

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2013年5月19日日曜日

洗濯日和

東京の先週の週間天気予報によると今日の降水確率は60%。それが昨日には20%に修正され、朝にはすっかり晴れ上がって洗濯日和に。下北沢440で開催されたエリーニョ3rdアルバム『空中ランドリー』レコ発ワンマンライブ『洗濯日和』に行ってきました。

エリーニョさんとの出会いは昨年2月、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPPoemusica Vol.2。それ以来なんとなく気にはなっていたのですが、ライブの日程が合わずに1年。ところが今年3月に出た新譜『空中ランドリー』があまりによくて、いてもたってもいられずに先月タワレコ新宿店インストアへ。恋ですね(笑)。

そして本日を迎えたわけですが。The eri-nyo Quintet の5人がステージに上がって1曲目のイントロを鳴らした瞬間に浮かぶ「?」。PAのバランスのせいか、アンサンブルが混沌として、リズムが上滑りしていく。このバンドの持つダイナミズムを耳がとらえきれない。

ところが4つ打ちの3曲目「プレリュード」のサビ、“重いまぶたでため息飲み込んで/向かう 繰り返す”という歌詞をエリーニョさんがシャウトした瞬間に、5人の向かう方向が気持ち良いくらいにビシっと揃い、すべての音が彼女の歌に収斂して、そこからは一気にアンコールの「ポケットライフ」まで。全13曲。僕も流れに乗れました。ライブって本当に生モノですね。面白い。

ロック、クラシック、ジャズ、プログレと、エリーニョさんは音楽的な引出しがとても多彩ですが、それをひとつにまとめてポップミュージックに仕立て上げているのが彼女の声であることは間違いありません。息の多いウィスパーボイスから、その声質のままフォルテシモまで上げる力を持っています。

田中さと子さん(左利き)のフルートは、主にリフやオブリガートを吹いていますが、そのソリッドな音色が実はこのクインテットのキモ。そして、ヨシカワタダシさんは真にインテリジェントなドラマー。「highway」のアウトロの7/8拍子や新曲「bits」の11/8(13/8?)拍子、奇数拍子を正確なアクセントで叩けるだけでなく、「チクタラタ」ではスナッピーを外したスネアで、あえてテンポを揺らすところなど、シビれました。

13時開演の会場の外は初夏の日曜の昼下がり。代沢三叉路の街路樹の新緑を5月の風が揺らして。昼間のライブというのも気持ち良いものですね。

 

2013年5月10日金曜日

人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉

大阪は午後から雨でした。新しくなった大阪駅から線路をくぐる地下道を抜けて梅田シャングリラへ。金佑龍 (ex.cutman-booche)の1stソロアルバム『Live in Living』のレコ発ライブ「人生見事にギャンブルだね、男はみんなシャボン玉」に行ってきました。

すさまじいライブでした。「文学はダメ人間を輝かせる装置」とは、小説家藤谷治氏の弁ですが、音楽もまさにそうだなあ、と。いや、金佑龍には明らかに才能があります。ブルースやカントリーを基調にしながらあくまでもキャッチーなソングライティング、誠実で胸に迫る歌詞、緻密で正確なギタープレイ、ハスキーで耳に残る声、どこをとってもハイクオリティ。なのにどこか自信なさげな佇まいで、発言もどちらかといえば後ろ向き。理想とプライドが高いのに、頭がいいから、現実とのギャップが客観的に見えてしまうのでしょう。

そんな彼の凱旋を待ちわびていた満員の聴衆の期待感が会場の気温を瞬時に上昇させ、彼とバンドもそれに応えた。幸福で濃密な、魂のコール&レスポンス。会場に詰めかけた多くの人たちが自分のダメさはダメなりに受け入れていこうという気持ちになった夜でした。ステージで演奏する5人が本当に格好良かった。

新譜に収録されている「或る世界で」のサビの歌詞。「光を浴びている」と唄った次の行で「闇も浴びている」と言わずにはいられない、そのスタンスは心底信頼に値します。フィッシュマンズへの愛に溢れた「ナイトクルージング」のカバーも最高でした。

この日のバンドは「東横方面」。gnkosai脇山広介のツインドラム(!)、ウッドベースLittle Woody、ペダルスチール宮下広輔の4名編成。愛すべきダメ人間たちの饗宴(笑)。才能溢れる人たちが集まり、同じ方を向いて本気を出したときの手のつけられなさといったら! そのビッグビートは単なるサポートの枠を軽々と越えて、時にはゆるゆる、時にはガチで、放蕩息子の帰還を心から祝福し、支えていました。

金佑龍のMCの通り「今夜ここにいたことを後で自慢できる」、いやいますぐ誰彼かまわず自慢したい、そんなキラキラした空気が終演後、いつまでもごった返す会場ロビーに充満していました。


2013年5月5日日曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ③

五月の連休もいよいよ終盤に差し掛かってきました。東京は毎日お天気です。今日も有楽町東京国際フォーラムへ。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013" 最終日はこの1本。

■公演番号:321 
ホールB7(ヴェルレーヌ) 10:45~11:30
ドビュッシー神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ラヴェル序奏とアレグロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「マ・メール・ロワ
イプ・ウィンシー指揮
香港シンフォニエッタ 篠崎和子(ハープ)

東京ではなかなか聴く機会のない日露独仏英米以外の国の楽団の演奏に触れることができるのもこのフェスの魅力のひとつだと思います(2007年に聴いたスペインのビルバオ交響楽団のチャイコフスキーはいまだに忘れ難い)。ある程度の規模の都市にはオーケストラがありますよね。もちろん香港にあっても不思議じゃない。平壌にだってあるくらいですから。

超国際都市のオケだけに人種国籍も多様ですが、肥満の団員がひとりもいない(笑)。男子が粒揃いでアジアの黒髪イケメン好きにはたまらないビジュアルです。団員の半数を超える女性演奏家もすらっとした長身の人が多くて格好良かった。

イプ・ウィンシー(葉詠詩)氏は今回聴いたなかでは唯一の女性指揮者。アメリカで学んでいるからか、昨日、一昨日のフランス人指揮者と異なり、シャープで明晰、構築的な音楽造形です。

フランス音楽に浸かった3日間でした。「ボレロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「牧神の午後への前奏曲」を2回ずつ聴けたのも、それぞれの演奏家の個性の違いがわかって面白かったです。ドイツやイタリア、ロシアの音楽と違って、調性が不明瞭でとらえどころのないフランスの音楽ですが、実は一番熱心に聴いていたのは高校生のころなんですよね。ひさしくターンテーブルに乗せていないLP盤を引っぱり出してみようかなと思っています。

そして、来年のフェスのテーマは「アメリカ」だそうです。アンドリュー・ヨークギター曲なんか聴けたらうれしいな。

 

2013年5月4日土曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ②

"ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013"。2日目の今日は3公演を聴きました。

■公演番号:242 ホールC 11:45-12:30
デュリュフレグレゴリオ聖歌による4つのモテット op.10
フォーレレクイエム op.48(1893年版)
ミシェル・コルボ指揮 
ローザンヌ声楽アンサンブル 
シンフォニア・ヴァルソヴィア
シルヴィエ・ヴェルメイユ(ソプラノ)
ジャン=リュック・ウォーブル(バリトン)

コルボ指揮の合唱曲/宗教曲は、このフェスの名物みたいな感じで外せない演目であり、ハズレがありません。どちらも美しい演奏でした。『フランダースの犬』の最終回で、ネロが「パトラッシュ、もう疲れたよ」ってときに頭上のステンドグラスから差し込んでくる光。フォーレのレクイエムは複数の版が存在するんですね。今日聴いた1893年版は、中盤がとても愛らしく明るい音楽で、幼くして亡くなった子供を鎮魂するような響きがありました。

■公演番号:244 ホールC(プルースト) 16:00~16:45
ドビュッシー牧神の午後への前奏曲
フランク交響的変奏曲
ラヴェルボレロ
パスカル・ロフェ指揮 
フランス国立ロワール管弦楽団 
ベルトラン・シャマユ(ピアノ)

昨日フェイサル・カルイ指揮ラムルー管弦楽団と比べたら普通の「ボレロ」。小太鼓奏者にスポットを当て、指揮台の隣に置いたのはなかなかいいと思いました。終盤の盛り上がりで、小太鼓が3人に増えるところでは左右両翼に配置。サラウンド効果が出ていました。

■公演番号:227 ホールB7(ヴェルレーヌ) 21:15~22:00
ドビュッシーヴァイオリン・ソナタ
フランクヴァイオリン・ソナタ イ長調
オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン) 
児玉桃(ピアノ)

今回唯一の器楽曲です。小ホールのチケットは本当に取りづらくなってしまいました。身長2m近い痩躯のデュメイも還暦過ぎて、見た目老けたなあ、と思いましたが、技術はまったく衰え知らずです。ナノレベルでジャストなタイム感が心地良く、音色は多彩。しかも児玉桃のピアノと完璧に一体化した音像を創り出していました。

そんな充実のLFJ2013中日でした。


2013年5月3日金曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ①

五月。連休初日の東京湾岸はまぶしい快晴です。

東京メトロ有楽町線に乗って、有楽町東京国際フォーラムへ。GW恒例のクラシック音楽フェス "ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013"。今年のテーマは"L'HEURE EXQUISE"「パリ、至福の時」ということで、フランスの作曲家のオーケストラ作品を中心にチョイス。

今日は有料公演をふたつ鑑賞しました。


■公演番号:112 ホールA(ボードレール) 12:15-13:00
ラヴェル亡き王女のためのパヴァーヌ」「ラ・ヴァルス」「ボレロ
サン=サーンス交響詩 死の舞踏 op.40
フェイサル・カルイ指揮 ラムルー管弦楽団

■公演番号:114 ホールA 17:00~17:45
サティ(ドビュッシー編)「ジムノペディ第1番、第3番
ドビュッシー牧神の午後への前奏曲」「交響詩 海
フェイサル・カルイ指揮 ラムルー管弦楽団

同じ指揮者とオーケストラで2公演ということになりました。こういう選び方もフェスならではです。このところちょっとさぼっていて、クラシックのコンサートに行くのが"ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012"以来1年ぶりでした。そのため昨年最後に聴いたロシアのオケとのギャップがすごかったです。

ロールキャベツにベシャメルソースをかけたみたいにこってりした演奏から一転、ボーダーのシャツを着こなしたお洒落で小粋なパリジェンヌがバゲット齧りながら散歩してるみたいな感じです。そもそもフランスのオケに重厚さや深みを求めるのは筋違いでしょう。

かといってチャラいテキトーな演奏というわけではまったくありません。「ボレロ」も「海」もここんちが初演という伝統あるオケらしく、正確でしっかりした技術を持っています。カルイ氏の指揮も暑苦しいところがなくて、指先までエレガントでした。

一番面白かったのはラヴェルの「ボレロ」です。まず15分程の曲で最初の10分ぐらいは指揮者が微動だにしない。たったふたつの旋律を、楽器を加えながら曲の頭からお尻まで時間をかけて徐々にクレッシェンドして(音量を上げて)いく構成ですが、終盤突然急激にデクレッシェンドする(音量を下げる)部分があり、最初は「放送事故?」っていうぐらいびっくりしました。二度、三度と同じフレーズに来るたびにデクレッシェンドが繰り返されると、ジェットコースターでレールの頂上から下降し始める瞬間のような、軽い眩暈のような感覚になりました。

ライブや録音で何度も聴いた「ボレロ」ですが、こういう解釈ははじめてで、とても新鮮でした。

明日は3公演、フォーレとフランクとドビュッシーと。楽しみです!

 

2013年4月29日月曜日

舟を編む

よく晴れた三連休の最終日、ユナイテッドシネマ豊洲で、三浦しをん原作、石井裕也監督作品『舟を編む』を鑑賞しました。思った以上に、地味で、静かで、誠実で、骨太で、楽しい文芸映画でした。

老舗出版社のベテラン辞書編集者荒木(小林薫)が定年を迎えるにあたり、後継者に選んだのが、営業部でまったくうだつの上がらなかった馬締光也(松田龍平)。「今を生きる辞書『大渡海』」をゼロから作るという、15年に及ぶ大プロジェクトを、この2人に加えて、編集主幹である老言語学者松本朋佑(加藤剛)、馬締の先輩編集者西岡(オダギリジョー)の4人の男たちを軸に描いています。

「言葉の意味を知りたいとうことは、誰かの考えや気持ちを正確に知りたいということ」という松本の冒頭の台詞に共感しました。自分の気持ちを伝えるよりも、誰かの気持ちを知りたい、とまず思うこと。そこからしか人間関係は生まれないと思うんですよね。

僕は古書店で朗読をする機会が割合多いのですが、書棚に囲まれていると、一冊一冊の本に注がれた情熱に圧倒されそうになることがあります。まして辞書ともなると、内容の深さ、豊かさはもとより、最高レベルの正確さを求められる。しかも文芸書とは異なり、読者は必要なページの必要な部分だけを読むわけですから、ひとりの読者がすべてを読み通すということはほとんどないと言ってもいいと思います。

たとえば映画のなかで何度か登場する「右」という言葉の語釈。誰もが知っている言葉であるが故に説明が難しいのですが、誰もが知っている言葉であるが故に辞書で引かれることは稀でしょう。なのにそこに多大な時間と労力を費やす。

波打ち際に夥しい数の用例取集カードが打ち寄せ、それを拾うために狂奔する、という馬締の悪夢のイメージがありましたが、言葉を生業にするものとして、程度こそ違えど、似たような強迫観念に捉えられることがあり、十数年前に「世界の渚」という詩作品でそのような描写をしました。

片思いの香具矢(宮﨑あおい)とはじめてのデートで浅草花やしきに行き「観覧車って誰が発明したのかな?」と訊かれた馬締がバッグから辞書を取り出し「調べなくていいから!」とキレられる場面を観て、それはフェリスっていうアメリカ人だよ、って教えてあげたい僕はきっとモテないと思う(笑)。

宣伝部に異動したオダギリジョーが、完成した『大渡海』のポスターに起用した女優が麻生久美子。『時効警察』ファンとしてはうれしいかぎりです。


 

2013年4月28日日曜日

THE XANGOS × SHOGO IWAKIRI LIVE & PAINT

すこしずつ気温が上がってきましたね。三連休の中日は吉祥寺 world kitchen BAOBABThe Xangos の演奏と 岩切章悟さんのライブペイントを観賞しました。

The Xangos は、ギターの中西文彦さん、7弦ギターとバンドリンの尾花毅さん、ボーカルのまえかわとも子さん(左利き)の3人組。オルタナ・ボッサ・トリオとも称されるその音楽はMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)に基礎を置きますが、サウダージ(郷愁、哀愁)よりも、爆発的な熱量を孕んだもの。

この日は画家の岩切さんの地元吉祥寺ということもあって満員の店内を、その挑発的なグルーヴを存分に発揮した演奏で、ぐらんぐらんに揺らしました。

昨年吉祥寺の別の店で聴いたときと一番印象が異なったのは、2本のギターのアンサンブルです。前回は尾花さんの正確なタイム感に乗せて、自由に逸脱しまくる中西さんのノイジーでハードドライヴィンなギターを初期The Rolling StonesBrian Jonesに喩えたのですが、今回は尾花さんがガツガツ突っ込んだタテ乗りで、むしろ中西さんのほうがタメを効かせ、その微妙なズレがお祭り感のある狂騒的なテンションを創造していました。

まえかわさんは、モニターの返しが悪いのか、出だしこそすこし唄いづらそうにしていましたが、2曲目からは全開で、鳥たちの求愛行動を模したようなスキャットにはもはや神々しさすら感じます。

岩切さんは3人の演奏の躍動感を摑まえようと画布に向かいます。最初に青空、そして山脈。山の中腹には人々の暮らす灯火、大地に炎。大地は海に、最後には空からパレードの紙吹雪が舞う。

それに、手拍子、コーラス、ダンスで応える客席。ライブはナマモノですね、本当に。いい夜でした。