2017年7月16日日曜日

ノラバー生うたコンサート

なみだ色の日曜日。はじめて降りる駅、西武新宿線西武柳沢。富士街道の辻の五差路、伏見稲荷通りに2週間前にオープンしたばかりのノラバーは、とてもお世話になっているミュージシャンのノラオンナさんがはじめて持ったご自身のお店。

僕も何度も出演させてもらった「銀座のノラの物語」「アサガヤノラの物語」はいずれも日曜の定休日を借りてのライブ営業でした。ノラバーは、銀座ときねのダークな色調と阿佐ヶ谷Barトリアエズの大きな窓をミックスしたような落ち着く空間です。

今日の出演者はmayulucaさん。他のライブで何度か顔を合わせているのでひさしぶりな感じがしないのですが、昨年8月のアサノラ以来でした。開店を祝しての「出発」から一昨年高円寺の古書店Amleteronのライブで池永萌さんと共作した「朝の月」まで全14曲、約80分。カウンターだけの細長い店の演奏家から一番遠い席にもクリアに響き、ギターと歌声の繊細な表情がよく伝わってきます。

お店のすぐ前は2車線の通りで、ライブ演奏に生活音が程好くミックスされる。バスの運転手を歌うと路線バスが通過し、「笑い声が聞こえるところで(おひさまの居場所)」という歌詞をバックに女子中学生が笑いながら通り過ぎる。そんなグッドタイミング。

mayulucaさんの音楽はミニマルで精緻な構造を持ちながら同時に、あっけらかんとしたおおらかさと包容力がある。音の粒が淡く光を放ちながら夏の始まりの湿った夜の空気に溶け込んでいきます。

演奏後は6品のおかずと味噌汁のノラバー弁当をmayulucaさんもノラさんもみんな一列に並んで食べながらおしゃべり。mayulucaさんからの開店祝いのアルパカラベルのスパークリングワインが振る舞われ、夜が更けるごと座は一層に賑やかに。どのお料理も美味しかったですが、豚肉と玉葱だけ使ったシンプルなミニカレーライスが特に味わい深かく。木曜日に訪れてフルサイズをいただきたくなりました。

ノラバー生うたコンサート、僕の出番は9月24日(日)。どうぞよろしくお願いします。詳細はあらためてお知らせします。


2017年7月15日土曜日

フィクショネス詩の教室 @tag cafe 2017

今日も真夏日。梅雨が既に明けているんじゃないかという思うぐらい。下北沢の街は熱気に溢れています。フィクショネス詩の教室 @tag cafe 2017 を開催しました。

小説家藤谷治氏がオーナーの下北沢の書店フィクショネス2014年7月に惜しまれつつ閉店しました。2000年3月から閉店まで14年半続いた詩の教室で講師を務めさせていただきました。それから3年。当時の参加者のひとり杵渕里果さんが毎年7月にフィクショネス跡地と同じ街区のカフェを借りて、ワークショップを企画してくれます。

同窓会のようでもあり、且つ新しい方も毎年参加し、ひとつのテーブルを囲み、自作他作問わず好きな詩を持ち寄って意見交換する2時間。今日みんなで観賞した詩はこの12篇です。

谷川俊太郎「ニューヨークの東二十八丁目十四番地で書いた詩」
田村隆一頬を薔薇色に輝かせて
糸井重里「いいこ いいこ(GOOD GIRL)」※矢野顕子の歌詞
矢野顕子愛はたくさん(LOTS OF LOVE)」※同上
ウンベルト・サバ娘の肖像」「ぼくの娘に聞かせる小さい物語」「われわれの時間」「第一のフーガ(二声による)」※須賀敦子
・芦田みのり「パズル」
・ジュテーム北村「TQJ」
・谷川俊太郎「家族
・宮崎譲「やどかり」

僕は『俊読2017』のボーナストラック的に冒頭2篇を担当しました。同じ谷川俊太郎のまったく異なる作風の詩を選んだ方がいたり、偶然ふたりが同じ『ウンベルト・サバ詩集』から対照的な作品を持ち寄ったり。

普段なかなか知り合うことのない作者や作品に触れることができるのも、その作品が好きな人から愛情をもって紹介してもらえるのも、誰かが持ってきたはじめて聴く/読む作品の素敵なところや洒落た技巧を見つけて伝えるのも、ひとりで読書をしているだけでは味わえない。別の愉しみがあります。

現役のレッスンプロ(?)として受講料をもらい毎月教室を開いてた頃は、入念な下調べをして、合評は斬るか斬られるか、みたいな気持ちもありました。時間とともに詩とのつきあい方が変わり、当時の緊張感から解放されて、いまは詩との出会いをずっと素直に楽しめるようになりました。それは豊かなことだと思います。

参加者の皆様、tag cafeさん、そして杵渕里果さん、どうもありがとうございました。また来年も下北沢で会いましょう。


 

2017年7月9日日曜日

第21回TOKYOポエケット

真夏日。名古屋場所初日。都営地下鉄大江戸線で両国まで。江戸東京博物館で開催された『第21回TOKYOポエケット』にプリシラ・レーベルのブースを出店しました(TOKYOポエケットとプリシラ・レーベルのあらましについてはこちらこちらをご参照ください!)。

本人のつもりとしてはいつまでも青二才感が満載なのですが、数回抜けてはいるものの1999年の第1回からずっと参加しているプリシラ・レーベルは気づけばすっかり老舗になっていました。

プリシラ製品をお買い上げいただいたお客様にももちろん大感謝です。いまごろ世界のどこかでお楽しみいただけていたら幸いでございます。毎年接客販売に注力して、せっかくの詩人のみなさんとの交流がなかなかできず、不義理も多々ありましたが、今年は新作がなかったのと、近年弊社で作品制作をした小夜さん石渡紀美さんがお手伝いに来てくれたので、他のブースもゆっくり拝見し、ご挨拶ができました。

お隣が東京荒野さんと詩人類さんで、俊読2017でもお世話になった桑原滝弥さんやリーディングの第一線で長く活躍している馬野ミキさんたちと楽しく過ごしました。2000年代初頭からフィクショネス詩の教室に通っていた懐かしい生徒さんとも再開し、出会い直しの一日でした。

リーディングゲストのおふたり。URAOCBさんの硬質なフロー、技術とパッションが拮抗した高密度のアクト。暁方ミセイさんの朗読はシンプルでオーソドックスながら素直な発声と真摯で丁寧な表現が美しかった。自分もかなり昔にゲストとしてステージに上がったことがあるのでアレですけれど、パフォーマンスがつまらないと「早く終わって売らせてくれ」ってなっちゃうんですが、今年は2組ともクオリティが高く集中して聴けました。

続けるって本当に大変で尊いこと。主催のヤリタミサコさん川江一二三さん、モギリ死紺亭柳竹さん、バウンサー乗越たかおさん(舞踏評論家)にビッグアップ。いつもありがとうございます。


 

2017年7月5日水曜日

TRIOLA a live strings performance

夕立が上がった水曜夜。下北沢leteへ。TRIOLA a live strings performance波多野敦子さん(作曲、5弦ヴィオラ)と須原杏さん(ヴァイオリン)の現体制で再始動後、1周年となる5回目のワンマンライブにお邪魔しました。

珊瑚虫の産卵をイメージし、浅瀬に差す陽光のたゆたいを描いたようなスローナンバー "CORAL" から始まったライブは、2曲目以降怒涛の新曲ラッシュ。2012年3月の triola presents "Resonant #7" のレビューで「はじめて披露されたふたつの新曲のうち、『新曲2』とだけ紹介されたインストゥルメンタル・ナンバーの逸脱ぶりがすごかった」と書きましたが、その「新曲2」が初期の習作に思えるぐらい、現在のTRIOLAの音楽は充実した逸脱感に溢れています。

ヴァイオリンとヴィオラという弦楽器2棹のみによる生演奏は、エフェクターこそ使用しているものの、あくまでも味付け程度で、leteのサイズだと基本的には生音の存在感が強いのですが、にもかかわらず、急発進、急加速、急停止の繰り返しにより立ち現れる感触は、ノイズ/インダストリアル、テクノ/エレクトロニカ、ミニマル/アンビエント。緻密で硬質な波多野さんのスコアをどこまで有機的且つ柔軟に再構築するか、踏み外すぎりぎりのエッジを模索するようなスリルがあります。

以前のtriolaのワンマンでは、肖像音楽といって、観客のひとりのプロフィールを聴いて即興演奏をするコーナーを時々設けていました。今回は客席からお題をもらい、杏さんの先導でリアルタイムでアンサンブルを組み立てるという枠があり、「桃」「金魚」「暑い」の3曲がその場で創られ空間に消えていきました。

そのプロセスを間近に聴くと、杏さんはどちらかというとフレ―ジングから、波多野さんはヴォイシングからアプローチしているのが特徴的でした。かつての中近東/東欧寄りの哀愁漂うメロディも素敵でしたが、「金魚」のオリエンタルな旋律を聴くと、東アジア的な曲調も現在のTRIOLAには似合うんじゃないかな、と思います。

波多野さんが「部屋着姿」、杏さんが「すっぴん」と言う、会場限定CD-Rのスタジオテイクは繊細且つ丁寧に配慮が行き届き、ワイルドな縦乗りのライブ演奏とはまた異なる魅力がありました。

 

2017年6月24日土曜日

THE SPACE WE LIVE BY VOL.4 サトーカンナ "Make It Obvious"発売記念 ヤマグチヒロコ×サトーカンナ ツーマンライブ

よく晴れた土曜日のお昼時。下北沢440で開催された『サトーカンナ下北沢レコード PRESENTS "THE SPACE WE LIVE BY VOL.4" サトーカンナ "Make It Obvious"発売記念 ヤマグチヒロコ×サトーカンナ ツーマンライブ』に行きました。

カンナさんとは昨年1月に Poemusica Vol.46 で共演して以来。その時はアコースティックギターとのデュオで歌声をループマシンで多層に重ねた、どちらかというをダークな曲調が多かった印象です。器用さと洒脱なところは相変わらずですが、今回はドラムス、ベース、ギターにサウンドエフェクト、カンナさん自身のキーボードという編成でオーソドックスかつシンプルながら体温を感じさせる演奏で聴かせて、楽曲の良さが際立ちます。

1年半ぶりに彼女の音楽を聴きました。その間にはきっと迷ったり悩んだりしたこともあるのだと思います。そんな心情の揺れも音楽から伝わってきますが、全体的なトーンとしてはおしゃれで知的でポップ。例えば、 新譜の1曲目でライブでも最初に演奏された「ものごと」にはRADIOHEADの初期の隠れた名曲 "high & dry" のメロディをさりげなく挟み込む小粋な趣向。あえてなのか、ボーカルのピッチの少々甘めなところはポータブル・ロックを思い出させる。

カウンターカルチャーに基礎を置くが、メインストリームの流行もちゃんと押さえている。知識の引き出しが多く話していて飽きない。カンナさんみたいな子がクラスにいたらきっと、本やレコードやビデオを貸し借りする良い友達になれたんじゃないかと思います。

共演のヤマグチヒロコさん。アシンメトリーなマッシュルームカットに木綿のミニワンピースという姿で、ループマシンを駆使したソウルフルなポップミュージックをステージ上でリアルタイムに構築していく手際には、一流の職人芸を見る清々しさを感じます。ラップナンバー "Dance With You"が良かったです。アンコールの2曲、salyu × salyu の「続きを」、スタンダード "May You Always" のデュエットも素敵でした。

ということで、6月3本目のレコ発ライブでした。リリースパーティというのは特別な祝祭感があってやはりいいものですね。



 

2017年6月22日木曜日

mandimimi 1st EP "Unicorn Songbook: Journeys" リリース記念ライブ

夏日でも6月なので日が落ちると涼しい。渋谷サラヴァ東京へ。mandimimiさんの1st EP "Unicorn Songbook: Journeys" リリース記念ライブにお邪魔しました。

台湾系アメリカ人SSWの Mandyさんは、台湾高雄で生まれ、米国西海岸シアトルに家族で移住。その後、八戸、神戸を経て、現在は東京在住です。ソロプロジェクト名をmandimimiに改め、6曲入りのEPを発表。

そのライフスタイルはノマド的というより、もっと土地土地にしっかりとした生活の基盤と人間関係を築いているように思えます。CDタイトルのJourneysにちなんで、これまで暮らした地で綴った歌を唱うという構成でした。

彼女とは昨年4月に等々力の生花店Iriaさんで出会いました。笑顔で生まれてきてそのまま大人になる人がいるんだなあ、というのが第一印象。口角が常に上がっており、笑うと更に目が三日月型になる。ゆるふわな語り口とナチュラルなビジュアルには、同性が思わず「かわいい!」と言ってしまう要素が詰まっています。

敢えてタイム感やグルーヴを排除し、過剰なまでにレガートを重ねたノスタルジックなピアノの響きは、Harold Budd 的なアンビエンスで空間を浮遊する。

なんだろうこの懐かしさは、と思って聴いていましたが、アンコールで歌ったニール・ヤングの "Only Love Can Break Your Heart" に至ってやっと気づきました。ミディアム~スローテンポと語尾が微妙にフラットするスウィートな中音域のウィスパーヴォイスにコーティングされていますが、自作の楽曲の骨格はグランジ~ミクスチュア~エモ。彼らが時にはっとするような美しいバラードを歌う。その瞬間を濃縮還元したかのようです。やはり思春期をシアトルで過ごした影響が強いのかもしれません。昨夏のギャラリーイベント限定シングルでは Death Cab For Cutie の "Transatlanticism" をカバーしていました。

中国語、英語、日本語のトリリンガルなMandyさんですが、歌詞は英語が大半。完璧なイントネーションの日本語を話すのに、日本語詞を歌うとちょっとだけたどたどしくなるところも逆にチャーミングです。

途中から加わった照井陽平さんのガットギターとコーラスも終始優しく、mandimimiとしての出発を会場全体が静かに祝福していました。



2017年6月12日月曜日

MINAKEKKE "TINGLES" RELEASE PARTY

MINAKEKKEさんとは以前、2013年10月にPoemusica Vol.22で共演しています。当時はMinakoさんというお名前でした。その後MINAKEKKE になって、4月に1stフルアルバム "TINGLES" をリリースしたばかり。俊読2017のリハーサルと本番の間に渋谷タワレコでゲットしました。

芝浦インクスティックで観たThe Jesus And Mary Chain、後楽園ホールのCocteau Twins等々、折に触れて思い出すライブがありますが、この日のこともきっとこの先何度も思い出すと思います。

"TINGLES" レコーディングメンバー全員(&IKILLU 神田愛実さん)による演奏。更にPAにはレコーディングエンジニアの葛西俊彦さん、VJにジャケ写を撮った丹澤由棋さん。アルバムの全11曲だけを収録順に演奏しました(最終曲 "TINGLES" がアンコール)。アルバムに絶大な自信を持っていることが伝わってくるし、なによりアルバムを気に入って聴きに来ているオーディエンスにとって一番のギフトだと思います。

元来彼女は表情豊かなほうではなく、感情の起伏もおそらく少ない。MCは最小限。その歌声にはElizabeth FrazerHarriet Wheeler の残響があります。自己愛、自己嫌悪、自己表現や自己言及よりも、1990~2000年代UKロックに対する憧憬とリスペクト(そして少々のコンプレックス)が優っており、陰鬱な曲調でも聴いていて息苦しくならないのは、そのあたりに秘密があるのかも。

アルバムでは地味な存在に思えた "MARIAN" が強烈な四つ打ちのキックに乗ってフロア映えするソウルフルなダンスチューンになっていたり、アルバムを忠実に再現するのではなく、今日しかないエモーションがところどころではみ出して聴こえて来るのはライブならではの醍醐味です。

ゲストの高井息吹と眠る星座のアクトも素晴らしかった。ソングライティングの確かさ、声の力、演奏技術、アイデア、ダイナミズムとグルーヴ。どこを取っても振り切れています。そして手がつけられないほどの生命力に溢れている。これからもっとずっと高いステージに上がっていくことは間違いないでしょう。