2015年12月30日水曜日

harmony

早い時期にチケットを買ったのに忘れていた映画、シネ・リーブル池袋で、なかむらたかしマイケル・アリアス監督作品『harmony』を観賞。

舞台は近未来。世界戦争と感染症による大災禍により従来の国家体制が崩壊し、生命主義に基づく管理社会ではWatchMeと呼ばれる端末が人体に埋め込まれ、政府のサーバーに接続して全てのメディカルデータが管理されている。人々は痛みを感じることも、病気に罹ることも、老いることもない。太ることさえ許されない。

そんな世界のありようを憎んだ女子高生ミァハ(声:上田麗奈)は親友のトァン(声:沢城みゆき)とキアン(声:洲崎綾)に自殺を教唆し自ら命を絶つ。生き残って体制側の監視官になったトァンは13年後に帰国するが、ランチ中に目の前でキアンが自殺する。その同時刻に世界中で数千人の自殺者が出る。そこには死んだはずのミァハが関与していた。

2冊の長編小説と未完の作品(後に円城塔が加筆して完結)を残して30代前半で早逝したSF作家伊藤計劃原作のアニメ化第2弾。非常に難解で複雑な設定と物語を手際よくコンパクトにパッケージした印象です。淡い色彩を基調にアクションシーンをスタイリッシュに描く手腕は『鉄コン筋クリート』で魅せたアリアス監督でしょう。手持ちカメラを模したような画角の揺れが精妙でリアルです。

物語はニジェールに始まりチェチェンに終わる。ゲーテ(若きウェルテルの悩み)やジェイムズ・ティプトリーJR.(たったひとつの冴えたやりかた)、ミシェル・フーコー(バイオポリティクス)などの引用もさりげなく気が利いている。

僕自身は大した反抗期もなく、のほほんとした十代を過ごしていましたので、世界を憎悪するみたいな経験を持ち合わせていないのですが(むしろ自分の才能を過信し世界を小馬鹿にする世間知らずでした)、多くのティーンエイジャーが通過する感情であり、そこに起点を置いたことで、幾多のディストピア小説から跳躍して、より多くの共感を得ることができたのでしょう。

実際、公開から1ヶ月以上経っているのに、映画館は満席でした。そして観終えて映画館から出てくる人たちがそれぞれ微妙な表情を浮かべていたことが、この物語の持つ多面的なメッセージ(もしくは多義的なディスコミュニケーション)を象徴しているように思えました。


2015年12月29日火曜日

石塚明由子「Hello, my sister」発売記念演奏会

年の瀬のターミナル駅の雑踏を抜けて。吉祥寺Stringsへ。石塚明由子さんの1stソロアルバム「Hello, my sister」レコ発ライブを聴きに行きました。

新譜の全曲に加えて未発表の新曲、vice versaのナンバーや、ジャズの箱を意識したスタンダード曲も。年末の高揚感にレコ発ということも加わって、楽しいライブになりました。

12月2日に発売されたCD「Hello, my sister」は静かな名盤です。優しく丁寧につま弾かれるGibsonのアコースティックギターとナチュラルでありながら耳に残る心地良い発声。シンプルな構造の音楽ですが、初めて耳にする新鮮な旋律が随所に散りばめられています。

ライブで聴くとよくわかるのですが、石塚さんはギターも歌声も音量が小さい。でもその静謐さの中に強靭な意志が宿っている。

そして何かの終わりにきちんと向き合うまなざし。幸せな瞬間を描いていても、どこかで終わりを予感しているような歌詞には、恋愛だけではなく、いろいろなものを見送ってきた人が持つ静かな諦観があります。

「永遠じゃないから 美しいんだね」と歌う「エンドロール」を1stアルバムの1曲目に置いていること、今日のライブで演奏された3つのカバー曲のひとつが細野晴臣の「終わりの季節」であることに象徴されるように。

CDの共同プロデューサーでもある須藤ヒサシさんWATER WATER CAMEL)のウッドベース、vice versaのマツオケンイチさんのギター、妹尾美穂さんのピアノというレコーディングメンバーによる勘所を押さえたサポート。妹尾さんのピアノのきらきらころころした音色も素敵でした。


2015年12月23日水曜日

sugar, honey, peach +love ~Xmas mix

寒い冬の夜に仲間が集まり、暖炉を囲む。そんな懐古的で感傷的なシーンにクリスマスソングはとても似合うと思います。

日暮里駅から谷中ぎんざ商店街、夕やけだんだんのすぐ手前。古書信天翁さんにて、訳詞リーディングとカバー演奏による生音スペシャルライブ "sugar, honey, peach +love ~Xmas mix" が開催されました。

前回は2月にご近所の谷中ボッサさんで。これが好評だったのと、自分たちもとても楽しめたので。12月ということで全曲クリスマスソング。しかもはじめて演奏/朗読するものばかり、というのにチャレンジしてみました。が、意外と難産でした。でも、その難産だったことも含め、準備・製作過程から僕は楽しかったです(mueさんは相当大変だったと思います)。

セットリストはクリスマスの定番曲を中心に。

 1. Frosty The Snowman / The Ronnets
 2. Have Yourself A Merry Little Christmas / Judy Garland
 3. Wonderful Christmastime / Paul McCartney
 4. Silver Bells / Bing Crosby
 5. What Child Is This? / Vanessa Williams
 6. Santa Baby / Eartha Kitt
 7. Sleigh Ride / Carpenters
 8. O Holy Night / Avril LavigneChantal Kreviazuk
 9. The Christmas Song / Nat King Cole
10. Medley: Rudolph the Red-Nosed ReindeerSanta Claus Is Coming to TownWinter WonderlandWhite Christmas
encore. Happy Xmas (War Is Over) / John LennonPlastic Ono Band

本当に名曲揃いで、しかもmueさんのあの澄んだ歌声を隣に座って聴けるわけですから。それは至福のひととき。おいおい、天使かよ、と思いました(笑)。

今回、自身のテーマとして、音楽のパートもふたり同時に音を出す時間を増やす、というのがあって、3種類の鈴、トライアングル、シェーカーとピアニカをすこし演奏させてもらいました。クリスマスなので許されるかな、と甘えて。あと約四半世紀ぶりに人前で歌いました! アンケートを読むかぎり酷評されてはいませんでしたが。。mueさんのギターが素晴らしかったからだと思います!

歌にしても楽器にしても、普段共演してくださるミュージシャンのみなさんがどれだけすごいことをさらっとやってのけているのか、実際にちょっとやってみるだけでわかりますね。でもまた5年に一度ぐらいは歌ってみようかな。

そう、今回も全曲分のライナーノーツを作りました。それからフライヤーのデザインのキャンディも。そんなこんなで、いつも殺伐とした詩を聴いてくださるみなさんに一年分の罪滅ぼしができたかも。クリスマスってそういうことか。

雨の中ご来場のお客様、古書信天翁のおふたり、打ち上げにクリスマス特別メニュをケータリングしてくれた中華の名店深圳さん、イラストレーターの長尾愛子さん、どこかで気にかけてくださった皆々様、そしてmueさん、どうもありがとうございました!


2015年12月21日月曜日

『はだかの音楽』 中田真由美 ワンマンライブ

Poemusicaにも2度(Vol.22Vol.42)ご出演いただいた中田真由美さんが、音楽活動10年目にしてはじめてフルアルバム『はだかの音楽』をリリース。代官山山羊に、聞く?で開催されたレコ発ライブに行ってきました。

中田真由美さんという人は、ビョークヨンシーなんかと同じで、傍系を持たない固有種なのだと思います。とても無邪気で無防備で、常人には容易に理解できないブラックボックスを持っている。

オーソドックスなフォークソングの循環コードを基盤にはしているが、その上に乗せるまだ誰も歌ったことのなような意外性のある美しいメロディ、突然のBPMチェンジは聴き手の脳内リズムを脱臼させる。そして声。口唇のすぐ先で風が吹いているような清新な発声、こぶし、喉声、一瞬だけのファルセット、リコーダーのようなノンビブラートの強いロングノート、語り。ソングライティングに奉仕するように、これらを自在に行き来する。

自身の音楽の特異性/先進性に対して無自覚なのでは、と以前は思っていたのですが、実はそうでもなさそうです。1stアルバムまで10年かかった理由について「私は日々変化しているのに、録音して確定させることに抵抗があった」というような説明をしていました。

かといって難解な音楽ではまったくなく、中田さん自身のチャーミングなキャラクターもあり、いたずら好きで空想癖のある好奇心旺盛な少女がそのまま美しく成長したような姿を、満員の客席が笑顔で祝福しています。

アンコール含め全20曲、「てふてふ」「くらげくん」「希望のカケラたち」の3本のMV上映と片岡翔監督、出演者の紹介、「ひなたぼっこ」では、畠山慎一さん斉藤成美さん、ふたりのダンサーとの共演と盛り沢山。村木充さんのコントラバスが中田さんの音楽の明晰な愛らしさはそのままに、フル3D化したような深い奥行を与えていました。


2015年12月17日木曜日

Poemusica Vol.45

コンクリートの壁にクリスマスリースが飾られた下北沢Workshop Lounge SEED SHIPでPoemusica Vol.45 が開催されました。いそがしい師走の平日の夜に大勢のお運び厚く御礼申し上げます。

uncloseはボーカルのタツミトモエさんとピアノのshimaさんの2人組。長く大阪を拠点に活動してきましたが、今回が東京ではじめてのライブ。不規則な水玉のアンティーク・ワンピースを着こなしたトモエさんは、すっと自然に肌に沁み込むような歌声の持ち主。その一方で切れ味鋭い高音も出せる。shimaさんのリズム主体のピアノと相俟って、1970~80年代の良質なシティミュージックのような趣きがあります。今後東京でもライブを増やしていくそう。要注目です。

さわひろ子さんはガットギター友宗敢さんと(画像)。半年前、Vol.41にご出演いただいたときは漢字表記の澤寛子さんでした。小さな身体から絞り出すように歌う姿は変わりませんが、その時と比較して余裕というか、風格が出てきたように思います。関西弁のふんわりとしたMCと立ち姿の優美さがずっしり重たい楽曲をうまく中和している。親友Luximiさんの旅立ちを祝福するような「海里」。明るくポップなクリスマス・チューンも素敵でした。

2015年末の音楽活動休止を公表しているLuximiさん。その名の通りオリエンタルな旋律と変拍子を品良く取り入れたスケール感のある楽曲構成です。ピアノの打鍵音がソフトで耳に優しいのにグルーヴがしっかりあるのは、彼女の声そのものに弾力性があるからでしょう。パーカッションサポートのまぁびぃ氏もLuxmiさんの音楽を上手く捉えて、とても繊細に心地良く打楽器の音色を添えている。素晴らしい職人芸。"The Christmas Song"のカバーもうれしかった。

僕は「無題(静かな夜~)」、クリスマスの詩「(タイトル)」、3連作ソネット「舗道」「夕陽」「答え」、新詩集『ultramarine』から「月の子供」と「fall into winter」、カセットテープのブレークビーツで「Planetica(惑星儀)」を朗読しました。

何かひとつの大きなコンセプトというのではありませんが、それぞれの想いを持って全員で一本の糸を撚り上げていくようなライブができました。どうもありがとうございます。

12月も後半になるとライブの共演者や会場スタッフと「良いお年を!」と言い合って帰るようになりますが、来年のお知らせです。田野崎文さんがひさしぶりに札幌から歌いに来てくださいます。riry*monaさんも北海道出身。冬らしいライブになりそうです。

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Poemusica Vol.46 ポエムジカ*詩と音楽の夜

日時:2016年1月21日(木) Open19:00 Start19:25
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:田野崎文
    riry*mona
    サトーカンナ
     カワグチタケシ

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2015年12月13日日曜日

THEシャンゴーズ at イェネガ

東京メトロ半蔵門線で渋谷まで。街はクリスマス一色です。アフリカンレストランイェネガTHE シャンゴーズのライブアルバム 「THE Xangos Live At Sad Cafe発売記念ライブに行きました。

ボーカルまえかわとも子さん(左利き)、ガットギター&テレキャスター中西文彦さん、7弦ギター/バンドリン尾花毅さんのオリジナルメンバーに、パーカッション福井豊さんが加わった4人編成が、以前にも増してグルーヴィでスリリングなインタープレイを繰り広げます。

有機的且つ挑発的な2本のギターにアーシーでシャーマニックなボーカルが絡む、ある意味予測不可能なパフォーマンスには定評がありましたが、骨太なリズムが一本通ったことでフロント3人の自由度が上がり、更に楽しい音楽が次々に紡ぎ出される。

数日前に中西さんが50歳の誕生日を迎えたということで、インターバル明けに尾花さんがロマンチックなギターソロをプレゼント。ケーキのキャンドルを吹き消すと、一気呵成にパーティモードへ。ブラジル音楽のサニーサイド、ラテングルーヴの本領を発揮します。

まえかわとも子さんの歌を聴いていていつも思うのですが、作詞作曲をするフロントパーソンで、あれだけの技術と表現力を持っているのに、アーティストエゴというものを感じることがほとんどありません。おそらく音楽を自己表現として捉えておらず、音楽そのものが彼女を動かし歌わせている。音楽に対する愛情と信頼を一番に表現したいのではないでしょうか。

THEシャンゴーズに限らず、まえかわさんが関わっているプロジェクトに共通しているオルタナティブな空気感とストイシズム、そして自由な風通しの良さは、このあたりに秘密があるのかもしれないなあ、なんてことを躍動感溢れるリズムに身を任せながら、頭の片隅で考えていました。


2015年12月6日日曜日

"sugar, honey, peach +love ~Xmas mix"

今年2月に谷中ボッサさんmueさんと開催した訳詞リーディングとカバーソングのライブ "sugar, honey, peach +love"。好評につき続編を12月23日(水・祝)に開催します。

ご存じの方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、僕はスノードーム以外にクリスマスソングのコレクターでして、LP盤とCDと合わせたら50~60枚持っていると思います。そのなかから厳選した50数曲(厳選されてないか、笑)をmueさんに聴いてもらい、更にセレクトされた珠玉の10曲をmueさんのギター弾き語りと僕の訳詞朗読で、皆様にお届けするライブです。

"sugar, honey, peach +love" はスイートなものの象徴。言葉はどこまで甘くなれるか、ということを僕なりに探究しています。

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"sugar, honey, peach +Love ~Xmas mix"

2015.12.23(祝) Open18:00 Start18:30
charge:¥1,000(ドリンク持ち込み可)
act:mue(vocal/guitar)
   カワグチタケシ(poetry reading)
place:日暮里・古書信天翁(03-6479-6479)

ご予約: albatross@yanesen.net

訳詞リーディングとカバー演奏による生音スペシャルライブ第2弾!
今回はクリスマス特集です。クリスマスソングは名曲が沢山。お楽しみに♪

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このライブではじめて演奏/朗読する作品ばかりという、mueさんにとっても、僕にとっても、チャレンジングな機会になると思います。mueさんの原曲アレンジも楽しみ。前回と同じく名古屋在住の長尾愛子さんが超スイートなフライヤーを描いてくださいました。

会場は古書信天翁さん。JR山手線日暮里駅北口を出て左にそのまま坂を上り、途中から下り、谷中ぎんざ商店街、夕やけだんだんすぐ手前のビルの2階にある古書店です。飲物持ち込み自由なので、本屋さんでお酒が飲める滅多にない機会(笑)。

年の瀬の慌ただしい時期だと思いますが、そんなときこそホーリィでスイートな気分に浸るのも悪くないですよね。皆様のお越しをお待ちしています。ご予約は上のメールアドレスにお名前、人数、お電話番号をお知らせください!


2015年12月5日土曜日

fall into winter

12月はじめの明るい土曜日幡ヶ谷jiccaさんで、カワグチタケシ新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)の発売日に、同じくプリシラ・レーベルから今年3月に詩集『十三か月』を出版した石渡紀美さんとレコ発ツーマンライブ "fall into winter"が開催されました。

もともとは7月のTOKYOポエケットのあと、両国のイタリアンバルで何人かで飲んでいたとき、石渡さんと「今度ツーマンライブやろうか」という話をしていた席に居合わせたリュウくん(左利き)が主催となって企画してくれました(なので実はレコ発は後付けなのです)。

jiccaさんという素晴らしい会場を紹介してくれたり、人気イラストレーターの夏目麻衣さんフライヤーを依頼したり、彼がいなければ成り立たなかった今日のライブ。とても感謝しています。

jiccaさん特製メニュ(画像)は、農家直送野菜たっぷりのプレートと天然酵母の自家製パン、じゃがいものスープ(これは紀美さんの詩とシンクロしていました)。開演前、明るい陽が射すテーブルでお客様がみんな同じものを食べている光景は、幸福で平和そのものでした。

石渡紀美さんは落ち着いた低い声の朗読で、『十三か月』とその後に書いた作品を中心に、秋から冬へ移り変わる自然とそれを見つめる目を描写しました。入場時に僕のショートストーリー「希望について」といっしょに配られたエッセイ「fall into winter 序文、あるいはあとがき。」の日常と非日常のあわいを描いた透明感ある文体も素晴らしかった。

僕のセットリストは以下の通りです。

森を出る
・一月、友情のはじまり(石渡紀美詩集『十三か月』より)
・二月、水の音(  〃  )
・観覧車
・水玉
・花柄
・fall into winter

この7篇に加え「無重力ラボラトリー」を石渡紀美さんとデュオで。大気圏外にいる「彼女」と地上の「彼」の対話の詩です。声の温度差にふたりの距離を感じた、といううれしい感想をいただきました。

約60分のライブパフォーマンスのあとは、リュウくんのMCでトークを少々。ご来場のお客様にあらかじめ書いてもらった質問カードに答えるようなかたちで(答え切れなかった質問はfacebookで回答しています)。美味しい食事も相俟って、ひとりでご来場の方同士もなんとなく打ち解け、いい雰囲気が作れました。どうもありがとうございます。

『ultramarine』は今後、各ライブ会場で販売するほか、馴染みの書店さん、古書店さんにも順次納品しますので、遠方で、或はご用事があって今日会場に来られなかった方も、どこかで見かけたら是非お手に取って読んでみてください!


2015年11月29日日曜日

ギャラクシー街道

ユナイテッドシネマ豊洲三谷幸喜監督作品『ギャラクシー街道』を観ました。なんとも評し難い映画です。ちょいちょい笑えるシーンがあって退屈しないし、三谷映画にしてはエンディングもくどくない。だからなのかなんなのか、いつもの「はー、映画観た!」っていう感じがしないのだ。

舞台は宇宙。ルート24666、通称ギャラクシー街道。完成から150年が経ってだいぶ寂れている。街道沿いのハンバーガーチェーン「サンサン」コスモ店の店長ノア(香取慎吾)と妻で店員のノエ(綾瀬はるか)。地球行のシャトルが出発するまでの1時間の物語。

「宇宙で駄目だったやつがどこ行ったって上手くいくわけないじゃん」「私たちの常識的なことが通用しないのが宇宙で暮らすときの条件でしょ?」。ハンバーガーショップを通過する異星人たちの群像劇であり、複数の小さなエピソードが連続的、重層的に進行するのですが、エンディングに向かって収斂するタイプのドラマをあえて避けているかのように思えます。

店のインテリアはミッドセンチュリー。スーツ姿で東芝ルポみたいな旧式のワープロに報告書を入力している国交省官僚で、最も常識的人物に見えるハシモト(段田安則)が2Dの幻覚を呼ぶ力を持っている。ホログラムの堂本博士(西田敏行)は親身な相談相手かと思いきや、プリセットされた好みの回答をボタンで選んで言わせているだけ、だったり。店を一歩出ればそこは真空/無重力の宇宙空間。その閉塞感。

「長い年月を経てギャラクシー街道が一つの生命体として意志を持ってきた」。

スペース警備隊マンモ隊員を演じた秋元才加が、華やかさと演劇的身体能力の高さで鮮やかな印象を残します。あと、優香さんは素晴らしく良い具合に年令を重ねていると感じました。かわいいおばあちゃんへの道は約束されたも同然です。

2015年11月23日月曜日

Bela Muziko! vol.5 mayuluca×池永萌 「朝の月」

高円寺Amleteronで開催されたライブ Bela Muziko! vol.5 mayuluca×池永萌「朝の月」に行きました。

ループマシンや小さな鳴り物を使ったフォークトロニカ的アプローチを経て、最近はシンプルなギター弾き語りが好きだというmayulucaさんは、この日もアサノラと同じく小ぶりなボディのTAKAMINE BRUNO F-150を使用。1曲目「出発」から出発しました。

曲間の無音を壁時計のチクタク鳴る音と上階のカフェの足音、前を通りを走る自転車のベルや原付のブレーキ音が繫いでいきます。mayulucaさんの平熱の音楽には生活音が良く馴染む。針の穴に糸を通すように正確で張りつめた音楽なのに、不思議と風通しが良いからだと思います。

池永萌さんの朗読は、本棚に陳列された古書に挟まれたテキストを取り出して読むという趣向。テキストのありかはランダムなので、その古書を探す時間が作品と作品のあいだにたっぷりとした間を添える。その間が朗読を聴く我々の意識をリセットし、次の詩作品の世界へ上手に誘導します。

その間を埋めたり埋めなかったりするmayulucaさんのギターの分散和音。そして萌さんの小さな声で紡がれる決意と確信に満ちた言葉。「猫のようになった私の耳に/静かな場所なんてなくて//私は朝の月にそっと小さく手を振って/またね、と言って歩き出した」と歌うふたりの共作「朝の月」の演奏も素晴らしかったです。

朗読ってこういうことだよな、と思いました。聴く環境を丁寧に整え、真摯に声を発すれば、力で圧倒するようなことをしなくても、言葉はしっかり届くもの。静けさに耳を澄ます、という愉悦。贅沢で豊かな時間がそこには流れていました。

Amleteron(アムレテロン)とはエスペラント語で「恋文」の意。高円寺北口の裏通りにある古本と雑貨の小さなお店です。ただ可愛らしいだけではなく、『吉岡実詩集』(1967年思潮社版ハードカバー)、田村隆一詩と批評』、富岡多恵子厭芸術浮世草子』が隣り合って並ぶ棚作りが実に硬派で好感度大。中古LP盤も大変充実しています。

 

2015年11月21日土曜日

青い瞳

リスペクトするミュージシャン/エンターテイナーであり、最近ではPoemusica Vol.37で共演したエミ・エレオノーラさんにお声掛けいただき、渋谷東急Bunkamuraシアターコクーン岩松了脚本演出の舞台『青い瞳』を観賞しました。

戦争が終わって1年半。焼野原を見下ろす高台の街に戻った復員兵ツトム(中村獅童)は「ふと気づくと誰かのあとを歩いている」ような無為な日々を送っている。

「先に感情があるんじゃなくて、何かがあるから感情が動くんでしょ。その何かは大事なものだと思うの」。過干渉な母親(伊藤蘭)は、小学生時代のツトムを薫陶したタカシマ(勝村政信)を探し出して、かつての姿を取り戻させようとする。

「いま必要なのは言葉なの。ミチル、それはただの名前」「私たちが楽しかった時間のことを話して。それが始まりのはずでしょう?」。妹ミチル(前田敦子)と地下酒場ブランコにたむろする半グレの青年サム(上田竜也)は恋人同士だがギクシャクしている。そして起こるべくして起こった抗争に巻き込まれていく。

舞台は携帯電話も液晶テレビもある現代もしくは近未来。つまり我々に今後起こりうる事態を描いている。「喜ぶでもない悲しむでもない青い瞳」というのはツトムが幼少期のミチルを形容した言葉ですが、感情を失ったような登場人物たち全体を象徴しています。その中で感情を顕わにするサムは戦場を経験していない。「悲しい、悲しい、悲しい、みんなそこに行きたがっている。みんなそこが好きだから」と言う。しかし戦場を経験していないからといって戦争を経験していないわけではない。

もうひとりの感情的なキャラクターである伊藤蘭が演じる母親は精神に変調をきたしているように見える。喜怒哀楽を表さないツトムは実は既に戦死しており、母親の妄想のなかでだけに生きているのではないでしょうか。周囲もそれに合わせているだけで。

声を荒げても軽快にステップを踏んでもどこかアンドロイドめいた前田敦子。若く溌剌と生きて動いているのに死んでる感がすごい。AKB48在籍時から一貫するその稀有な存在に多くの演出家や映画監督が惹きつけられる理由が、生の舞台を観るとよくわかります。

対照的に生命を感じさせるのが抜群の間で客席を沸かせる勝村政信。「強くなってほしい、それはこの世界を戦場と考えているからです」。舞台に登場して何か一言発するだけで胡散臭くて可笑しい。が、そこに演出家が真実のメッセージを潜ませていることが伝わってきます。

エミさんは地下酒場のピアノ弾きというハマり役。出演時間こそ短いですが、濃厚な場末感を醸し、またカタストロフィの端緒を開く大事な役回りで印象に残る。シャンソン風のピアノに乗せて「気をつけなさい。本当は愛ほど目立つものはない」と歌います。

なぜ戦争は起こってしまうのか。戦争が終わってもまた争いは起こるのだろうか。大きなものでも、小さなものでも、既得権を手放す決意をした先に見えてくるものがあるのかもしれないな、と思いました。

 

2015年11月19日木曜日

Poemusica Vol.44

ボジョレーヌーヴォー解禁の11月第三木曜日は、下北沢Workshop Lounge SEED SHIPにて Poemusica Vol.44でした。

たけだあすかさん(4月のVol.39のときはaccaさんでした)。大阪から新しいCDを持って歌いに来てくれました。小柄で人懐こいえくぼと柔らかく心にすっと沁み込むような声が心地良く響きますが、ピアノやギターの細かいフレーズに小粋なところがあってあなどれません。新曲の「ばか」はスローテンポのキュートなカントリーブルーズです。僕のオープニング「ANOTHER GREEN WORLD」が戦争や殺戮を主題にした重たい詩だったので、それでもささやかな日常は続くという意味で、1曲目に「ありふれた日々」をリクエストしました。

テロと空爆のニュースを受けて「十一月」「都市計画/楽園」。なぜ殺してはいけないか、という僕の問いに対して、松浦湊さん(左利き)の1曲目は「おやすみ」。どうしておやすみと言ってくれなかったの、と夜の空気でやさしく包む。チャーミングな酔っ払いを演じていても、舌足らずでアンニュイなMCやシュールレアリスティックでコミカルな歌詞に、隠しきれな知性が滲みます。音楽のなかに対話が内包されており、ソングライティングにもギターの響かせ方にも独自の宇宙を感じる。「おばかさん」って面と向かって言われてみたい美女です(笑)。

松本佳奈さん(画像)は昨年9月Poemusica Vol.32に出演が決まっていたのですが、急病で叶いませんでした。そのとき入院中の佳奈さんと、カーペンターズの"(They Long To Be) Close To You" についてメールでやりとりしたことを憶えていて1曲目にカバーしてくれました。佐々木真里さんのピアノに乗せて歌うその声は深い滋味と包容力に溢れています。「ばかみたい」「パラダイムシフト」「Strings」。名曲の数々には真里さんのアコーディオンやグロッケンがちりばめられ、より一層輝きを増しているように思えます。

僕の「クロース・トゥ・ユー」の訳詞朗読にも真里さんがピアノで彩りを添えてくださいました。この日初対面のミュージシャン3組が互いにリスペクトを示しながらも自分の役割を果たし、且つ全体の流れがしっかりつながっているという、一流の職人の仕事を見ているような感動がありました。ホストだからがんばってつながないと、と肩に力に入れる必要もなく、僕は自然な流れに乗っているだけでした。それは共演者のみなさんはもちろん、会場スタッフや何より真摯に聴いてくださったお客様のおかげだと思います。心より感謝いたします。

来月のPoemusicaは下記のメンバーでお届けします。2015年最終回、忘年会でもクリスマス会でも(笑)。乾杯しましょう!

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Poemusica Vol.45 ポエムジカ*詩と音楽の夜

日時:2015年12月17日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約・当日2,400円(ドリンク代別)
出演:unclose
     澤寛子
     Luxmi
     カワグチタケシ (PoetryReading)

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2015年11月15日日曜日

fall into winter

プリシラ・レーベルというインディーズ出版社をやっています。3人で始めたのですが、その頃に3人とも好きだったオーストラリアのドラァグクイーン映画『プリシラ』から名前をもらいました。それから17年が経ち、いまはひとりで運営しています。

カワグチタケシ新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)を発売する2015年12月5日に、同じくプリシラ・レーベルから今年3月に詩集『十三か月』を出版した石渡紀美さんとレコ発ツーマンライブを開催します。

会場は幡ヶ谷jiccaさん。京王新線幡ヶ谷駅が最寄のオーガニックカフェで(オーガニックは似合いませんか?)、ランチプレート付20名様限定ライブです。フライヤーのイラスト(画像)は夏目麻衣さんに描いていただきました。

コラボリーディングやアフタートークも予定しているスペシャルなライブです。秋から冬へ。移り変わる季節の中のほんの数時間ではありますが、皆様と共に過ごすことができたら幸いです。ご予約は、prcilla.label@gmail.com まで、お名前、人数、お電話番号を(ベジ希望の方はその旨も)お知らせください。お待ちしています!

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fall into winter
Poetry Reading Live by Pricilla Label

2015/12/05 Sat. open/start 12:00~
charge ¥2,000 (ランチプレートつき 〜ベジ対応可/20名限定 要予約)

〇presents:
石渡紀美
カワグチタケシ

◎幡ヶ谷jicca
tel.03(5738)2235
東京都渋谷区西原2-27-4 升本ビル2F
→京王新線 幡ヶ谷駅南口より徒歩4分
(改札出て右マクドナルド側出口より地上へ、商店街を直進)

※ご予約、お問い合わせ prcilla.label@gmail.com

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2015年11月14日土曜日

TEENS KNOT REVUE

パリで起こったテロのニュースが世界を巡った雨の土曜日。都営地下鉄三田線に乗って白山へ。JAZZ喫茶映画館Double Takeshi Production Presents 詩の朗読会 TKレビューvol.08 "TEENS KNOT REVUE" が開催されました。

このライブシリーズのタイトルはTとKで始まる単語をゲストからひとつずつもらってつけているのですが、小夜ちゃんに提案してもらったのは"KNOT"。結び目という意味です。今日のためにイベントタイトルと同じ"TEENS KNOT REVUE"という詩を書いてきたり、もうひとつの "TEENS" にちなんで、多感な十代の心情を描いた(そして実際に二十歳前後に書いた)「放課後のあとの即興詩」を入れたり。まさに結び目の役割を自ら担ってくれました。僕の「十一月」を朗読してもらったのもうれしいサプライズでした(そしてその描写は今朝の報道とも呼応していました)。

さいとういんこさん(画像)。1997~2000年頃のトーキョー・ポエトリー・シーンのミューズのひとりでありアイコン的存在。ミュージシャン、職業作詞家としての経験も生かして、シーンを活性化させたレジェンドです。強烈な反骨心を愛らしい声とビジュアル、一見甘い言葉にくるんで、シンプルに投げる。スタイルはそのままに更に振り切れたパフォーマンスは観客に強い印象を残しました。約100日間、毎日1篇ずつ書いた短詩Bill Evansの"Alone"に乗せて連続してリーディングする姿にスタンドアローンな気概を感じ、痛快な気分になります。

ダブルタケシの大きいほう、小森岳史。小森さんの詩には「あれがこうだから、こうなって、こうなのである」という理屈っぽさと、センティメントが理屈を踏み越えるときの捨て鉢な跳躍力が同居しています。そのバランスの危うさが初期作品の魅力であり、最近作では単なる感傷に留まらない抽象的なスプリングボードを(その正体が僕にはまだよく見えないのですが)備えてきているように思えました。朗読の質も最近数回では一番でした。「雷の朝」はニューヨークをパリに読み替え、TKレビューの(実は)ポリティカルな側面を象徴していました。

僕もニュースを受けてセットリストをすこし変更して、「Doors close soon after the melody ends」「新しい感情」「すべて」「線描画のような街」「fall into winter」「都市計画/楽園」の6篇を朗読しました。なぜ殺してはいけないか。死はファンタジーではない。今日という日にお伝えしたかったことがすこしでも伝わっていたらいいな、と思います。

ご来場のお客様、応援してくれた方々、映画館のマスターと絹子さん、共演者のみなさん、そしてフライヤーに素晴らしい写真を提供してくださったベルリン在住ますだいっこうさん。どうもありがとうございました。来年の秋にまた、違う名前でお会いすることができたら幸いでございます。

 

2015年11月1日日曜日

アサガヤノラの物語

大気が乾燥してきました。暮れかけた陽を追いかけてJR中央線阿佐ヶ谷駅から西へ進むと、閑静な住宅街に暖かなオレンジ色の灯りを洩らすBarトリアエズが見えてきます。そのお店で日曜日だけ開かれる「アサガヤノラの物語」。リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさん(画像)が日曜店長をつとめています。

その出演機会をお借りして、カワグチタケシ新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)の先行レコ発ワンマンライブを開催しました。

ご来場の皆様、それぞれの場所で気にかけてくださった方々、いつも心の込ったおもてなしと美味しいお料理を用意してくださるノラさん、どうもありがとうございました。セットリストは下記の通りです。

 1. METAPH0RIC CONVERSATIONS
 2. コインランドリー
 3. 山と渓谷
 4.
 5. 無題 (出会ったのは夏のこと)
 6. 水の上の透明な駅
 7. 星月夜
 8. 森を出る
 9. 観覧車
10. すべて
11. 月の子供
12. 線描画のような街
13. 水玉
14. 花柄
15. fall into winter

前半はこれまでに作った7冊の詩集から1篇ずつ、いまの季節に合うような作品を、制作当時のエピソードも交えて。後半8篇は新詩集から収録順にほぼMCなしで朗読しました。いいコントラストが出せたのではないでしょうか。

麻表紙に猫のアイコンをあしらったアサノラ限定『ultramarine』特装版がご来場のみなさんの元へ旅立って行きました。言葉はコミュニティの共有資産。一旦作者の手を離れてしまえば作品は読者のものです。好きなように解釈したり好悪をつけてもらえたら本望です。聴いて、読んでくださった人にどんなかたちであれ、たとえ小さなものでも、何か手渡すことができたらいいな、と思います。

今回は先行リリースということで、『ultramarine』通常版は12月5日発売。その日、石渡紀美さんとツーマンライブを開催します。2015年にプリシラレーベルが出版した2冊の詩集の作者です。詳細はまたあらためてお知らせします。

年末にかけてライブが目白押しです。次はこれ。トーキョーポエトリーオールドスクールのレアキャラ(レジェンドともいう)に会えるこの機会をお見逃しなく!

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Double Takeshi Production Presents
詩の朗読会 TKレビューvol.08
TEENS KNOT REVUE

日時 2015年11月14日(土) 15:00開場 15:30開演
会場 JAZZ喫茶映画館
    東京都文京区白山5-33-19
    03-3811-8932
料金 1000円+1オーダー
出演 さいとういんこ
    小夜 
    小森岳史 
    カワグチタケシ 

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2015年10月31日土曜日

LITTLE CREATURES 25th ANNIVERSARY LIVE

ハロウィンの夜、東京メトロはゾンビで満員です。仮装とは最も縁遠そうなバンド(笑)LITTLE CREATURESの25周年ライブに行きました。

会場はCLUB eX品川プリンスホテル新館3階にある深紅のベルベットに包まれた円形ホールです。開演時間に場内ナレーションが。グッズ紹介の「ポケットがふたつついたとっても便利なトートバッグです」(棒読み)でまず笑う。

客電が落ち、ミラーボールの回る中、STYXの"Mr. Roboto"に乗ってお揃いの白シャツ、ホワイトジーンズにグレーのハンチングを被った3人のメンバーが登場。ホール中央の円形ステージの内側を向いて"MOSQUITO CURTAIN"から演奏が始まります。客席に背を向ける格好になりますが、高校の同級生バンドが初めてスタジオに入って最初の一音を鳴らしたときの初期衝動そのままを象徴しているように見えました。

5年ぶりのワンマンライブ。十代でデビューしてメンバーチェンジなく25年間。リリースこそ多くはありませんが、淡々と気負わず自然体で質の高い音楽を作り続けてきました。常にコンテンポラリーと対峙し、あらゆる音楽に対する真摯な愛情とエレガントな革新性とそこはかとないユーモアをフレッシュな状態で保ち続けている奇跡。スリーピースというバンドの最小単位でありながら人間関係にドライな距離感と深い信頼があるからこそ可能にしているのだと思います。

元来プロデューサー気質で且つ高いプレイヤビリティとセンスを持つ3人が時々こうして集まって、謙虚ながらも確信に満ちた姿勢で、成熟した音楽を奏でる。ポップカルチャーの良心がそこにありました。



2015年10月25日日曜日

アサガヤノラの物語

来週のレコ発ワンマンの告知を下のエントリーでしていますが、先月Poemusica Vol.42でも共演したmayulucaさんご出演の日曜音楽バー「アサガヤノラの物語」に行ってきました。

mayulucaさんの音楽について説明することはなかなか難しくて、言葉で表すと、ミニマルで静謐な形式美、正確な内的律動性、硬質な言語感覚、それらの配置と移ろいのバランス感覚みたいなことにどうしてもなってしまいます。

でも実は、ギターの甘く優しい音色や居住まい正しい発語といった皮膚で感覚するテクスチュアの心地良さが一番の魅力なのかもしれないな、と思いました。CDの作り込まれたサウンドスケープも美しいのですが、ライブで聴くと目の前で質量を帯びてふるえる空気に指で触れられるような感じがして、そのインティメートな感触にいつも心打たれ、創作意欲がかき立てられます。

最近購入したという1984年製のTAKAMINE BRUNO F-150。こぶりなボディで最初は低音がやや物足りなく感じたのですが、ライブが進むにつれて歌声とのマッチングが「これしかない」と思えてきました。御茶ノ水の楽器店でそのギターと出会ったときの感動を綴ったエッセイの一節を朗読して(画像参照)次の曲に繫いでいくライブの構成には、聴いている僕たちも体験を共有しているような感覚がありました。

僕の新作詩集『ultramarine』に収録される「森を出る」の朗読のあと、この詩の着想のもとになった「きこえる」を歌ってもらえたのもうれしかったです。その次の「覚悟の森」を聴いて、「森を出る」で実際に引用したのは「きこえる」の歌詞ですが、視点は「覚悟の森」から得ていたことに気づきました。森に入ることに惹かれながらもためらう人と森から出る人と。

そしてmayulucaさんの静かで美しい音楽に動かされ、帰りの地下鉄大江戸線で、来週のアサノラのセットリストの前半部の全面的な差し替えを決めました。

 

2015年10月22日木曜日

Poemusica Vol.43

第三木曜日夜のライブは6月以来、4ヶ月ぶりです。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPPoemusica Vol.43が開催されました。

真っ赤な花の髪飾りをつけた桂有紀乃さん。Poemusicaに出演するのは2度目、去年3月のVol.26以来です。小さな全身を使って声を発する。その歌声はまだ叶えられていない祈りでもあり、時に辛辣に響くこともありますが、大きな愛を持っているのが伝わってきます。激しいパフォーマンスの最中でも、思いが強過ぎて混沌として見えるときでも、客席を冷静に観察して、関係を築きたいといつも考えているのではないでしょうか。懐疑と信頼の振幅が大きく、それがいつでも観客の感情を揺さぶります。

ちみんさん(画像)が立って歌うのを、そういえば初めて見たかもしれません。伸びのある美声は音程が正確で、地声もファルセットも豊かな響きを持っています。特別な声。歌うことが生きること、歌うために生まれてきたような人。僕からみたらそんな精霊的な存在なので、楽屋で話をしていると、この人に日常があるということ自体が不思議なのですが、その日常が彼女の音楽を確かに形作っているのです。

SEED SHIP初出演の潮崎ひろのさん。仔犬のような可愛らしい人。やわらかくてまっすぐな歌声は世界のありようを信じている。信じているが故に危うさも孕んでいる。そしてその危うさを彼女生来のタフネスが抑制している。そんな風に僕には聴こえました。吉田宏志(よっしー)さんのスケール感と包容力のあるピアノとひろのさんのトイピアノのソリッドでキュートな音色のアンサンブルが、楽曲のピュアネスを一層引き立てていました。

僕は12月発売予定の新詩集『ultramarine』(ウルトラマリン)から5篇、ハロウィンの詩「線描画のような街」、「水玉」「花柄」、ちみんさんの歌詞を引用している「希望の駅」と「すべて」、前作『新しい市街地』から「チョコレートにとって基本的なこと」の計6篇を朗読しました。

来月11月のPoemusicaは、たけだあすか (acca)さんが歌いに来てくれます。ボジョレーヌーヴォー解禁の夜です。乾杯しましょう!

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Poemusica Vol.44 ポエムジカ*詩と音楽の夜

日時:2015年11月19日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:たけだあすか (acca) from大阪(vocal/guitar)
     松浦湊(vocal/guitar)
     松本佳奈(vocal/piano)
     カワグチタケシ (PoetryReading)

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2015年10月10日土曜日

アサガヤノラの物語

日に日に昼間の時間が短くなって、落ち着いて過ごせる静かな夜が増えてきました。

カワグチタケシ7ヶ月ぶりにして2015年最後のソロライブは、リスペクトするミュージシャン、ノラオンナさんが日曜店長をつとめる「アサガヤノラの物語」にて、新詩集の先行レコ発ワンマンと相成りました。

完全予約制先着10名様限定の超プレミアムディナーショー! 「銀座のノラの物語」が阿佐ヶ谷にお引っ越ししてそろそろ2年超。おかげさまで6回目の登場です。

JR中央線阿佐ヶ谷駅南口徒歩4分半の「Barトリアエズ」にて。生声の朗読とノラオンナさんの絶品手料理をお楽しみください!

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日曜音楽バー「アサガヤノラの物語

出演:カワグチタケシ
日時:2015年11月1日(日)
   17時開場、18時開演、19時~バータイム
会場:Barトリアエズ 東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-43-1 NKハイツ1F
料金:4,500円
   ライブチャージ
   5種のおかずと炊き込みご飯のアサノラ弁当(味噌汁付)
   ハイボール飲み放題(ソフトドリンクはウーロン茶かオレンジジュース)
   スナック菓子3種
   以上全部込みの料金です。

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更にご予約のお客様にはもれなく、12月5日発売予定のカワグチタケシ新詩集『ultramarine』アサノラ限定特装版を差し上げます。前作『新しい市街地』から2年半の間に書いた作品を収める予定です。お楽しみに!

銀座のときより2品増えたノラさんのお料理の秋メニューも楽しみ。終演後にはまた、みなさんとたくさんお話したいです。

4500円は朗読会としてはちょっと高めの設定ですが、銀座のときより2品増えたノラさんのお料理がなにより素晴らしいですし、他のライブにはない親密な雰囲気で、価格以上にお楽しみいただけることは間違いないです。

終演後には、みなさんといろいろなお話がしたいです。11月は一番好きな月。図書館と落ち葉とツイードの季節の一日を共に過ごすことができたら幸いです。ご予約お待ちしています!

*完全予約制、先着10名様限定です。
 ご予約は nolaonna@i.softbank.jp まで。お名前、人数、お電話番号を
 お知らせください。お席に限りがございます。どうぞお早目に!



2015年10月4日日曜日

ひろたうた、出かける

主に関西で活動しているバンドhotel chloeのvoひろたうた君が東京で歌うというので聴きに行きました。

彼と出会ったのは一昨年の5月。大阪梅田シャングリラであったとあるライブの打ち上げの席でした。昨年秋に渋谷Wasted Timeでライブを観て、今年3月にはPoemusica Vol.38 に出演してもらいました。

その音楽はときどきサーフミュージックやSK8の影響を感じさせるフォーキーなR&B。そして声がとんでもなく良い。話しているときはそうでもないのですが、歌声は咽喉に絡んでいるのになぜか抜けが良いハスキーボイス。シンプルなギターの弾き語りはグルーヴィでとても豊かな音楽です。

お言葉に甘えてリクエストさせてもらった「かたち」「こっちおいでよ」などスイートで透明感溢れるオリジナル曲に加えて、オーティス・レディングマルーン5のカバーも気が利いてたな。無理筋のコール&レスポンスも客席の温かい笑いを誘っていました。

彼の大阪の先輩で店の常連でもあるゲストのナギラアツシさんもセンスとユーモアがありました。"Bourbon Street Parade" のイントロがサザエさんのエンディングテーマ(笑)。

会場は下北沢BOOKENDS COFFEE SERVICE。南口の銀だこがクロワッサンたい焼きになったその隣。間口一間のかわいらしくもハイクオリティなコーヒー店です。丁寧に淹れられたハンドドリップコーヒーは濃厚で妖艶な味わいでした。


2015年10月3日土曜日

Banda Choro Eletrico live @PRACA11

10月最初の土曜日、表参道PRACA11(プラッサオンゼ)へ。コンポーザー/アレンジャー/ベーシストの沢田穣治さん率いる大編成コンボ "Banda Choro Eletrico" のライブを聴きに行きました。

もとよりかなり流動的なメンバー構成のバンドではありますが、約1年前に同じ店で聴いたときとはすこし編成が変わっています。ステージ上手から、スルドのちっちさん、パーカッション(コンガ、クイーカ、ビリンバウ、etc)渡辺亮さん、ドラムス沼直也さんF.I.B Journal他)、パーカッション(パンデイロ他)・ボーカル新美桂子さん、ベース沢田譲治さん、トイピアノ伊左治直さん、ボーカルまえかわとも子さん(左利き)、フルート尾形ミツルさん、ギター馬場孝喜さん、トロンボーン和田充弘さんの11人。そこに、ダンサー坂本真理さん、ゲストボーカルのふたり井之上久美子さんとMAKOさんが加わった大所帯。

ブラジルの伝統的なカフェミュージックであるショーロを現代的にアレンジ、と簡単に言うとそうなりますが「現代的」の意味が違う。普通、現代的といえば、ポップなアレンジ、エレクトロニクスやダンスビートの導入ということになると思いますが、このコンボの現代性はそちらではなく無調性な現代音楽やフリーインプロヴィゼーションに向かいます。

曲の主題は、フルート、トロンボーン、ギター、スキャットによるジャズロック・フュージョン的な高速パッセージのリフレインで構成されるものが多いのですが、変奏部の逸脱ぶりが予想を軽く超えてスリリングに展開していく。そしてときおり立ち上がるトイピアノの不協和音の美しい異物感。

ともすればアンダーグラウンドで難解な方向性に嵌りそうな音楽を、ちっちさんのスルドが踏みとどまらせています。あのゆったりとサスティーンの効いた裏打ちのシンコペーションが入るとブラジル感がいやがうえにも増し、カーニバルの狂騒を誘います。

PRACA11さんは日系ブラジル人マダムが供する家庭料理も魅力。フェイジョアーダにソーセージがついたプラット・ド・ヂア・リングイッサはボリューム全開で美味しかったです。



2015年9月22日火曜日

ちょっとだけロマンチック東京編

Poemusicaを終えた足で小田急線に乗って祖師ヶ谷大蔵へ。ノラオンナさんの新譜『なんとかロマンチック』のレコ発ライブ『ちょっとだけロマンチック東京編』に行きました。

会場のムリウイはビルの屋上にちょこんと乗っかった海の家みたいに開放的なカフェ。夏の名残りの風が吹き抜け、テラスに面した大きな窓から遠い花火が見えます。

まずノラさんがひとりで登場し、ウクレレ弾き語りで1st『少しおとなになりなさい』から3曲、『カモメのデュオさん』から2曲。最小限に切り詰められた声と言葉と音楽と。次の「こくはく」から古川麦さんのギターが重なると会場の空気がふわりと膨らみます。そして港ハイライトのメンバー、キーボード藤原マヒトさん、ドラムス柿澤龍介さんが加わり『なんとかロマンチック』全8曲を「詩集『君へ』」の朗読から始まるLP盤の曲順で。

ノラさんがMCで言っていたように、ライブはシンプルな編成でも聴き手がそこに自分で必要な音を足していく。それは記憶であったり願望であったりするのですが、そうしてはじめてひとりひとりの内側で音楽が完成する。その孤独なプロセスと場を共有するという相反する行為の調和がライブ演奏を聴く醍醐味なのだと思います。

ノラさんの音楽は、その声質や曲調からモノクロームの欧州映画のような印象があります。それは弾き語りだとより際立ちますが、他のミュージシャンが奥行を付け加えることで、陰翳がより深くなると同時に間口が広がり風通しが良くなる。レコ発ということで制作秘話(?)のMCも多め。

デュオ曲の「シャバダバダ」と「港ハイライトブルーズ」で倉谷和宏さんの歌声が会場の祝祭感を高め、そしてアンコール最終曲はふたたびウクレレ弾き語りで「やさしいひと」。ちょっと感傷的な気分になって、2015年の夏の良いしめくくりができました。

 

2015年9月21日月曜日

Poemusica Vol.42

長いお休みを頂戴しました。6月以来、3か月ぶり42回目のPoemusicaが、敬老の日の午後に下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで開催されました。

2月のVol.37ではループマシンを用いて重層的な構築性を聴かせたmayulucaさん。今回はギターと声だけで。その正確なリズム、午後の明るい空気に完全に同化する自然で滑らかな発声。「聴く人や観る人が積極的に受け取っていかないと感じられないことが多いかなと思って」。シンプリシティゆえに際立つ美がそこにありました。

中田真由美さんの歌声は装飾音や発声がとてもアジア的だなと常々感じています。最後の「希望のカケラたち」で感極まりいくつかのフレーズが涙で塞がってしまいました。中田さん自身にそのとき去来していたものは知る由もないのですが、客席のみんなそれぞれが感情の高ぶりを憶え、僕は僕なりに昨今の社会的・個人的状況を重ね合せていました。それは彼女の持つ音楽の力に他ならないのでしょう。

昨年11月の出産以来、ひさしぶりに聴くエリーニョさん(画像)もそのひとりとしてピアノに向かい、彼女にしか出せない声で、彼女にしかできない方法で、彼女自身と身の回りの今というリアルを切り取って丁寧に差し出していました。母親になって表現に包容力が出たみたいな紋切型では割り切れない、夜泣きで眠れない苛立ちも湧き上がる愛情もないまぜにしながら、未来を見据え、ジャジーでソリッドでプログレッシブな拡がりのある音楽に昇華しています。

古代ギリシア人の考える4つのエレメント、アース、ウィンド、ファイヤ&ウォーターでいったら、3組のミュージシャンは僕にとっては「風の人」。なので「風の生まれる場所」「風の通り道」「風のたどりつく先」の三部作、初秋の乾いた風の吹く「もしも僕が白鳥だったなら」を朗読、mayulucaさんの歌詞の一節を引用した「森を出る」にはギター伴奏をつけていただきました。

今回のPoemusicaは、個々の音楽やパフォーマンスというよりも、出演者同士の関係性、時間帯や天気、差し込む陽射し、コーヒー豆を焙煎する香り、客席のざわめき、通りのノイズ、すべてが調和し、自然と感謝の気持ちが生まれ、そこに居合わせた人みんなの記憶に深く刻まれるような、美しい時間でした。

来月10月のPoemusicaは第三木曜日の夜に戻ります。またまた素晴らしいミュージシャンをブッキングしてもらいました。どうぞお楽しみに!

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Poemusica Vol.43 ポエムジカ*詩と音楽の夜

日時:2015年10月22日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:ちみん
    潮崎ひろの
    桂有紀乃
    カワグチタケシ (PoetryReading)

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2015年9月20日日曜日

あかね詩の朗読会

早稲田大学文学部正門前にある「あかね」は、1990年代後半にだめ連の活動拠点となり、今も(ファッションではなく)リアルなストリートカルチャー、エッジを生きる人々の交差点のような役割を果たしています。

その店で不定期開催されている詩の朗読会に参加しました。かつて小森岳史と3人で「3K」というリーディングシリーズを展開していた究極Q太郎がメインMCを務めていましたが、現在はあかねスタッフのひとりであるガテマラさんがフリーエントリーのオープンマイクを仕切ります。

参加者は常連客のうち創作志向のある方が中心。ひとり1作ずつ何周か回していく形式です。朗読された作品ひとつずつに対して文学的、人文科学的、イデオロギー的な視点から批評が交わされるのが特徴です。

お店の性格上、イデオロギー色の強い作品が複数提示されましたが、リベラルなものもあれば、パトリオットなエコノミズムに基づくものもある。アベノミクスに反対する勢力を揶揄する作品はストレートゆえにアイロニィを帯びる。そんな転換の面白さもあって。

スケッチブックを用いたフリップ芸調のストーリーが回文に帰結するユーモラスな作品。現代俳句のカウンター且つ正統的な継承者たる廃人餓号氏の独特の息づかい。他所では聞けないオルタナティブな表現があります。

僕は、究極Q太郎「蟇蛙のブルース」、カオリンタウミ「RUMBLING IN THE RAIN」、自作の「ANGELIC CONVERSATIONS」「水の上の透明な駅」「都市計画/楽園」の5篇を朗読。

昨今の安保法案を巡る国会情勢を反映し、終盤はガチな討論に。マスメディアやSNSによくある聞く耳持たずの罵倒合戦に陥らないのが、ファシリテーターでもあるガテマラさんのスキルと、あかねという場が本来持つ懐の深さなんだろうな、と18年のその歴史に思いを馳せました。


 

2015年9月6日日曜日

ピース オブ ケイク

長月。ユナイテッドシネマ豊洲ジョージ朝倉原作、田口トモロヲ監督作品『ピース オブ ケイク』を観ました。

失恋と同時に失業した意志薄弱な恋愛体質の主人公志乃(多部未華子)が引っ越した先の木造モルタルアパートの隣室に恋人あかり(光宗薫)と同棲している優柔不断なレンタルビデオ店長京志郎(綾野剛)にひとめぼれ。すったもんだの挙句にどうにかなるお話です。

a piece of cake (ケーキのひときれ)転じて「とるに足りないこと」「たやすいこと」という慣用句。予告編はティーンズ向けの恋愛映画という体だったので、トモロヲ監督がどんな風に撮ったのか興味本位で観に行きましたが、予想に反して面白かった。

高円寺や阿佐ヶ谷(ロフトAの店長役がクドカン)下北沢の見慣れた街並み、OFFOFFシアターからザ・スズナリそして本多劇場というアングラ劇団めばち娘(実際に演じているのは劇団鹿殺しfeat.峯田和伸&松坂桃李)のサクセスストーリー(といっても全部下北沢駅徒歩5分以内)、トモロヲさんらしいサブカルネタをちょいちょい放り込んできますが、この映画の魅力は主演女優の力に負うところが大きい。

キレ顔の邪悪さは当代随一、若手女優で多部ちゃんの右に出る者はいないといっても過言ではないでしょう。居酒屋で泥酔してバイトの先輩に絡むシーンは超ナチュラルでキュートだし、過剰に多いキスシーンも骨ばった背面ヌードも適度にエロく、適度に爽やか。全体に「演じてます!」というドヤ感が皆無で好感度急上昇。

オネエの劇団員を演じた松坂桃李と情緒不安定な作家志望(のちに芥川賞受賞)の光宗薫の好演。志乃の勝ち組の友人役の木村文乃もよかったです。

 

2015年8月30日日曜日

青柳拓次×曽我大穂 at BAOBAB

8月だというのに夏は終わりみたいな雨の日曜日。吉祥寺 world kitchen BAOBAB へ、青柳拓次さんLittle Creatures)と曽我大穂さんCINEMA dub MONKS)の音楽を聴きに行きました。

カセットテープレコーダーから異国の流行歌。ループ、ディレイ、リヴァーブ、コーラス等、空間系エフェクターで歪まされアンビエントノイズ化した曽我さんのウクレレで始まり、青柳さんのガットギターと訥々とした歌声が続く。

青柳さんのオリジナル曲の弾き語りをベースに曽我さんが前述のウクレレのほか、フルート、スチールパンや小さなおもちゃたちによる音響処理で音楽的空間的な彩りと拡がりを加える演奏スタイル。基本的には穏やかな中にも、お互いの音に反応しながら、繊細に、時に暴力的な熱量を帯びた音楽がリアルタイムで紡がれる様はスリリングでもありました。

青柳さんは10代の頃から長年のロックバンドのフロントマンを務めながら、声高なところやエキセントリックな言動、無駄な気負いがなく、寡黙でどちらかというと性格も控え目です。若いころから老成した渋い作風ではありましたが、40代になったいま真摯さはそのままに更に力が抜けてとても自然に自身の表現と向き合えているように見えます。

青柳さんのギターに乗せて曽我さんが朗読した石川達三の「最近南米往来紀」(1931)の神戸出港シーンの昭和初期の南米渡航者たちの高揚感。曽我さんのメロディオンの和音と共に朗読された青柳さんの沖縄の暮らしを描いた自作詩の日常に流れる緩やかな空気。通底する南国的ビートと旋律の心地良さ。

かつて細野晴臣マーティン・デニーを引用して描いた非日常と憧れとノスタルジーの詰まったトロピカリズムよりも、アンコールで飛び入りしたラッパーロボ宙氏がフリースタイルを聴かせたことに象徴されるように、もっと現実の生活リズムと皮膚感覚に裏打ちされた音楽が、観客の脳神経を旅に誘う。そんな知的興奮をも呼び起こすライブでした。

 

2015年8月15日土曜日

ラブ&マーシー 終わらないメロディー

70回目の終戦の日、角川シネマ有楽町で、ビル・ポーラッド監督作品『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』を観ました。

ザ・ビーチボーイズのリーダーでほとんどの楽曲を手掛けているブライアン・ウィルソンの1966年と1985年をポール・ダノジョン・キューザックの2人が演じる、本人公認の伝記映画。2つの時間軸が映画の中で並行します。

3人兄弟と従兄弟と幼馴染で結成したバンドが絶頂期を迎えた1960年代に、長男ブライアンはパニック障害でツアーをスポイルし、スタジオに籠ってポップミュージック史上に輝く名盤『ペット・サウンズ』を制作します。しかしそれまでのビーチボーイズにはなかった(実は前々作あたりから兆候はある)内省的な深みと豊かで複雑な構造を持つ音楽はツアーから戻った他のメンバー、特にマイク・ラブ(ジェイク・アベル)に理解されず、セールス的にもイマイチ。強圧的な父親から受けるストレスも重なり、マリファナからLSD、コカインとドラッグに依存するようになる。

作詞家トニー・アッシャージェフ・ミーチャム)にドラマーのハル・ブレインジョニー・スニード)を紹介するシーンから始まる『ペット・サウンズ』制作時のスタジオ風景が素晴らしい。「神のみぞ知る」作曲時のブライアンのたどたどしいピアノが、フレンチホルン、フルート、ティンパニ、チェロ、プリペアドピアノ、テルミン、クラクション、犬2匹など、それまでのロックンロールの常識を覆す手法で、立体的に時に即興的に構築されていく瞬間に立ち会えた喜び。このシーンだけでも観る価値があります。

ハル・ブレインといえば1960年代後半に米西海岸で録音された主要なレコードのほとんどで叩いている偉大なスタジオミュージシャンですが(ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのドラマーといえばピンとくる方も多いはず)、彼がブライアンの音楽の最大の理解者だったことがわかります。ヴァン・ダイク・パークスマックス・シュナイダー)とマイク・ラブの確執も。

ブライアンの最初の妻マリリン(エリン・ダーク)は当時16歳。サイケデリックなプリントのワンピースが似合ってとてもキュートです。

手持ちカメラを多用した1966年のソフトでノスタルジックな色調と対比して、再起不能かと言われていた1985年は解像度の高い画面。精神科医ユージン・ランディポール・ジアマッティ)から妄想型統合失調症の診断を受け薬漬けになったブライアンを2人目の妻となるメリンダ・レッドベター(エリザベス・バンクス)が救い出すという、まあ普通のラブストーリーです。

カリフォルニアの光と闇。突出した才能とそれゆえの孤独。クリエイティヴィティとショービズ。ビーチボーイズのファンはもちろん、そうでない方でも楽しめる見応えのある映画です。



2015年8月13日木曜日

Separation ~離別と喪失にまつわるオブジェクト

JR中央線立川駅から多摩モノレールに乗り換えて7分、砂川七番駅からほど近い住宅街にある一軒家のgallery SEPTIMAにて。フィラデルフィア在住のアーティストKay Healy(ケイ・ヒーリー)さんの本邦初個展『Separation ~離別と喪失にまつわるオブジェクト』のオープニングレセプションで詩の朗読をしました。

テキスタイルとキルティングによって創られる実物大の家具や人体のオブジェ。大きなものは箪笥やソファ、小さなものは電灯スイッチやコンセントまで。それは既に誰かの生活から失われてしまっているが、記憶の中に保存されているもの。元の持ち主へのインタビューに基づいて製作されています。

実物大であるがゆえの生々しさと、キルティングというフィルターを通したときに付加される優しい感触とユーモアがあります。今回は初めて日本で展示するために、第二次世界大戦中の日系アメリカ人収容所に隔離されていた人たちにインタビューし、記憶を収集した。カメラであったりレンチであったり。

レセプションでは作家本人の挨拶と作品の簡単な解説に続き、村田活彦さんが自作の詩を朗読しました。村田さんは喪失した関係性を記憶に留めておくために書いたというを、また今夜がペルセウス座流星群の極大ということで「何か書いてきて」とお願いしたら新作を間に合わせて来てくれました。

小林うてなさんは小さくて底抜けに明るくてチャーミングな方。蓮沼執太フィルをはじめ多くのプロジェクトに参加しているミュージシャンです。ソロ演奏はブリストル系っぽい重低音の変拍子ブレイクビーツにせせらぎにようなスチールパンとエンジェリックなヴォイスが重なる耽美的なミニプログレ(自己申告ベース)。ボッチンさんのファー星人(着ぐるみ)ダンスも加わり一気にお祭りに。

僕は、伊藤比呂美「アウシュビッツ ミーハー」、石原吉郎葬式列車」、山城正雄たそがれ――M嬢に捧げて」の3篇をカバー朗読しました。第二次世界大戦中および戦後のアウシュビッツ、シベリア、カリフォリニアの強制収容所にまつわる作品です。展示の趣旨のひとつを掘り下げ、複数の異なる視点を提示したいと思い選びました。

記憶を作品化して固定すること、居住地域や生活スタイルが国家により制約を受けること、差別や非人道的労働について、考える機会を得ました。客席の皆様にもそんな何かを手渡せていたらいいなと思います。ケイさん、村田さん、うてなさん、オーガナイザーの増田奈保子さん、ギャラリーセプチマさん、ありがとうございました。

レセプションは終わりましたが、展示は8月19日(水)まで続きます。中央線ユーザーの方、モノレール好きな皆様、是非会場に足をお運びください。

 

2015年8月12日水曜日

フィクショネス句会@SEED SHIP

下北沢南口のアトリエ、発信する書店 "ficciones"(フィクショネス)で2003年から閉店する2014年7月まで毎月開催されていた「句会@フィクショネス」が一夜限りの復活祭。真夏の夜の夢的な何か。蜃気楼。

普段ライブでお世話になっているSEED SHIPオーナーの土屋さんから「夏にワークショップ的なことをやってみないか」と持ちかけられたときに最初に考えたのがこの句会でした。

俳句は座の文芸。匿名で投句した自作の俳句をランダムに清記して読み上げ、気に入った作品を選んで発表し、ひとしきり評が出揃ったところで作者が名乗りを上げる。投句や選句の数、特選並選など様々なローカルルールが適用されることもありますが、基本はこれだけ。シンプルな遊びです。

選は創作なり。人の作品をわがことのように讃え、その素晴らしさを解説する。そこには、近代以降の文芸が自我への拘泥により失ってしまった共同体による創作が生き続けているのです。とまあ、小難しく言えばそうなりますが実際は、超短いポエムを好き勝手に解釈して、誉めたり貶したり、笑いの絶えないのがフィクショネス句会です。これは進行をつとめる小説家藤谷治氏の反権威的エンタメ精神によるものも大きい。

何気なく作った句に点数が入れば良句に思えてきたり、意外な解釈に作者自身が驚いたり。フィクショネス時代のOBOGに新しい参加者も加わり、爆笑に次ぐ爆笑の2時間でした。

第7回本屋対象最終候補作『船に乗れ!』三部作のほか、『世界でいちばん美しい』、『船上でチェロを弾く』など音楽小説・エッセイも手がける藤谷氏が、開始前にエリック・サティピアノ曲をポロポロと弾きました(画像参照)。聴き慣れたSEED SHIPのピアノですがクラシック音楽が演奏されるのを聴いたのは初めてだと思います。

 

2015年8月11日火曜日

バケモノの子

夏休みの夜の映画館が好きです。ユナイテッドシネマ豊洲に、スタジオ地図製作、細田守監督作品『バケモノの子』を観に行きました。

渋谷を根城にするホームレス小学生蓮(声:宮崎あおい)は、宮下公園ガード下の違法駐輪場で声を掛けてきたバケモノ熊徹(声:役所広司)の後を追って異界に踏み込む。そこは半獣半人(顔と表皮が動物で体型と服装が人間)たちが暮らすパラレルワールド渋天街。強くなりたい蓮は弟子を探していた熊徹とWINWINの関係を結び、九太と名付けられ弟子入りする。

エンドロールに参考文献として中島敦の「悟浄出世」が挙げられていて「そうか!」と思ったのですが、前半は「西遊記」(とおそらく中島敦の「弟子」も)、後半はメルヴィルの「白鯨」の枠組を借用しつつ、細かいプロットを積み上げて、複雑な構成のストーリーを、きっちりロジカルに組み上げる手腕はお見事です。

17歳になった九太(声:染谷将太)と私立進学校生楓(声:広瀬すず)の出会いは区立渋谷図書館(Amazonにボーイ・ミーツ・ガールなし)。このふたりはあたかも『おおかみこどもの雨と雪』の花と彼の前日談のよう。

「人間はひ弱なゆえ、胸の奥に闇を宿らせる」。中島敦の小説では、元来悩みや迷いを持たない妖怪が人肉を喰らうことで自我が芽生え実存主義的自己懐疑に陥るのですが、この映画では逆にバケモノが概念化して主人公の胸に収まることで闇を打ち消す解決を描いています。

市庁舎前に広場があり、狭い階段で住居をつなぐ渋天街の中近東風の市街描写はとても魅力的。一応電気は通っているようですが、通信インフラがなく移動は徒歩です。いくつかのフラワーアレンジメントがパスワードになって渋谷の街と行き来できるのですが、人間界に戻った瞬間に流れこんでくる複数の流行歌、エンジン音、旅客機のジェット音、街のノイズの奔流がリアルです(音楽は高木正勝)。勝敗の決した瞬間にスタジアムの天井から吊り下げられた垂れ幕が砕片化し紙吹雪に変わって舞い散る様は大変美しい。

残念だったのは、作品全体にマッチョイズムが横溢しており女子キャラクターの存在感が希薄で、そのせいかこれまでの細田作品には必ず登場したヒロインの入浴シーンがなかったことです。次回作での復活を希望します!

 

2015年8月5日水曜日

ビョーク: バイオフィリア・ライブ

シネ・ロック・フェスティバル2015。2本目は『バイオフィリア・ライブ』。2013年のロンドン公演をニック・フェントンとピーター・ストリックランドが撮っている。ビョークという名の世界一かわいい生き物(当社比)。その固有種が飛んだり跳ねたり歌ったりする姿を愛でるためのフィルムです。

360度の円形ステージには20数名の女声聖歌隊(Icelandic Female Choir)。楽器演奏者はマット・ロバートソン(key)とマヌ・デラーゴ(dr/per)のふたりだけ。暴力的なアナログシンセ音に巨大なテスラ放電管がシンクロする。

ビョークの音楽の独自性、革新性について僕があらためて言うまでもないのですが、ライブフィルムを通して感じたのは、もしかしたら自己の快感原則に従って普通のポップソングを作っているだけなのかもしれないな、ということ。ネリー・フーパーからmatmosまで、常に最先端のミュージシャンと共同制作していること、楽曲にキャッチーなサビがないことなどから前衛的に思われがちですが、おそらく彼女は最先端や前衛なんてこれっぽっちも意識していない。

なのにラスト近く、唯一のタテノリ曲 "Declare Independence" でホールを煽りまくっても、そのハードコアなビートに観客の半分も乗れないでいる。そのギャップ、異物感こそがビョークの音楽なのだと思います。

頭上の複数のモニターに投影されるグラフィックや微生物、クラゲ、星雲などが時折ライブシーンを覆い尽くす。"Hidden place"のヒトデやイソギンチャク、 "Possibly Maybe" のイカを喰い尽くす小魚の群なんかは美しいのですが、それよりも、へんてこなハンドメイド楽器たち、ガムランとスチールパンの中間みたいなやつ、木製の自動演奏パイプオルガン、一戸建サイズの手廻しオルゴール的な何かなどなど、できればもっとアップで見たかったな。

洋楽のライブの敷居がまだ高かったローティーンの頃、飯田橋や池袋の名画座で『レッド・ツェッペリン狂熱のライブ』や『トミー』や『ウッドストック』、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』なんかを2本立で5時間も6時間も観たのを思い出して甘酸っぱい気持ちになりました。

 
 
 

2015年8月1日土曜日

クイーン・ロック・モントリオール 1981

夏はやっぱりフェスでしょ。でも暑いし、虫に刺されるし、テントとか無理だし。というわけで有楽町へ。丸の内ピカデリー3で開催中のシネ・ロック・フェスティバル2015クイーン・ロック・モントリオール 1981』を観ました。

1曲目の"We Will Rock You" から脈拍数がダダ上がり、ラストの "We Are The Champions" まで20曲以上、息もつかせぬ名曲てんこ盛りの渦に巻かれる95分。

この1981年のアルバム『ザ・ゲーム』のワールドツアーの映像はDVD化もされているそうですが、テレビ画面で観るよりはるかに臨場感があるし、画質、音質も完璧。劇場の音量も申し分ないです。このときのメンバーは30代前半。最もコンディションの良い時期のバンドの魅力をあますことなく伝えてくれます。

ライダースジャケットにスーパーマンのタンクトップ、GUESS?のホワイトジーンズ、アディダス・カントリーという姿で登場するフレディ・マーキュリーは、この時代で既にロックのメインストリームから外れた異形の存在。前半15分あたりで上半身裸になると胸毛も背毛もすごいです。終盤は裸足にホワイトデニムのホットパンツ、首には赤いバンダナ。格好良いんだか悪いんだかわからないのですが、終始暑苦しく熱唱する姿に感動して泣けてくる。声がとんでもなく強く美しく、この世のものとは思えない(1991年没)。

バラードの名曲 "Love Of My Life" は、自身のピアノではなくブライアン・メイの12弦ギターで歌い上げます。シンプルなセットでサポートミュージシャンも入れずに、4人だけで硬軟、緩急自在のロックをこれでもかとばかりに投げ続ける("Bohemian Rhapsody" の中間部のコーラスパートだけテープを使用したライトショーになっています)。

美少年ロジャー・テイラーのティンパニ・ソロ、終始寡黙で地味なベースのジョン・ディーコン、"Save Me" 1曲だけのブライアンのピアノ、フレディのステージドリンクはハイネケン。バックステージショットや幻想的なイメージカットなどは一切はさまず、ステージ上の4人だけにフォーカスしたソウル・スイマー監督の演出は、スピーディなスイッチングでメンバーの表情をよく捉えている。ブライアンの衣装が3~4パターンあるので、何日かにわたって撮影されたフィルムを編集しているものと思われます。


2015年7月29日水曜日

金佑龍 2nd Full Album 「ling lom」 リリースツアー

連日の猛暑。熱帯夜。代官山UNITで開催された、金佑龍 2nd Full Album 「ling lom」リリースワンマン「~さあさあ、アルバム出すのかい。出さんのかい。アルバムツアーって謳っておいて出せないと思ったら出せるのかい。出せたらみんなにマジ感謝ツアー~」、素晴らしいライブでした。

新譜の中心メンバーである東横方面はペダルスチール宮下広輔PHONO TONESきわわ)、アップライトベース千田大介Natural Records)、ドラムス脇山広介tobaccojuice
BIGNOUNliquid)とgnkosaignkosaiBANDリトルキヨシトミニマム!gnk!)、コンサーティーナ、ウクレレ、コーラスmoqmoq (オカザキエミ)。それにボーカル・ギター金佑龍(キムウリョン)という6人編成で叩きだすパーティー・チューンの数々。小学生女子から還暦近い紳士まで、多彩な客層で埋められたフロアを揺らす。

フロントマンのウリョンくんは、天才肌で情緒不安定なところもありますが、そんな彼をバンドメンバーもフロアの観客も全員が笑顔で見守っている。それに応えてグッドメロディをアイデア溢れるアレンジメントで手渡します。

OP曲「combo!」のひとりビッグビート、拳を突き上げシンガロングした「See you letter」、永遠に続くかと思われたアウトロ「Pora Pora」、ラスト曲フィッシュマンズの「ナイトクルージング」のサイケデリックダブノイズ、アンコール「時が止まれば」の繊細な歌詞と歌声。テクノロジーとエモーション、神経質さと包容力、自信なさげなMCと確固としたパフォーマンス、細部にこだわる几帳面さと豪放磊落さ。振れ幅の大きさが不安定さを超えて奇跡的に美しいバランスに転化する感動的な瞬間がいくつもありました。

タイム感の異なるふたりのドラマーにギターループが重なり、実質トリプルドラムとなる展開の高揚感。アルバムでもほぼ全曲を小粋なウィットに富んだミュージシャンシップで飾ったmoqmoqさんの存在も大きかった。

彼のライブに行くのは2013年の前作大阪レコ発以来でした。放蕩息子の2度目の帰還を今度は東京で祝福できたことをとてもうれしく感じます。


2015年7月26日日曜日

フィクショネス詩の教室 @tag cafe

東京の最高気温は35.8℃。下北沢の書店フィクショネスの閉店から1年、その跡地からほど近いtag cafeさんで、1年ぶりの詩の教室が開催されました。

フィクショネスで14年間続けた詩の教室は、前半1時間を詩人の生涯と作品の紹介、技法や形式の解説に充て、後半は参加者の作品を合評するという形式でした。今回はすこし趣向を変えて、自作でも他作でも、参加者全員が好きな作品を1~2篇ずつ紹介するという詩の持ち寄りパーティに。

カフェのテーブルを囲んで紹介された作品はこのようなものでした。

「あるラブ・ストーリー」渡辺めぐみ
黒イチゴ摘みシェイマス・ヒーニー
「楽吉」カオリンタウミ
Pellicule不可思議/wonderboy
「小さな箱」バスコ・ポパ
明日戦争がはじまる宮尾節子
鹿村野四郎
リンゴまどみちお

これ以外にも参加者の自作詩がいくつも。自分の好きな作品を選んで、その魅力について話をするのはちょっと句会の趣きもあって楽しかったです。旧ユーゴスラヴィアの詩人バスコ・ポパの作品(山崎佳代子訳)をはじめて読みましたが、素晴らしかった。

実は詩の教室が終了してから1年、割合意識的に詩を読むことから遠ざかっていました。それまでの14年間は教室のために毎月3~5冊の詩集を隅々まで読んでいたので、その反動があったのかもしれません。ちょっとした飽和状態にあった。詩どころかこの1年で読んだ書籍は推理小説とノンフィクションばかり。

ひさしぶりの詩の言葉の奔流に自分が酩酊しているのに気づいたのは、自宅近くでよく会う他家の飼い猫の背中を撫でてほっと一息ついたときでした。

楽しかったな。企画してくださった詩の教室OGの杵渕里果さん、ご参加のみなさん、tag cafeさん、昼間激励の電話をくれたフィクショネス元店主で小説家の藤谷治先生、どうもありがとうございました! またこんな機会があったらうれしいです。


2015年7月18日土曜日

梅雨の梅干し

ザ・ラスト・デイ・オブ・レイニー・デイズ。下北沢leteで開催されたみぇれみぇれワンマンライブ『梅雨の梅干し』に行きました。

5月のPoemusicaではソロの弾き語りでしたが、今回はコントラバスひろせたつやさんとデュオで。「水槽の中の僕」から始まって、3枚のCD『茶の間ろけっと』『みぇれみぇれ/安生正人』『ひしゃげた音楽会』から、そして新曲も交え、アンコールの「空飛ぶベッド」まで全18曲。2時間があっという間でした。

「月から君に手を振る」「君の背中の羽も嫌いじゃない/長い長いはしごを伸ばせばそこに届くかな」(長い長いはしご)、「時間と ロールケーキ は/よく似ていると 思うん だ」(猫の知らない朝)、「月の上で待ち伏せて/君はもうすぐきちゃうんだ」(待ち伏せ)、「ピストルを鳴らす朝 武器を捨ててこの星を出た 服に花を忍ばせて」()。

彼は自分の作品を「おはなし」と呼びます。表現をする、作品を創るときに人が自我から逃れることはとても困難ですが、視座を思い切り高く置くことによって、あるいは微生物や素粒子の世界に入って行くことによって、反転した普遍性を得る。というのがファンタジーの持つ効果であるとしたら、生まれ持った優しい声質に、適度にねじれた甘い旋律、意外性のある和声、ループマシンの逆回転音、トイピアノ、カズー、おもちゃのラッパ、KAOSSILATOR などを総動員して、それを体現しようとしているように見える。

その浮遊感をさらに押し上げたり、時には地上にどっしり繫ぎとめたりするのが、ひろせたつやさんのコントラバスです。今回の「梅雨の梅干し」がみぇれみぇれとしての事実上のラストライブとのことですが、名前を変えて今後もふたり(またはソロ)で活動していくそうです。

最近すこしご無沙汰していましたが、2011~2012年頃よく通ったleteはやっぱり良い箱。木や枝を活かした空間は天候や湿度によって微妙に響きが変わります。坂道を通り過ぎるノイズも混じる。決して抜けの良い箱ではないのですが、すこしくぐもった響きを持つ彼らの音楽にぴったり合っていました。

 

2015年7月11日土曜日

ガラクタの城

2日続きの晴天で東京は真夏日に。新高円寺STAX FREDmueさんの弾き語りワンマンライブ「ガラクタの城」。自宅で歌っているみたいなのが理想の弾き語りというmueさん。普段とは一味違う雰囲気の2部構成です。

冒頭の数曲は、得意の複雑で華麗なギタープレイを封印して、ベース音のシングルノートをエイトビートで刻む。それが逆に音楽の骨格を際立たせて聴かせる。「愚痴っぽい? 文句っぽい歌詞を聞かせるのは悪いかな、と思って」普段あまり演奏しない曲を中心に。

不満や理不尽な想いをポジティブに昇華してポップに仕上げるmueさんのソングライティングに隠されている(が微かに滲み出してしまう)エッジはこういう反骨心で出来ているのか、という確認。

昨年4月のワンマンライブ以来のループマシン使いもこなれて、ギターのリフとボイスパーカッションのタイムが合わずステージ上でリアレンジする場面も。彼女生来の音楽的瞬発力の強さに加え、ミュージシャンの脳内や試行錯誤の過程を覗く面白さがあります。

ライブはいつも明確なコンセプトを持って作り込み、バンドセットも弾き語りもはっきり意図が感じられる演奏をするmueさんですが、今回はあえてダラダラとやるという。それもひとつの意匠です。レアなセットリストやひとりのミュージシャンの多面性を楽しめるというだけでなく、演奏する側にとっても聴く側にとっても意味のあるエクスペリメンタルな行為なのではないでしょうか。こんな楽しいガラクタなら是非また見たいと思いました。

 

2015年7月10日金曜日

島しょの旅人 ~House in Island~

東京はひさしぶりのお天気。気温が急に上がりました。浅草吾妻橋のうんこビルといえばアサヒビールの本社ですが、あのフィリップ・スタルクの金色のオブジェが乗っているのは本社ビルではなくアサヒ・アートスクエアが入っている文化施設なのです。

会場に入るとほんのり材木と藺草の匂い。フローリングの床にはまばらに畳が敷かれ、大人も子供も靴を脱いでくつろいでいます。

Little Creatures のギター/ボーカルの青柳拓次さんとは1999年にポエトリーリーディングのコンピ盤でご一緒したご縁で、彼が山﨑円城さんと主宰していたオープンマイクBOOKWORMに何度もお邪魔しています。

川村亘平斎さんは、インドネシアとフィリピンとマレーシアの間にある架空の小さな島、ワラケ島の伝統音楽の演奏家、ガムラン、パーカッション、キーボード、影絵をひとりで操ります。その声はボーカルというより架空言語のスポークンワーズ。土着的な旋律と口承文芸を自在に行き来する。

それぞれのオリジナル曲を交互に演奏するスタイルですが、沖縄やハワイの音階を取り入れたアコースティックギター弾き語りの優美で滋味深い青柳さんのソロ曲に川村亘平斎さんがガムランや影絵で彩りを添え、川村亘平斎さんのループ主体の音響に青柳さんのギター、ウクレレ、シンセサイザーのオーガニックなサウンドが絡むことで、大地から発してスペイシーな高みへと観客を連れて行きます。途中ヒューマンビートボックスAFRA氏もハプニング的に登場して会場を沸かせました。

1980年代にブライアン・イーノが、デイヴィッド・バーンジョン・ハッセルらとともに第三世界のビートを模倣して、白人主義的コロニアリズムと批判されたのも今や昔。エスニック・ミュージックはアジアの片隅で、こんなにも静かに可憐に花開いたのだなあ。終演後、会場を出て大川を渡る涼しい夜風に吹かれながら、そんな感慨に浸りました。


2015年7月5日日曜日

第19回TOKYOポエケット

小雨降る両国へ。毎年7月に江戸東京博物館で開催されるTOKYOポエケットにプリシラ・レーベルのお店を出してきました(TOKYOポエケットとプリシラ・レーベルのあらましについてはこちらこちらをご参照ください!)。

僕にとってはライブの物販コーナーが何十もあって、それに特化したフェスみたいなものです。ご来場のお客様も詩集購入目的の方が多いいのですが、お目当てを決めている方もいれば、会場をのんびり巡りながら気になるものがあれば立ち読みしたり作者本人と話したりという人もいます。

弊社プリシラもリピーターのお客様、新規のお客様にお立ち寄りいただきました。雨のせいもあってか過去最高とはいきませんでしたが、売上目標達成です。新刊の石渡紀美詩集『十三か月』もたくさんの方に手に取っていただきました。どうもありがとうございます。

1999年の初回に比べるとブースの数も倍増し、商品も売り方もみなさん工夫を凝らしています。ちなみに今年のお隣は文豪の江戸型彫版画を取り扱うむかで屋さん。蔵書票を購入。素敵です。

従来は午後からだった開催時間が今回から10時から16時半になったのもよかったです。午前中はお天気が悪く出足は決して良くありませんでしたが、遠方からの参加者も最後まで残れるので途中でブースが歯抜けになることもなく。

ポエトリーリーディングのゲストのおふたり橘上さん、しもやんさんのパフォーマンスもタイトでアトラクティブでチャーミングでした。

詩人のパブリックイメージといえば、我儘、気まま、プライドが高くて、変なところに細かいくせに、時間にはルーズ、みたいなところだと思いますが、そんな人たちをしっかり取りまとめて16年間休まずに運営してきた主催者、ヤリタミサコさん川江一二三さんというふたりの先輩詩人にリスペクトを贈りたいと思います。来年もまた七夕の頃にお会いしましょう!


2015年6月21日日曜日

海街diary

雨期。細かい雨が降ったり止んだり。夕方から海の近くまで。ユナイテッドシネマ豊洲で、是枝裕和監督作品『海街diary』を観ました。

鎌倉(最寄駅は江ノ電極楽寺)の古い日本家屋で暮らす三人姉妹が、父親の葬儀で出会った腹違いの妹すず(広瀬すず)を引き取ることに。夏に始まり夏に終わる、一年の物語。

是枝監督もこんなにやさしい映画を撮るんだなあ。すずが何かを初めて食べるとき、姉たちは一呼吸待って、すずの顔を覗き込む。小さな生命を慈しむその姿には心温まります。

監督はいつも家族をテーマのひとつに置いていますが、これまでの作品が家族だからこそ起こるディスコミュニケーションを描いていたのに対して、その部分は長女幸(綾瀬はるか)と実母(大竹しのぶ)との対立以外の場面では登場人物たちの内面に留められている。『そして父になる』では主人公たちとともに、血のつながりか、共に過ごした時間か、という選択に迷った観客たちを、この映画を作ることによって双方向に解放したかったのかもしれません。

そこで大きな役割を果たしているのが女優たちの生身の肉体です。特に次女佳乃を演じた長澤まさみがハリウッド女優並みのゴージャスなボディシェイプと自然で豊かな表情に露出の多い衣裳で画面に生命力を与えています。長い四肢を持てあますことなくしっかりコントロールする姿は観客の目からも気持ち良いものです。

三女千佳は夏帆(左利き)が演じています。吉田秋生原作漫画ではアフロですが、映画ではおだんご。誰よりも屈託がなくよく食べる。

そして広瀬すず。中学校の教室では大人びた憂いのある表情を見せるのですが、姉たちに囲まれると途端に幼い顔になる。映画撮影時と比べ現在は更に大人になっていますが、撮影中にもきっと成長したのでしょう。それを計算して撮ったのだと思います。あと少年サッカーのシーンでドリブルのキレが本物。惜しくもゴールには繋がらないがラストパスは左足インサイド(笑)。

鎌倉の四季、蝉時雨、紅葉、紫陽花。しらすを釜揚げするときの湯気、自転車二人乗りで桜のトンネルを駆け抜ける。どのシーンも写真集のような質感で美しい。脇役も端役もいちいち豪華な俳優陣ですが、みんなでこの四姉妹をサポートしてあげようという意思がスクリーンからはみ出してくる幸福な映画です。



2015年6月18日木曜日

Poemusica Vol.41

夏至の4日前。茶沢通りから一本裏の緑道にクチナシの花の甘い香りが漂っています。下北沢 Workshop Lounge SEED SHIPで41回目のPoemusicaが開催されました。

澤寛子さんの歌を初めて聴きました(動画サイトにもほとんど情報がありません)。小柄で華奢なショートカット美少女が全身を使って絞り出すように歌う姿に、胸の底にある何かが震えました。ガットギター友宗敢さんのサポートもよく歌声に寄り添い、正確かつエモーショナル。今年、活動の拠点を大阪から東京に移し、より多くの聴き手を得ることでしょう。

ヴァイオリン・インストゥルメンタルのあすなさん(画像)。ピアノはモチヅキヤスノリさん。普段はシンガーのサポートにまわることが多いというあすなさんですが、センターとしての華やかさを持っています。ヴァイオリンの音色がキラキラと躍動し、溌剌と演奏する姿と相俟って、聴いているこちらが自然と笑顔になってしまうような陽性の魅力があります。

臼井ミトンさんはぐっと渋く。ギターとピアノを両方弾くシンガーとは何度か共演していますが、彼の音楽は普通とは逆に、ギター曲がメロウでドラマチック、ピアノ曲がアップテンポでグルーヴィなのが面白い。サウスポーのアスリートを観る面白さと似ているような気がします。楽器演奏や歌唱をまずフィジカルなものとして捉えているのも信頼が置けるところです。

僕は、オープニングに「」、"Unversal Boardwalk"より「六月」、夏至の一日を描いた「ガーデニア Co.」、あすなさんの前に「」「新しい感情」、最後にラングストン・ヒューズの「もの憂いブルース」(斉藤忠利訳←高校の大先輩です)のカバーでミトンさんにバトンを送りました。バラエティに富み且つバランスの取れた、Poemusicaらしい夜になったと思います。

7~8月はPoemusicaはお休みして、そのかわり詩の教室と句会をします。次回Vol.42は9月21日、祝日の昼間のPoemusica。独自の視点で個性的な音楽を創造している女子SSW3組を招いてお届けします。どうぞお楽しみに!

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Poemusica Vol.42 ポエムジカ*詩と音楽の午後

日時:2015年9月21日(月・祝) Open12:30 Start12:50
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
    世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
    03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
    yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:mayuluca (vocal/guitar)
    エリーニョ (vocal/piano)
    中田真由美 (vocal/guitar)
    カワグチタケシ (PoetryReading)

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2015年6月7日日曜日

朗読の時間

高円寺純情商店街の突き当りを左へ、庚申通りの店先に亀のいる不動産屋の少し先の狭い路地を入ったところに大陸バー彦六があります。開店前の扉を開けたら、ザ・レジデンツがかかっていました。

入梅前夜。朗読の時間。蛇口さんにお声掛けいただいて、5年ぶりに詩人だけのブッキングライブに出演しました。

桑原滝弥さん。18歳の大晦日に男女4人で初めて東京に遊びに来た話から一気呵成に怒涛のリーディングへなだれ込む。虚実ないまぜのモノローグと独りコールアンドレスポンス。暴力的に声を荒げるほどに、冷徹な構築性が覗く。シアトリカルな話芸。言葉と声の質量と密度で息苦しいまでに場を圧倒する力は業界随一です。

変わって石渡紀美さんは乾いた声質で、静謐な抒情を淡々と綴る。初期作品のペーソス滲む作風。普通の単語を整ったシンタックスを用いて並べているのに、なぜか独特過ぎる言語感覚。プリシラ・レーベル最新詩集『十三か月』の作品は本人曰く「花鳥風月」なのに、自己対象化がひと回りして読者/観客をも対象化してしまいます。

蛇口さん(画像)の朗読の面白さを形容するのは難しいです。説明するのは難しいけれど、いやがうえにも面白い。エロいことを言っても全然エロくないし、韻を踏めば踏むほど言葉遊びから離れていく。よれよれしているのにそれが逆にグルーヴになる。テンポがないのに音楽的。そして愛すべきダメっぷり。事実彼ぐらい言葉に愛されている男を僕は知りません。相思相愛に違いない。

狭い店内がなんだかよくわかんない空気に包まれ、つられて僕も変なテンションに。3年前の6月5日に亡くなった作家レイ・ブラッドベリの短編小説「万華鏡」を挟んで、「無題(世界は二頭の象が~)」「ANGELIC CONVERSATIONS(不完全ver.)」「Planetia(惑星儀)」「雨期と雨のある記憶」「すべて」「We Could Send Letters」の6篇を朗読しました。そう、最近ようやく自分をコントロールしない術を身に付けたような気がします。

滝弥くんが、この4人は全員2000年の夏に出会った、と言っていましたが、そのひとりひとりと最初に会った日のことを僕も憶えています。15年後にまた集まったら楽しいことでしょう。15年後もこの4人はきっとそれぞれ別々に詩を書いて朗読していることでしょう。


 

2015年5月24日日曜日

百日紅 ~Miss HOKUSAI~

雨の予報が外れて東京は薄曇りの日曜日。コレド室町2 TOHOシネマズ日本橋で、杉浦日向子原作、原恵一監督の劇場版アニメ映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』を鑑賞しました。

「そのへんちきはおれの父ですのさ」。

舞台は文化11年(1814)の江戸両国。人気の絵師葛飾北斎(声:松重豊)は55歳、作画アシスタントでもある23歳の三女お栄(声:)と弟子の善次郎(声:濱田岳)の3人暮らし。食事は外食か出前、部屋は散らかり放題、しかし絵の注文は引きも切らさず。

妻こと(声:美保純)とは別居し、生まれつき目の見えない末娘お猶(声:清水詩音)は琵琶の修業で尼寺に預けてある。

「ぬしはきれいでおりゃれる。わっちよりよっぽどつやっぽいね」。

故・杉浦日向子といえば、1995年から10年続いたNHKの人気番組『コメディーお江戸でござる』で江戸の町人文化の解説をしていた印象が強く、原作漫画の考証は間違いない。アニメ化にあたっても、せっかちな江戸弁や優美な吉原の廓言葉が最大限活かされており、耳に心地良い。それだけにサウンドトラックが西洋音階の平板なもので、すこし残念です。雪を踏む音や雨の音、生活音の表現は素晴らしいので、音楽の使用量を控えめにするか、三味線や琴、琵琶など、当時の楽器音を取り入れたらよかったのではないでしょうか。

インターネットや携帯電話はもちろん、電気も通ってなかった時代ののんびりした時間感覚はコンパクトな尺のなかで良く伝わって来ます。200年前のことなんて200年後の未来と同じぐらい分からないと思うので、どうせ衣裳やセットに凝るのなら、時代劇のアニメ作品がもっとあってもいいですよね。

主人公お栄が目の見えない妹と大川(隅田川)をクルーズしていると意識が海に接続して大波頭が「神奈川沖浪裏」になるところや、北斎が弟子の画を評して「デッサンが甘いから立っているとまだいいが歩き出した途端に崩れる」的なことを言うと毛筆の絵がほろほろと崩れるカットなど、アニメーションならではの映像表現が素晴らしいです。