2013年11月9日土曜日

シダの群れ3 港の女歌手編

気づけば長い付き合いになっていました。東京アンダーグラウンドシーン最高のエンターテイナーとしてリスペクトするエミ・エレオノーラさんに誘われて、彼女が音楽を担当している岩松了脚本演出の舞台『シダの群れ3 港の女歌手編』を、渋谷東急Bunkamuraシアターコクーンで観賞しました。

訳あって組織に属さないヤクザ森本(阿部サダヲ)は密航に失敗し、港町のナイトクラブ「スワン」に流れ着く。そこには世界で勝負することを夢見る中年の歌手ジーナ(小泉今日子)がいた。スワンを仕切るのは暴力団都築組。その若頭結城(小林薫)に密輸の手伝いを依頼される森本。都築組の上位組織大庭組の幹部清水(豊原巧輔)。ジーナのマネージャー山室(吹越満)。この5人を軸に物語が進みます。

敵対する組織間の抗争、組内の上下関係と跡目争い、裏切り、スパイ、寝返り、銃撃戦。自ら好んで組織の論理に縛られているように見える男たちに対して、女たちはそれぞれ自分の足でしっかり立ち、踊り、歌う。男たちのなかで唯一組織にコミットしない森本は何処にも馴染むことができない。

ジーナ「最高でしたって何よ! 私のステージはいつでも最高。最低のときも最高なの。それは私が私だからよ!」

森本「走り出したときのまま走り続けないと気が済まない性分でね」

結城「言葉ってものは吐くだけじゃない。吐かれた者の反応ってものがある」

登場人物の相関関係が複雑なうえ、敵味方が入れ替わり続けるストーリーなので、芝居の進行に沿って充分に理解することは困難です。僕は幕が開いてしまえばあとは流れに乗ってしまえというほうなのであまり気になりませんでしたが。また、シリーズ第3作ということもあり、舞台には登場しない人物の名前がいくつか科白のなかに現れます。ライバル組織の構成員だったり、長年のファンだったり。これが舞台の内と外を繫ぐ回路となり、物語に不思議な拡がりを付加しています。

エミ・エレオノーラさん(作曲・ピアノ)と2管のクインテットはスワンのハコバンという体裁で、小泉今日子さんが唄う3曲の挿入歌(1曲は豊原巧輔さんとのデュエット)と劇伴のほぼ全てを生演奏しています。レニー・トリスターノばりのクールでアブストラクトなジャズからGROUPみたいに即興性の強いジャムセッションまで。エレガントに洗練された演奏は、音大で現代音楽を学び、1980年代には銀座の最高級クラブでラウンジピアノを演奏していたエミさんのスキルが遺憾なく発揮され、ともすれば湿っぽくブルージィに流れがちな任侠劇をワンランク上のエンターテインメントに押し上げています。

シアターコクーンでの公演は11月30日まで。その後、大阪シアターBRAVA!(12/6~15)、北九州芸術劇場(12/21~23)へ。クリスマスまで続きます。

 

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