台風で下北沢駅の地下プラットフォームが冠水した前々日は体育の日の祝日。金木犀の香る緑道を通り Workshop Lounge SEED SHIPへ。詩と映像と音楽の夜 Poemusica が開催されました。Poemusicaにライブペインティングが入るのは3月21日の神田サオリさん以来。とても楽しみにしていました。
今回のオープニングには10月の詩を2篇。「風の通り道」と「山と渓谷」を選びました。
そして今夜のライブペインター Rio Nakanoくんの紹介に続いて、登場したMinakoさん。弱冠21歳。若さと成熟の軋みがあって、それが音楽の陰影を形作っています。スチール弦のアコースティックギターの可能性を最大限に引き出そうとしている。歌も技術が高く、しかも切実な響きを持っている。内面に向かって発せられる攻撃的な曲調なのに深い包容力を感じさせる。ループマシン使いもエレガントな安定感がありました。
唄子さんは、4月18日、8月22日に続き、3度目のPoemusicaです。繊細で壊れやすい音楽なのに、ゆるぎない世界を持っている稀有なミュージシャン。3度目にして気づきましたが、ガットギターの奏法にその秘密があるようです。ブレスと右手のフェルマータが完全に同期しており、緩急が自在で呼吸をするような演奏です。金木犀の香りに導かれた新曲「10月の初恋」のブルガリアンヴォイスを思わせる多重録音された和声も美しかった。
3組目は9×9。ギター辻岳人さん、ボーカルyuco*さんのユニットで「くく」と読みます。R&Bテイストもあるウェルメイドなポップミュージック。yuco*さんの低い地声から確かな音程の高音への伸びが心地良く、ギターとのスリリングな駆け引きもあり。辻さんもガットギターですが、唄子さんとは対照的に、ソリッドなカッティングとリリカルなオブリガートを手際よく繰り出して飽きさせません。yuco*さんの明るくキュートなキャラクターはブレークの予感がします。
中田真由美さん(画像)。天衣無縫で天真爛漫で天然で天才。歌詞、旋律、声、編曲、そのどれもが中田さんです。クラスでも無口であんまり笑わない女子っているじゃないですか。でも実はたくさん引出しを持っていて、ときどき口を開くとびっくりするような面白いことを言う子。スチール弦のミニマルなリフをちょっとだけねじれたメロディに効果的に絡めて、切れ味鋭い詞をあっけらかんと歌います。歌と語りのあわいも絶妙でした。あ、中田さん自身はよく笑うかわいらしい人です。
Rioくんには昨年11月16日にもPoemusicaで描いてもらいましたが、約1年経って更にスケールアップした感がありました。4組の奏でる音楽や歌詞に呼応して。中太マジックのノイジーなドローイングでスタート。腐刻画に描かれた古代都市、夥しい文字と記号。そして掌と指で原色の黄色い曲線が引かれ、ノイズのなかから赤と白の小さな花が何輪も開く。ライブの後半に差し掛かるとノイズは白色のペンキで塗り潰され、はじめは性別のわからない横顔の輪郭。次に剥がされたマスキングテープの下から近過去の痕跡と身体の線が現われ、長い髪とドレスが加わって女性と判別する。伸ばした右手からこぼれるキャンディ。トリックオアトリート!
約3時間休みなく描き続けてくれました。歌い手たちもペインティングの進行や絵具の匂いを間近に感じながら。新たな視点を提示されるごとに客席からは静かな感嘆のため息が聞こえる。
そんなパフォーマンスを観聴きしながら、僕がクロージングの朗読に選んだのは、戦闘美少女讃歌でもある「星月夜」と時間と空間の多重性を主題とした「声」という2篇の詩。濃密なのになぜか風通しの良い、とても不思議な一夜でした。
さて来月のPoemusicaはこれまた大注目の女性アーティスト3組をお迎えしてお届けします。どんな夜になるのか、いまからとても楽しみです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Poemusica Vol.23
日時:2013年11月21日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,500円 当日2,800円(ドリンク代別)
出演: 小林未郁 *Music
さとう麻衣 *Music
YuReeNa(ex.武井ゆりな) *Music
カワグチタケシ *PoetryReading
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
0 件のコメント:
コメントを投稿