2013年5月26日日曜日

中学生円山

NHK朝ドラ『あまちゃん』も好調な宮藤官九郎監督作品『中学生円山』をユナイテッドシネマ豊洲で観ました。

「考えない大人になるぐらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」「妄想が現実を超えるとき、それが真実になる」。

江戸川区にある巨大団地の9号棟806号室に親子4人で暮らす中学2年の円山克也(平岡拓真)にとって、団地と学校とコンビニが世界のすべて。妄想だけが世界を拡げる術。上階に引っ越してきた謎のシングルファザー(草彅剛)をスナイパー「子連れ狼」と妄想していたが、やがて近郊の複数の団地で起こる連続殺人事件に巻き込まれていく。

食後のフルーツに拘泥する父親(中村トオル)、韓流ドラマ妄想が現実に浸食してくる母親(坂井真紀)、妹あかね(鍋本凪々美)と親友の祖父(遠藤賢司)の純愛、あかねの同級生ひかりの二股、三つ編みのヒロイン清水ゆず香(刈谷友衣子)への克也の思慕、と多角的な視点で群像劇を描きたいというコンセプトは伝わってきます。クドカン脚本らしい小ネタの応酬は楽しいが、映画全体としてはややまとまりを欠いた出来ではないでしょうか。

そのなかで、認知症の徘徊老人を演じた66歳の遠藤賢司の存在感が圧倒的です。野外ライブでアマチュアバンドからグレッチを奪い取りニール・ヤングばりのノイジーなギターとシャウトを聴かせたかと思えば、妹あかねの初恋の人となり河原で小さなラブソングを弾き語り、ラストの団地屋上では琵琶法師さながらにアクションシーンを盛り上げる。

僕自身リアルタイムでエンケンさんを聴いた世代ではなく、むしろ80年代に迷走(?)していた時代の『東京ワッショイ』『宇宙防衛軍』あたりに思い入れが強いのですが、単なるプロテストフォークではない「死ぬほど糞真面目にふざける」スタンスは健在です。



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