都営地下鉄三田線白山駅A3出口は坂の途中にあります。そこから石段を何段か下った右手がJAZZ喫茶映画館。初秋の午後、僕が主催するはじめての音楽オンリーのライブ"Kitchen Table Music Hour vol.1"がなごやかに開催されました。
僕が普段、自宅のキッチンテーブルで、本を読んだり、お菓子を食べたり、詩を書いたり、詩集の製本をしたりしているときに聴いている音楽を生演奏でお届けしましょう、というのがこのライブのコンセプト。初回はこの組み合わせしかない。まえかわとも子さんとノラオンナさんに出演をお願いしました。実はこのふたり、今日がはじめましてだったのです。
まえかわとも子さん(左利き)。大磯から東海道線でやって来ました。なんとこの日のために、Kitchen Table Music Hour のテーマ曲を作ってきてくれて、これがリハーサル中のうれしいサプライズ。そして本番でもうひとつのサプライズ。オリジナル曲「冬の街」の間奏で僕が書いたソネット(14行詩)「朝」を朗読してくれました。自作曲もカバーも終始リラックスした演奏で、明るくチャーミングなキャラクターと相俟って、客席の空気を柔らかくほぐしました。
ノラオンナさん(画像)は冒頭4曲、「流れ星」「パンをひとつ」「今日は日曜」「タクト」の流れが特に素晴らしかったです。その間MCを挟まず、ウクレレの4本の弦の音と歌声だけでこれだけ濃密な音楽を奏でられる人がどれだけいるでしょう。拍手も忘れて聴き入る客席。曲と曲のあいだのわずかな静寂を壁に掛けられたたくさんの振り子時計のカチコチいう音がつなぎます。会場の響き、特性を短い時間で味方につけるそのスキルには驚ろかされます。
ふたりとも地声のキーは低いのですが、まえかわさんは輪郭のはっきりした陽性の声、ノラさんはすこしくぐもってざらついた感触の声。歌詞も、抽象的で自然描写を中心したまえかわさん、恋愛や人の心の襞を丁寧に掬い取るノラさん。と対照的なのですが、ふたりの音楽に共通するのは、言葉がくっきりと耳に届くことです。そして高く持続する集中力と音楽に対する信頼感。そんなところが好きなんだなあ、と歌を聴いていて気づきました。
客席の反応もとてもあたたかくて、アンケートを読むとみなさんに楽しんでいただけた様子。ほっとしました。ご来場のお客様はもちろん、気にかけてくださったみなさん、映画館のオーナー吉田ご夫妻、出演者のおふたり、どうもありがとうございました。会場にいた人たちのなかで、たぶん僕がいちばん幸福な時間を過ごしていました。
"Kitchen Table Music Hour"は、できればこのようなかたちで、半年に一回ぐらいのペースで続けていけたらなあ、と思っています。次回はまだ未定ですが、どこかでこのライブの告知を見つけたら、是非ともよろしくお願いします!
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