高円寺Amleteronで開催されたライブ Bela Muziko! vol.5 mayuluca×池永萌「朝の月」に行きました。
ループマシンや小さな鳴り物を使ったフォークトロニカ的アプローチを経て、最近はシンプルなギター弾き語りが好きだというmayulucaさんは、この日もアサノラと同じく小ぶりなボディのTAKAMINE BRUNO F-150を使用。1曲目「出発」から出発しました。
曲間の無音を壁時計のチクタク鳴る音と上階のカフェの足音、前を通りを走る自転車のベルや原付のブレーキ音が繫いでいきます。mayulucaさんの平熱の音楽には生活音が良く馴染む。針の穴に糸を通すように正確で張りつめた音楽なのに、不思議と風通しが良いからだと思います。
池永萌さんの朗読は、本棚に陳列された古書に挟まれたテキストを取り出して読むという趣向。テキストのありかはランダムなので、その古書を探す時間が作品と作品のあいだにたっぷりとした間を添える。その間が朗読を聴く我々の意識をリセットし、次の詩作品の世界へ上手に誘導します。
その間を埋めたり埋めなかったりするmayulucaさんのギターの分散和音。そして萌さんの小さな声で紡がれる決意と確信に満ちた言葉。「猫のようになった私の耳に/静かな場所なんてなくて//私は朝の月にそっと小さく手を振って/またね、と言って歩き出した」と歌うふたりの共作「朝の月」の演奏も素晴らしかったです。
朗読ってこういうことだよな、と思いました。聴く環境を丁寧に整え、真摯に声を発すれば、力で圧倒するようなことをしなくても、言葉はしっかり届くもの。静けさに耳を澄ます、という愉悦。贅沢で豊かな時間がそこには流れていました。
Amleteron(アムレテロン)とはエスペラント語で「恋文」の意。高円寺北口の裏通りにある古本と雑貨の小さなお店です。ただ可愛らしいだけではなく、『吉岡実詩集』(1967年思潮社版ハードカバー)、田村隆一『詩と批評』、富岡多恵子『厭芸術浮世草子』が隣り合って並ぶ棚作りが実に硬派で好感度大。中古LP盤も大変充実しています。
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