19時をすこし過ぎて客電が落ち、藤原マヒトさん(Pf)、宮坂洋生さん(Ba)、柿澤龍介さん(Dr)の3人が客席を通ってステージに上がり、長めのイントロに導かれてノラオンナさん(Vo)が舞台に立つ。新生港ハイライトの1曲目は「抱かれたい女」。
四分の六拍子のマイナースウィング「無理を承知で言ってるの」、ワルツの「ないものみえないもの」「タクト」と続く第一部は2016年の1stアルバムの楽曲をピアノトリオで再編曲したもの。ノラさんがひとりで歌う「粉雪」、「やさしさの出口で」のリリカルなピアノのイントロからリズムインする瞬間の高揚感。「港ハイライトブルーズ」のCODAのウッドベースの強烈なバックビート。
休憩を挟んで第二部は、オルゴールのように可憐なピアノの前奏が加わった「風の街」から。白い衣装に着替えた4人。ノラさんのドレスにプリントされている大きなけしの花が遠目には血痕のようにも見え、第一部の黒衣装と相俟って、鎮魂と再生を象徴しているように感じました。
2012年に始動した港ハイライトを僕が初めて聴いたのは2013年3月、吉祥寺MANDA-LA2でした。ギターレスのピアノトリオに男女ツインボーカルの初期編成による「あたたかいひざ」から、ノラオンナ produced by 港ハイライト『なんとかロマンチック』期にはギターと管楽器が加わり、名盤『抱かれたい女 feat.古川麦』が2016年に誕生する。
その変遷を辿れば、港ハイライトという音楽制作ユニットが、ノラオンナさんのビジョンを体現する単なる装置ではなく、各々が主体性を持って参加する「バンド」であり、その最新型である現在のカルテットは、パーマネントなベーシストを得たことで、バンド感が更に強固になりました。ノラオンナさん曰く「むさくるしい男達」の演奏には繊細さと優しさが滲む、粋な大人の夜の音楽。
第二部に配置された楽曲群は、曲調も制作年代もより幅広く、「この曲を港ハイライトが料理するとこうなるのか」という驚きと、シンプルな編成で楽曲の骨格の確かさ、歌唱の技量を示したのと同時に、今後の発展形を期待させるものでした。


