2006年5月、主人公安西こころ(當真あみ)は南東京市立雪科第五中学校の一年生。もともと自己肯定感の高いほうではなかったが、同級生からいじめに遭い不登校に。母(麻生久美子)はそんなこころの気持ちが理解できない。フリースクール心の教室の喜多嶋先生(宮﨑あおい)は優しく接してくれたが、こころの足は向かない。
ある日の夕方、自室の姿見が光を発する。触れてみると吸い込まれ、絶海の孤島に建つ城塞のバルコニーに放り出される。狼の仮面を被った少女オオカミさま(芦田愛菜)に導かれた大広間には6人の先客がおり、いずれも中学生で学校に行っていない。上階には個室、来年3月30日まで9時から17時という時間だけ守れば好きなときに来ても来なくてもいい、17時を過ぎても帰らないと狼に食われる、と言う。
辻村深月が2017年にポプラ社から出版した長編ファンタジー小説のアニメ映画化。7人の中学生の心情が細やかに描かれており好感を持ちました。城に行きっぱなしではなく、自室(現実世界)との間を本人意思で行き来でき、城でも思い思いにしたいことをして過ごせる設定が息苦しさを感じさせません。
願いを叶える鍵を見つけるとそこで仲間と過ごした記憶を失ってしまう。上映時間を30分残した時点でこころが鍵を探し当てるクライマックスが来て、大丈夫かなと思いましたが、そこから他の6人のトラウマになっている事象に焦点を移し、エンドロールまでしっかりつないで飽きさせず、むしろ時間が足りないぐらいでした。
古城の大理石の大広間、厨房、個室の微妙なリヴァーヴ感の違い、仮面越しでわずかにくぐもった話し声、音響効果を担当した庄司雅弘氏の繊細で確かな仕事ぶりが映像のリアリティ作りに大きく貢献しています。
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