2025年11月22日土曜日

水晶の舟 方丈幻夢譚・月下水鏡

猫の日の阿佐ヶ谷。黒猫茶房・晩秋公演、水晶の舟(バンド名)方丈幻夢譚・月下水鏡(ライブイベント名)に行きました。

スターロード商店街のどんづまりにある黒猫茶房さんは、水晶の舟のメンバーが営むお店。木製のドアを開くと既に客席はぎっしり。東南アジアの民族音楽が小音量で流れている。小上がりがステージになり、壁に全裸女性の磔刑図。18時10分、紅ぴらこ(Gt/Vo)、影男(Gt)、松枝秀生(Ba)、志村浩二(Per)の4人が揃うと照明が落とされ、ステージに薄衣が引かれる。

古い柱時計のチクタク音が静寂に響き、頭上のランプシェードと舞台中央のキャンドルのゆらめき、エフェクターのLEDの点滅だけが灯りです。影男さんのソフトなコードストロークに導かれ「本日は水晶の舟にご乗船ありがとうございます。たくさん乗っているから溺れないように」というぴらこさんのMCから始まる全編即興演奏のライブでした 

「月の光を浴びて眠りにつくと怖い夢を見る/だから月の光を浴びて寝てはいけない」。タイトル通り月をモチーフにした即興詩の朗読と歌唱を時折挟むが、基本的には2本のエレクトリックギター、エレクトリックベース、パーカッションによるインプロヴィゼーション。

サイケデリックではあるが、1990年代のシューゲイザー、ゼロ年代グラスゴーのエレクトロニカやレイキャヴィクの響きも感じます。その印象はジェントル、とても優しく礼儀正しい。アンサンブルが調性を手放したり、松枝さんのジャズベースがあえて拍節を乱したり、2本のギターが歪み切った轟音を鳴らしたりしても、かならず影男さんのストラトキャスターのフロントピックアップの甘い音色のコードストロークと柱時計の振り子のビートに帰ってきます。

もうひとつの安心ポイントはリズムの確かさか。中低音域のフレームドラム中心の志村浩二さんのリズムキープが恐ろしくタイトに演奏全体を引き締め、的確なタイミングで鳴らされるハンドベルの控えめな音色がノイズの奔流に清涼感をもたらす。

ザ・ドアーズの曲名を冠した1999年結成の水晶の舟は、欧米アジアのアンダーグラウンドシーンで評価が高い。折り目正しい即興演奏は、気づけば2時間が過ぎていました。

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