8月最後の日。白山JAZZ喫茶映画館にて「ノラオンナ✕小夜 The Last Day Of Our Vacation」を主催しました。
6月8日の夕暮れ時、BOOKWORM at Viscum Flower Studio が終わって、御徒町で乗り換えをしようとしていたとき、ノラさんからメッセージを受信しました。映画館さんに日程を伺ってみたところ、8月31日が可能とのこと。加えて絹子ママに「なら小夜ちゃんと一緒にどう?」とご提案をいただきました。
夏が大好きで、梅雨が明けた途端にもう夏の終わりが近づくのが悲しくなってしまうという小夜さん。夏休み最後の日にこれ以上ない組み合わせです。
ライブは通常のツーマンとはすこし異なる構成に。まずノラさんがジョージ・ガーシュインの "Summertime" のスキャットで静かに会場の空気を揺らします。朗読作品「詩集『君へ』」から「ばらあどばあさん」へのつなぎが序盤のハイライトでした。
そして小夜さん。夏が好きすぎて夏の終わりの詩が書けない、と言う。夏へのつぎつぎに扉を開いていく19篇の美しい断章。この長編詩の朗読を聴くのは十数年ぶり。門前仲町の交差点に籠もった暑熱を思い出しました。「放課後のあとの即興詩」の前のめりな焦燥感。ノラさんの「こくはく」の歌詞の朗読は、軽快なボッサのリズムで歌われる大人の恋の機微とは異なる少女の切実な感情が前面に出ます。
つづくパートの冒頭で歌われた当初セットリストになかったはずのノラさんの「こくはく」オリジナルバージョンとの対比も鮮やかです。
最後はノラさんのウクレレ弾き語りアルバム『めばえ』の(ほぼ)全曲演奏。主題と変奏を繰り返し、聖と俗とを往き来しながら、崇高な場所を指していくさまに、ジャズ喫茶での演奏にもかかわらず僕は J.S.バッハの『インベンションとシンフォニア』を思い出していました。
経験上、音楽とポエトリーの組み合わせは観客の求めるものの違いからか意外に難しいものだと感じていますが、アンケートでは好意的なご意見を多数いただきました。つきすぎずはなれすぎず、ちょうどいい関係性が提示できたのは、タイトルの "Our" Vacationに込めたように、出演者がたがいの作品とパフォーマンスをリスペクトしているからだと思います。暑いなかご来場のお客様、映画館さん、ノラさん、小夜ちゃん、素敵な夏の思い出をありがとうございました。
2019年8月31日土曜日
2019年8月18日日曜日
ノラバー日曜生うたコンサート
大潮の真夏日。郊外私鉄の明るい駅に降りる。西武柳沢ノラバー日曜生うたコンサート mayulucaさんの回に行きました。
バスの運転手さんに語りかける「出発」は、ライブの序盤に歌われることの多い曲です。運転手さんの答えは「どこかには行くだろうね」。その楽観的な声色とは裏腹に歌の主人公は知らない街に連れて行かれることに怯えている。と同時にかすかに期待もしている。
張り替えたばかりのスチール弦のブライトな響き。インテンポで安定感のあるギターに乗せて呼吸のように無理のない発声で歌われる微細な感情の揺れ。形容詞と別の形容詞のはざまに落ちた感情を掬い上げます。
「花ヲ見ル」「ほんとうのこと」「ひかりの時間」1stアルバムの収録曲が続き、祈り、聖性、アンセムというキーワードが脳内に浮かんでは消える。「きこえる」「熱風」「月の下 ぼくはベランダに」など、続く2ndアルバムのターンでは「温度を上げる曲を」と言っても、外見的には低体温で声を張ることもなく淡々と進んでいく。最新の3rdアルバムからは「彼と彼女のそれぞれ」「幸福の花びら」の2曲。「いろんな人がいろんな場所でひとりひとり何かをしている」というMCはマユルカさんのアティテュードそのものを表しているように思えました。
60分11曲というコンパクトながら、マユルカとしてのキャリアを振り返るクロニクルなセットリストでした。最近は俳優の西田夏奈子さんとのデュオ演奏を聴く機会が続いていたのですが、ひさしぶりの完全ソロはまた別の淡い単彩の素描画のような味わいがあります。
8月、真夏のノラバー弁当は麻婆茄子ととうもろこしごはんがメイン。店主ノラオンナさんの手料理はいつも美味しく、ヤイヤー!と夜は更けてゆくのです。
9月、秋分の日の前日に、池ノ上の名店ボブテイルさんで、マユルカさん、西田夏奈子さんと共演します。ご都合つきましたら是非いらしてください。
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マユルカとカナコとタケシ
日曜昼下がりの地下
季節はずれの花
日常と非日常の間で
音楽と朗読がこっそりたゆたう
マユルカの音楽
西田夏奈子の声とヴァイオリン
カワグチタケシのポエトリーリーディング
90分のスペシャルライブです
2019年9月22日(日)
14:00open 14:30start
2000円 +DRINK ORDER
池ノ上ボブテイル
世田谷区代沢2-45-9 飛田ビルB1
https://ikenouebobtail.jimdo.com/
※ライブ終了後は通常カフェ営業になります。
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2019年8月14日水曜日
田園の守り人たち
ガスマスクを装着したドイツ兵の夥しい死体が戦闘後の湿地帯に転がる俯瞰ショットで映画は幕を開ける。
1915年、第一次世界大戦下の北フランスの農村。寡婦オルタンス(ナタリー・バイ)の二人の息子コンスタンス(ニコラ・ジロー)とジョルジュ(シリル・デクール)、娘ソランジュ(ローラ・スメット)の夫クロヴィス(オリビエ・ラブルダン)は西部戦線に出征中。母娘で守る広大な小麦畑に期間契約で雇われた20歳のフランシーヌ(イリス・ブリー)がやってくる。
男たちは立ち替わり自宅に帰り、ひとときの休暇を過ごす。長男コンスタンスは小学校教師。ひさしぶりの訪れた勤務先で女性同僚教師が児童に朗唱させる「ドイツ野郎」を罵倒する詩に表情を曇らせる。次男ジョルジュは戦場に戻ってからもフランシーヌと文通で愛を深める。娘婿クロヴィスはどこか横暴な性格に変わってしまった。
女たちも不安定な感情を抱えきれないでいる。ソランジュはアメリカ兵に抱かれ、オルタンスは心から信頼していたフランシーヌを子供たちと家族の名誉のために切り捨てる。悲劇が重なるが、それでも種子は蒔かれ、麦の穂が刈り取られる。
フランス陸軍の空色の制服、女たちのインディゴ染めの野良着のブルーが美しい田園風景のなかでとてもよく映えます。
音楽は先頃亡くなったミシェル・ルグラン。『シェルブールの雨傘』のように映画全編を覆うものではなく、フランシーヌの運命の節目節目にポイントを絞って甘美な旋律と魅惑のオーケストレーションが寄り添う、ミニマルながら非常に効果的な扱いです。
2019年7月28日日曜日
天気の子
遅い梅雨明け。TOHOシネマズ日比谷で新海誠監督作品『天気の子』を観ました。
さるびあ丸に乗って神津島から竹芝桟橋に向かう道中、16歳の帆高(醍醐虎汰朗)は豪雨の甲板で足を滑らせ、須賀圭介(小栗旬)に助けられる。何週間も雨が降り止まない東京新宿。泊まるところもなく過ごすマクドナルドで夜勤バイト陽菜(森七菜)と出会う。陽菜は祈ることで晴れ間を呼ぶ100%の晴れ女だという。
須賀は『ムー』に寄稿するうさんくさいサイエンスライター。その事務所に居候することになった帆高は陽菜と弟の凪(吉柳咲良)とともにネットで晴れ女の派遣業を起業する。
故郷から、風俗斡旋業の男たちから、警察から、現実から、主人公帆高は映画の冒頭から終盤まで追われ、逃げ続けます。その一方で、晴天が人の気持ちをポジティブにすることに気づき、雨ばかりの都市に一筋の晴れ間を提供することにいっとき喜びを見いだすものの、世界をより良くすることよりも、愛するひとりの少女を救うことを選ぶ。
そしてその選択が世界に雨を降らせ続け、東京の大半を海に沈めたことに責任を感じている。「気にすんなよ、青年。世界なんてもともと狂ってんだから」という須賀の科白が、夢や理想を求めるのではなく、現実を甘んじて受け入れる、諦観とも言える、現在の日本の保守的な空気を映し出していると思いました。
成層圏からドローンで空撮しているようなスーパーダイナミックな俯瞰とそこから大気を滑り落ちるアニメーション描写は最高にスリリング。声優陣では本田翼の新たな魅力を発見。小栗旬(左利き)の声の響きの心地良さ。またRADWIMPSの楽曲にフィーチャーされた三浦透子さんの歌声はとても素敵です。
さるびあ丸に乗って神津島から竹芝桟橋に向かう道中、16歳の帆高(醍醐虎汰朗)は豪雨の甲板で足を滑らせ、須賀圭介(小栗旬)に助けられる。何週間も雨が降り止まない東京新宿。泊まるところもなく過ごすマクドナルドで夜勤バイト陽菜(森七菜)と出会う。陽菜は祈ることで晴れ間を呼ぶ100%の晴れ女だという。
須賀は『ムー』に寄稿するうさんくさいサイエンスライター。その事務所に居候することになった帆高は陽菜と弟の凪(吉柳咲良)とともにネットで晴れ女の派遣業を起業する。
故郷から、風俗斡旋業の男たちから、警察から、現実から、主人公帆高は映画の冒頭から終盤まで追われ、逃げ続けます。その一方で、晴天が人の気持ちをポジティブにすることに気づき、雨ばかりの都市に一筋の晴れ間を提供することにいっとき喜びを見いだすものの、世界をより良くすることよりも、愛するひとりの少女を救うことを選ぶ。
そしてその選択が世界に雨を降らせ続け、東京の大半を海に沈めたことに責任を感じている。「気にすんなよ、青年。世界なんてもともと狂ってんだから」という須賀の科白が、夢や理想を求めるのではなく、現実を甘んじて受け入れる、諦観とも言える、現在の日本の保守的な空気を映し出していると思いました。
成層圏からドローンで空撮しているようなスーパーダイナミックな俯瞰とそこから大気を滑り落ちるアニメーション描写は最高にスリリング。声優陣では本田翼の新たな魅力を発見。小栗旬(左利き)の声の響きの心地良さ。またRADWIMPSの楽曲にフィーチャーされた三浦透子さんの歌声はとても素敵です。
2019年7月27日土曜日
フィクショネス詩の教室 @tag cafe 2019
下北沢の書店フィクショネスで2000年に始まり、2014年7月に閉店するまで14年半続いた詩の教室で講師をしていました。いつも熱心に参加してくれていた杵渕里香さんが毎年7月にフィクショネス跡地に隣接したカフェで詩の教室を企画してくださって、今年が5回目。
以前は僕がひとりの詩人を取り上げて、作品とその技法を紹介していました。現在の開催方式になってからは、参加者みんなで好きな詩を持ち寄って、その魅力をシェアしています。
ボブ・ディラン「ラモーナへ」
〃 「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」
ドン・マーキス「蛾のレッスン」
ポーラ・ミーハン「ホウスの丘で」「At Dublin Zoo」
井戸川射子「母国」
ジュテーム北村「夏」
「電通戦略十訓」
石原吉郎「いちごつぶしのうた」
芦田みのり「国立科学博物館」
黒瀬勝巳「ラムネの日」
谷川俊太郎「昔はどこへ」
今回は翻訳作品が多かったり、ジュテーム北村氏の自作詩の一節にボブ・ディランが引用されていたり、複数の紹介作品に人名の固有名詞や妊婦のイメージがあったり、他にもいくつも偶然の符合があって、連句のような趣きも感じられます。
詩の読み方はさまざまで唯一の正解は存在しない。各々の経験と思考に基づく解釈を知ることは刺激的で楽しいことです。今回初めて知った黒瀬勝巳(1945~1981)の作品は本当に素晴らしいと思いました。
僕が一応進行役を務めてはいますが、以前の講師と受講者という立場ではなく、参加者全員がフラットに自分のペースで臆することなく意見交換できるようになってきて、フィクショネスの閉店から時を経たこともありますが、やはりその後5年続けてきた成果なのではないでしょうか。
杵渕さん、参加者のみなさん、tag cafeさん、ありがとうございました。是非また来年お会いしましょう!
2019年7月15日月曜日
きみと、波にのれたら
海の日に海辺の映画館で海が舞台の映画を観る。ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で湯浅政明監督作品『きみと、波にのれたら』を鑑賞しました。
海洋学部へ入学し南房総の海辺でひとり暮らしを始めたサーファーのひな子(声:川栄李奈)。引っ越したばかりのマンションに違法な花火が飛び火して火事になり、クレーン車で助けに来た消防士の雛罌粟港(片寄涼太)と恋に落ちるが、港は非番時の海難救助で命を落としてしまう。
湯浅監督のアニメーションは透明感や立体感よりも平板な色彩の重なりとデフォルメされた透視遠近法が特徴で、浮世絵のようなテクスチュアが持ち味だと思います。『夜は短し歩けよ乙女』では、原作の持つ京都という限定された空気感のなかで最大限発揮されていました。
もうひとつは水の表現に非常に長けていることで、今作では前作『夜明け告げるルーの歌』を更に推し進めた格好で、膨大な水量も小さな水滴も降り積もり溶ける雪の結晶も自在にコントロールしています。
死んだ恋人のゴーストが主人公のピンチを救い、その依存から脱却する成長譚は少なくない。本作では、ひな子が水(海でも水筒でも水洗トイレでもいい)に向かって特定のメロディを歌うことによってゴーストが召喚される。
その曲がふたりがはじめてドライブしたときにカーラジオから流れてきたGENERATIONS from EXILE TRIBEの新曲 "Brand New Story"。港役の片寄涼太センター曲なので、タイアップ的な意味合いが強いのだと思いますが、曲調が軽快過ぎて。もしもこれが、"Danny Boy" だったら、"I Loves You, Porgy" だったら、"The Rose" だったら、と思いました。
主人公ひな子の声を演じた川栄李奈さんはAKB48の卒業生では一番成功しているのではないでしょうか。ここでも高いクオリティを見せています。港とふたりで "Brand New Story" を歌うシーンのサビ前の「That's right!」で笑いを堪えきれないお芝居は最高にチャーミングです。
海洋学部へ入学し南房総の海辺でひとり暮らしを始めたサーファーのひな子(声:川栄李奈)。引っ越したばかりのマンションに違法な花火が飛び火して火事になり、クレーン車で助けに来た消防士の雛罌粟港(片寄涼太)と恋に落ちるが、港は非番時の海難救助で命を落としてしまう。
湯浅監督のアニメーションは透明感や立体感よりも平板な色彩の重なりとデフォルメされた透視遠近法が特徴で、浮世絵のようなテクスチュアが持ち味だと思います。『夜は短し歩けよ乙女』では、原作の持つ京都という限定された空気感のなかで最大限発揮されていました。
もうひとつは水の表現に非常に長けていることで、今作では前作『夜明け告げるルーの歌』を更に推し進めた格好で、膨大な水量も小さな水滴も降り積もり溶ける雪の結晶も自在にコントロールしています。
死んだ恋人のゴーストが主人公のピンチを救い、その依存から脱却する成長譚は少なくない。本作では、ひな子が水(海でも水筒でも水洗トイレでもいい)に向かって特定のメロディを歌うことによってゴーストが召喚される。
その曲がふたりがはじめてドライブしたときにカーラジオから流れてきたGENERATIONS from EXILE TRIBEの新曲 "Brand New Story"。港役の片寄涼太センター曲なので、タイアップ的な意味合いが強いのだと思いますが、曲調が軽快過ぎて。もしもこれが、"Danny Boy" だったら、"I Loves You, Porgy" だったら、"The Rose" だったら、と思いました。
主人公ひな子の声を演じた川栄李奈さんはAKB48の卒業生では一番成功しているのではないでしょうか。ここでも高いクオリティを見せています。港とふたりで "Brand New Story" を歌うシーンのサビ前の「That's right!」で笑いを堪えきれないお芝居は最高にチャーミングです。
2019年7月14日日曜日
ノラバー2周年
長梅雨。西武新宿線西武柳沢駅徒歩数分。出演者として、オーディエンスとして、喫茶店の客として、いつも大変お世話になっているノラバーさんの開店2周年のお祝いに行きました。
ノラバーの通常営業ライブは11名限定ですが、昨年の1周年と同じく今日は無制限。17時のライブ開演の5分前に着くと、既に20名近いお客様でぎっしり。赤いカウンターテーブルにはおなじみのお料理が大皿でどっさり。飲み放題食べ放題です。
真っ赤なサテンのドレスの橋本安以さん(ヴァイオリン、弦楽アレンジ)、乱反射するおびただしいパーツを纏ったエビ子・ヌーベルバーグさん(ヴァイオリン、ボーカル)、店主ノラオンナさん(声とウクレレ)の3人がカウンターの内側に並び、ノラさんのオリジナル曲「少しおとなになりなさい」から演奏が始まりました。
4月21日の「ノラオンナ53ミーティング~ めばえのぬりえ~」の1部と同じ編成ですが、吉祥寺スターパインズカフェのゴージャスな音響とは対照的に、至近距離で鳴らされる生音がくっきりとした遠近感をもってダイレクトに届きます。ノラさんのスタンダードな旋律に安以さんの清潔であたたかな弦楽が彩りを添える。
大箱の特別なワンマンライブでスペシャルな編成をするミュージシャンは多いですが、一度きりだからいい、と、もう一回聴きたいな、の両面がありますよね。再現性という意味でノラさんのサービス精神を感じ、またそれは大皿に盛られたお料理にも共通しているように思えます。
更に、お客さんで来ていた水ゐ涼さんがリリカルなピアノを即興で重ね2曲のカバー「赤いスイートピー」のエビ子さんのコーラスワーク、「夢で逢えたら」では4声のハーモニーで魅了しました。
終盤は「流れ星」「やさしいひと」「めばえ」の流れで珠玉のメロディを惜しげもなく。アンコールは「メキシコ」の歌詞を「ヤギサワ」とご当地ソングに替えて盛り上げます。
リスニング環境として、尋常ならざる「近さ」をどう味方につけるのか、というのは僕自身がノラバーでライブをするときにも試行錯誤し、また最も面白みを感じるところですが、その近さを気にせず、逆に近いが故に、音楽を純粋に楽しめた。ということが今日一番の収穫でした。
ノラバーの通常営業ライブは11名限定ですが、昨年の1周年と同じく今日は無制限。17時のライブ開演の5分前に着くと、既に20名近いお客様でぎっしり。赤いカウンターテーブルにはおなじみのお料理が大皿でどっさり。飲み放題食べ放題です。
真っ赤なサテンのドレスの橋本安以さん(ヴァイオリン、弦楽アレンジ)、乱反射するおびただしいパーツを纏ったエビ子・ヌーベルバーグさん(ヴァイオリン、ボーカル)、店主ノラオンナさん(声とウクレレ)の3人がカウンターの内側に並び、ノラさんのオリジナル曲「少しおとなになりなさい」から演奏が始まりました。
4月21日の「ノラオンナ53ミーティング~ めばえのぬりえ~」の1部と同じ編成ですが、吉祥寺スターパインズカフェのゴージャスな音響とは対照的に、至近距離で鳴らされる生音がくっきりとした遠近感をもってダイレクトに届きます。ノラさんのスタンダードな旋律に安以さんの清潔であたたかな弦楽が彩りを添える。
大箱の特別なワンマンライブでスペシャルな編成をするミュージシャンは多いですが、一度きりだからいい、と、もう一回聴きたいな、の両面がありますよね。再現性という意味でノラさんのサービス精神を感じ、またそれは大皿に盛られたお料理にも共通しているように思えます。
更に、お客さんで来ていた水ゐ涼さんがリリカルなピアノを即興で重ね2曲のカバー「赤いスイートピー」のエビ子さんのコーラスワーク、「夢で逢えたら」では4声のハーモニーで魅了しました。
終盤は「流れ星」「やさしいひと」「めばえ」の流れで珠玉のメロディを惜しげもなく。アンコールは「メキシコ」の歌詞を「ヤギサワ」とご当地ソングに替えて盛り上げます。
リスニング環境として、尋常ならざる「近さ」をどう味方につけるのか、というのは僕自身がノラバーでライブをするときにも試行錯誤し、また最も面白みを感じるところですが、その近さを気にせず、逆に近いが故に、音楽を純粋に楽しめた。ということが今日一番の収穫でした。
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