満月の3日後、再び西武新宿線に乗って、すこし乾いてひんやりした夜気を分け、西武柳沢ノラバーへ。日曜生うたコンサート「マユルカとカナコ」の回に行きました。
前半はmayulucaさんのギター弾き語りソロで6曲。1ヶ月前に声帯浮腫を患ったが、歌えるまで回復していました。「なので今日は、元気に歌わない感じの曲を」と言いますが、元々元気な曲がないから大丈夫。
ミニマルなギターのリフレインに水のように風のように流れる旋律を声を張らずに淡々と歌う。今夜は更に静けさを増し、ほとんど呼吸のような自然な歌声に。聴いている僕たちも音を立てずに呼吸している。
指定されたドレスコードは「白」。mayulucaさんは白の七分袖Tシャツにベージュのボアフリーススヌード。店主ノラオンナさんは生成の麻のワンピース。カウンターに並ぶ白いニットやシャツやキャップ。みんなじっと静かに息をしている。清潔で幸福な緊張と弛緩。
1年ぶりのライブに「声が出なくて歌い切れるか不安で」声を掛けた女優の西田夏奈子さん(ミュージシャンとしての名はエビ子・ヌーベルバーグ)と後半はデュオで。夏奈子さんとmayulucaさんは大学時代から面識のある先輩後輩。怪我の功名というか、この組み合わせも素敵でした。
2部冒頭の2曲「月の下 僕はベランダに」「花ヲ見ル」の2曲は夏奈子さんがリードボーカルをとり、「昼下がり」「覚悟の森」「ひかりの時間」「幸福の花びら」にはヴァイオリンとコーラスを加える。
mayulucaさんのソロ弾き語りは、mayulucaさんの音楽の緻密な展開図みたいに僕は感じていて、聴いている脳内でいくつかの音を無意識に補完していることに気づくことがあります。あえて表情を隠したmayulucaさんの声に、夏奈子さんのすこしざらっとしたヒューマンな感触の和声やカウンターメロディが重なることで、美しい展開図がおもむろに彫りの深い立体造形になって立ち上がるような感動がありました。
演奏後にはノラバーの秋の風物詩、梨フライタルタルにみんなで舌鼓を打ち、わいわいと賑やかに月夜は更けていくのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿