2019年8月14日水曜日

田園の守り人たち

にわか雨の真夏日。神保町岩波ホールグザヴィエ・ボーヴォア監督作品『田園の守り人たち』を鑑賞しました。

ガスマスクを装着したドイツ兵の夥しい死体が戦闘後の湿地帯に転がる俯瞰ショットで映画は幕を開ける。

1915年、第一次世界大戦下の北フランスの農村。寡婦オルタンス(ナタリー・バイ)の二人の息子コンスタンス(ニコラ・ジロー)とジョルジュ(シリル・デクール)、娘ソランジュ(ローラ・スメット)の夫クロヴィス(オリビエ・ラブルダン)は西部戦線に出征中。母娘で守る広大な小麦畑に期間契約で雇われた20歳のフランシーヌ(イリス・ブリー)がやってくる。

男たちは立ち替わり自宅に帰り、ひとときの休暇を過ごす。長男コンスタンスは小学校教師。ひさしぶりの訪れた勤務先で女性同僚教師が児童に朗唱させる「ドイツ野郎」を罵倒する詩に表情を曇らせる。次男ジョルジュは戦場に戻ってからもフランシーヌと文通で愛を深める。娘婿クロヴィスはどこか横暴な性格に変わってしまった。

女たちも不安定な感情を抱えきれないでいる。ソランジュはアメリカ兵に抱かれ、オルタンスは心から信頼していたフランシーヌを子供たちと家族の名誉のために切り捨てる。悲劇が重なるが、それでも種子は蒔かれ、麦の穂が刈り取られる。

フランス陸軍の空色の制服、女たちのインディゴ染めの野良着のブルーが美しい田園風景のなかでとてもよく映えます。

音楽は先頃亡くなったミシェル・ルグラン。『シェルブールの雨傘』のように映画全編を覆うものではなく、フランシーヌの運命の節目節目にポイントを絞って甘美な旋律と魅惑のオーケストレーションが寄り添う、ミニマルながら非常に効果的な扱いです。


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