大学3回生の先輩(声:星野源)は黒髪の乙女(声:花澤香菜)に恋しているがプライドの高さと小心さから気持ちを伝えることができない。一方、乙女は先輩の恋心にまったく気づいていない。
春の木屋町・先斗町、下鴨神社糺の森の納涼古本市、秋の大学祭、風邪が蔓延する真冬。京都の四季を背景に衒学的で癖の強いキャラが交錯する森見登美彦の小説を一夜の物語に再構成しています。
ボーイミーツガールのテンプレートのひとつに、天真爛漫で奔放な女子に不器用な男子が翻弄されるというものがありますが、この物語の場合は黒髪の乙女も巻き込まれる側。ただその巻き込まれ方に迷いがなく、どんなにエキセントリックなコミュニティにも微塵の躊躇も先入観も偏見も持たずに溶け込み、結局主役になってしまう。
でも、この物語の本当の主役は京都の夜。画角には収まらない深い闇を登場人物たちの狂騒が際立たせる。カラフル、ノンストップ&ジェットコースティンな展開は、1951年制作のディズニー映画『ふしぎの国のアリス』にも比肩しうるサイケデリックムービーといってもいいでしょう。乙女がとにかくよく酒を呑む。第三幕、学園祭のパートはミュージカル仕立てです。
もう7~8年前になりますが、映画化するなら誰をキャスティングするか、原作小説ファンで京都在住の友人と議論したことがあります。そのとき僕は上野樹里を推したのですが、今回映画を観て、アニメで、花澤香菜さんでよかったと心底思いました。
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