2010年6月26日土曜日

裏蓋

「やってますよー」と一月半前にキキさんから聞いて、川村記念美術館にジョセフ・コーネル展を観に行ってきました。美術館のある千葉県佐倉市は二十歳まで暮したマイホームタウン、東京から快速電車で一時間、シャトルバスで田園地帯を20分揺られて行きます。

チャールズ・シミックの『コーネルの箱』によると、コーネルは絵も描けず、彫刻も作れず、美術教育も受けていません。でもそのコラージュ作品はどれもノスタルジックでロマンチック、多くのアーティストに愛されています。http://www.josephcornellbox.com/

今回の展示は、川村記念美術館の収蔵作品16点に高橋睦郎さんが詩を書いて、プラネタリウムを模した暗めの空間に、コーネル作品とともに浮かび上がらせるというもの。十数年前に同じ美術館で開催された回顧展で観た作品に再会したわけですが、あらためてその美しさが染みました。

ガラスを多く使用した展示スペースだったので、ずっと気になっていた箱作品の後側(裏蓋)を見ることのできる作品もいくつかあって、だいぶすっきり。

高橋睦郎さんは、作品毎に4~6行で、シンプルに正確に言葉を紡いでいます。ときどき付き過ぎるきらいがありますが、そんなところも含めて受注制作に力を発揮する、さすが21世紀の宮廷詩人(誉め言葉です!)。自己表現や内面から離れて丁寧に作品を作り上げる力は、当代の詩人では随一ではないかと常々思っています。

マーク・ロスコ、バーネット・ニューマンという常設展の二本柱も素晴らしく、アレクサンダー・カルダーの部屋、庭園の満開の睡蓮、白鳥が泳ぐ池、と見所たっぷりな川村記念美術館、オススメです!
 

2010年6月25日金曜日

第14回 TOKYO ポエケット IN 江戸博

雨季ですね。南半球は冬。ブブゼラの音も聴きなれてきました。

再来週末7月11日(日)に、両国の江戸東京博物館で開催される「第14回 TOKYO ポエケット」 にプリシラ・レーベルが3年ぶりに出展します。 僕は売り子として終日会場のブースにいますので、是非会いに来てください!

1999年に始まったTOKYOポエケットは、商業詩誌やインディーズ系同人誌を網羅した展示即売・交流会です。詩のコミケみたいなものを想像していただければと思います。プリシラ・レーベルは初回から2007年の第11回まで毎回参加していました。2年ほど間が空いてしまいましたが、今回新作を携えて復帰します。

最近はカワグチタケシのほぼソロ・プロジェクト化していたプリシラですが、今回の新作ではひさしぶりに新しい作家を紹介します。井上久美(いのうえひさみ)さんの『NEW YORK SKY』、ART STUDENT LEAGUE OF NEW YORKに留学した日々を、繊細な描線と色彩、瑞々しい文章で綴った滞在記。なるべく多くのみなさんに手にとってご覧いただきたいと思っています。

早い時間帯には作者本人もブースに登場します。その他、プリシラ・レーベルの旧譜、バックナンバーも充実のラインナップ。『TOY BOX 2010』もお求めいただけます。どうぞお楽しみに!

ポエケットでは毎回豪華なリーディング・ゲストをお招きしますが、今回はジュテーム北村さんと浦歌無子さん。こちらも楽しみです。それと、江戸博のミュージアムショップはアメイジングですよー。是非皆様のお越しをお待ちしています!

7月11日(日)13:30~売り切れまで。入場無料です。
 

2010年6月6日日曜日

TOYBOX2010御来場御礼

今日は「おも茶箱 Bilingual Poetry Collection『TOYBOX2010』完成記念朗読会」にご来場ありがとうございました。梅雨入り前のお天気で、明るい午後のひとときをみなさんと過ごすことができました。

企画から担当したかとうゆかさん、芦田みのりさんの当日の進行がとてもテキパキしていて気持ちよかったです。イダヅカマコトさんの新作、藤井わらびさんの作品を朗読した鈴川ゆかりさん、すてきでした。

マシュー・ジェームズ・フロメツキ氏に僕の詩の英訳を朗読してもらったのですが、書いた本人も空では読めない詩を暗唱してくれたのには感激しました。印欧語系ならではの抑揚で、原文よりずっとロマン主義的に聞こえたのが面白かったです。僕もできるだけ丁寧に彼の作品の邦訳を朗読したつもりですが、いかがでしたか?

客席の穏やかな受容の空気と、共演者のみなさんの真摯な姿勢に刺激を受けて、僕も自分の詩作や朗読を見つめ直す良い機会になりました。ありがとうございます!

会場で紹介できなかったアイルランド在住のアリソン・ニ・ヨーキーさんのゲール語の朗読動画はこちらで観ることができます。http://www.youtube.com/watch?v=ZzdLweyU6-M

気になる「軽食」は、生ハム、マグロと豆腐のカルパッチョ、フライドチキン、スパゲティ・ジェノベーゼ、と豪華メニュー。ごちそうさまでした!
 

2010年6月3日木曜日

春との旅

平日の昼間とはいえ、丸の内TOEIの客席平均年齢は推定65歳超。小林政広監督、仲代達矢主演のロードムービー『春との旅』を観てきました。

名作です。北海道の過疎地でふたりで暮らす足を悪くした元漁師の祖父とO脚の孫娘が、孫娘の失業をきっかけに、疎遠になっている祖父の兄姉弟を訪ねる旅に出る。現代のお話なのに、携帯電話は一度も出てきません。

人気のない田舎の駅のホームに夕方降り立ったときの、横から差す西日の光線の角度、忘れていましたが確かに経験したことがあります。

訪ねていく先々がちょい役含めてすべて名優です。シンプルに抑制された演出の中で、 大滝秀治、菅井きん、淡島千景、田中裕子、柄本明、美保純、香川照之、、と次々に繰り出されるいぶし銀の職人芸。豪華です。孫娘の春役の徳永えりはピチレモン出身。『フラガール』でも好演していました。

それから、東京メトロ丸の内線で池袋へ。梅舎茶館さんで開催中の『帰ってきた!妄想中華雑貨店~YASUMI屋さんの夏物の帽子とバックの展示会~』。YASUMI屋さんは、かつて大学時代に現代詩研究会で同期だった帽子作家、原田紀先生のソロ・プロジェクト。あいかわらずチャーミングでした。

2010年5月30日日曜日

主演女優

もうすぐ六月だというのに肌寒いですね。ヒューマントラストシネマ有楽町(シネカノンから改名したんですね)で、『パーマネント野ばら』を鑑賞。

昨年同じ劇場で、同じく西原理恵子原作の『女の子ものがたり』を観て、超ブルージィな気分になったのがよぎりました。。今回も貧困と友情がテーマなのは同じで、主演の菅野美穂と幼馴染役の小池栄子が左利き。でも前回ほどブルージィにならなかったのは、夏木マリをはじめ脇役を名優が固めていたのと、サイドストーリーがありえない展開で笑えたから。

総じて、主演女優である菅野美穂を鑑賞するための映画だと思います。監督が菅野さんを大好きなのがひしひしと伝わってきます。こういう主演女優のための映画って、悪くないと思うんですよね。吉永小百合さんとか、昔はもっと多かったんじゃないでしょうか。

あと、菅野さんの衣装がかわいかった。音楽もよかったです。

2010年5月22日土曜日

おも茶箱

あっという間に5月も後半。

←再来週末にこのイベントで朗読します。
ご来場お待ちしています!
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おも茶箱 Bilingual Poetry Collection『TOYBOX2010』完成記念朗読会

2010年6月6日(日)14:00開演
出演:かとうゆか、芦田みのり、マシュー・ジェームズ・フロメツキ、イダヅカマコト、カワグチタケシ、他
料金:1,500円(軽食付)
会場:カフェクラブ石橋亭(杉並区天沼12-5-102)tel.03-3391-6580
http://www.ogikubo.org/S35689.html

JR中央線荻窪駅下車徒歩8分、北口を出て青梅街道を向い側に渡り、左(北西)方向へ直進、四面道交差点そば。
フライヤーはこちら ⇒ http://oeo.la/Vw4s8
予約はこちら ⇒ yukato+omocha@auone.jp
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『TOY BOX 2010』に掲載している詩を、詩人による朗読でお届けします。

芦田みのりさんが編集した『TOY BOX 2010』は、日英バイリンガルコンピレーション詩集。

以下9名の詩人の執筆・翻訳によります。
Mathew James Chromecki / マシュー・ジェームズ・フロメツキ、ASHIDA Minori / 芦田みのり、KAWAGUCHI Takeshi / カワグチタケシ、FUJII Warabi / 藤井わらび、 Amy Hildreth / エイミー・ヒルドレス、Courtney Sato / コートニー・サトー、Idadsukamakoto /イダヅカマコト、Alison Nì Dhorchaidhe / アリソン・ニ・ヨーキー、KATO Yuka / かとうゆか

日英の朗読と合わせて、国外在住の詩人が動画で登場予定。めずらしいゲール語の朗読が聴けるかも。

石橋亭さんは、定期的にライブを開催しているピアノのある洋食屋さん。「軽食付」の中身も楽しみです。

2010年5月3日月曜日

見切れています。

憲法記念の日、『広重「名所江戸百景」の世界』展を見に、ラフォーレ原宿の真裏にある太田記念美術館へ。玄関で靴を脱いで上がる、浮世絵専門の美術館です。

昨年、詩の教室でポーランドのノーベル賞詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカを紹介したのですが、彼女の詩「橋の上の人たち」が、歌川広重の「名所江戸百景」のなかの一枚「大はしあたけの夕立」を題材にしていたところから興味を持ちました。ワルシャワ経由で江戸を知る、みたいな。で、今回展覧会が開かれているというので、その作品が展示される後期の入れ替えに合わせて出かけました。

すごいものを見ました。いまで言えばA4サイズ程の作品が五十数枚。季節ごとに並べて展示されています。何がすごいって、構図がすごいです。上の画像は、三月に「同行二人」を開催させてもらったそら庵さんに行く途中に渡った「深川万年橋」(今は鉄骨の橋)なのですが、橋の上に置かれた手桶の持ち手に愛玩用商品の亀がぶら下げられていて、その向うに万年橋の欄干、さらに先には富士山が見えます。手桶も見切れていれば、亀も、欄干も見切れているという。

見切れているからこそ逆に、風景はA4サイズを大きくはみ出し、無限の広がりを感じさせます。1850年代の江戸ですから、カメラを見たことなどないはず、なのにこの写真的発想はどこから来たのでしょう。

この構図を考えたのは歌川広重ですが、それを支え作品化した版元、彫師、摺師という職人たちの名前は残っていません。残ってはいませんが、その確かな技術が作品を後世に残してくれたおかげで、僕たちは素晴らしい芸術を享受することができるのです。

そして、夕方から丸の内に移動して、、『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010』2日め。今日は公演No.215、Aホールで、モーツァルトのレクイエムを聴きました。指揮者は大ベテランのミシェル・コルボ

39歳で亡くなったショパンの遺言により葬儀で演奏されたというモーツァルトのレクイエムは、昨日とは対照的に濃密で彫りの深い演奏でした。ショパンもポーランド人。なんか今日はそういう日みたいです。