2024年6月6日木曜日

違国日記

夏日。TOHOシネマズ錦糸町オリナス瀬田なつき監督作品『違国日記』を観ました。

休日のショッピングモールの駐車場。桜第一中学校3年生の田汲朝(早瀬憩)の目の前で大型トラックが両親の車に突っ込み両親は即死。母親と折り合いの悪い妹、人気ファンタジー小説家こうだい槙生(新垣結衣)は千葉県警荒崎警察署に駆けつける。

事実婚だったため、葬儀の看板には二つの名字。「あの子きっと親戚中をたらい回しにされてかわいそう」と無責任に囁き合う高齢の親戚たちにキレた槙生は朝に「あなたを愛せるかどうかはわからない。でも私は決してあなたを踏みにじらない」と、自宅に引き取ることを告げた。

数日後、中学校の卒業式の朝。親友えみり(小宮山莉渚)の母親を通じて朝の両親の死は学校に伝わっていた。朝は「あと1日だけじゃん。普通に卒業したかった」と担任を振り切り、えみりに「大嫌い」と吐き捨て学校を飛び出してしまう。

「わかり合えなくても、寄り添えることを知った」。がさつでずぼらで無愛想、汚部屋暮らしの35歳独身作家を演じるガッキーが全然きらきらしていないのがいい。声が2オクターブぐらい低い。瀬田監督は思春期の揺れる感情を手や足の指のクローズアップで上手く切り取っています。

瀬戸康史は現在放映中の民放連ドラと本作とで元彼ポジションを確立したのではないでしょうか。槙生の中学からの親友醍醐奈々を演じる夏帆はヒロインのソウルメイトの定位置で本領を発揮。槙生、奈々、朝の3人で餃子を作るシーン、公園で井上陽水の「夢の中へ」を歌うシーンは多幸感が溢れる。

高校の同級の優等生森本さんは『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『シンデレラガール』『私が私である場所』『ケの日のケケケ』と出演作が続く伊礼姫奈さん。彼女が登場すると画面が締まる。森本さんと朝が校舎の屋上で叫ぶと遠くで犬が反応して吠えるシーンは最高でした。

劇伴は高木正勝さん。静謐なピアノ曲には凡百のポスト・クラシカル、ヒーリング・ミュージックとは一線を画すエッジがあり、淡々とした中に淡い情感を滲ませて美しいです。

 

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