2023年5月13日土曜日

推しが武道館いってくれたら死ぬ

小雨。ユナイテッドシネマ豊洲大谷健太郎監督作品『推しが武道館いってくれたら死ぬ』を観ました。

舞台は現代の岡山市。主人公えりぴよさん(松村沙友理)は、7人組ローカルアイドルChamJamのサーモンピンク担当市井舞菜(伊礼姫奈)のトップオタ。偶然通りかかった七夕まつりのステージで射抜かれて、ライブは全通、特典会で積みまくるために、高校時代の赤ジャージで通している。

「舞菜のすべてが私に生きる意味を与えてくれる」「私の人生には舞菜の1分1秒が必要なんです」という、えりぴよさんの過剰な愛情が他の舞菜推しを遠ざけ、舞菜の特典会待機列は7人のメンバーの中でいつも一番短い。

平尾アウリ先生の漫画原作のTVアニメ実写ドラマは両方観ていました。ほぼ同内容の両者はどちらかというとドルオタ(アイドルオタク)の悲しくも可笑しい習性を中心に描いたコメディですが、ドラマと同キャストの劇場版では葛藤するアイドル像に軸足を移した感じがします。

「推し方に正解はない」と後輩を励ますリーダーれお(中村里帆)推しの古参オタくまさ(ジャンボたかお)。「私、えりぴよさんのことを何も知らない」と嘆く舞菜を「アイドルがファンのプライベートを知らないのは当然ですよ」と慰めるもうひとり舞菜推し女子オタ玲奈(片田陽依)。「パンは誰でも焼けるけど、舞菜ちゃんを応援できるのはあんただけでしょ」とえりぴよさんの背中を押すバイト仲間の美結(あかせあかり)。みんな優しい。

ストーリー展開もドラマ版から大きくスケールアップすることなく、一応東京には行くものの、五反田で路上ライブしたり、日本武道館と間違えて足立区綾瀬の東京武道館を見に行ったりする程度。その中で登場人物たちはすこしだけ成長する。アイドルとオタク、すなわち人前に立つ人と応援する人の理想的な関係性を描いたファンタジーと言っていいと思います。僕自身ライブパフォーマンスする立場として、また一介のアイドル好きとして、共感できる部分が多かったです。

地上アイドルの最高峰といっても過言ではない乃木坂46の初期メン松村沙友理が地下アイドルのオタクを演じる配役の妙。その振り切った芝居に、近年コメディエンヌとして才能を開花させている小芝風花矢作穂香と並ぶ存在になり得るポテンシャルを感じました。

眼力の強い舞菜のクローズアップ、風鈴棚の下で玲奈の手紙を読む舞菜、映像がとても綺麗です。ラストシーンで「ずっとChamJam」「Fall in Love」「私たちが武道館にいったら」の3曲をフル尺で聴けるのもアイドル映画の定型へのリスペクトがあり好感度が高いです。

 

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