勤労感謝の日の振替休日は曇り空。シネスイッチ銀座で、ジャン=ピエール・ジュネ監督作品『天才スピヴェット』を観ました。
主人公は10歳の天才科学者T.S.スピヴェット(カイル・キャトレット)。米国西部モンタナ州の大草原にカウボーイの父(カラム・キース・レニー)、昆虫学者の母(ヘレナ・ボナム・カーター)、ミスUSAを目指す姉(ニーアム・ウィルソン)と暮らしている。二卵性双生児の弟(ジェイコブ・デイビーズ)を猟銃の暴発事故で亡くすが、失意のある日スミソニアン協会から一本の電話があった。永久運動機関の発明が認められたのだ。東部ワシントンD.C.の表彰式に出席するために家出したT.S.。アメリカ大陸横断の大冒険、そして一躍マスコミの寵児となる。
ジュネ監督初の3D作品はガジェット感溢れるチャーミングな佳作として永く愛されるでしょう。幼い子供を失った悲しみから立ち直れない家族はそれぞれの方向へ逃避の先を向けるのだが、それが先鋭化され過ぎコミカルで客席の笑いを誘う。主人公が貨物列車の無賃乗車とヒッチハイクの道中出会う奇妙な人々を、ドミニク・ピノンらジュネ映画の常連俳優たちが素っ頓狂に演じています。
「科学の地平を拡げるのは詩人の仕事だ」「無限なものがふたつだけある。宇宙と人間の愚かさだ」「水滴が素敵なのは最も抵抗の少ない経路を辿るから」。
主人公は自宅のテラスから固定電話までの道筋を複数想定してSWOT比較するような理屈っぽいところがあって、僕も彼ほどではありませんが、子供の頃はそんな傾向があったので、痛くも共感できました。また演じるカイル・キャレットが上手い。壊れてしまった方位磁針と鳥の骨格標本を手放すシーンの微妙な表情なんかもう大御所感すら漂わせています。
3Dも独創的です。場面転換の飛び出す絵本や登場人物の脳内がホログラム的に宙に浮くヴィジョン、蛍火、紙吹雪、振り子、連結器。観客を驚かすのではなく、思考や妄想にリアリティを与える目的で使われているように感じます。
ジュネ監督ならではのジャンクでレロトフューチャーなマシンや水の描写、斜め下方から表情のアップに迫るカメラワークも健在です。『アメリ』でファンになった人にも、『ロスト・チルドレン』や『エイリアン4』が好きな方にもお勧めします。
2014年11月20日木曜日
Poemusica Vol.34
11月も後半に入り、晩秋というよりは初冬の雨。下北沢Workshop Lounge SEED SHIPで "Poemusica Vol.34" が開催されました。今回のPoemusicaはSEED SHIP初登場のミュージシャン3組との共演と相成りました
成瀬ブルックリンさん。今年の春に佐賀から東京に活動の拠点を移しました。オフステージではメタルフレームの眼鏡が似合う物静かな青年。目元にいつも穏やかな微笑を湛え知的な印象です。ところがひとたびステージに上がると、ハイパーイテンション。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、と店名だけをドラマチックに連呼するスタジアムロック「コンビニ」。知性故に見えてしまう虚無をゴージャスなエンターテインメントに転換する才能の持ち主です。
対照的にツカダコージさんはまっすぐな歌を唄います。長野県松本市出身。全国各地のストリートライブで鍛えられた声とギターは強く安定感があるが、瑞々しさを失っていない。七分丈のパンツにワークシューズ、ボタンダウンにボウタイ、というファッションで、とても礼儀正しく、差し入れで持って行ったドーナツの食べっぷりの良さといい、藤田悠治くんを思い出して、ちょっぴりしんみりしてしまいました。今日も地球のどこかで唄っているのかな。
真夏に吉祥寺BAOBABではじめて聴いた森田崇允さん。お願いしてその時と同じトリオ編成で出演していただきました。グルーヴィなガットギターのリフにヴァイオリンとボタン・アコーディオンが重なる心地良いサウンドはエキゾチックで時々ノスタルジック。すこし頼りなげなボーカルがそのゆらぎゆえにソウルフルに響くという奇跡的なバランス。濃密な音響空間を創造しています。また今回めずらしく出演者が全員男子でしたが、五島奈美子さん(Vn)の美貌と竹廣類さん(Acc)の愛らしさが華を添えてくれました。
僕は「無題(静かな夜~)」、"Unversal Boardwalk"より「十一月」、数年ぶりにカセットテープのブレイクビーツを使って「山と渓谷」、「ANOTHER GREEN WORLD」と先月ハロウィンの夜に書いた新作「線描画のような街」の5篇を朗読しました。
今回のPoemusicaはびっくりするぐらいお客様が少なかった。雨の平日夜で、とかもあるのかもしれませんが、集客面ではもっと知恵を絞っていかないといけないなと思います。そんな中でもパフォーマンスのクオリティは間違いなく高かったし、来てくださったお客様は本当に熱かった。心から感謝します!
来月のPoemusicaはクリスマスバージョン。1年のしめくくりに相応しい最高のブッキングをしていただきました。レアなクリスマスソングが聴けるかも。年末の慌ただしい時期ではありますが、是非皆様お誘いあわせの上ご来場ください!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Poemusica Vol.35 ポエムジカ*詩と音楽と聖なる夜に
日時:2014年12月18日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,400円・当日2,700円(ドリンク代別)
出演:古川麦(Guitar/Vocal)+関口将史(Cello)
ちみん(Guitar/Vocal)
はらかなこ(Piano solo)
カワグチタケシ (PoetryReading)
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成瀬ブルックリンさん。今年の春に佐賀から東京に活動の拠点を移しました。オフステージではメタルフレームの眼鏡が似合う物静かな青年。目元にいつも穏やかな微笑を湛え知的な印象です。ところがひとたびステージに上がると、ハイパーイテンション。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、と店名だけをドラマチックに連呼するスタジアムロック「コンビニ」。知性故に見えてしまう虚無をゴージャスなエンターテインメントに転換する才能の持ち主です。
対照的にツカダコージさんはまっすぐな歌を唄います。長野県松本市出身。全国各地のストリートライブで鍛えられた声とギターは強く安定感があるが、瑞々しさを失っていない。七分丈のパンツにワークシューズ、ボタンダウンにボウタイ、というファッションで、とても礼儀正しく、差し入れで持って行ったドーナツの食べっぷりの良さといい、藤田悠治くんを思い出して、ちょっぴりしんみりしてしまいました。今日も地球のどこかで唄っているのかな。
真夏に吉祥寺BAOBABではじめて聴いた森田崇允さん。お願いしてその時と同じトリオ編成で出演していただきました。グルーヴィなガットギターのリフにヴァイオリンとボタン・アコーディオンが重なる心地良いサウンドはエキゾチックで時々ノスタルジック。すこし頼りなげなボーカルがそのゆらぎゆえにソウルフルに響くという奇跡的なバランス。濃密な音響空間を創造しています。また今回めずらしく出演者が全員男子でしたが、五島奈美子さん(Vn)の美貌と竹廣類さん(Acc)の愛らしさが華を添えてくれました。
僕は「無題(静かな夜~)」、"Unversal Boardwalk"より「十一月」、数年ぶりにカセットテープのブレイクビーツを使って「山と渓谷」、「ANOTHER GREEN WORLD」と先月ハロウィンの夜に書いた新作「線描画のような街」の5篇を朗読しました。
今回のPoemusicaはびっくりするぐらいお客様が少なかった。雨の平日夜で、とかもあるのかもしれませんが、集客面ではもっと知恵を絞っていかないといけないなと思います。そんな中でもパフォーマンスのクオリティは間違いなく高かったし、来てくださったお客様は本当に熱かった。心から感謝します!
来月のPoemusicaはクリスマスバージョン。1年のしめくくりに相応しい最高のブッキングをしていただきました。レアなクリスマスソングが聴けるかも。年末の慌ただしい時期ではありますが、是非皆様お誘いあわせの上ご来場ください!
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Poemusica Vol.35 ポエムジカ*詩と音楽と聖なる夜に
日時:2014年12月18日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,400円・当日2,700円(ドリンク代別)
出演:古川麦(Guitar/Vocal)+関口将史(Cello)
ちみん(Guitar/Vocal)
はらかなこ(Piano solo)
カワグチタケシ (PoetryReading)
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2014年11月9日日曜日
マダム・マロリーと魔法のスパイス
霜月。小雨と小雨のあいだに時々晴れ間が覗く日曜日。角川シネマ有楽町で、ラッセ・ハルストレム監督作品『マダム・マロリーと魔法のスパイス』を観ました。
インドのムンバイでレストランを営んでいた家族が、政変の煽りを受けて暴徒に店を焼かれてしまい、ヨーロッパに移住する。ワゴンのブレーキ故障で天啓を受けた父親(オム・プリ)がインド料理店を開いたのは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する一流フレンチレストランの真向かいだった。
勃発する料理バトル、インド料理店の次男ハッサン(マニッシュ・ダヤル)とフレンチのスーシェフで八重歯がチャーミングなマルグリット(シャルロット・ルボン)の淡い恋。ハッサンはフレンチの非凡な才能を示し、レイシストがインド料理店に放火したのがきっかけになり、村道を渡ってライバル店に移籍する。
ハルストレム監督、いつのまにか巨匠になったんだなあ。スピルバーグ製作のディズニー映画ということで、目まぐるしい展開ですが、完成度の高い青春エンターテインメントになっています。演出はコメディタッチで、恋が成就すれば花火が上がり、ライバル心を燃やす表情をオーヴンの炎が赤く照らす。そんな大袈裟な照明や音楽と相俟って、ベテラン役者ふたりの丁々発止の応酬に、客席では何度も笑いが起きていました。
原題は "The Hundred-Foot Journey"。道路を挟んで30m先にある異文化への旅。安定(=停滞)したコミュニティに異分子が漂着し、軋轢を起こしながらも周囲と融和していく、というのは「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」「砂漠でサーモン・フィッシング」などと共通する。ハルストレム監督のテーマなのでしょう。
「料理は生きものの命を奪う。料理することで幽霊が生まれる」。という、ハッサンに料理を教える亡き母の科白がありましたが、幽霊方面に物語を展開させても面白かったんじゃないかと思います。
インドのムンバイでレストランを営んでいた家族が、政変の煽りを受けて暴徒に店を焼かれてしまい、ヨーロッパに移住する。ワゴンのブレーキ故障で天啓を受けた父親(オム・プリ)がインド料理店を開いたのは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する一流フレンチレストランの真向かいだった。
勃発する料理バトル、インド料理店の次男ハッサン(マニッシュ・ダヤル)とフレンチのスーシェフで八重歯がチャーミングなマルグリット(シャルロット・ルボン)の淡い恋。ハッサンはフレンチの非凡な才能を示し、レイシストがインド料理店に放火したのがきっかけになり、村道を渡ってライバル店に移籍する。
ハルストレム監督、いつのまにか巨匠になったんだなあ。スピルバーグ製作のディズニー映画ということで、目まぐるしい展開ですが、完成度の高い青春エンターテインメントになっています。演出はコメディタッチで、恋が成就すれば花火が上がり、ライバル心を燃やす表情をオーヴンの炎が赤く照らす。そんな大袈裟な照明や音楽と相俟って、ベテラン役者ふたりの丁々発止の応酬に、客席では何度も笑いが起きていました。
原題は "The Hundred-Foot Journey"。道路を挟んで30m先にある異文化への旅。安定(=停滞)したコミュニティに異分子が漂着し、軋轢を起こしながらも周囲と融和していく、というのは「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」「砂漠でサーモン・フィッシング」などと共通する。ハルストレム監督のテーマなのでしょう。
「料理は生きものの命を奪う。料理することで幽霊が生まれる」。という、ハッサンに料理を教える亡き母の科白がありましたが、幽霊方面に物語を展開させても面白かったんじゃないかと思います。
2014年11月6日木曜日
Banda Choro Eletrico live @PRACA11
冬至前日、秋の一番最後の小雨の夜。ブラジル料理の名店、表参道PRACA11(プラッサオンゼ)へ。ベーシスト/コンポーザーの沢田穣治さん率いる大編成コンボ "Banda Choro Eletrico" のライブを聴きに行きました。
"Kitchen Table Music Hour vol.3" でもお世話になったまえかわとも子さん(左利き)。The Xangos、カツヲ、たきびバンド、まえまえから、ソロと彼女が現在関わっているプロジェクトはこれでコンプリートしたことになるのかな。どれも違って、しかもハイクオリティな音楽です。
スルド(ブラジルのジャンベ的な主にキック担当)ちっちさん、パンデイロ(見た目タンバリン)RINDA☆さん、その他打楽器(コンガ、クイーカ等)渡辺亮さん、3人のどっしりとしたブラジリアングルーヴ。そこに乗せるうわもの、ギター馬場孝喜さん、ピアノ堀越昭宏さん、フルート尾形ミツルさんの3人はジャズ由来。と、ここまでならまあ無くはない(とはいえ演奏スタイルは相当アブストラクトだが)。
更に沢田さんの8弦ベースと伊左治直さんのトイピアノというダブル倍音攻めが加わることで、自由でいびつな音像が創造される。そのアナーキズムはとても楽しく美しい。あえて喩えるとしたら、ピエール・ムーラン時代、トリプルパーカッション編成のゴングか。
ショーロという、一説によるとディキシーランドジャスよりも古いブラジル音楽に基盤を置きながら、そこで表現される音楽はハイパーフューチャリスティック。中盤のトイピアノのソロはこのうえなくドープでした。伊左治さんて、現代音楽の作曲家なんですね。YouTubeに上がっているピアノ曲も詩的です。
まえかわさんの歌声も倍音成分多め。インストゥルメンタル曲ではフルートとギターとの3声でスキルフルなスキャットを、ボーカル曲では生来の無邪気さでフロアを沸かせます。ゲストに若きウクレレの巨匠Rioくん(変声期)が加わり、沢田さんの還暦サプライズで終盤はお祭り状態へ。実験的でスリリングなインタープレイとダイナミックな高揚感を同時に体現した素晴らしいライブでした。
"Kitchen Table Music Hour vol.3" でもお世話になったまえかわとも子さん(左利き)。The Xangos、カツヲ、たきびバンド、まえまえから、ソロと彼女が現在関わっているプロジェクトはこれでコンプリートしたことになるのかな。どれも違って、しかもハイクオリティな音楽です。
スルド(ブラジルのジャンベ的な主にキック担当)ちっちさん、パンデイロ(見た目タンバリン)RINDA☆さん、その他打楽器(コンガ、クイーカ等)渡辺亮さん、3人のどっしりとしたブラジリアングルーヴ。そこに乗せるうわもの、ギター馬場孝喜さん、ピアノ堀越昭宏さん、フルート尾形ミツルさんの3人はジャズ由来。と、ここまでならまあ無くはない(とはいえ演奏スタイルは相当アブストラクトだが)。
更に沢田さんの8弦ベースと伊左治直さんのトイピアノというダブル倍音攻めが加わることで、自由でいびつな音像が創造される。そのアナーキズムはとても楽しく美しい。あえて喩えるとしたら、ピエール・ムーラン時代、トリプルパーカッション編成のゴングか。
ショーロという、一説によるとディキシーランドジャスよりも古いブラジル音楽に基盤を置きながら、そこで表現される音楽はハイパーフューチャリスティック。中盤のトイピアノのソロはこのうえなくドープでした。伊左治さんて、現代音楽の作曲家なんですね。YouTubeに上がっているピアノ曲も詩的です。
まえかわさんの歌声も倍音成分多め。インストゥルメンタル曲ではフルートとギターとの3声でスキルフルなスキャットを、ボーカル曲では生来の無邪気さでフロアを沸かせます。ゲストに若きウクレレの巨匠Rioくん(変声期)が加わり、沢田さんの還暦サプライズで終盤はお祭り状態へ。実験的でスリリングなインタープレイとダイナミックな高揚感を同時に体現した素晴らしいライブでした。
2014年10月16日木曜日
Poemusica Vol.33
東京の気温が急に下がり、下北沢は金木犀が満開です。Workshop Lounge SEED SHIPで、33回目のPoemusica が開催されました。
ろとれとろさんはリハーサルに現われたとき三つ編みで、既に心臓を鷲掴みにされました(三つ編み、眼鏡、ほくろ、左利きは僕的最強萌え要素です)。曲と曲のあいだを詩語りでつないでいくスタイルが、ライブ全体に物語性を添える。ピアノのタッチが丁寧で柔らかく、良く通る優しい声質といいバランスです。
宮沢賢治が平成に生まれていたらきっとゲーム制作かポップミュージックをやっていたと思うんですよね。みぇれみぇれさん(画像)はそんなマルチでファナティックな才能と童心を併せ持つ文字どおりのアーティスト(芸術家)です。広瀬達也さんのコントラバスとデュオ。飄々とした歌声、誰にも容易に想像のつかないようなスペイシーなサウンドで、はじめて聴いた人たちを驚かせていました。
まっすぐでつやつやな髪にロリータ服が似合う橋爪ももさん。楽屋では可憐な美少女ですが、ひとたび歌い出すと声量のあるドスの利いた低音の巻き舌で業の深い歌詞を繰り出します。そして早口のMCはひたすら笑いを取りに行く。滑っても滑っても取りに行く。二重三重のトラップにくらくらしました。最後に歌った猫になった男の子が徐々に記憶を取り戻す歌「今は猫」。よかったな。
ここまでの3組ははじめてでしたが、アカリノートさんはPoemusica 4度目のご出演です。前後のアクトに対する気配りが細かくていつも助けられます。この日も僕の「希望について」の主人公が好きな歌という設定の「メロディ・フェア」。それから僕の詩にアカリさんが曲をつけた「風の生まれる場所」はふたりで演奏しました。歌がどこまでも遠く届く。その光の道筋が見えるような声です。
僕は"10月"と"観覧車"をテーマに「星月夜」「月の子供」「観覧車」「希望について」「風の通り道」の5篇を選んで朗読しました。また今回はちょっとだけチャレンジを。Poemusica全体のイントロダクションとエンドロールに自作詩の一部をカットアップして置いてみました。気づいた方は少ないと思いますが、自分としてはなかなかうまくできたと思います。
次回のPoemusicaは11月24日(木)。森田崇允Trioさんをお招きします。フィドル五島奈美子さん、アコーディオン竹廣類さんの強力コンボで。そして成瀬ブルックリンさんとツカダコージさん。どうぞお楽しみに!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Poemusica Vol.34
日時:2014年11月20日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円・当日2,600円(ドリンク代別)
出演:森田崇允Trio *Music
~森田崇允(Vo/Gt)、五島奈美子(Vn)、竹廣類(B. Acc.)~
成瀬ブルックリン *Music
ツカダコージ *Music
カワグチタケシ *PoetryReading
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ろとれとろさんはリハーサルに現われたとき三つ編みで、既に心臓を鷲掴みにされました(三つ編み、眼鏡、ほくろ、左利きは僕的最強萌え要素です)。曲と曲のあいだを詩語りでつないでいくスタイルが、ライブ全体に物語性を添える。ピアノのタッチが丁寧で柔らかく、良く通る優しい声質といいバランスです。
宮沢賢治が平成に生まれていたらきっとゲーム制作かポップミュージックをやっていたと思うんですよね。みぇれみぇれさん(画像)はそんなマルチでファナティックな才能と童心を併せ持つ文字どおりのアーティスト(芸術家)です。広瀬達也さんのコントラバスとデュオ。飄々とした歌声、誰にも容易に想像のつかないようなスペイシーなサウンドで、はじめて聴いた人たちを驚かせていました。
まっすぐでつやつやな髪にロリータ服が似合う橋爪ももさん。楽屋では可憐な美少女ですが、ひとたび歌い出すと声量のあるドスの利いた低音の巻き舌で業の深い歌詞を繰り出します。そして早口のMCはひたすら笑いを取りに行く。滑っても滑っても取りに行く。二重三重のトラップにくらくらしました。最後に歌った猫になった男の子が徐々に記憶を取り戻す歌「今は猫」。よかったな。
ここまでの3組ははじめてでしたが、アカリノートさんはPoemusica 4度目のご出演です。前後のアクトに対する気配りが細かくていつも助けられます。この日も僕の「希望について」の主人公が好きな歌という設定の「メロディ・フェア」。それから僕の詩にアカリさんが曲をつけた「風の生まれる場所」はふたりで演奏しました。歌がどこまでも遠く届く。その光の道筋が見えるような声です。
僕は"10月"と"観覧車"をテーマに「星月夜」「月の子供」「観覧車」「希望について」「風の通り道」の5篇を選んで朗読しました。また今回はちょっとだけチャレンジを。Poemusica全体のイントロダクションとエンドロールに自作詩の一部をカットアップして置いてみました。気づいた方は少ないと思いますが、自分としてはなかなかうまくできたと思います。
次回のPoemusicaは11月24日(木)。森田崇允Trioさんをお招きします。フィドル五島奈美子さん、アコーディオン竹廣類さんの強力コンボで。そして成瀬ブルックリンさんとツカダコージさん。どうぞお楽しみに!
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Poemusica Vol.34
日時:2014年11月20日(木) Open 18:30 Start 19:00
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,300円・当日2,600円(ドリンク代別)
出演:森田崇允Trio *Music
~森田崇允(Vo/Gt)、五島奈美子(Vn)、竹廣類(B. Acc.)~
成瀬ブルックリン *Music
ツカダコージ *Music
カワグチタケシ *PoetryReading
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2014年10月11日土曜日
ジャージー・ボーイズ
秋晴れ。ユナイテッドシネマ豊洲で『ジャージー・ボーイズ』を観賞しました。1960年代の人気バンド The Four Seasonsのメンバーが実名で登場するブロードウェイ・ミュージカルをクリント・イーストウッドが映画化。実にクオリティの高いエンターテインメントに仕上がっています。
「この町から出て行く方法は3つだ。軍隊に入って殺されるか、マフィアになって殺されるか、有名になるか。俺らはあとの2つをやっている」。
米国ニュージャージー州の貧しいイタリア移民街。盗品売買で生計を立てながら、夜はクラブで仲間のニック(マイケル・ロメンダ)と演奏するトミー(ビンセント・ピアッツァ)が見出した奇跡的な美声と歌唱力を持つ16歳のフランキー・カステルッチオ(ジョン・ロイド・ヤング)は後のフランキー・ヴァリ。そこにインテリジェンス溢れるピアニストでソングライターのボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)が加わり、ゲイのプロデューサー兼作詞家ボブ・クルー(マイク・ドイル)と組むことで、バンドはスターダムを駆け上がる。
1951年の出会いから1990年のロックの殿堂入りまで約40年の物語ですが、細部が丁寧に描かれており性急な印象はありません。だらしなくて喧嘩っ早いギタリスト、天才肌のボーカリスト、知的でバランス感覚に優れたピアニスト、どんなトラブルも右から左に受け流すベーシストというバンドマンあるあるも、ひとりひとりのキャラが立ち過ぎるぐらい立っていてステレオタイプに陥っていない。
メンバーのモノローグがいちいちカメラ目線で(つまり映画館の客席に向かって)話しかけてくるのも面白い。映画に参加しているような錯覚。
作曲担当のボブ・ゴーディオ(The Four Seasons加入前に書いた"Short Shorts"は、タモリ倶楽部のオープニングテーマ!)を演じたエリック・バーゲンは商業映画初出演とは思えない落ち着きと瑞々しさを兼ねて備えています。
「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」はフランキー・ヴァリのソロシングルですが、ボブ・ゴーディオとボブ・クルーが、娘をドラッグ禍で失ったフランキーを慰めるために書いた歌。僕ら80'sディスコ世代にはBoys Town Gangのカバーバージョンのほうが馴染みがあります。あの狂騒的な中にも底知れない悲しみを湛えた音楽にはそんな誕生の背景があったんですね。
「この町から出て行く方法は3つだ。軍隊に入って殺されるか、マフィアになって殺されるか、有名になるか。俺らはあとの2つをやっている」。
米国ニュージャージー州の貧しいイタリア移民街。盗品売買で生計を立てながら、夜はクラブで仲間のニック(マイケル・ロメンダ)と演奏するトミー(ビンセント・ピアッツァ)が見出した奇跡的な美声と歌唱力を持つ16歳のフランキー・カステルッチオ(ジョン・ロイド・ヤング)は後のフランキー・ヴァリ。そこにインテリジェンス溢れるピアニストでソングライターのボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)が加わり、ゲイのプロデューサー兼作詞家ボブ・クルー(マイク・ドイル)と組むことで、バンドはスターダムを駆け上がる。
1951年の出会いから1990年のロックの殿堂入りまで約40年の物語ですが、細部が丁寧に描かれており性急な印象はありません。だらしなくて喧嘩っ早いギタリスト、天才肌のボーカリスト、知的でバランス感覚に優れたピアニスト、どんなトラブルも右から左に受け流すベーシストというバンドマンあるあるも、ひとりひとりのキャラが立ち過ぎるぐらい立っていてステレオタイプに陥っていない。
メンバーのモノローグがいちいちカメラ目線で(つまり映画館の客席に向かって)話しかけてくるのも面白い。映画に参加しているような錯覚。
作曲担当のボブ・ゴーディオ(The Four Seasons加入前に書いた"Short Shorts"は、タモリ倶楽部のオープニングテーマ!)を演じたエリック・バーゲンは商業映画初出演とは思えない落ち着きと瑞々しさを兼ねて備えています。
「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」はフランキー・ヴァリのソロシングルですが、ボブ・ゴーディオとボブ・クルーが、娘をドラッグ禍で失ったフランキーを慰めるために書いた歌。僕ら80'sディスコ世代にはBoys Town Gangのカバーバージョンのほうが馴染みがあります。あの狂騒的な中にも底知れない悲しみを湛えた音楽にはそんな誕生の背景があったんですね。
2014年10月10日金曜日
風の舞
もう15年以上お世話になっているというのに、JAZZ喫茶映画館で映画を観るのははじめてです。ここのマスターはドキュメンタリー映画を撮っているのですが、その先輩格にあたる宮崎信恵監督の2003年作品『風の舞』の一夜限りの上映会に行ってきました。
昨年亡くなった詩人塔和子さんは1929年愛媛県生まれ。12歳でハンセン病に罹り、83歳で亡くなるまで瀬戸内海に浮かぶ小さな島の療養所大島青松園で暮らした。H氏賞に3回ノミネートされ、1999年には高見順賞を受賞しています。病いや謂われのない差別に対して声高に叫ぶことはなく、明快で新鮮な語彙で淡々と生を綴っています。
非常に感染性の低いウィルスでありながら、外見に大きなダメージを与えることから、らい予防法と根強い偏見により、多くの自由を奪われた状態で隔離されたハンセン病患者。現在では薬物投与で完全に治癒します。その過酷な生活と解放の歴史、そしてひとりの詩人の足跡を描くドキュメンタリー作品です。
「1日に3つ書けることもあれば、1つも書けないこともある。詩の神様は気まぐれやね。でもその気まぐれが魅力的なのね」。
映像で一番印象に残ったのは教会のシーンです。ハンセン病療養所には必ず各宗派の寺院が設置されている。それは政策的な意図を持つエスケープポッドだったのかもしれませんが、祈りを捧げる患者たちの姿は美しく、高い窓から射し込む陽光に救いを見ました。
上映後、小夜さん(画像)が塔さんの作品を朗読しました。映画の中の吉永小百合さんの安定感のある朗読とはまた違って、塔さんのテクストの裏側にある呼吸の揺れ、不規則な律動を浮かび上がらせるような素晴らしい朗読でした。
最後に監督のトークで、晩年の塔さんの人間臭いというにはあまりにも生々しい一面が垣間見られました。天才とは実生活においてはかくもはた迷惑な存在なのか。繊細で美しい作品群の通奏低音としてのディーモン。だからこそ作品の美しさが際立つのかもしれません。
タイトルになっている「風の舞」とは、かつて島中に打ち捨てられていた患者の遺骨を集めて制作された巨大な円錐状のモニュメントの名前です。
昨年亡くなった詩人塔和子さんは1929年愛媛県生まれ。12歳でハンセン病に罹り、83歳で亡くなるまで瀬戸内海に浮かぶ小さな島の療養所大島青松園で暮らした。H氏賞に3回ノミネートされ、1999年には高見順賞を受賞しています。病いや謂われのない差別に対して声高に叫ぶことはなく、明快で新鮮な語彙で淡々と生を綴っています。
非常に感染性の低いウィルスでありながら、外見に大きなダメージを与えることから、らい予防法と根強い偏見により、多くの自由を奪われた状態で隔離されたハンセン病患者。現在では薬物投与で完全に治癒します。その過酷な生活と解放の歴史、そしてひとりの詩人の足跡を描くドキュメンタリー作品です。
「1日に3つ書けることもあれば、1つも書けないこともある。詩の神様は気まぐれやね。でもその気まぐれが魅力的なのね」。
映像で一番印象に残ったのは教会のシーンです。ハンセン病療養所には必ず各宗派の寺院が設置されている。それは政策的な意図を持つエスケープポッドだったのかもしれませんが、祈りを捧げる患者たちの姿は美しく、高い窓から射し込む陽光に救いを見ました。
上映後、小夜さん(画像)が塔さんの作品を朗読しました。映画の中の吉永小百合さんの安定感のある朗読とはまた違って、塔さんのテクストの裏側にある呼吸の揺れ、不規則な律動を浮かび上がらせるような素晴らしい朗読でした。
最後に監督のトークで、晩年の塔さんの人間臭いというにはあまりにも生々しい一面が垣間見られました。天才とは実生活においてはかくもはた迷惑な存在なのか。繊細で美しい作品群の通奏低音としてのディーモン。だからこそ作品の美しさが際立つのかもしれません。
タイトルになっている「風の舞」とは、かつて島中に打ち捨てられていた患者の遺骨を集めて制作された巨大な円錐状のモニュメントの名前です。
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