2014年11月9日日曜日

マダム・マロリーと魔法のスパイス

霜月。小雨と小雨のあいだに時々晴れ間が覗く日曜日。角川シネマ有楽町で、ラッセ・ハルストレム監督作品『マダム・マロリーと魔法のスパイス』を観ました。

インドのムンバイでレストランを営んでいた家族が、政変の煽りを受けて暴徒に店を焼かれてしまい、ヨーロッパに移住する。ワゴンのブレーキ故障で天啓を受けた父親(オム・プリ)がインド料理店を開いたのは、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する一流フレンチレストランの真向かいだった。

勃発する料理バトル、インド料理店の次男ハッサン(マニッシュ・ダヤル)とフレンチのスーシェフで八重歯がチャーミングなマルグリット(シャルロット・ルボン)の淡い恋。ハッサンはフレンチの非凡な才能を示し、レイシストがインド料理店に放火したのがきっかけになり、村道を渡ってライバル店に移籍する。

ハルストレム監督、いつのまにか巨匠になったんだなあ。スピルバーグ製作のディズニー映画ということで、目まぐるしい展開ですが、完成度の高い青春エンターテインメントになっています。演出はコメディタッチで、恋が成就すれば花火が上がり、ライバル心を燃やす表情をオーヴンの炎が赤く照らす。そんな大袈裟な照明や音楽と相俟って、ベテラン役者ふたりの丁々発止の応酬に、客席では何度も笑いが起きていました。

原題は "The Hundred-Foot Journey"。道路を挟んで30m先にある異文化への旅。安定(=停滞)したコミュニティに異分子が漂着し、軋轢を起こしながらも周囲と融和していく、というのは「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」「砂漠でサーモン・フィッシング」などと共通する。ハルストレム監督のテーマなのでしょう。

「料理は生きものの命を奪う。料理することで幽霊が生まれる」。という、ハッサンに料理を教える亡き母の科白がありましたが、幽霊方面に物語を展開させても面白かったんじゃないかと思います。

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