2014年、小学5年生の亜紗(松井彩葉)がFM土浦の科学番組に送った質問が取り上げられ、スタジオから電話がかかってきた。質問に答えた茨城県立砂浦第三高校天文部顧問の綿引(岡部たかし)は、月までの距離は38万km、紙を42回折ると月に届くと教えてくれた。
2019年春、砂浦三高に入学した亜紗(桜田ひより)は迷わず天文部の扉を叩く。同時に入部した1年生の凛久(水沢林太郎)は、ナスミス型望遠鏡を自作したいと言い、ふたりはペアを組んで上級生たちとスターキャッチコンテストに挑む。
2020年が明け、世界中に猛威を奮った新型ウィルスはCOVID-19と名付けられ、砂浦三高は臨時休校になった。長崎県五島の県立泉水高校3年の円華(中野有紗)の自宅は旅館、東京からの観光客を受け入れていたことで近隣住民から誹謗中傷を受け、祖父母と同居する親友の小春(早瀬憩)からも距離を置かれていた。五島へ離島留学していた興(萩原護)は東京の自宅に戻っている。渋谷区立ひばり森中学に進学した安藤(黒川想也)は学年唯一の男子生徒。サッカー部が廃部になり、同級生の天音(星乃あんな)の執拗な誘いで科学部に入部する。
コロナ禍の2021年に新聞連載された辻村深月の原作小説の実写化は『ケの日のケケケ』『VRおじさんの初恋』の森野マッシュが脚本を手掛けていると聞いて観に行きました。たかだか4~5年前なのにもう忘れかけていた、色々な形態のマスクや濃厚接触者、ソーシャルディスタンスというワードを見聞きして喉元過ぎればを感じました。
指定された企画の望遠鏡を自作して、出題者がコールする星を見つけるスターキャッチコンテストを、茨城と長崎と東京をオンラインで結んで開催する。ひと夏の青春の物語はひと夏で終わらずに冬まで続きます。続く、というのは良いことだという概念は先の見えないパンデミックの渦中で悪い意味で価値転換してしまいました。この映画を観ている青春をとうに過ぎた僕は青春の有限性に輝きを見出したくて、二度と来ない夏をコロナで台無しにされた彼らを憐れんでしまいそうになるのですが、知恵を絞って工夫して、結果的に忘れられない夏に昇華してしまったことを称えるべきだと思います。
中野有紗は『PERFECT DAYS』、早瀬憩は『違国日記』、それぞれ主人公の姪を演じた五島の二人の実力は本物。マスク着用1の目だけの芝居で、小春(早瀬憩)にいたってはオンラインミーティングのカメラがオフなのに、友愛も鬱屈も疎外感も余すことなく表現している。そのふたりがすれ違いの果てに堤防の上でマスクを外して抱き合い和解するシーンには暴力的なまでに心を掴まれる。実写とCGを重ねた星空も綺麗で七夕に観るにはうってつけの映画でした。
劇中に流れるニュース映像の小池百合子都知事の声に違和感を持ちましたが、エンドロールに清水ミチコの名前を見つけて腑に落ちました。安倍晋三首相の声は誰が演じているのでしょうか。
東日本大震災のすこし後、僕もJAXAのウェブサイトでISS(国際宇宙ステーション)を調べて、何度も肉眼で光跡を追いかけました。約90分で地球を1周するISSは流れ星よりは相当遅いですが、旅客機よりはかなり早いので、手製の望遠鏡で捉えるのは高難易度だと思います。
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