毎年猫の日の前後に開催されるmandimimiさんのライブはいつもコンセプトとなるキーフレーズがあって、今夜のテーマは "Dreaming Of Youth"。台湾系アメリカ人のmandimimiさんはYouthを「青春」と訳して、思春期をBlue Springと呼ぶのが詩的だと言う。セットリストは青春や青にちなんだ楽曲がセレクトされ、衣装もブルー。
「すこしここにいませんか/月もまだ微笑んでいる/私たちのためにまるで/心を読んだように」。ジョニ・ミッチェルの "Blue" を自ら和訳し朗読したうちの一節です。それ以外にもSnow Patrolの "Run"、オリジナル曲「永遠的水藍色」などが、歌詞の朗読を交えて演奏されました。
僕は朗読が本職ではない人の、特にミュージシャンの歌詞の朗読を聴くのがとても好きです。音楽は、基本となる拍節に沿ったりはみ出したりしながら進んで行く時間芸術で、大なり小なりそのミュージシャンの得意な「型」というべきものがあると思います。それに対して朗読はいつ始まってもいいし止まってもいい、真空で無音で無重力の空間にひとりでいるような心許なさと会話のような何気なさが同居する表現形態で、そういった環境に身を置いた際、その人の本質が見える気がします。
演奏された楽曲すべてがスローテンポで優しい空気を纏っている。朗読も同様で且つmandimimiさんは英中日どれも流暢に話せるトリリンガルですが、日本語のネイティブスピーカーにはない独特のアーティキュレーションを持ち、それが僕にはとても心地良く感じられました。
昨年秋のギャラリー展示で "Flower Spells" を完成させ、現在進行形のProject "Dear Dream Diaries" の子どもの頃に見た宇宙で暮らす家族の夢を基にした新曲 "Erasers" が主題も旋律も素晴らしい。愛聴しているmandimimi名義の1st E.P. "Unicorn Songbook: Journeys" のリードトラックで2004年まで暮らしていたシアトルの夏空を歌った "Sapphire Skies"、限定シングル "To Santorini" とそのB面曲 "Transatlanticism" をひさしぶりに聴けたのもうれしかったです。
冬のノラバー御膳は、ポテトサラダ、大根油あげ巻、たまごやき甘いの、つくね焼き、きんぴらごぼう、かぶのつけもの、さばみりん、とうふと小松菜のみそ汁、豆ひじきごはん。そしてノラバープリンとノラブレンドコーヒー。『シティ・オブ・エンジェル』からニコラス・ケイジの話でみんなで笑って柳沢の夜は更けていきました。