2024年11月28日木曜日

とまり木にて7

木曜夜。吉祥寺MANDA-LA2で開催された『とまり木にて7』に行きました。

『とまり木にて』はノラオンナさんが不定期に企画するツーマンライブで、セットリストを決めずに1曲ずつ交互に演奏するという趣向ですが、今回はそのレギュレーションではなく、ノラオンナさんのデビュー20周年を17組のミュージシャンがノラさんの作品を1人1曲カバーして祝うというものです。

4月に開催された全曲演奏ライブ『ノラオンナ58ミーティング デビュー20周年「風の街へ流れ星を見に行こう」』のボーナスディスク的な位置づけと言っていいと思います。

客電が落ちると真っ暗なステージでバリトンウクレレを爪弾いて歌い始めるノラさん。曲は今年12月24日にリリースを控える新譜『スサー』から「」です。次に舞台上手に置かれたピアノにスポットが当たり、デビュー盤の1曲目「流れ星」を藤原マヒトさんが歌う。

以降は出演順に、えとらんぜ尾張文重/小林治郎)、さみぃマユルカカナコ矢舟テツロー寺田貴彦ブックエンズ)、中川五郎小西康陽。休憩を挟んで、永井サク水ゐ涼宮坂洋生ayumi melodyおきょん古川麦ほりおみわ外園健彦曽我部恵一(以上敬称略)、という豪華出演陣がノラさんの楽曲をラブ&リスペクトをもって歌い、演奏する。クララズさんの病欠が惜しまれます。

ノラさんはずっとステージ後方の椅子にいて、曲間に各演奏者との関係性や楽曲の制作に関するエピソードを話す。「夜のヒットスタジオ」の芳村真理のポジション、もしくは『俊読』における故谷川俊太郎氏の位置付けか。若手から大御所まで、一曲入魂の御前試合をやり切って、清々しい表情でステージを降りる出演者たち。そこに勝ち負けはない。

みなさん素晴らしかったのですが、個人的に印象に残ったアクトをいくつか。マユルカとカナコさんの「僕のお願い」のイントロのうみねこを模したようなヴァイオリンとアウトロの清涼な二声のフーガ。ayumi melodyさんの「フルーツサンドウィッチ」の温かくて、このうえなく丁寧な再解釈。「こくはく」をスチールパン弾き語りで聴かせたおきょんさんの耳に心地良い歌声と背筋の伸びた佇まい。曽我部恵一さんの「やさしさの出口で」の恐ろしいほどにフレッシュなシズル感。

誰よりもノラさんが楽しんでいるのが伝わって、会場全体に幸福感が満ちていました。20周年おめでとうございます。たくさんの素晴らしい楽曲を生み出してくださってありがとうございます。
 

2024年11月24日日曜日

詩の朗読会 3K17

薄曇り。阿佐ヶ谷mogumoguで『詩の朗読会 3K17』を開催しました。

当日朝に小森さんからめずらしく電話。波乱含みで始まった17回目の3K朗読会にご来場のお客様、mogumogu店主moguさんとスタッフのみなさん、Qさん、小森さん、ありがとうございました。

2000年6月に西荻窪のBook Cafe Heartland で始まった小森岳史究極Q太郎、カワグチタケシというイニシャルKの3人によるポエトリーリーディング「3K」が、途中12年のブランクを挟みながら、25年目を終えることができました。

僕は以下7篇を朗読しました。

1. 十一月の話をしよう
4. ピース(小森岳史)
5. 言葉にむすぶまえに(究極Q太郎)
6. かなしみ(谷川俊太郎
先日亡くなった阿佐ヶ谷在住の大詩人谷川俊太郎氏が20歳で出版した第一詩集『二十億光年の孤独』収録の「かなしみ」には「透明な駅」というフレーズがあります。

Qさんは12月に現代書館から出版される詩集(はじめてのハードカバー!)『散歩依存症』から「にしこく挽歌」の連作を。小森さんが自身で訳したアレン・ギンズバーグの「カリフォルニアのスーパーマーケット」を朗読したのをはじめ、ビートニク、ザ・ドアーズ、ドナルド・トランプなど、「アメリカ」が今回は3人の共通のキーワードとなっていました。過去の3Kでも何度かそのような符牒が生じたことがありました。

会場のmogumoguさんは中国のオルタナティブミュージックのレコードショップです。店内がきのこづくしで中国人オーナーのmoguさんもマッシュルームカット。パールセンター商店街の雑居ビルの3階まで狭い階段を上らないとなりませんが、ライブ専用ではないのに音響がとてもよく、チャージバックも良心的ですので、数十名規模のライブイベントにはおすすめです。

 

2024年11月17日日曜日

ベルナデット 最強のファーストレディ

曇りのち晴れ。ヒューマントラストシネマ有楽町レア・ドムナック監督作品『ベルナデット 最強のファーストレディ』を観ました。

タイトルバックにパイプオルガンと発声練習が重なり、教会で聖歌隊が「この映画は史実に基づくフィクションです。ベルナデット・シラクは1933年パリ生まれ、父親はジャン=ルイ・ショソン・ド・クールセル、母親はマルグリット・マリー・ド・ブロンドー・ドゥルティエール。繰り返しますが、これはフィクションです」と歌う。

1995年5月のパリ。左派のジョスパン候補を破って大統領となったジャック・シラク(ミシェル・ビュイエルモーズ)の妻ベルナデット(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、集まった支持者の声援にバルコニーから応える夫ジャックと彼の広報官である次女クロード(サラ・ジロドー)に疎まれ、室内に引っ込む。摂食障害で入院している長女ロランス(モード・ワイラー)が当選祝いに贈った亀をベルナデットはマリー・アントワネットと名付けた。

新しいファーストレディに対する「所帯じみている」「古臭い」という世評を覆そうとクロードは市庁舎で干されていたベルナール・ニケ(ドゥニ・ポダリデス)をベルナデットのイメージ戦略コンサルタントに任命する。ダイアナ元妃がパリで交通事故死した日、シラク大統領はパレルモでイタリア人女優と浮気していた。そのことよりも、自宅の庭でジャックの立小便が愛亀アントワネットにかかったことでベルナデットのスイッチが入り、ニケとバディを組んで快進撃が始まる。

地方議会で発言中のベルナデットに急用だと電話を掛けるシラク大統領の質問は「生牡蠣は今が旬か?」。1995年から2007年に在位していた実在のフランス大統領夫人を主人公にしたコメディ映画は、故人も存命中も全登場人物が実名で描かれ、当時シャネルのデザイナーとしてDIESELとコラボしていたカール・ラガーフェルド(オリヴィエ・ブライトマン)やシラクの政敵で次の大統領になるサルコジ(ロラン・ストケル)、当時の米国大統領夫人ヒラリー・クリントン(本人のニュース映像の合成)も登場します。相当戯画化されているとはいえ、日本で言えば三代前の首相夫人安倍昭恵氏を主役にしたアイロニー溢れる喜劇を撮るようなもの。それを笑って受容するフランス社会の器の大きさ。

ヒロインを演じる81歳のカトリーヌ・ドヌーヴの存在感が凄い。松坂慶子にもっとドスを利かせた感じですが、貴族的な優美さや可憐さも併せ持つ。『しあわせの雨傘』(2010)、『真実』(2019)など、年輪を重ねて尚コメディエンヌとしての切れ味が増しているように感じます。

冒頭に記述した聖歌隊はテロップ的な役割で、エンドロール前には「主人公や脇役たちはこのあとそれぞれこうこうこうなりました」と歌う。ニケの模造紙によるプレゼンのしょぼさや1998年フランスW杯をテレビ観戦するシーンには爆笑しました。約90分の上映時間に多くのエピソードをテンポ良く盛り込み、女性の自立を主題とした現代的で痛快な喜劇作品に仕上げた劇場版初監督のレア・ドムナック氏の今後の活躍が楽しみです。

 

2024年11月14日木曜日

Chimin Live @yummy

曇天。高円寺yummyへ。Chiminさんのライブに行きました。8月の吉祥寺Stringsに続き、昨年音楽活動再開後2度目のワンマンライブです。

1曲目はStringsと同じ「チョコレート」。客電が落ちるとカフェとしては暗い客席、開場直後に着いて案内された最前列で、音楽に集中することができました。2曲目サンバのリズムの「残る人」では、間奏の加藤エレナさんのピアノの二拍三連に井上 "JUJU" ヒロシさんがフルートのスタッカートで応え、達人同士の呼吸に痺れる。

「本当はずっと黙っていたい、静かにしていたい人なんやけど」というChiminさんではありますが、めずらしく楽曲毎に作った当時の環境や思いをMCで添えてくれて、今夜はお喋りしたい気持ちだったのかも。お店のアップライトピアノは微かにホンキートンク気味で味わいがあり、Chiminさんのサポートではフルートやソプラノサックスを吹くことが多いJUJUさんのテナーサックスの低音がよく合う。

最近セットリストに入ることが多いフォークルの「悲しくてやりきれない」で6曲の1stセットを終えてインターバルへ。Chiminさんは前半すこしファルセットが出しづらそうに見えました。逆に地声は普段以上によく響いていたのでコントラストからそう感じたのかもしれません。声量の落ちるところをJUJUさんの演奏が優しくカバーしているように聞こえました。

2ndセットは4ビートのブルーズ「茶の味」から。「まるで昔のことのように」の直線的な唱法が新鮮です。アンコールの「世界」まで全13曲のステージからはいつも以上に熱を感じたのと同時に、僕には既に完成しているように聴こえるChiminさんの音楽が、実は毎回が新しく、変化の過程にあるんだな、と思いました。次回12月の吉祥寺Stringsのライブもとても楽しみです。

 

2024年11月9日土曜日

夜の庭 -jardin à nuit-

秋晴れ。文京区目白台の肥後細川庭園松聲閣で『Pricilla Label présente 詩の朗読会 夜の庭 -jardin à nuit-』を主催し、出演しました。ご来場のお客様、肥後細川庭園松聲閣さん、小夜さん、石渡紀美さん、どうもありがとうございました。

僕が代表者を務めるインディーズ出版社Pricilla Labelから詩集を出している石渡紀美さんが1か月間フランスに滞在すると聞いて、帰国直後にライブをしたいと思い、同じくプリシラから朗読CDをリリースしている小夜さんにもお声掛けしました。帰国ライブなので和テイストの会場がよく、昭和の終わりから平成初期の5年間近くに住んでいたことがある日本庭園の大正時代の建築を思い出しました。

秋の日はつるべ落とし。すっかり暗くなった夜の庭園を背にした縁側で朗読しているとガラス越しに時折ししおどしの音が聞こえます。

3. 十一月の話をしよう
4. 十一月(Universal Boardwalkより)
5. 十一月、ブラームスを聴く詩人(石渡紀美)

僕は以上6篇に加え、小夜さんとライブ当日の午前0時半まで巻いていた連詩「夜の庭」を朗読しました。連詩をふたりで交互に読み、小夜さんに交代しました。十四畳の会場にマイクを通さない肉声がほどよく響き、小夜さんの言葉が息づかいを伴ってよく伝わっているのが、客席最後列で聴いていてわかりました。CD『無題/小夜』収録の初期作品「放課後のあとの即興詩」が久しぶり聴けてうれしかった。

2016年11月のライブ『fall into winter 2』で小夜さんと石渡紀美さんが共作した同題の連詩を挟んで、石渡紀美さんが座布団に正座して朗読しました。パリの夜の情景を描いた「ル・ボン・マルシェ、グラン・マガザン・フランセ」、11歳になる第二子の反抗期に対する多面的な心境を綴った「この嵐を抜けたら大人になってしまう君へ」はアンケートでも多くのオーディエンスの印象に残ったようです。

最後は2019年10月工房ムジカ『こんなはずでしたⅢ』で小夜さんがトリオ編成にアレンジしてくれた僕の「風の通り道」を三人で。

ひりひりするようなアウェーも、ひとりで背負うワンマンの重みも好きですが、信頼できる仲間とひとつの場を作り上げる今回のようなライブもいいものです。公共の会場の制約でフリーライブにしたことで、お客様の参加のハードルも下がり、演者側もいい意味で力みのないライブができたと思います。

このあと、11/24(日)3K17、12/1(日)NAKED SONGS vol.14とライブ出演が続き、12/28(土)はさいとういんこさんと下高井戸で年末恒例の二人会、来年1/12(日)にはノラバー生うたコンサート&デザートミュージック(ワンマン)が控えています。よきタイミングのものがございましたら是非お越しください。