4月最後の日曜日はひんやりとした晴天。原宿クロコダイルで開催された谷川俊太郎トリビュートライブ『俊読2017』に出演しました。満員のお客様、クロコダイルと俊読のスタッフさんたち、谷川俊太郎さんと共演者の皆様、主催の桑原滝弥さん(画像)、どうもありがとうございました。
国語の教科書で、テレビCMで、ビールの缶で、誰もが一度はその作品に触れたことのある国民的詩人であり、85歳になったいまも毎年新刊を出版し全国で朗読ライブを開く谷川俊太郎氏。その作品をジャンルレスな出演者がカバーする。彼の作品を媒介に各々の個性を遺憾なく発揮し、あるいは発揮させられ。作品を選んだつもりが作品に選ばれていた、大詩人の生涯の一部分を切り取ったつもりが自分の人生観が切り取られていた。そんな面白さと怖さがありました。
清新な青臭さがまぶしいもりさん、リリカルなギターと歌声を響かせた吉田和史さん、女優として抜群の身体性で魅せた西田夏奈子さん、キュートな毒をふりまいた石原ユキオさん、「朝のリレー」を濃厚な終末感で塗り潰した猫道くん、絶え間ない気遣いで空間を演出した桑原滝弥さん、サプライズゲストに10年ぶりにお会いした上田假奈代さん、凛とした立ち姿に覚悟を滲ませた文月悠光さん。どなたも僕が思いもつかないような作品選びと演出を練って一流のエンターテインメントに仕上げてきています。
谷川さん本人による朗読は、赤塚不二夫と水木しげる、近年亡くなった二人の偉大な漫画家に捧げた2篇の新作、憲法を題材にliving behaviorたる詩とdeath avoiding behaviorとしての法を対比させた「不文律」、クロコダイルの店長西哲也さんが中学生だった1960年代にスクラップしていた週刊朝日連載の「落首九十九」、そして滝弥くんのリクエストで「平和」。飄々とした浮遊感溢れる声で会場のひとひとりに手渡す。
出演者全員のセットリストは滝弥くんのブログをご参照ください。
僕は以下の6篇を朗読しました。
1. 頬を薔薇色に輝かせて(田村隆一)
2. ニューヨークの東二十八丁目十四番地で書いた詩(谷川俊太郎)
3. 声(カワグチタケシ)
4. 六十二のソネット59(谷川俊太郎)
5. 音無姫(岸田衿子)
6. 星(谷川俊太郎)
田村隆一さん、岸田衿子さん、そして谷川俊太郎さん、という僕が考える日本戦後詩史上最大のbizarre love triangle、その関係性に説明を加えず作品のみで提示し、生者と死者を交感させる、というテーマで構成しました。田村隆一と谷川俊太郎が1971年の同じ夜を各々描いていること。夜に終始する田村隆一と最後に朝を描く谷川俊太郎、風邪を引いた田村夫人はかつて谷川夫人であった岸田衿子の更に後妻である。
僕たちのパフォーマンス中ずっと、谷川さんが舞台下手の椅子に腰掛けていましたが、加えて故人である田村隆一さんと岸田衿子さん、そして朗読した詩作品に引用されているディラン・トマス、ヘンリー・ミラー、W.H.オーデンの亡霊を客席に感じながら。
出囃子には「ニューヨークの~」に出てくるJ.S.バッハの数多の楽曲からヴァイオリン協奏曲第1番第2楽章(シェリング版)を選びました。
1980年代育ちの僕にとって、カバーとはすなわち批評。また、親世代に対する反発も相俟って、ラヴ&リスペクトだけでは割り切れない気持ちがあります。複雑に入り混じる感情を自分の胸の底に見つける良い機会を提供してもらえたことに深く感謝しています。
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