ステージ中央にウクレレを抱いたノラオンナさん。両脇に橋本安以さん(Vn)と古川麦さん(Hr、Vo)、後方に宮坂洋生さん(b)、両サイドに外園健彦さん(g)と港ハイライトのメンバーでもある柿澤龍介さん(Dr)、藤原マヒトさん(Pf、Syn)というシンメトリーな配置のバンドが1曲目「流れ星」のイントロを奏でる。
2004年のデビュー盤のタイトル曲「少しおとなになりなさい」、「パンをひとつ」から、2021年の『ララルー』の最終曲「stay home」、アンコールの「風の街」まで、ステージで演奏された全69曲は、発表順、アルバムの曲順を基本的に踏襲するもの。オリジナルバージョンを尊重しつつ、この夜の特別なメンバーの色を加えたゴージャスなアレンジで、20年のキャリアとノラオンナさんの音楽の変遷を一息に振り返る。3時間半という長丁場でありながら、感覚的にはまさに「一息」でした。
物語性を強く感じる初期のナンバー、僕がリアルタイムで聴き始めた2011年の『いいわけイレブン』の声とウクレレだけで構築されるミニマリズム、オムニバス盤のみ収録の港ハイライト「あたたかいひざ」、2015年の『なんとかロマンチック』、2016年の『抱かれたい女』でカラフルなバンドサウンドを得て、2019年の『めばえ』の主題と変奏は2021年の『ララルー』で聖俗混交のアブストラクトな高みへと至る。
「あなたがすき こんなにすき/いまいったきもちどおりに/つたわればいいのに」(こくはく)。「すき」というシンプルな一言にどれだけ複雑な感情が込められているか、そしてそれはひとりひとり違う。言葉に対する疑念とそれでも言葉に託そうという強い想いが解像度の高い歌詞を書かせる。「そのスープ/ぜんぶのみほしたなら/絶望に虹をかけて/わたしに会いにきて/あなたを受けとめて/孤独をさするの」(野菜のはしっこ)。まったくもって信頼できます。
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