2019年10月20日日曜日

真実

薄曇り。TOHOシネマズ日比谷是枝裕和監督作品『真実』(字幕版)を観ました。

現代のパリ。国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)の自伝出版を祝うためニューヨークで脚本家をしている娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)がテレビ俳優の夫ハンク(イーサン・ホーク)と幼い娘シャルロット(クレモンティーヌ・グルニエ)を連れて帰ってくる。

リュミールは母の自伝の内容に不満を持っている。書かれているほど自分は愛されていなかったと感じているし、なによりファビエンヌの姉妹でありライバル女優でもあった伯母サラについて一言も触れられていないから。

母娘の確執の元となった過去の真実に迫るみたいなミステリーテイストの強いプロモーションですが、完成作は毒舌、アイロニー、エスプリ満載でくすっと笑えるフランスらしく上品なコメディ映画といっていいと思います。『真実(La vérité)』というのは自伝のタイトルに過ぎず、しかも相当盛っている。それをリュミールに責められ「私は女優よ。本当のことなんて言わない」と平然と言い切るファビエンヌ。撮影をボイコットしようとして「映画と自分とどっちが大事なの?」という詰問に「私が出ている映画が好き!」と半ギレで即答する。僕的日本最高の女優賛美映画『Wの悲劇』の三田佳子と見まごうばかり。

リュミールも負けじと芝居がかった科白を書いて登場人物たちに演じさせるのだが、そのなかにはファビエンヌも含まれており、二重三重の入れ子が観客を戸惑わせ笑わせます。そしてスクリーンには一度も登場しない故人サラの存在感の大きさ。

紅葉のパリの風景も美しく、執事リュック(アラン・リボル)、サラの再来と呼ばれる若手女優マノンを演じるマノン・クラベル、子役クレモンティーヌ・グルニエら脇役たちも大変魅力的でした。

 

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