2024年5月30日木曜日

シド・バレット 独りぼっちの狂気

夏日。渋谷シネクイントストーム・トーガソンロディ・ボガワ監督作品『シド・バレット 独りぼっちの狂気』を観ました。

英国ケンブリッジ、1963年。高校生のシド・バレットは時に奇抜な行動を取るが、社交的で優しくパーティの人気者だった。1964年ロンドン芸術大学に進学後、1965年にロンドンの別の学校に通う幼馴染のロジャー・ウォーターズ(b)、ウォーターズの同級生のリチャード・ライト(Key)、ニック・メイスン(Dr)とPink Floyd Soundを結成する。

プログレ四天王の一翼を担いスタジアム級のビッグバンドになる以前のピンク・フロイドのリード・シンガー/ソング・ライターだったシド・バレットは、サイケデリックロックの旗手と呼ばれながら、ドラッグにより精神を病み、セカンドアルバム制作中に脱退する。1970年に2枚ソロアルバムを発表後、2006年に亡くなるまで故郷ケンブリッジで隠遁生活を送った。

本作の監督ストーム・トーガソンは、シド・バレットとも後任ギタリストのデイヴィッド・ギルモアとも同級生であり、ピンク・フロイドの他にもロックの名盤の数々のジャケットを手掛けたデザインユニット・ヒプノシスの創始者です。ストーム自身がインタビュアーを務めており、幼馴染たちも元メンバーも後輩ミュージシャンもとてもフレンドリーな語り口で、主役であるバレットが送った生涯は決して幸せなものではありませんでしたが、暖かな感触が鑑賞後に残る映画です。

病み始め奇行を繰り返すバレットを「迎えに行かなくてもいいんじゃない」とライブ当日に誰ともなく言ってなし崩しに脱退させたこと、7年後に録音スタジオに突然現れたバレットの見た目が別人で誰も気づかなかったこと、一文無しでロンドンからケンブリッジまで80km歩いて帰ったこと、ファンの間では都市伝説のように語られていたことが、当事者たちの言葉を通して、現実だったんだな、と切ない気持ちになりました。

高校時代からバンドがブレークするまでにバレットが付き合ったガールフレンド4人に取材しています。実妹ローズマリーも含め、関わった女性たちの現在の身なりがとても上品なことになぜか安心しました。

 

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