自称「早い、安い、質はそこそこ」な映画監督レミー(ロマン・デュリス)は、日本でヒットした30分ワンカットのゾンビ映画のリメイクのオファーをB級映画専門チャンネル「Z」から受ける。
ゾンビ映画の撮影中の廃墟に本物のゾンビが現れ俳優たちも撮影スタッフもゾンビ化して撮影現場はパニックに陥ってしまう。
2017年の上田慎一郎監督作品『カメラを止めるな!』をフランスでリメイクするにあたり、追加されたのは上記のリメイクの依頼という二重三重の入れ子構造。日本側のプロデューサーマダム・マツダ役に竹原芳子(オリジナル作品時の芸名はどんぐり)の通訳役(成田結美)があらたにキャストに追加されています。
冒頭は完成した30分ワンカットのゾンビ映画、中間部約45分が撮影開始までのトホホな過程、最後の30数分がメイキングのドタバタという構成はオリジナル版と同じで、台詞も基本的には同じ。役者がフランス人、イギリス人、イタリア人ほか多国籍なのに劇中劇の役名が日本語のまま、監督はヒグラシ(仏語発音だとイグラシ)、主演のふたりはチナツ(マチルダ・ルッツ)とケン(フィネガン・オールドフィールド)とへんてこで、まず笑いを誘います(この伏線は後に回収される)。
俳優陣はみな芸達者で、特に主人公レミーの妻ナディア(ベレニス・ベジョ)のハジけっぷりが完全に振り切れていて爽快なのと父と同じ監督志望の娘ロミー(シモーヌ・アザナビシウス)が鬱屈しながらも両親に敬愛の情を持つ思春期の微妙な揺れをよく表現していました。この母娘役はアザナビシウスの実の妻子でもあります。
『カメラを止めるな!』はB級映画愛に溢れた傑作ですが、本作もオリジナル版へのラヴ&リスペクトに加え、フランス映画らしいアイロニィとオシャレ感もあるエンターテインメントとして、しっかり楽しめる作品に仕上がっており好感が持てます。
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