2022年7月3日日曜日

アントワーヌとコレット/夜霧の恋人たち

にわか雨。角川シネマ有楽町フランソワ・トリュフォー監督作品『アントワーヌとコレット』『夜霧の恋人たち』4Kデジタルリマスター版を鑑賞しました。

今回の生誕90周年『フランソワ・トリュフォーの冒険』では52年の生涯で約30本の映画を監督したうちの12本が上映されています。

『アントワーヌとコレット』は『大人は判ってくれない』の3年後。14歳だったアントワーヌ・ドワネル少年(ジャン=ピエ―ル・レオー)は17歳になり、少年鑑別所を出てフィリップスレコードの工場に勤めている。ネクタイを締めて出勤し、レコード盤をジャケットに詰めたり、プレスしたりしている。

成年音楽同盟が主催したピエール・シェフェールのコンサートで大学生のコレット(マリー=フランス・ピジエ)を見初め、彼女と両親が暮すアパルトマンの向かいの安ホテルに引っ越す。

『夜霧の恋人たち』は更に6年後。23歳のアントワーヌは失恋の痛手で陸軍に志願するが、素行不良と命令義務違反で除隊になり、その足で向かったのはクリシー街の娼館。ガールフレンドのクリスチーヌ(クロード・ジャド)の両親にホテルの夜勤を紹介され、すぐに解雇される。解雇の原因になった探偵社にスカウトされ、高級靴店に捜査員として潜入する。

フランソワ・トリュフォーはアントワーヌ・ドワネルが主役の映画を5本撮っており、うち2作目と3作目。1962年にオムニバス映画『二十歳の恋』の一話として制作された『アントワーヌとコレット』は白黒、1968年の『夜霧の恋人たち』はカラーフィルムを使用しています。『大人は判ってくれない』はシリアスでリリカルな名作ですが、つづく2本はコメディ色が強く、テンポの良いスラップスティックな場面が多く笑える。


恋人アントワーヌの新しい職を父親に聞かれて「詩人?」と答えるクリスチーヌ。「詩人以下だ」と父。「詩人以下(の仕事)なんてあるの?」とクリスチーヌ。

落ち着きがなく責任感に欠けるアントワーヌ・ドワネルは社会不適合者だが、映画の登場人物の皆に愛され、観客にも愛される。正しさに縛られるよりも、やりたいことをやりたいように、生きたいように生きろ、とトリュフォーをはじめヌーヴェルヴァーグの作家たちから思春期の僕は教わった。忘れかけていたことを思い出させてくれました。

 

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