ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した翌日。シネマート新宿のレイトショーでウェス・オーショスキー監督作品『地獄に堕ちた野郎ども』を観ました。
ザ・ダムドはロンドンパンクのバンドとして最初にレコードデビューし、セックス・ピストルズ、ザ・クラッシュと並ぶオリジネーター。メンバーチェンジ、解散、再結成を繰り返し、現在結成40周年。在籍したメンバーは20人以上。全員が一度は(もしくは数回)脱退している。
オリジナルメンバー4人を軸に、1977年から2012年までのライブ映像、オフショット、スタッフや関連の深いミュージシャンのインタビューで構成されたドキュメンタリーです。
中学生のときにはじめて聴いた1stアルバム"Damned Damned Damned"(邦題:地獄に堕ちた野郎ども)は衝撃的でした。セックス・ピストルズの政治性もザ・クラッシュのインテリジェンスもザ・ジャムのスタイリッシュさもザ・ストラングラーズの文学性もなく、やかましくて下品で粗雑でバカっぽくて楽しそうでした。
2nd"Music for Pleasure"の鈍重な演奏にげんなりしてその後のリリースには積極的になれませんでしたが(キャプテン・センシブルのポップセンスが光る 3rd "Machine Gun Etiquette"や5th "Strawberries" は悪くないアルバムです)、1stだけはずっと愛聴しています。
「俺たちミュージシャンは自尊心が低い人間なのさ。ステージに出て拍手してもらってやっと人並みだ」。還暦を過ぎたいまも自分で機材車を運転してツアーをしています。アメリカでは革ジャンにスタッズ、全身タトゥの40~50代オールドパンクスたちに大歓迎されますが、香港や東京などアジア圏は客層が若い。さすがに恰幅が良くなりましたが、デビュー当時ひょろひょろの4人の破壊的なパフォーマンスはいま観てもやはり血わき肉踊るものがある。
ザ・クラッシュのミック・ジョーンズ、ストラングラースのジャン=ジャック・バーネル、バズコックスのスティーヴ・ディグル、ビリー・アイドル、ザ・プリテンダーズのクリッシー・ハインド、デッド・ケネディーズのジェロ・ビアフラ、デペッシュ・モードのデイヴ・ガーン、モーターヘッドの故レミー、その他大勢のレジェンドたちのインタビューも演奏シーンも数秒から数十秒でカットアップされるハードドライヴィンな編集から監督のザ・ダムドの音楽へのリスペクトが伝わってきます。
ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画から引用した『地獄に堕ちた野郎ども』がその代表例ですが、SEX PISTOLS 『勝手にしやがれ "Never Mind the Bollocks"』、THE STRANGLERS 『野獣の館 "Rattus Norvegicus"』、THE CLASH 『動乱(獣を野に放て) "Give 'Em Enough Rope"』 etc、この頃の邦題はレコード会社の担当者が楽しんでつけている感じがとてもいいですよね。
大貫憲章氏と写真家菊地茂夫氏による上映前のトークは、ノスタルジーに流され過ぎず、現在のバンドの姿も客観的に伝え、且つパンク愛に溢れており、ちょっと甘酸っぱい気持ちになりました。
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