2014年1月3日金曜日

かぐや姫の物語

新しい年になりました。毎年正月三賀日は映画館に行きます。今年はユナイテッドシネマ豊洲スタジオジブリ制作、高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』を観ました。

ストーリーは古典『竹取物語』をなぞるもので、大きな変更はありません。主要な登場人物であらたに加えられたのは幼馴染の捨丸(声:高良健吾)ぐらい。もっとも作者不詳でバージョン違いも数多く存在する日本最古(万葉集より古いとする説も)の物語ですので、そういうスピンオフが存在するのかもしれません。

冒頭の原文のナレーション(宮本信子)から雅語の響きに引き込まれます。そして映像表現が素晴らしい。文人画みたいな手書きの描線は通常のアニメーションのように輪郭を繫がず、最小限の要素で構成された画面、省略された背景はホワイトアウトして、白日夢のようなヴィジョンを生成します。

アクションも緻密かつ疾走感に溢れ、何度か登場する主人公かぐや姫(声:朝倉あき)が全力で駆けるシーン、捨丸との幻想的な飛行シーンは美しく、儚く、切ない。木の床を裸足で踏む足音など音響も細部まで神経が行き届いています。声優陣では竹取翁を演じた故地井武男氏が素晴らしかった。

光る竹の中から発見された幼女は3ヶ月で美しい姫に成長します。この時間を辛夷、躑躅、藤の開花で知らせる象徴的手法。冬枯れの山を見て木々が死んでしまったと悲しみ、春が支度をしてまた戻ってくると知ったときの安堵。

姫の罪は禁断の地である地球に憧れたこと。罰としてその地に流された。という二重のパラドックス。この原文にはない設定も効いています。

月の羽衣を纏うと、この地の記憶は全て失くしてしまう。一方、残された者たちの記憶はいつまでも消えることなく残る。どちらも悲しいけれど、僕だったら後者を選ぶかなあ、と思いました。

エンドロールで流れる二階堂和美いのちの記憶』も本編に寄り添った名曲です。

 

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