2024年8月14日水曜日

台北ストーリー

猛暑日。新宿K's Cinemaの『台湾巨匠傑作選2024』にてエドワード・ヤン監督作品『台北ストーリー』を鑑賞しました。

NEC、SONY、FUJI FILM、日本企業のネオン看板が彩る1985年の台北市の中心街のマンションを内見する一組のカップル。大きなサングラスをかけた女アジン(蔡琴)は「ここに決めた」と言うが、男アリョン(侯孝賢)は海外移住するという。

アジンは不動産会社に勤め、大規模な再開発事業に携わっているが、会社が外資系ファンドに買収され尊敬していた女性上司が解雇されたことで、高額の雇用継続オファーをされたにも関わらず自ら退職を申し出る。

原題は『青梅竹馬』。中国語で男女の幼馴染を指します。アジンとアリョンは共に旧市街の繊維問屋街で祖父母の代から付き合いがある家で育った。アジンはせかっく工面した渡米資金をアリョンの父親(吳炳南)の借金返済に充て、取り戻そうとした賭けポーカーで負けて車も失う。

出口の見えない閉塞感に飲み込まれまいともがく若者たち。1990年代の台湾ニューシネマを代表するエドワード・ヤン(楊德昌)監督の1985年公開の初期作は、寒色系のクールな画面、生活音中心の音響、淡々と過ぎる中で時折表出する冷徹な暴力描写、徹底したリアリズムでありながらあらゆる背景が寓意に満ちている、という独特の作風が既に確立されています。

カンヌ映画祭の常連でもありアジア映画の巨匠となった侯孝賢(ホウ・シャオシェン)は本作の撮影以前に既に監督デビューしていますが、本作では俳優として主演しています。現在は苦み走った渋い見た目の77歳ですが、この頃は時任三郎(の若い頃)を縦に圧縮した感じです。

僕は、主人公たちの一世代下、アジンの妹で空きオフィスを非行グループで不法占拠しているアキン(林秀玲)たちと同年代です。ディスコで "FOOTLOOSE" を踊っていた二十歳の頃を懐かしく思い出しました。

 

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