2023年7月15日土曜日

幕が上がる

猛暑日。池袋サンシャイン劇場平田オリザ原作、久保田唱脚本演出の舞台『幕が上がる』を鑑賞しました。

高校演劇の地区大会が終わり、2年生のさおり(森本茉莉)、ユッコ(山口陽世)、ガルル(高井千帆)の3人は大道具を燃やす伝統のセレモニーをしている。部活を引退した3年生に代わり、消去法的にさおりが部長を引き受ける。

新任美術教師で大学演劇界のスターだった吉岡先生(片山萌美)の指導を受け、高校演劇の強豪校で顧問と対立して転校してきた中西さん(浜浦綾乃)を仲間に加え、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を下敷きにしたオリジナル戯曲で再スタートを切った演劇部の1年間を描く舞台です。

W主演の2人は今回が初舞台となる日向坂46の2020年デビューの3期生。膨大な台詞量のさおりと天性の演技力を持つユッコをド直球で演じる。現役アイドルで今はまだ3列目だからこその輝きと必ず卒業を迎えなくてはならない有限性が高校演劇と重なります。ライバルの強豪校で準主役級の演技派だった転校生中西さん役の浜浦彩乃さんはセンターを務めていたこぶしファクトリー解散後は舞台経験を積んでいる元ハロプロアイドル。今年4月でB.O.L.Tを解散し10年間のアイドル生活を卒業したスターダスト所属の高井千帆さん(画像)が、高校卒業後、芝居の道に進む3人とは違い看護師を目指すガルルを演じる。

メインキャスト4人のリアルな境遇と役柄がシンクロし、それを支える3人の教師たち、なだぎ武片山萌美酒井敏也の熟達したサポートも相まって、アイドルと元アイドルという枠を超え、6日間9公演を共にするカンパニーとして成立させようという強い主体性を生み出しているように感じました。

B.O.L.Tと前グループのロッカジャポニカで何度もライブを観ている高井千帆さんは、体幹が綺麗に通った立ち姿とエレガントな身のこなし、特徴的な甘いハスキーボイスが良く通り、一所懸命さに適度な軽さを添えて演劇部のムードメーカー役ガルルを演じ、ひときわ眩しく光を放っていました。


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