2019年10月13日日曜日

ブルーアワーにぶっ飛ばす

台風一過。テアトル新宿箱田優子監督作品『ブルーアワーにぶっ飛ばす』を観ました。

舞台は21世紀の東京。30歳のCMディレクター砂田友佳(夏帆)は寛容な夫(渡辺大知)と平穏に暮らしているが、職場の上司冨樫(ユースケ・サンタマリア)と不倫関係にある。仕事では、使えない代理店に苛立ち、わがままな俳優に振り回されるが、その鬱憤を酒を吞んで毒舌を吐くことで晴らしている。

そんな酒に吞まれる日々、中古車を買った後輩で親友の清浦あさ美(シム・ウンギョン)の運転で、入院中の祖母を見舞うため、嫌いな故郷茨城に数年ぶりに帰省することになった。

「その笑顔、私は嫌い。かわいいって言われるかもしれないけどブスだからね。癖になるから気いつけな」と場末のスナックのママに言われ、「私を好きって人あんまし好きじゃない」と強がる。周囲が羨むクリエイティブな仕事に就きながら、生きづらさを抱えたアラサー女子を夏帆(左利き)がナチュラルにリアルに演じています。

シム・ウンギョン演じる天真爛漫なキヨは主人公スナさんのアルターエゴ。少女時代のひとり遊びのパートナー。家族にはその両方の姿が見えている。

酪農を営むがさつな両親をでんでん南果歩が好演。兄役黒田大輔は超怪演。キャストが奇跡的に素晴らしいです。

僕自身が千葉で生まれ育って東京で仕事をしているので、犬を轢きそうになったり、トンボを殺してしまったり、老描が死んだり、生き死にが生々しく存在する中途半端な田舎の幼少期の記憶は胸に迫るものがありました。

ブルーアワーとは、夜明け直前、日没直後の短時間に訪れる薄明、トワイライト、誰そ彼時のこと。東京に帰る常磐道を飛ばすエンドロールでかかる松崎ナオさんのざらっとした歌声がやさぐれた心に染みます。


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