2024年7月23日火曜日

お母さんが一緒

猛暑日。新宿ピカデリーにて橋口亮輔監督作品『お母さんが一緒』を観ました。

川の音と鳥のさえずりだけが聞こえる山道で温泉旅館の送迎車のタイヤが側溝にはまっている。マイクロバスを押す三姉妹。長女の弥生(江口のりこ)の眼鏡の鼻パッドには小さく折り畳んだティッシュが挟まっている。

宿は次女の愛美(内田慈)が2部屋予約した。畳が臭いだの、女湯が狭いだの、ずっと文句を言い続ける弥生。同室の三女清美(古川琴音)は何か言い出そうとするが、弥生の止まらない文句に押されて言い出せない。母と同室の愛美が「お母さんとふたりでは30分が限界」と隣室から逃げてくる。

誕生日を祝うために母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹の一泊二日の会話劇。現在は親元を離れ都会で暮らす長女弥生と次女愛美の長年の確執、三女清美の空気の読めない婚約者タカヒロ(青山フォール勝ち)が途中から加わり、温泉宿は修羅場と化す。舞台作品TVドラマ化の劇場版編集映画という成り立ちもあり、主要な登場人物は上述の4人でほとんどの場面が温泉旅館の一室で繰り広げられます。

母親の画面には映らない暴言にキレた江口のりこの暴力的な無言の芝居がすごいです。舞台版のオリジナルキャストでもあった内田慈は地上波連ドラの脇役として見せる包容力よりも小悪魔的な邪悪さを前面に出し、終盤まで冷ややかに傍観していた古川琴音も夜が更けるにつれ発火する様にコメディセンスを強く感じました。

それでも朝が来ると並んで露天風呂に浸かる三姉妹。言葉やロジックを用いない和解は「家族」の紡いだ長い年月のなせる業なのでしょう。その場面で流れる平井真美子さんピアノロングトーンが天国的に美しいです。

 

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