2023年2月12日日曜日

すべてうまくいきますように

日曜日。ヒューマントラストシネマ有楽町フランソワ・オゾン監督作品『すべてうまくいきますように』を観ました。

主人公エマニュエル(ソフィー・マルソー)は小説家。9月15日、自宅のテーブルで液晶ディスプレイに向かっているとiPhoneに父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)の緊急入院を知らせる着信。取るものもとりあえずアパルトマンを出るが、階段が霞んで見え、洗面所に戻りコンタクトレンズを入れる。

病院の前で待っていた妹パスカル(ジェラルディン・ペラス)を共に父の病室を訪ねる。父は脳梗塞。数日後に別居中の母クロード(シャーロット・ランプリング)が見舞いに来るが、彫刻家の母はパーキンソン病とうつ病を長く患っており、意思疎通ができない。

9月23日、病状が安定してきたが身体の自由が利かない父アンドレはエマニュエルに「もう終わらせてくれ」を尊厳死を望む。動転したエマニュエルは病室を飛び出してしまう。翌年4月27日にスイス・ベルンの尊厳死協会の病院で服薬によって息を引き取るまでの約8か月の家族の物語。ブラームスピアノソナタ第3番が流れる画面が、重たい主題に反して悲劇的に映らないのは、オゾン監督のキャラクター造形の妙か。

裕福な元実業家の父アンドレは実は同性愛者。カフェのギャルソンに色目を使い、腐れ縁の愛人の金の無心を断れない。ベルンに搬送する救急隊員とのやりとりも可笑しい。長女エマニュエルの描かれ方も実にフランス的。父の入院初日、落胆して帰宅するメトロ車内で、アメリカ人旅行者にペール・ラ・シェーズ墓地へ道筋を尋ねられれば答えるし、父の尊厳死契約の翌日には自身の誕生日パーティでシャンパンを開ける。

1980年のデビュー作『ラ・ブーム』でオリーブ読者全員が憧れたソフィー・マルソー。同時期にアイドルとして一世を風靡し、その後も主役級の作品に起用され続けている点で、同じ1966年生まれの小泉今日子さんにも通じるものがあると思います。56歳の現在もチャーミングでした。

 

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