2022年10月14日金曜日

四畳半タイムマシンブルース

にわか雨。ユナイテッドシネマアクアシティお台場にて夏目真悟監督作品『四畳半タイムマシンブルース』を観ました。

下鴨幽水荘は貧乏学生たちが暮らす京都市左京区のヴィンテージアパート。三回生の「私」(浅沼晋太郎)は、映画サークルMISOGIで監督としてB級作品を大量生産する1年後輩の明石さん(坂本真綾)に恋心を抱いている。

「私」が下鴨幽水荘で唯一クーラーのある209号室に引っ越した数日後、歯科衛生士羽貫さん(甲斐田裕子)が栓をせずに置いたコーラを悪辣な同級生小津(吉野裕行)がリモコンにこぼしてクーラーは動作しなくなる。8月12日、真夏のボロ下宿で暑さに耐えかねた仲間たちはタイムマシンで1日過去に遡り、壊れる前のリモコンを奪回することを思いつく。

TVアニメ化された森見登美彦の小説『四畳半神話大系』の貧乏臭い設定と自堕落な登場人物たちが、2005年に瑛太上野樹里実写映画になった京都の劇団ヨーロッパ企画の舞台『サマータイムマシンブルース』のストーリーでサイエンスSARUの色彩豊かで平面的な意匠に乗って好き放題する爽快なバケーションムービーです。

そもそもの話、『四畳半神話大系』も同原作者の『夜は短し歩けよ乙女』もアニメ化に際してヨーロッパ企画の上田誠が脚本を執筆しているので、特別なコラボレーションというよりは必然の流れと言っていいでしょう。

「私たちは未来を知ることはできない。知らないということは何でもできるということ。つまり自由ということです」。登場人物全員が不完全で愛おしく、金は無いけれど、時間だけはふんだんにある(と当時は信じていた)青春のモラトリアムを経験した我々にとっては、イタさとシンパシーを伴うノスタルジーを90分間楽しめる一本になっていると思います。

板塀の影の暗さが京都の真夏の日差しを強調する。鴨川の流れ、疎水、銭湯、シャツを絞った汗など、サイエンスSARUらしい水の描写。こちらも『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』と同じ大島ミチルの管弦楽を中心とした劇伴がとにかく素晴らしいです。

 

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