2022年2月6日日曜日

鹿の王 ユナと約束の旅

日曜日。ユナイテッドシネマ豊洲にて安藤雅司宮地昌幸監督作品『鹿の王 ユナと約束の旅』を観ました。

強大な軍事力によって東乎瑠(ツオル)帝国に併合された隣国アカファ王国。飛鹿(ピュイカ)を操る最強部隊「独角」の頭ヴァン(堤真一)は、妻子を伝染病で失い、捕虜となって地下の岩塩坑で強制労働に従事していた。

山犬の群れが岩塩坑を襲い、噛まれた者は黒狼熱(ミツツァル)で命を落としたが、独房に入れられていたヴァンと孤児ユナ(木村日翠)だけが生き残り、ピュイカに乗って逃走する。

その噂を聞いた若き医術師ホッサル(竹内涼真)は生き残った二人が黒狼熱の抗体を持っていると仮説する。ツオルが雇ったプロの追跡者サエ()とともにヴァンとユナを探す旅に出る。

2015年の本屋大賞を受賞した上橋菜穂子長編ファンタジー小説のアニメ化はコロナ禍により完成が約半年遅れ、結果的に現実世界の感染症拡大と物語が一部リンクするようなことになりました。文庫本4巻、1000ページ超の物語を2時間の尺に収めたことで、上橋作品の特徴のひとつでもあるディテールはどうしても失われてしまう。なかでも美味しそうなことこの上ない架空の料理と食事シーンの割愛は残念です。オタワル深学院院長トマソルやサエの父で跡追い狩人の頭マルジも登場しません。

原作未読だと、ファンタジー世界の架空の国名、地名、組織、職業など、一聴して耳慣れない言葉が多くあると思われますが、物語のコアは失われていない。僕は2013~2015年頃、小説といえば上橋菜穂子しか読んでいなかった時期があり、詩集『ultramarine』(2015)のエピグラフに引用した程です。

実力のあるアニメーターを多く起用した作画は人物描写も動物たちも風景描写も素晴らしく、秋から冬、そして春へと移り変わる季節を富貴晴美の荘厳な劇伴に乗せて美しく表現しています。声優陣では竹内涼真が予想外に上手でした。

 

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