木曜夜の西武新宿線の帰宅ラッシュに揉まれ、駅を出ると東の空に満月。夜空にパンチ穴を開けたようなまん丸の月(©Tom Waits)がアスファルトをほのかに照らしている。
カウンターに席を取るとハイボールとサラダが供されます。西武柳沢ノラバー「木曜ノラの日生うたコンサート」、mandimimiさん、ノラオンナさんのツーマンライブに行きました。
mandimimiさんの歌を聴くのは5月のサラヴァ東京以来。その頃始動した毎月ひとつの花を選んで曲を書くというパーソナル・プロジェクトを継承したセットリストで、最新作はカスミ草をモチーフにした "Our Heartbeats"。日本在住歴の長い台湾系アメリカ人であるmandimimiさんの歌詞は、英語、日本語、中国語のミクスチャー。しかしその歌声にコスモポリタン的な厚かましさは欠片もない。彼女の歌詞に特徴的な単語 suffering、losing、separation、distance。ある種の断絶とそれゆえの切望、希求、祈り。
ノラオンナさんは11月発売の新譜『めばえ』の(ほぼ)全曲演奏という4月の「ノラオンナ52ミーティング」の二部に近い構成でしたが、スターパインズカフェの音響で聴くのとはかなり印象が違い、アンプラグドならではの声の近さに楽曲の輪郭がより際立つ。「めばえ」(曲名)のスキャットと「大好きなの/生きることが」という歌詞のholyな響き。声質は全く異なりますがVirginia Astleyの "Melt The Snow" に重なり、冬が終わるんだな、と思いました。10月なのに。
最後に3曲をデュエットで。mandimimiさんの同郷のスター故テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」中国・日本二ヶ国語バージョン、さらさ西陣を描いたmandimimiさんの "Antique Tiles"、ノラオンナさんのバンド港ハイライトの「やさしさの出口で」。ノラさんが上のパートという意外性もあり、ふたりのハーモニーがやさしく美しかったです。
いつになく(?)女子率の高い客席から、ノラ婆カレーのおいしさに華やかな嬌声が上がり、楽しくおしゃべりしているうちに終電間際。慌てて店を出ると、満月は天頂近くまで上っていました。
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