2016年11月19日土曜日

つつみとくるみ

雨上がりの千駄木。しっとり湿った秋の土曜日の午後、団子坂を上って(団子坂、菊坂、三崎坂。このあたりの坂の名前を聞くと漱石を思い出します)。フリュウギャラリーさんで昨日から開催中のねもとなおこ個展『つつみとくるみ』を鑑賞しました。

ねもとさんの好きなものは、マレーグマと鉱石。もふもふとキラキラ。対照的なテクスチュアが共存し、且つ融和しているのがその作品の魅力です。そしてインテリジェンスとたくまざるユーモアがある。なによりも色彩が素晴らしい。ソフトなグリーン系の中間色も、印刷されることを意識した明快な原色も、品良く、バランス良く収まり、デザインとアートの隙間を軽々と往来します。

『つつみとくるみ』と題された今回の展示の主題は包装でしょうか。つつまれること、くるまれることによって得られる安心が感じられるとともに、くるみは胡桃でもあり。白インクでドローイングを施された胡桃の実が秋の画廊の壁のいたるところに貼り付けられており、その姿にくすっとさせられる。

ことほどさように、言葉のセンスも併せ持つ方なのです(僕の詩作品「風の通り道」ではねもとさんの言葉からの引用が重要な位置を占めています)。

ファブリック/テキスタイルにも挑戦し、あのエレガントな描線と色彩が布帛になり、加工されてロゼットやワンピースになる。あんな素敵なカシュクールをふんわり纏った女の子に出会ったらきっと片想いしちゃうだろうな。

平面作品では「思っていたこと」とキャプションのついた星空に浮かぶ百葉箱と入り口右手に展示されていた鉱物の原石を想像させる抽象画群の画面の硬質な輝きが印象に残りました。


 

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