雨期。細かい雨が降ったり止んだり。夕方から海の近くまで。ユナイテッドシネマ豊洲で、是枝裕和監督作品『海街diary』を観ました。
鎌倉(最寄駅は江ノ電極楽寺)の古い日本家屋で暮らす三人姉妹が、父親の葬儀で出会った腹違いの妹すず(広瀬すず)を引き取ることに。夏に始まり夏に終わる、一年の物語。
是枝監督もこんなにやさしい映画を撮るんだなあ。すずが何かを初めて食べるとき、姉たちは一呼吸待って、すずの顔を覗き込む。小さな生命を慈しむその姿には心温まります。
監督はいつも家族をテーマのひとつに置いていますが、これまでの作品が家族だからこそ起こるディスコミュニケーションを描いていたのに対して、その部分は長女幸(綾瀬はるか)と実母(大竹しのぶ)との対立以外の場面では登場人物たちの内面に留められている。『そして父になる』では主人公たちとともに、血のつながりか、共に過ごした時間か、という選択に迷った観客たちを、この映画を作ることによって双方向に解放したかったのかもしれません。
そこで大きな役割を果たしているのが女優たちの生身の肉体です。特に次女佳乃を演じた長澤まさみがハリウッド女優並みのゴージャスなボディシェイプと自然で豊かな表情に露出の多い衣裳で画面に生命力を与えています。長い四肢を持てあますことなくしっかりコントロールする姿は観客の目からも気持ち良いものです。
三女千佳は夏帆(左利き)が演じています。吉田秋生の原作漫画ではアフロですが、映画ではおだんご。誰よりも屈託がなくよく食べる。
そして広瀬すず。中学校の教室では大人びた憂いのある表情を見せるのですが、姉たちに囲まれると途端に幼い顔になる。映画撮影時と比べ現在は更に大人になっていますが、撮影中にもきっと成長したのでしょう。それを計算して撮ったのだと思います。あと少年サッカーのシーンでドリブルのキレが本物。惜しくもゴールには繋がらないがラストパスは左足インサイド(笑)。
鎌倉の四季、蝉時雨、紅葉、紫陽花。しらすを釜揚げするときの湯気、自転車二人乗りで桜のトンネルを駆け抜ける。どのシーンも写真集のような質感で美しい。脇役も端役もいちいち豪華な俳優陣ですが、みんなでこの四姉妹をサポートしてあげようという意思がスクリーンからはみ出してくる幸福な映画です。
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