2015年6月7日日曜日

朗読の時間

高円寺純情商店街の突き当りを左へ、庚申通りの店先に亀のいる不動産屋の少し先の狭い路地を入ったところに大陸バー彦六があります。開店前の扉を開けたら、ザ・レジデンツがかかっていました。

入梅前夜。朗読の時間。蛇口さんにお声掛けいただいて、5年ぶりに詩人だけのブッキングライブに出演しました。

桑原滝弥さん。18歳の大晦日に男女4人で初めて東京に遊びに来た話から一気呵成に怒涛のリーディングへなだれ込む。虚実ないまぜのモノローグと独りコールアンドレスポンス。暴力的に声を荒げるほどに、冷徹な構築性が覗く。シアトリカルな話芸。言葉と声の質量と密度で息苦しいまでに場を圧倒する力は業界随一です。

変わって石渡紀美さんは乾いた声質で、静謐な抒情を淡々と綴る。初期作品のペーソス滲む作風。普通の単語を整ったシンタックスを用いて並べているのに、なぜか独特過ぎる言語感覚。プリシラ・レーベル最新詩集『十三か月』の作品は本人曰く「花鳥風月」なのに、自己対象化がひと回りして読者/観客をも対象化してしまいます。

蛇口さん(画像)の朗読の面白さを形容するのは難しいです。説明するのは難しいけれど、いやがうえにも面白い。エロいことを言っても全然エロくないし、韻を踏めば踏むほど言葉遊びから離れていく。よれよれしているのにそれが逆にグルーヴになる。テンポがないのに音楽的。そして愛すべきダメっぷり。事実彼ぐらい言葉に愛されている男を僕は知りません。相思相愛に違いない。

狭い店内がなんだかよくわかんない空気に包まれ、つられて僕も変なテンションに。3年前の6月5日に亡くなった作家レイ・ブラッドベリの短編小説「万華鏡」を挟んで、「無題(世界は二頭の象が~)」「ANGELIC CONVERSATIONS(不完全ver.)」「Planetia(惑星儀)」「雨期と雨のある記憶」「すべて」「We Could Send Letters」の6篇を朗読しました。そう、最近ようやく自分をコントロールしない術を身に付けたような気がします。

滝弥くんが、この4人は全員2000年の夏に出会った、と言っていましたが、そのひとりひとりと最初に会った日のことを僕も憶えています。15年後にまた集まったら楽しいことでしょう。15年後もこの4人はきっとそれぞれ別々に詩を書いて朗読していることでしょう。


 

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