2014年12月7日日曜日

ノラオンナ・バラッドラリー VOL.30

音楽をスポーツにたとえるのは必ずしもしっくりいくことばかりではありませんが、ワンマンが長距離走、ブッキングイベントが中距離走だとしたら、このライブは100m走に匹敵するのではないかと思います。コンディショニングと集中力、使う神経と筋肉が違う。

のらっしー(O.A.)、水井涼佑唄子mayuluca松浦湊江村健アカリノート古川麦山田庵巳アサダマオ北山昌樹齊藤さっこほりおみわ倉谷和宏スーマー豊島たづみノラオンナ(出演順、敬称略)。

「~うたひとつ弾き語り17人による感謝祭~」という副題で、ノラオンナさんが声を掛けたキャリアもクオリティもある16人のシンガーソングライターが渾身の持ちネタを1曲だけ披露する一夜限りのショーを楽しみました。

生粋の歌謡曲育ちと公言して憚らないノラさんのことなので、この枠組みは『ザ・ベストテン』へのオマージュなのかもしれません。点数も順位もつきませんが、1曲で聴衆の心を捉えることに専心するという点において。

レースを走り終えたミュージシャンたちの達成感に満ちた表情にもそれが窺えます。ただ、競っているのは共演者ではなく、自分自身。そんな意味での緊張と弛緩と。それはソロプレーヤーがバトンをつなぐチームプレイでもあるのです。

故・大瀧詠一氏が最後のフルアルバムになってしまった『EACH TIME』発表後のインタビューで言っていたことを思い出しました。そのアルバムではピアニスト2人、ギタリスト4人をユニゾンで同録しています。ウォール・オブ・サウンズを構築する目的の他に、余計なアドリブを挟ませずに緊迫と充実を導き出すために。「ブースを出たミュージシャンたちが腕をぶんぶん振り回して、やり切ったって口々に言うから」と。

逆に、弾き語りというフォーマットは誰憚ることなく、自分のタイム感で空間を満たすことができる。しかし自由ゆえに高い技術と精神力が求められる。ノラさんはこの「1曲」という枠を当てることで出演者たちの「本気」を引き出したかったのかもしれません。

はじめてライブで聴いたみなさんもですが、特にPoemusicaやアサノラで接点の方々は僕にとっては自分の作品やパフォーマンスのクオリティを測る基準でもあります。彼らの作品に対して恥ずかしくない、きちんとしたものを創りたいと背筋が伸びる思いがしました。


 

0 件のコメント:

コメントを投稿